The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

飯もネットもこんがり焼き上げろ! シェフ 三ツ星フードトラック始めました

 マーベル・シネマティック・ユニバースの二度目の山場、「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」の公開も迫って来たけれど、そのMCU最初の立役者といえば「アイアンマン」の3部作であろう。単に作品をヒットさせたというにとどまらず、その明るい雰囲気でもってMCU全体の世界観の印象も決定づけた。同じMCU作品の「ソー」や「キャプテン・アメリカ」に比べると「アイアンマン」の3部作自体はどちらかと言うとMCUのクロスオーバーに寄り添っているというよりは、単独シリーズとして見せてやる、みたいな見栄というか意地も感じられたりするのだけれどその功績は誰もが認めるところ。「アイアンマン」「アイアンマン2」の監督のジョン・ファブローは監督兼俳優兼コメディアンで「アイアンマン」シリーズでは監督の傍らハッピー・ホーガンとしてレギュラー出演している。これ以前にもベン・アフレック主演の「デアデビル」で主人公の友人役という「アイアンマン」と似た役どころを演じていたし*1、監督作の「ザスーラ」はやはり後に「キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャー」でMCUに参戦するジョー・ジョンストンの「ジュマンジ」の続編であったり、色々とコミック作品とは縁深い人でもある。そんなジョン・ファヴローの最新作「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」を観賞。

物語

 ロサンゼルスのレストランでシェフを務めるカール・キャスパー。彼は店を訪れる料理評論家への対応を巡ってオーナーと対立。オーナーに従った結果ボロクソに貶されて店をやめることに。更にトラブルを起こし一躍ネットの有名人になってしまう。
 キャスパーは別れた妻の付き添いでマイアミに。そこで味わったキューバサンドウィッチに魅せられ屋台を始めることを決める。前の店からキャスパーを慕いついてきたマーティンと息子のパーシーとともにマイアミからロサンゼルスまでキューバサンドウィッチの屋台をやりながらの旅が始まった!

 役者としてのジョン・ファヴローの少なくともメジャーな作品では初と思われる主演作でもある。ファヴローは御存知の通り「アイアンマン3」では監督を降板(とはいえ製作として関わってはいるし、ホーガン役としてはむしろシリーズ中でも一番出番が多い)しているが、その理由がどうもこの作品を撮るためだったらしい。この作品は一言で言うと、とても楽しい作品で、その理由も例えば「『アイアンマン3』撮影中にトラブルが起きて撮影が中断。役者やスタッフが長期待機させられるも、そこでファヴローが、「じゃあこの期間利用してなんか軽く一本作ろうか?」と言って撮り上げたような作品」という感じ。まあ実際は脚本も画作りも練られているし、ロケメインの作品なので「ちょっと合間に軽く…」というような製作方法*2ではないのだろうが、それでも「アイアンマン」のキャストが多く登場していて、かつそれぞれの役柄を微妙に臭わせることで兄弟作のような印象も受ける。

 この作品、出てくる料理が美味そう(といっても僕の場合あんまりフレンチとかの魅力はよく分からず、後半メインとなるキューバサンドウィッチなど比較的手軽な料理のほうがその魅力を感じ取れる)なのはもちろんだが、実はネットリテラシーについての映画でもある。カールは料理批評ブロガーに酷評されたのに腹を立て、かなり無知の状態でツイッターに登録、そのブロガーにかなり汚い言葉でリプライを返したところ、リツイートされまくって一躍有名になる。ネットに対する無知がもたらした悲喜劇。
 また後半はこのツイッターを息子が管理することでうまく屋台の宣伝となり、評判となる。ツイッターを扱った作品というのも色々あるとは思うが、重すぎず、軽すぎず、でもそれなりに安易なリプライがもたらす様々な出来事を上手く表現していたと思う。

 キャストは「アイアンマン」シリーズに出ていたスカーレット・ヨハンソンやロバート・ダウニーJrも好演。とはいえこの二人はゲスト出演に近い感じか。ヨハンソンはカールの務めるレストランのソムリエでカールの恋人?役。「アイアンマン2」でブラック・ウィドーとして登場した時はファヴローのホーガンは全然相手にされていなかったので、その辺を思い浮かべると関係性が楽しい。
 一方RDJは妻の元旦那。この辺はよく分からないが奥さんはRDJと離婚した後カールと結婚して息子をもうけ、その後離婚という形なのかしら。この穴兄弟となったRDJとファヴローの関係も「アイアンマン」のトニー・スタークとハッピー・ホーガンを連想して楽しい。
 このカールの元妻も容姿も美しく経済力も社会観念もしっかりしていて、かつ全然嫌味な人ではないので、なんで離婚したんだろう?と思う一方、彼女のこれまでの男性遍歴を見せられても全然いやらしくないしむしろ彼女を通じて男たちが不思議な友情を結んでいるふうなのもこれまた楽しい。
 そしてジョン・レグイザモ!カールについてレストランを辞め一緒に屋台をやる舎弟と友人の中間のような男。「マッサン」におけるマッサン(玉山鉄二)と俊兄(八嶋智人)みたいな感じ。彼がヒスパニック系なのでカールが分からないヒスパニック系の人たちとの仲を取り持ったりする。レグイザモはアメコミ映画では「スポーン」でクラウンを演じてましたね。面影ゼロだったけど。実写におけるルイージでもある。
 そのほか最初の方のレストランのオーナーとしてダスティン・ホフマンが、料理批評ブロガーとしてオリバー・プラットが出演。ホフマンのオーナーは「どんな客だろうと、これまでどおりの料理を出せば良い」という考えで、それは確かに客で料理に差を付けない、という意味ではもっともなんだけど、同時に劇中では「シェフの冒険を許さない(新しいメニューは必要ない)」保守的な人間にも映る。ホフマンも前半で退場するのでゲスト出演に近い感じだが、その後のフォローがないのでちょっと損な役回りか。料理批評ブロガーに関しては、ヒットしたブログってそんなに儲かるのか…というやっかみが…

 後はなんといっても息子のパーシー役のエムジェイ・アンソニー。何度か書いているけれど、子供が重要な位置を占める映画ってその子供を演じる子役に好感を持てるかどうかが決定的な役割を果たすと思っているけれど、このエムジェイくんは完璧でした。彼がある面では父親父親としての責任を思い起こさせ、その一方で父親とともに成長していく姿がきちんと描かれていて良かったです。

Chef

Chef

関連記事

カウボーイ&エイリアン 未体験ロング・バージョン [Blu-ray]

カウボーイ&エイリアン 未体験ロング・バージョン [Blu-ray]

 ジョン・ファヴローの(監督作としての)前作。この「カウボーイ&エイリアン」は正直イマイチで、奇しくも記事タイトルを料理に例えて書いたけれど、本作は見事に高級食材を美味しい料理、それも敷居の高い料理ではなくもっと手軽で身近な料理に仕上げたと言って良いでしょう。料理同様美味しいけれど、手軽でしかし食いごたえのある映画でした。

*1:アメコミ映画ではそれ以前に「バットマン フォーエヴァー」にも出ていたらしい。今度確認してみよう

*2:香港だと割りとこういう作り方の作品は多い