The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

探しものは森のなかに イントゥ・ザ・ウッズ

探しものは何ですか
見つけにくいものですか
カバンの中もつくえの中も
探したけれど見つからないのに
まだまだ探す気ですか
それより僕と踊りませんか
夢の中へ 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか

夢の中へ ― ベストアルバム

夢の中へ ― ベストアルバム

 歌詞の中の「夢」を「森」の変えてください。以上。
 と言ってしまっては元も子もない。今年の一番の目玉といえばヒーロー大集合映画の第2弾「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」であるけれども、その前哨戦(違)、おとぎ話のキャラクターが一堂に会する童話のアベンジャーズ、「イントゥ・ザ・ウッズ」を観賞。2013年は「イントゥ・ダークネス」、2014年は「イントゥ・ザ・ストーム」そして2015年は「イントゥ・ザ・ウッズ」森のなかへGO!(徐々にスケールが小さくなっているような気がしないでもない)

物語

 ある王国の近くの町。そこには継母と義理の姉たちに虐げられるシンデレラと万引き常習犯の赤ずきんちゃん。そしてお馬鹿なジャック少年とパン屋の夫婦が暮らしていました。パン屋夫婦は子供が出来ないことが悩みでしたが、そこへ隣に住む魔女が訪れます。魔女によると夫婦に子供が出来ないのはかつて夫の父親が妻のわがままのため、魔女の庭からチシャを盗んだ事によるその呪いだというのです。但し魔女も魔法の豆を盗られたため見難い老婆になってしまいました。魔女は当時お腹にいた赤ちゃん、パン屋の妹を貰い受けてもいました。
 魔女は今日から三日間の間に森のなかで次の4つの物を手に入れれば呪いは解け赤ちゃんを授かることができると言います。

  1. 赤いずきん
  2. 白い牝牛
  3. トウモロコシのひげのような黄色の髪の毛
  4. 金色の靴

 夫婦は呪いを解くため森へ出かけるのでした。
 一方、シンデレラはお城の舞踏会に出かけるため、魔女の魔法でドレスアップ。王子様と踊りますが毎晩決まった時間には帰らなければなりません。そして赤ずきんちゃんは森に住むお婆ちゃんのもとへ。ジャックは乳の出ない牝牛を隣の町まで売りに。そして森のなかにある塔の中には黄色く長い髪を持つラプンツェルが王子(シンデレラの相手の弟です)と恋においていました。果たしてパン屋夫妻は4つのアイテムを手に入れ呪いを解くことができるのでしょうか?

 今日本でもauのCMで桃太郎と金太郎、浦島太郎、そしてかぐや姫が共演していたりするけれど、こちらはヨーロッパに伝承されるおとぎ話の主人公を一同に集めた作品。「シンデレラ」「赤ずきんちゃん」「ジャックと豆の木」「ラプンツェル(髪長姫)」といったあたりが共演している。この後には「シンデレラ」単独の映画の公開も控えていたりするけれど、何度か書いているここ数年の「お伽話を最新技術で映画化!」という一連の流れの集大成的なものかもしれない。
 内容だけ聞くといかにもディズニー、という感じで宣伝でもその辺を前面に押し出しているが、この作品、元々はスティーブン・ソンドハイムが手がけた1987年初演のブロードウェイミュージカル。基本的にディズニーのお伽話映画化作品とは無関係。あくまでディズニーが映画化権を獲得したという形か。ソンドハイムといえばシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を現代のNYのイタリア系とプエルト・リコ系の若者の抗争に置き換えた「ウエスト・サイド物語」だったり、イギリスに伝わる殺人鬼スウィーニートッドを元にした「スウィーニー・トッド」だったりブラックなものも多くこの「イントゥ・ザ・ウッズ」も基本的にはその路線と言える。その辺でいわゆるディズニーのファミリー路線を期待すると大きく肩透かしを食らうと思う。
 前に観た「ANNIE/アニー」は明らかにオリジナルの舞台と映画は色々と別ものなんだな、というのが(舞台を観ていなくても)分かる感じだったが、この「イントゥ・ザ・ウッズ」は良くも悪くも舞台に忠実に映画化されているんだろうなあ、というのが分かる。もちろん映画化にあたって特殊効果だとかカット割りだとか凝っている部分もあるのだけれど、あくまで舞台の演出の延長線上にある感じ。この辺はもっと映画ならではのダイナミックな描写があっても良かったと思う。特に通常のファンタジー映画ならば見せ場となりうるであろう「ジャックと豆の木」から始まる巨人がらみのシーンはもっと映画ならではの見せ場が欲しかった。

 キャストはシンデレラにアナ・ケンドリック。王子1にクリス・パイン、魔女にメリル・ストリープ、狼にジョニー・デップという豪華具合。ただジョニー・デップはゲスト出演に近い感じ。ジョニデを期待するとこれまた拍子抜けするだろう。しかし主役はパン屋夫妻でジェームズ・コーデンとエミリー・ブラントが演じている。エミリー・ブラントは相変わらずの格好良さ。ジェームズ・コーデンという人は僕はこの作品で初めて知ったのだがなんというか(もちろん役柄もあれど)全身からいい人臭が溢れだしていて、なんとなく「ロード・オブ・ザ・リング」のサム、あるいは茶色い革の服を着ていたせいか「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のスターロード、ピーター・クイルを連想した。
 アナ・ケンドリックはやはり「パラノーマン」のコートニー役(声)なのだが、この人もいかにもアメリカ人という雰囲気が強くてあまりこういう中世ヨーロッパ風お伽話に向いている感じはしない。僕はアナ・ケンドリックを見ると誰かに似ていると毎回思ってしまうのだけれどそれが誰なのかが分かりません。シンデレラの相手の王子はクリス・パインで「スター・トレック イントゥ・ダークネス」につづいてのイントゥだが、役柄的にもほぼカーク船長です。プレイボーイでシンデレラと結ばれた後にエミリー・ブラントとラブシーンを演じたり。
 悪乗り演技で見せてくれるのは「マンマ・ミーア!」に続くミュージカル出演でもあるメリル・ストリープ。今となってはこっちのほうが素っぽい老婆姿の魔女とその正体であるスパンコール付きドレス姿の派手派手な姿と元気なところを見せてくれる。
 後は例によって子役か。赤ずきんちゃんのリラ・クロフォードはこましゃくれたマセガキという感じで愉快だったし、ダニエル・ハッスルトン演じるジャックは揶揄じゃなく本当のおバカさんで共に同情や感情移入という形では入り込めなかったけれど、逆にその突き放した描写が良かったかも。シンデレラと赤ずきんちゃんとジャックとパン屋が互いに責任をなすりつけシーンは最高だったよ!

 映画は通常のセリフとミュージカル部分がきっちり分かれているタイプではなく、どちらかと言うと地のセリフもリズミカルにやりとりが行われる「レ・ミゼラブル」にあそこまで徹底してはいないけれど近い感じ。音楽はソンドハイムらしく最高で時に「ウエスト・サイド物語」の楽曲を連想させる曲もある。「スウィーニー・トッド」よりは覚えやすいか。
 映画のストーリーとしては中途半端な部分も多く、先の「ジャックと豆の木」がらみの巨人描写もそうだけれど、シンデレラと王子のその後が投げやりだったり、あるいはパン屋の妻の最期だったり。パン屋とラプンツェルは兄妹のはずだが、二人がそれを知ったり、出会ったりという描写がなく観ていてスッキりとしない。この辺多分舞台では欠点にならないのではないかと思う。舞台は観客がキャストに没入する具合が高く、ミュージカル的な盛り上がりの方が優先されてあまり気にならない気がするけれど、映画だと脚本の粗に思える。この映画版「イントゥ・ザ・ウッズ」はあまりに舞台に忠実であろうとしたあまり映画としての映像的にも脚本的にも工夫が足りないように思えてその辺が残念。登場人物の造形とかは面白かったし良かったけれどその辺はキャストの魅力と元の舞台からの流用だしなあ。

 監督はロブ・マーシャル。元が舞台の振付師だったりしてミュージカル畑の人であはあるんだけれど、僕の相性とはあんまり合わないのが多いなあ。「シカゴ」も「NNE」もイマイチだった記憶が。ただロブ・マーシャル作品の中では一番楽しめた作品ではあります。しかしこれも元のブロードウェイミュージカルの魅力であるとは思う。

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 1999年にTV映画としてリメイクされた「ANNIE/アニー」。こちらもディズニー制作で監督がロブ・マーシャルでした。日本では出ていないみたいであるが、新しい「ANNIE/アニー」と比べると色々おもしろいかも。