The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

アニーよ自由をとれ! ANNIE/アニー

 さて、同日に観た映画の最後の一本。実際はその日の最初に観たのが今回の「アニー」でありました。「アニー」と「アナベル」の二つのアニーで「エクソダス」を挟む、というプランは狙ったものではなく、単なるスケジュールの問題。当然何の脈絡もないのだけれど、人間愛の映画の後、神の大虐殺、そしてその後に悪魔の小さな暴れぷりを堪能という順番でした。ミュージカル映画「ANNIE/アニー」を観賞。

物語

 ニューヨーク。孤児のアニーは同様の環境の4人とともにハニガンのもとで暮らしている。ハニガンはかつては売れっ子の歌手だったが今は落ちぶれ、孤児の世話人となることでもらえる手当だけが目当て。アニーは両親が遺した手紙を信じてアニーを置いていったレストランの前で待つのが慣習となっている。ある時、車に轢かれそうになるところをスタックスに助けられる。彼は大手携帯電話会社の社長で今は市長選に打って出ようとしているがいまいち支持率は伸びない。そんな時アニーを助ける動画がネットに出たことで注目を浴びる。スタックスは選挙対策の責任者ガイのアイデアでアニーの人気を利用することを決めアニーの里親になることを申し出る。アニーも大人の事情を理解した上で同居に同意。潔癖症のスタックスと自由気ままなアニーの生活が始まった。

 ミュージカル好きを公言しておきながらなんですが(僕の興味は主にブロードウェイに代表される舞台でなく映画作品に向いていることもあって)この「アニー」についてはもちろん名前ぐらいは知っていたけれど、具体的な内容は知らないまま観賞。日本でもずっと舞台公演はされてて、乃木坂46能條愛未さんがものまねしてたっけ?「アニーよ銃をとれ」は関係ないの?という程度。ただ、知らずに観たら観たで「これはオリジナルとは大分違うんだろうなあ」というのは分かる。というか元は1977年が初演の1933年を舞台にした物語であって(更に元になったのは1924年の新聞連載小説だとか)、当然アニーとスタックス(元はウォーバックス)が黒人である、という設定や、スタックスが携帯電話会社の社長でハイテクハウスに住んでいる、という設定などは映画用の現代のNYを舞台にするにあたって改変したところなのだろう。この改変がオリジナルを知っている人には受け付けなかったのか、ラジー賞を獲ったりしたみたいですね(最低リメイク・パクリ・続編賞)。ただ僕は初見なのでそういう思い入れは無く最初から現代の物語として見れたのでそれほど悪くはなかったと思う。現代を舞台に黒人を主人公に、というのは製作にウィル・スミスとジェイダ・ピンケット=スミス夫妻やジェイ・Zが名を連ねているあたり最初からこの改変有りきの企画だったのかな、と思う。監督は「ステイ・フレンズ」「小悪魔はなぜモテる?!」のウィル・グラックであり、その辺で僕はもっと早く観ておかなければならない作品だった!

 設定はかなり大胆に変更されていても大筋では変わらず、何より使用楽曲は舞台の「アニー」のものを使用しているのでそのへんも人によってはダメなのかな。ただ予告編でしつこく使用されて、平井堅(エンドクレジットで流れます)やE-girlsを構成するユニットFlowerがカバーして歌っている(こちらは日本語吹替版でのみ流れるみたい)「Tomorrow」こそ作品のテーマ曲として何度も聴かせられたのでちょっと食傷気味だったけれど、それ以外の楽曲がとても新鮮で良かったです。特にアニーが役所の人とスタックスのハイテクハウスを訪れてビックリしながら歌うところとか。

 最初に白人で赤毛でそばかすの少女が出てきて彼女も「アニー」と呼ばれたあと主人公のアニーが「アニー・B」と呼ばれて登場するがこの最初のアニーがいわゆる舞台などでお馴染みのオリジナルのアニーなのだろう。主人公アニーの「アニー・B」のBはアニーの苗字のベネットのBでもあるが黒人であることを表すBlackのBなのかも。演じるのはクワベンジャネ・ウォレス。主人公だから当然だけれどいつ何時も希望を忘れない少女として応援したくなる。彼女は劇中何度も利発なところを見せるが、一方で物語が進むと実は文盲であったことが判明する。これは個人的な問題というより、孤児として大人に顧みられることがなかった結果文字を学ぶ機会を逸したというところだろう。日本は元々江戸時代から比較的高い識字率を誇り、現在も99%の識字率であるがそれでも100%とはいかない。これは日本語の表記方法の難しさにもよる(日本語は喋ること自体はそれほど難しくないと思う)がネグレクトなど育児の放棄による教育の機会が失われることにもよるのだろう。アメリカでも一定数居るがそのほとんどは似たような事情だと思う。劇中でもアニーら孤児たちの後見人となっているハニガンは孤児たちに気をつける様子はなく、本当にただ屋根を貸しているだけ、という感じである。
 スタックスを演じたのは「ジャンゴ」で黒人奴隷を、「ホワイトハウス・ダウン」では一転して合衆国大統領を、そして「アメイジングスパイダーマン2」では今回同様NYの電気男エレクトロを演じたジェイミー・フォックス。今回は同じNYの電気通信男だけれど社長なので当然かなり違う。潔癖症で市長選のためにアニーを利用するつもりがやがて逆にアニーに影響される。
 メインとなるのはアニーとスタックスだけれど、監督のウィル・グラックらしさという面では脇役のローズ・バーン演じるスタックスの秘書グレイスとスタックスの関係や、キャメロン・ディアスのハニガンとデヴィッド・ザヤスのルーの関係なんかが少ないながら見どころかと。あるいはハニガンとガイが陰謀を企むシーンとか。ハニガン演じるキャメロン・ディアスはかつては売れっ子の歌手だったという設定などから「マスク」で世に登場した時を思い出します。正直あの頃は数本出てすぐ消える人、と思っていたのだよゴメンナサイ。ハニガンは自分が落ちぶれているせいで子供の世話をしてその手当で生きていることに負い目を感じ、虐待とまではいかずとも無関心で居るような人物だが、近所の雑貨屋の店主(アニーたちとも仲が良い)ルーだけがそんな彼女の隠れた優しさを知っている。ハニガンはガイと陰謀を企むもそういう性根の奥底に見える人間性が描写されているため悪人には見えないし、結構あくどいことをしているのに最後許せてしまう。ただ予告編などでもキャメロンがメインの扱いだったけれど、個人的にはローズ・バーンが良かったです。あと運転手とかやってたナッシュ役の人!めっちゃ格好良かった!
 ガイを演じたボビー・カナヴェイルは髪ふさふさのスタンリー・トゥッチにしか見えなかった!

「ANNIE/アニー」オリジナル・サウンドトラック

「ANNIE/アニー」オリジナル・サウンドトラック

アニーDVD BOOK (宝島社DVD BOOKシリーズ)

アニーDVD BOOK (宝島社DVD BOOKシリーズ)

 あとクライマックスのカーチェイスとか結構手に汗握る感じでよかった。アニーの偽両親以外決定的な悪役がいないのも良かったかも(ガイも極悪人というわけではない模様)。本当の両親の行方が投げっぱなしだったけど。

関連記事

監督の前作・前前作。どっちも超おすすめです。
 あれなんだよね、孤児と市長選というそれだけで僕は「バットマン リターンズ」を思い出してしまうのであった。

アニーよ銃をとれ [DVD]

アニーよ銃をとれ [DVD]