The Spirit in the Bottle

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安全ゾーンは危険なゾーン グリーン・ゾーン

 僕はブログ(旧ブログ含む)を始めるとき一つだけルールを決めた。それは
劇場で見た映画は感想を書く
ということ。逆に言うとそれ以外は自由。DVDや漫画、アメコミなどの感想、時事ネタなどは気が向いたら書いている。
 とはいえ、早々劇場にばかり足を運んでもいられないわけで、一応週一鑑賞を心がけているが、どうしても足が遠のく時がある。そうするとその月は映画の感想を載せられなくなり別のネタで埋めることになる。そうするとなぜか罪の意識が芽生えてくる。誰も気になんかしてないとは分かってるけど。
 で、今回は何でもいいから観なきゃ!ということで劇場に行ってから観る映画を決めた。それが「グリーン・ゾーン」。

 決め手は何と言ってもマット・デイモンが出演してるということ。僕は別にマット・デイモンの大ファンというわけではないが彼は出演作品の選択眼、演技ともに今最も信頼の置ける俳優の一人だ。「天才役者(彼の演技が天才的というわけではなく天才役を多く演じることから)」とも言われるが、まあ確かにハズレはほとんどない人なのだ。ただ、いつまで経っても若く見えるので役によっては説得力が欠ける時があるが*1。だから彼の出てる映画なら間違いないだろう、と判断したのである。
 監督も「ジェイソン・ボーン」シリーズ、「ユナイテッド93」のポール・グリーングラスだし、後は結局「ハート・ロッカー」を見逃したので代わりにイラク戦争を舞台にした本作を見ておこうと思った次第。
 

物語

 この話はイラク戦争において大量破壊兵器の捜査をする部隊の隊長ミラーが主人公である。主人公率いるMET隊は上からの情報に基づいて大量破壊兵器が隠されているとされる倉庫に出動するがそこはただの廃工場だった。情報の信憑性を疑うミラー。
 一方フセイン後のイラクの統治を巡って国防総省とCIAの意見が食い違う。国防総省は亡命イラク人を首班にしイラク軍を完全解体して新国家体制を作ろうとしている。CIAはイラクの治安のためにもイラク軍を新政府に組み込むべきだと主張する。
 また、信憑性の薄い情報に基づいて捜索をするミラーたちにフレディと名乗るイラク人が情報を持ち込む。イラク軍の高級将校達が秘密の会合を開いているという。ミラーは独自に捜査を始める。情報提供者「マゼラン」とは何者なのか?徐々に全ての謎がつながっていく・・・

 以前に感想を載せた「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」で「武器密売の陰謀という部分はアメリカのイラク戦争に対する皮肉か」と書いたが、今回は皮肉とかのレベルじゃなく正面からの批判。ご存知のとおり、イラク大量破壊兵器など存在しなかった。ここでも国防総省は半ばそんなものは存在しないと分かっているのに、マスコミ対策、広報のためにありもしない大量破壊兵器を探索させる。御用記者は裏づけも取らず記事を書き、アメリカの大衆も乗せられる。
 イラン・イラク戦争で片足をなくしたフレディはフセイン政権とそれを支えたイラク軍を恨んでいる。それでミラーたちに情報を提供したり通訳として協力したりするのだが、そんな個人的な思惑とアメリカやイラク軍の思惑がぶつかるのが悲しい。
 
 グリーン・ゾーンとはバグダッド市内のアメリカ軍統治地域のいわゆる安全地帯のことである。が、そんな安全なはずの地域で事件はおきる。グリーングラス監督特徴の手持ちカメラによる映像がリアルさを増している。にも拘らず、画面酔いしないのはさすがというところだろう。主な撮影地域はイラクではなくスペインやモロッコらしい。
 ところで、僕がこの映画を観て一番むかついたところは、旧フセイン大統領宮殿で優雅にプールなんかで楽しんでる、〜もちろんイラク人ではなく駐留してるアメリカ軍とその関係者達〜シーンだ。人の国にきてめちゃくちゃにしておきながら何をしているのだ、こいつらは。 

誤訳

 今回字幕は戸田奈津子氏なのだが誤訳じゃないかな〜と思えるものを発見。部隊をアルファチーム、ブラボーチームなどと呼ぶのだがその時ブラボーチームが字幕上で「V1」「V2」などと出てくる。「ブラボー」って「Bravo」じゃなかったっけ?「b1」とかが正しいんじゃないの?まあ、それとは別に「Aチーム」「Bチーム」が出てくるから分けた、とか言うのかもしれないけど。普通に「ブラボー1」「ブラボー2」でいいと思う。最初に
「字幕 戸田奈津子
って出るとこっちも用心して観る癖がついてしまっているなあ。
 
 しかし、アメリカって凄いなあ、と思うのはほぼ現在進行形の出来事を政府批判も辞さず、しかも説教臭くなくエンターテインメントに仕上げていること。どこまで実際にあった話しなのかは知らないが現実の政治と問題を上手く描き戦争・アクション映画としても一級品。グリーングラスマット・デイモンの作品は信頼できる。それは保証する。
 
 さて、次は待ちに待った「アイアンマン2」だ!既にチケットは購入済み!IMAXだぜ!
 
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*1:レオナルド・ディカプリオも似たところがあるので二人が共演した「ディパーテッド」が少し物足りなかった