The Spirit in the Bottle

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帰ってきた貴方の親愛なる隣人 スパイダーマン:ホームカミング

 またしてもしばらく間が空きましたが、それでもなんとか月2回の更新。今回はもう公開はほぼ終わってしまったのかな?我らが親愛なる隣人、21世紀に入ってから3度めの仕切り直しスパイディ、「スパイダーマン:ホームカミング」の感想です。マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)16本目!(そろそろ数えるのが面倒くさくなってきたので数え間違っているかも)

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物語

 NY決戦。敗れ去ったチタウリの残骸や瓦礫の撤去作業を請け負ったエイドリアン・トゥームズ。ここが稼ぎどきと人も雇い機械も入れた。しかしエイリアンの遺産が外部に漏れることを恐れた政府によって新組織「ダメージ・コントロール局」が作られトゥームズの会社は排除されてしまう。大損を余儀なくされたトゥームズはDC局やその組織設立に関わったトニー・スタークを深く恨むことになる。

 それから数年。ひょんなことからスーパーパワーを手に入れた少年ピーター・パーカーは「スパイダーマン」としてトニー・スタークの誘いで”シビル・ウォー”に参戦。その時着用したスターク製スーツももらい、アベンジャーズ見習いとして意気揚々、今日もNYの平和を守るべくパトロールしてはその成果をハッピー・ホーガンに報告する日々を送るのだった。

 そんなピーターも思春期真っ盛り。想いを寄せるのは年上の美少女リズ。しかしピーターはスパイダーマンとしての活動を優先させ彼女がリーダーを務める全米学力コンテストへも不参加を決めてしまう。そしてピーターの思いとは裏腹にトニーはピーターをアベンジャーズに入れる気はさらさらないのであった。

 ある時、ピーターはATM強盗の一団と戦うことになるが彼らは一般の強盗では手に入れ難い特殊な武器を使用していた。そのことをトニーに報告するがナシのつぶて。親友のネッドとリズの家で開かれるパーティーに行った夜、不可思議な爆発を目撃したピーターはその現場に赴く。そこではあの特殊な武器が取引されていた。スパイディは彼らを追い詰めるもそこに巨大な翼を持った敵が襲いかかる。彼こそエイリアンの技術で武装したエイドリアン・トゥームズ=ヴァルチャーであった!

  これまででも最も雄壮雄大な「スパイダーマンのテーマ」で幕を上げる本作。御存知の通りスパイダーマンの映画化は21世紀に入ってからもう6度目。サム・ライミの「スパイダーマン」1~3作、マーク・ウェブの「アメイジングスパイダーマン」1~2作がある。特に「アメイジングスパイダーマン」2作はまだ最近で、実際続編やスピンオフへの含みを残したままシリーズ打ち切りと言っても過言ではない。そしてスパイダーマンマーベルコミックス。これまでマーベルコミックスの実写映画化には大きく3つの流れがあって、ひとつは主に「X-MEN」をメインとした作品、キャラクターが出てくる20世紀FOXのシリーズ。そしてマーベルが自身の映画スタジオ「マーベルスタジオ」を作りそこでたくさんのキャラクターを共演させる「マーベル・シネマティック・ユニバース」。そしてソニーが権利を持つ「スパイダーマン」となる。この内スパイダーマンを何とかMCUに合流させる動きというのはずっと囁かされていて、どうやらキャラの出向という形で晴れてスパイダーマンMCUに合流、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でひとまずお先にお披露目となった。この先厳密にはどうなるかはまだ分かっていないのだが、何作かMCUとして参加したあと、改めて(今回のシリーズが)MCUから離れて独立するなんて噂もある。個人的には「アメイジングスパイダーマン2」の終わり方が好きで、あの続編が見たい!と思っていたのだが、それはもう無理そう。ただスピンオフ企画自体は続いていて、「ヴェノム」がトム・ハーディ主演で、なんて動きもあるようだ(今回のシリーズと世界観がつながっているのかは不明)。

 副題の「ホームカミング」は映画内容的には劇中で出てくる学校主催のパーティーのことで在校生だけでなく卒業生も参加できる行事ということで「ホームカミング」というのだが、もちろんこれは第二義的な意味であって、第一義的にはスパイダーマンが我が家=マーベル・シネマティック・ユニバースに帰ってきた、という意味である。

 MCUではキャプテン・アメリカの盾を奪う、という鮮烈なデビューを飾ったトム・ホランドのNEWスパイディ。キャラの出向、というからにはそんなにMCUの他のキャラクターや要素を極力絡ませない物語になるのかな?と思ったのだが、蓋を開ければむしろこれまで作品を重ねて(劇中の一般人にとっても)半ば日常と化したスーパーヒーローやヴィランが当たり前のように存在する世界にまた新しいヒーローをごく当たり前のように投入してみました、という感じになっている。なんならフェイズ2以降の新ヒーロー「アントマン」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「ドクター・ストレンジ」なんかと比べても最もMCU要素が満載かもしれない。特にアイアンマンはたんなるゲストキャラクターの域を越えてがっつり物語に関係してくる。

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 MCU要素がごく当たり前のように満載な一方で、スパイダーマン自身のオリジンは今回は描かれない。過去の2シリーズで(もちろん今回とつながってはいないものの)かなり丁寧に特殊蜘蛛に刺され超能力を手に入れた顛末やベンおじさんの死によってヒーローとしての覚悟を決める描写が描かれてきて、いくら作品として世界が繋がっていないといっても3度目ともなればもうさすがに鬱陶しいということもあるだろう。すでに「シビル・ウォー」でスクリーンデビューをしていることもあって最初からスパイダーマンとしての活躍が拝める。

 新しいスパイダーマン=ピーター・パーカーを演じているのはトム・ホランド。僕が観た中では2012年の「インポッシブル」でユアン・マクレガーナオミ・ワッツの長男を演じていた。あれから5年で成長したな、と思ったのだが1996年生まれなので現在21歳。「インポッシブル」当時で15歳ぐらいだったことになる。今回のピーターが高校1年生の15歳という設定なのでもとよりかなり童顔なのだな。トビー・マグガイアからアンドリュー・ガーフィールドになったときも(スパイダーマン役以外のキャストも含め)かなり若返った印象があったが、今回は本当に「まだ子供」と言う感じ。

 もちろん単に若返っただけでなく、ピーターを取り巻く状況もかなり変化しており、コミックスに忠実というよりは(あるいは最近の作品の設定なのかもしれないが)映画独自に現代的な描写となっている。メイおばさんはマリサ・トメイが演じているがこれまでの歴代実写メイおばさんの中でも単に年齢だけでなく若い。アイアンマンのロバート・ダウニー・Jrと同い年。これまでのどちらかと言うとお婆さんの印象から美人のおばさん、という感じに。ただ若いだけでなくマリサ・トメイのキャラクターかこれまでの専業主婦(それ故にベンおじさん死後に苦労する)だったメイおばさんに比べると普通に仕事の面でも充実してそうで、飲食店かブティックあたりを経営してそうな雰囲気(具体的になにしてるかは語られてない)。劇中ベンおじさんのことは話題にならないので今回そもそもベンおじさんが存在したのかも不明。なんならずっと独身のメイおばさん、と言う設定でも普通にイケそう(コミックスではピーターはベンおじさんの弟の子供なので、ベンおじさんいないとメイおばさんとの続柄がおかしいんだけど)。

 さらに過去の作品と大きく変わったのがピーターの学友たち。秀才だけど冴えない(友人もいない)という描写が大きかった高校時代のピーターだが、今回は(決してメイングループにいるような人気者でもないが)別に蔑まれてもいなければ孤独でもない。オタクの友人ネッドがいるし、学力コンテストでは頼られてもいる。フラッシュ・トンプソンからは相変わらず嫌味を言われているが、このフラッシュも金持ちではあるがこれまでの体育会系のジョックスではなくなっている(しかもヒスパニック系あるいはインド系)。この大きな変化はピーターの通うミッドタウン高校が、公立ではあるものの地域ごとに進学する高校でなく専門知識を習うための高校、日本でいうところの高専みたいな学校だから、というのも大きいのではないか(劇中での授業も実習もほぼ理工学系)。アメリカの映画などではいじめのピークが高校であることが多いが日本では中学校であることが多い。これはアメリカでは地域ごとにそのまま高校まで進学するのに対して日本では高校から進路別になるからだろう。アメリカの公立校ではアメフト部員が幅を利かせ、また自動車通学が認められているため、親の経済力がそのまま如実に学内ヒエラルキーにつながることが多い。しかしミッドタウン高校は皆学究の徒であるのでそういうものとは無縁でいられるのだろう。

 新登場のネッドは肥満のオタクだが、なんだかんだ言ってもこの子も優秀なので、クライマックスでは現場に出ないサイドキック(バットマンに対するオラクルとかパニッシャーに対するマイクロなど)としてコンピューターを使ってサポートする。スーツの機能を解放したのも彼の仕事だ。

 スパイディのスーツは基本的に「シビル・ウォー」で着用したものと同じ。最も基本的なスパイダーマンの衣装。特徴としては目の部分がおそらくズーム機能で大小変化することで、これによってフルフェイスのマスクなのに表情をつけることに成功している。マグガイアのスパイダーマンはかなり筋肉質、一方ガーフィールドスパイダーマンはしなやかなヤセ型、今回はその中間という感じだろうか。個人的には「アメイジングスパイダーマン2」の時のスパイダーマンがかなり好きだったのだが(特に顔部分)、今回はあれに比べるともうちょっと硬い感じ。機能はそこはトニー・スターク謹製だけあって多機能で、これまではピーター自家製で手首のウェブシューター以外はほぼただの布だったのに比べると様々な機能が備えてある。胸の蜘蛛のシンボルはドローンとして役立つし、アイアンマンスーツにおけるジャーヴィス、フライデーのようなサポート人工知能も付いているし、これまで実写では描かれてなかったウェブウイング(脇の下から展開する蜘蛛の巣状の膜)も。着る時はゆったりだが勝手に身体に密着してくれるし、濡れても乾かすヒーター機能付き。

 一方後半はトニーにスーツを取り上げられ(勝手に機能を解放したりした)、最初のお手製スーツを着用する。これも「シビル・ウォー」でちょこっと出てきたが、これまでトビー・マクガイアもアンドリュー・ガーフィールドも自分で手作りしたにしてはしっかりし過ぎだよな、と思うぐらい手作り感満載。この後半になって初期のスーツを着用するって展開は「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」と同様だがやはり燃える展開でもある。

 余談だが、日本でもスパイダーマンのコスプレする人って多いのだが、市販の全身タイツを着れば済む手軽さの一方で全身タイツタイプだけに体の線がもろに出るし、いっぽうでフルフェイスのため表情が分からず結構怖い。せめてある程度身体を鍛えて(でも痩せててほしい)からコスプレしてほしいなあ。

 MCUから引き続き登場のキャラクターはアイアンマン=トニー・スタークにハッピー・ホーガン、ペッパー・ポッツ。それぞれオリジナルキャストが演じている。というか予想以上にアイアンマンたちの出番も多くてびっくりした。ホーガン役のジョン・ファブローなんて監督降りてからのほうが出番が多くなっている気がするなあ。後はキャプテン・アメリカもピーターたちが高校で観るビデオ教材の出演者として出てくる。キャップは「シビル・ウォー」以降手配中の犯罪者ということになっているのだけど、一応先生がその旨忠告してから生徒に見せるのが面白い。後はミッドタウン高校の校長が東洋人なのだけれど、この人は「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」に出てきたハウリングコマンドーの一員と同じ人が演じていておそらくその子供か孫といった辺だろう。校長室にそのハウリングコマンドーの写真が飾ってある。後はATM強盗がコミックスタイプのアベンジャーズの面々のマスク(祭りの屋台で売ってるようなタイプ)を付けて反抗に及ぶのだが、この時のマスクがソーが翼付きの兜かぶった状態だったりする。がMCUであの兜かぶってるの見たことないな。脇に抱えてはいたけど(新作でそれっぽいのかぶります!)。

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 今回のヴィランはヴァルチャー。スパイダーマンの敵としては古株ではあるが、コミックスのランクではこれまで出てきたグリーン・ゴブリン、ドクター・オクトパス、サンドマン、ヴェノムといったあたりに比べるとワンランク落ちる感じ。全身を緑の羽毛に身を包んだハゲオヤジ。しかし今回はかなり格好良く、実写映画に限れば歴代のスパイダーマンヴィランの中でも一番ではないかと思う。エイドリアン・トゥームズは仕事を奪われた腹いせに密かに隠し持ったエイリアンの残骸から武器や自分が着用するスーツを製作。その特殊武器を悪党に売って稼いでいる。演じるのはマイケル・キートンで、このキャストからバットマンを連想しないわけにはいかない。実際バルチャーが翼を広げて降り立つシーンはバットマンの同様のシーンのオマージュでもあるだろう。

 ヴァルチャーがこれまでのスパイダーマンヴィランと比べて違うところは、彼は全く狂っていないところである。これまでは大なり小なり超常的な力を手に入れたことが精神の不調へと通じ、善良だった人物がヴィランとなっていったが、トゥームズはまったく経済的な理由から悪事に手を染めるしいわゆる狂人タイプのヴィランではない。それを象徴するのが、実は彼こそがピーターの想い人リズの父親だった、という設定である。

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 ピーターはスタークにスーツを取り上げられ、スパイダーマンとしての活動を止め、通常の学生生活を送ろうとする。そして「ホームカミング」にリズを誘うことに成功するのだが、当日彼女の家に迎えに行くと出てきたのはエイドリアン・トゥームズであった。リズも今回新しく出てきたキャラクターでスラっとした美少女だが人種的には黒人である。だから最初にリズの家でトゥームズを見かけた時にはトゥームズがリズの家を占拠したとかそういう展開なのかと思ったし、映画を観終わった後も、子持ちの黒人女性とトゥームズが再婚したとかそういう裏設定があるのかな?と思ったりしたが、多分普通にリズはトゥームズの実の娘であると思う。そういう描写に説明が全く不要な時代になっているのだろうと思う。一方で人種が違うことでこの2者につながりはないと思わせびっくりさせる効果もあるのだと思うけれど。

 ピーターはすでにヴァルチャーの素顔としてのトゥームズを知っていて、トゥームズはパーティに送る車の中での会話でピーターがスパイダーマンであることに気づくのだが、そんな簡単に相手の正体に気づくかな?と思う一方でこの車中の会話は中々にスリリング。


Spider-Man: Homecoming - Official Trailer 2 [HD]

 ラストは功績が認められトニーから新しいアベンジャーズのメンバーとして迎えられるも、自分は「ご近所のヒーロー」でありたいとこれを断るピーター。これまで諸先輩と肩を並べるべく肩肘張っていたスパイディもやっと自分の立ち位置を見つけた。父親が捕まったリズは母親の故郷へ去るが、新しい友だちも出来た。その一人変わり者のミシェルは自分のこう呼ぶよう告げる「MJ」と。

Spider-Man will return.

 NY、ワシントンなど意外といろんな場所に行き、ガジェットやマクガフィンはチタウリの遺産であったりガッツリMCUの中にいながらでも特に壮大な話になることもなく話を締めた。MCUがきっちり認知されているから可能なことで、これがもし最初から(例えばフェイズ1の時点で)スパイダーマンMCUに参加していたらまたちょっと違ったものになっただろう。まだ高校1年生でありシリーズが続いてもしばらくは高校生のままだろう。今後は少なくとも「アベンジャーズ3」前後編に参加し、MCUとしての単独続編が一本は作られる模様。

スパイダーマン ホームカミング:プレリュード (ShoPro Books)

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「スパイダーマン:ホームカミング」オリジナル・サウンドトラック

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 今後のMCU作品としては11月に「マイティ・ソー バトルロイヤル(この邦題何とかならないものか……)」が控えていて、すでに予告編が上がっているものにこちらもスパイディ同様「シビル・ウォー」でデビューした「ブラック・パンサー」が来年の春公開予定。そして「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」とフェイズ3のクライマックスへ。


"Thor: Ragnarok" Official Trailer


Black Panther Teaser Trailer [HD]

おまけ


Spiderman Homecoming , intro fun japanese

 帰ってきた地獄からの使者、スパイダーマン

スタン・リーも出てるよ!