公共の敵No.1 パブリック・エネミーズ
ジョニー・デップ、クリスチャン・ベール主演の「パブリック・エネミーズ」を鑑賞。
ん?主演はデップだけだって。しかし、個人的な趣向により今後クリスチャン・ベールの出演作は例えほんの脇役だったとしても僕の中では主演である。同様な役者はほかにカート・ラッセルがいる。
この作品は実在の銀行強盗、ジョン・デリンジャーの死を映画化したもので、監督は犯罪と漢を描かせたら右に出るものはいないマイケル・マン。
物語は1933年に始まる。デップ演じるジョン・デリンジャーが仲間を脱獄させるところから始まる。仲間はファラミア(デヴィッド・ウェンハム)にセシル・B・ディメンテッド(スティーヴン・ドーフ)など。銀行強盗を繰り返し、しかもその派手だが一般市民には害をなさない振る舞いから庶民のヒーローとなっていく。同じ時代の犯罪者では「俺たちに明日は無い」のボニー&クライド、「G−メン」の語源(デリンジャー初の説もある)マシンガン・ケリーなどがいる*1。
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対するはDr.マンハッタンことJ・エドガー・フーバー(ビリー・クラダップ)が指揮するFBI。我らがヒーロー、ダークナイトでドラゴンスレイヤーで奇術師でガンカタの使い手で人類の救世主クリスチャン・ベールを筆頭として「アバター」のパンドラ侵略軍指揮官(スティーヴン・ラング)やドン・フライ(!)。
アメリカは日本人が思ってる以上に各州の独立性が高く、州を越えた犯罪は扱いが難しい。そこで州を越えて捜査できる組織として連邦捜査局、FBIが設立された。フーバーは1924年にわずか30歳で長官に就任*3。その後この組織を政府でも屈指の機関として育てていくことになる。劇中でフーバーの長官としての資質が問われるシーンがあるけどフーバーはFBIを警察組織というよりCIAのような秘密諜報機関としたかったらしい。デリンジャーの事件はFBIを認知度の高い組織として知らしめる絶好の機会だった。
デリンジャーたち銀行強盗は危険度に比べ割に合わない商売だ。マフィアたちはノミ屋家業で一回の強盗に相当する金を一日で稼ぐ。州を越えて派手に暴れるデリンジャーたちはマフィアにとっても邪魔な存在になっていく。隠れ家などマフィアの後ろ盾を失うデリンジャーたち。
そういえばすっかり書き忘れてたけど、予告編などではデリンジャーとビリー(マリオン・コティヤール)の愛をメインに描かれてたけど意外と劇中の描写はそんなに多くない。2度目に会ったときにいきなり
「俺の女は勝手にいなくなるな」
などと言うDQN男には僕なら絶対付いていきたくないけど、それで付き合うこの女ももともとそういう資質があったんだろうな。実際のところデリンジャーにはほかにも情婦はいたと思われるし、実際殺される間際にも売春婦のとこに匿われてた。ここで匿ってた売春婦の元締めの女性も「赤いドレスの女」として破滅に導くものの代名詞になっている。
さて、ベールが出てるということもあるけど僕はつい「ダークナイト」と比べてしまう。メインとなる舞台がシカゴということもあるしね*4。デップも次のバットマンに出演の噂もあるし、予行演習としてみると面白い。実際ベール演じるパーヴィスはリアルなヒーローといえるし、デップもリアルなヴィランだ。
ところで原題の「PUBLIC ENEMIES」は劇中でフーバーの発言が「社会の敵」と訳される。英語では同じだけど日本語で訳すとデリンジャーは確かに「公共=お上」の敵ではあるが必ずしも「社会=庶民」の敵ではなくむしろヒーローなんである。
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さて、次はやはりジョニー・デップとその「ダークナイト」のもう一方の雄、ヒース・レジャーが競演する*5テリー・ギリアムの「Dr.パルナサスの鏡」を見る予定。
追記。
劇中で再三「バイバイ、ブラックバードBye Bye Blackbird」という曲が効果的に使われていた。確かこの曲はピーター・ジャクソン版の「キング・コング」(やはり1933年が舞台)でも使われてたはず。日本で言う「リンゴの唄」が「戦後」を表すみたいに流れると「あっ、1933年だ」って分かる記号的な曲なのかも。