銃後のアメリカ 世界侵略:ロサンゼルス決戦
久しぶりの劇場での映画鑑賞。話題作がどんどん公開されてるのに観にいけてないのは結構辛かった。映画館って不思議なところでわずか2〜3時間外界から隔絶されるだけなのに上映終わって出てくると凄い世の中が変わってしまったような錯覚に陥ってしまう。睡眠で6時間以上寝てもそうはならないのに。携帯電話を電源から切っているのも大きいのかな、と思う。とりあえず、単に作品を家で鑑賞する、というのとは違った体験。
さて、そんな久しぶりの映画は本来なら4月に公開されるはずだったのが震災の影響でここまで伸びた「世界侵略:ロサンゼルス決戦」
311
これ、アメリカでは3月11日の公開なんですね。例えば「唐山大地震」とかは同じ災害ものだし延期になるのも理解はできるのだけど、これなんて宇宙人の侵略というSFだしあんま関係ないんじゃいの?などと思っていた(ちなみに「ザ・ライト エクソシストの真実」の延期は内容ではなく物流によるものだそうだ)。とはいえ観てみたら分かった。
物語は突然の流星群が世界各地の大都市近くの沿岸に着水。そこから異星人の軍団が出現し、世界は侵略されたことに気付く。退役を決めていたベテラン、ナンツ2等軍曹はロサンゼルスの敵支配領域から空爆までの間に民間人を救出する部隊に配属。新人少尉の指揮の下LAに向かう、というもの。
その善し悪しは別としてアメリカ軍は間違いなく世界最強の軍隊だ。ほぼ絶え間なく戦争を続けており、ベトナムを除くほとんどに勝利してきた。最新兵器と大量の物量。そしてかの国特有の愛国心がある。例えばアフガン戦争やイラン戦争の時、「相手はずっと戦ってきた場慣れした連中。それが自分の領土で戦うのだからアメリカ軍も敵わない」とか言っていた人たちがいた。結果は泥沼化したもののアメリカの勝利。戦いなれてるのはアメリカ軍も一緒なのだ。しかも今では世界でも珍しい外征に特化した軍隊である。その中でももっとも強力なのが別名「殴りこみ部隊」と呼ばれる「アメリカ海兵隊」である。海上から乗り込んで前線を切り開く海兵隊は最強の軍隊の一つで徴兵制時代でも海兵隊だけは志願を持って構成されただけにやる気も半端ない(その分沖縄などで問題を起こすのも海兵隊が多い)。この「世界侵略」ではその海兵隊が行ってきた戦争のやり方がそのまま異星人に模倣されているのだ。
ここで震災との関連に戻る。沿岸に着水した際、当然のことながら軽い津波も起きる。でもそれよりも、海からやってきて町に及ぶ被害と言うのが津波に似ているのだ。アメリカ人は海兵隊の裏返しととるだろうが日本人は津波のメタファーと捉えるだろう。
911
この映画あの「スカイライン」のスタッフが関わっているためある意味異母兄弟作品、嫌な言い方をすればメジャー作品であるこちらは嫡出子、インディーであるあちらは非嫡出子のような関係とも言える(実際色々揉めているようだ)。ただ、メッセージ性で言えばこちらの方が上だ(作品としての質や面白さと言うことではない)。「911以後のインディペンデンス・デイ」というような作品である。
勿論、911同時多発テロから10年を迎えた現在、すでに映画作品にはいたるところに911の影響は垣間見える。エイリアンの侵略SFという分野に限ってもスピルバーグの「宇宙戦争」という決定版がある。「ID4」はソ連というアメリカにとっての敵対国が消滅し宇宙に仮想敵国を求めたといえる話だがそこは冷戦に勝利した余裕が垣間見えた。今はそんな余裕が感じられない。侵略される宇宙人はコミュニケーションこそ取れないが人型で行動を見る限りそんなに人類と文化的に隔絶していない(こちらの想像を絶する新兵器なども特にない。十分通常兵器で対応できる相手)なのに理解できないと言う描写はやはり中東方面での戦いをアメリカ側から見た描写ではないのか(見た目は「スターウォーズ」のバトルドロイドみたいなんだけど)。そもそも「ロサンゼルス」というアメリカ屈指の大都市を舞台にしているのに観光映画的描写がほとんど無いのだ。例えばビバリーヒルズの大豪邸だとかマンチャイニーズシアターだとかそういう観光名所が映らない。もしかしたら映った部分もあるのかもしれないが少なくとも海外の人間に分かりやすい描写ではない。常に砂煙の舞うそこは中東の町並みといってもそれほど違和感はない。救出される民間人に中東系っぽい人(少なくともWASPではない)がいるので尚更。ただしこの描写がエイリアンをまんま理解できないムスリム、と思わせることを緩和させている。
「ID4」と「プライベート・ライアン」をあわせたような映画。しかしそこに明るさはない。
さて、ここから一気にミーハーな感じに。主役のナンツ2等軍曹を演じるのはハーヴィー・デントことアーロン・エッカート。20年にわたり海兵隊で活躍するベテラン軍曹。彼を中心に最初の方死亡フラグを立てまくる部隊のそれぞれの描写がなされる(正直うざかった。この辺全部省いて90分に出来たような気もする)アーロン・エッカートはアゴ割れの屈強な白人で往年のチャールトン・ヘストンを思わせる。彼が所属する部隊の隊長が新人少尉でベテランのナンツに「オレが上官だぞ」としつこく言ったりする。士官学校を卒業すると自動的に少尉で任官される。一方、実務訓練教官などは軍曹など下士官がおもなので卒業した途端階級が上ということがあるのも軍隊ならではだ。
この映画、ミシェル・ロドリゲス姐さんが出ている、というのも観に行った大きな理由なのだが(正直、長期間の延期もあって見る気が少し失せていたのも事実)この人は世界一女海兵隊が似合う人(今回は正確には海兵隊員ではないが)が今回はほぼきっちり着込んでいる上ヘルメットを常につけいてるので露出が顔のみで、時折魅力的な笑顔を見せてくれるもののアーロン・エッカートと一緒にいると「ダークナイト」の刷り込みでラミレス刑事に見えてしまう部分もあったのは残念。タンクトップ・・・見たかったよ・・・[asin:B004L63UTM:detail]
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