人類の歴史は戦争の歴史! 戦争映画ベストテン!(小覇王・選)
子供の頃から現在まで簡単な怪我をすると思わず「衛生兵!衛生兵!」と叫んでしまう習慣を持つ小覇王です!さて、年末も近くなってきたので、恒例のワッシュさん(id:washburn1975)のベストテン企画ですよ。今年は戦争映画とのこと。一口に戦争映画と言ってもいろいろあるなあ、と思ったんですが、なんだか今年は思い浮かぶ作品が少なくて苦慮すると言う感じになりました。別にフィクションとしての戦争題材の作品は嫌いとかではないんですけど。
ランキングや作品選択の公式ルール(そんなお硬いものじゃありませんが)は上記リンク先のワッシュさんのサイトを見てもらうとして、悩んだのは主に時代設定ですね。一応SFなんかもOKということで未来を舞台にした架空の戦争を題材にした作品は全然問題なしです。ただ「戦争映画」と言った時に多くの人が思い浮かべる戦争は南北戦争、普仏戦争(同時期の我が国の戦争なら戊辰戦争)辺りから始まって第二次世界大戦、ベトナム戦争当たりの近現代戦だと思うんですよね。紀元前のペルシャ戦争や、三国志の赤壁の戦いを題材にした作品を思い浮かべる人はそんなにいないのでは?と思ったりします。史劇との境が曖昧というか。とはいえ広く戦争ということでその辺からもピックアップしました。
後は戦争というと人類の愚行なわけで、必ずしも見て楽しい!だけでは終わらないんですが、でもまずは楽しい作品を選んだつもりです。その上で各作品、少しは考えるところがあればいいかな、と。
それではまずはランキングから。
- 大脱走(1963年 ジョン・スタージェス監督 アメリカ 第二次世界大戦)
- フルメタル・ジャケット(1987年 スタンリー・キューブリック監督 アメリカ ベトナム戦争)
- 地獄の黙示録(1979年 フランシス・フォード・コッポラ監督 アメリカ ベトナム戦争)
- 300<スリーハンドレッド>(2007年 ザック・スナイダー監督 アメリカ ペルシア戦争)
- ブラックホーク・ダウン(2001年 リドリー・スコット監督 アメリカ ソマリア内戦)
- 機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編(1982年 富野喜幸監督 日本 一年戦争)
- 西部戦線異状なし(1930年 ルイス・マイルストン監督 アメリカ 第一次世界大戦)
- 戦火の馬(2011年 スティーブン・スピルバーグ監督 アメリカ 第一次世界大戦)
- スターシップ・トゥルーパーズ(1997年 ポール・バーホーベン監督 アメリカ アラクニド・バグズとの紛争*1)
- レッド・クリフ(2008年 ジョン・ウー監督 中・香港・日・韓・台湾 赤壁の戦い)
一位は圧倒的大差でダントツなんですが、後はむりくり順位付けましたが、実際のところそれほど差はありません。邦画はアニメが一本で、意外にも第二次世界大戦ものが一本だけ、と言う感じ。古代から2本、未来が2本。ほとんどがアメリカ映画ですが最後は東アジア連合とでもいった感じに。では各作品の紹介を簡単に。
大脱走
いきなり戦闘描写が殆ど無く、しかも唯一の第二次世界大戦を舞台にした作品。でもやっぱり「大脱走」は外せないのですよ。オールスターキャストによるドイツの捕虜収容所からの脱走劇。実際にあった出来事を元に上手くアレンジ(独立記念日の出来事は他の収容所でのエピソード)を加えて痛快娯楽作に仕上がっています。最後に明らかになる脱走した捕虜たちの結末は史実通りなのですが、暗くなること無く希望を残した最後は見事だと思います。
詳しくは以前書いた記事で。
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フルメタル・ジャケット
リー・アーメイ演じるハートマン軍曹のもと行われる新兵の訓練が鮮烈なキューブリック作品。このシーンは「人は殺しちゃ駄目」っていう社会でのルールが染み付いた新兵を一旦バラバラにして、戦場で人を殺せるようにするっていうとても残酷な儀式なんですよね。そして戦争から帰ってきてもそれが染み付いてると「ランボー」みたいになってしまう。マシンガンのようなトークも裏を返せば残酷。
ちなみに「ほほえみデブ」ことヴィンセント・ドノフリオ(MCU「デアデビル」ではキングピン!)はいつまで経ってもこの「ほほえみデブ」の印象が忘れられなく、他の作品で見かけても(それが悪役ならなおさら)「あのほほえみデブがこんなに立派に(悪く)なって……」と感慨深くなってしまいます。
前半が好きで前半だけ見て終わる、ということも多いんですが後半のベトナムでの狙撃戦も見どころです。
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地獄の黙示録
続いてもベトナム戦争。原作ジョゼフ・コンラッドの「闇の奥」はアフリカ、コンゴが舞台だが、ベトナムを舞台に翻案。こちらも「フルメタル・ジャケット」同様前半のキルゴア大佐のシーンが強烈で、僕の場合後半は殆ど見ないんだけど、それでもその前半だけでベストテンのこの位置につけるぐらい印象強いです。
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300<スリーハンドレッド>
一気に時代はさかのぼり、紀元前のギリシア、ペルシア戦争の最大の見せ場「テルモピュライの戦い」を描いた筋肉絵巻。敵も味方も裸、裸。裸・裸・裸・LOVEソング!原作はフランク・ミラー先生のグラフィック・ノベルで絵作りもほぼ忠実に再現。まあスパルタの奴らが「民主主義のために!」とかいってもなんだかなあ、と言う感じだし、誇張も多い(というかほぼ全般的に誇張されている)し、クセルクセスはじめとするペルシア軍の描写がアレでイラク(当時のペルシア領域)から非難されたり問題の多い作品ではあるんだけど、面白いことは確かなのです。戦争映画としてみた場合、続編である「サラミスの海戦」を描いた「帝国の進撃」の方がよく出来ているような気もしますが、面白いのは断然こちら。
過去の感想記事はこちら(続編の方についての記事ですが1作目についても触れています)。
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ブラックホーク・ダウン
ソマリア内戦に派遣された米軍の悲劇を描いた作品。出動してすぐに衛生兵のお世話になるほど混乱した事態に。「プライベート・ライアン」での「とにかく観客をいきなり銃弾が飛び交う戦場に放り込む」という作劇が生きた映画。不謹慎な見方だけどハッパ決めたソマリア民兵が多少の銃弾を受けたぐらいでは平気の平左で向かってくるさまはちょっとしたゾンビ映画のよう。
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機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編
もう何度目かのベストテン入り。宇宙世紀ガンダムと銀河英雄伝説、そしてスタートレックの3作品は架空の未来史のなかでもほぼ現実の歴史に近いくらいの感じで自分の血肉となっているのだけれど、やはり完成度ではこちらかと。
人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになってすでに半世紀。宇宙世紀0079、地球から最も遠い月の裏側にある宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り地球連邦に独立戦争を挑んできた。総人口の半数を死に至らしめ、人々は自らの行為に恐怖した…
後に一年戦争と呼称される戦争の後半部分を描いた更にその最終幕。主人公こそスーパーメカに乗る超人(便宜上の言い方)だけれど、それだけでなくきちんと一兵卒の悲劇も描かれている。多分今後も何かあるたびランキングするであろう一作。
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西部戦線異状なし
第一次世界大戦をドイツ兵士の視点で描いた異色作(というか第一次世界大戦物の先駆けであり決定版)。最初はちょっとした英雄になれるという程度の軽い気分で志願した若者が帰ってくると戦場の悲惨さを知らない扇動屋がまだ若者を煽っていた、という今でも十分に通じる視点。
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戦火の馬
その第一次世界大戦を舞台にした作品をも一作。当時のヨーロッパは半世紀近く戦争がない仮初めの平和状態で、戦争開始当初は比較的牧歌的な雰囲気で年内には終わると思われていたので、戦争が終わる頃には、ちょうどクリスマスで帰ってきたら英雄扱いされて女の子にモテモテみたいな気分で若者たちがこぞって兵役に志願したが、この戦争は世界中を巻き込み何年も続くのであった。「戦火の馬」は初期のその牧歌的な騎馬戦闘に始まり、悲惨な塹壕戦、そして戦車や毒ガス兵器といった新兵器の登場といった第一次世界大戦の流れを徴用された馬の立場から描いています。イギリス、フランス、ドイツと割と全立場を公平に描いていると思います。
過去の感想記事はこちら。
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他第一次世界大戦の悲劇を描いた作品だと「ジョニーは戦場へ行った」もオススメ。
スターシップ・トゥルーパーズ
こちらももう何度もランクインしてますね。宇宙の昆虫型生物アラクニド・バグズとの戦争を描いた未来史。意思疎通の取れない相手との戦争という地球だけを舞台にしていたのではありえない作品(「ブラックホーク・ダウン」の民兵とか割りとそれに近い視点だったとは思うのだが)。未来だけど戦場では歩兵が叫んで突撃!という人命軽視な作戦が基本戦術。その全体主義で軍国主義的な未来社会も見どころ。最もその描写は割りとぬるく、アメリカ人の考えるファシズム社会ってこんなもんか、って感じではあるのですが。軍国主義賛美な部分は原作のロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」では割りとガチな感じで論争になったりしたのですが、映画の方は「ロボコップ」のスタッフが手がけているだけあって皮肉を重視したものに(でも誤解する奴がいるんだよなあ)。
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レッド・クリフ(前後編の二部作だけど、あえてランクインさせるが一本だけならPart2の方で)
我が国でも古くから需要されてきた中国の後漢末期〜三国時代を舞台にした「三国志(三国演義)」の中でもクライマックス、赤壁の戦いを舞台にした一大歴史絵巻。男(漢)を描かせたら天下一、ジョン・ウーが手がけていて、戦争の理由に曹操の小喬への横恋慕を持ってきてるのはあれだし、黄蓋と周瑜の苦肉の策が無かったり注文つけたいところも多いのだけど、やはり周瑜と呉をきちんと主人公として描いた作品は稀、ということで(当方、小覇王というHNからわかる通り三国志では呉推しです)それだけで賞賛に値する作品だったりするのです。
過去の感想記事はこちら(共に旧ブログです)。
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鳩も出ますよ!
第二次世界大戦を舞台にした物が一作だけで、太平洋戦争、特に日本映画がないのは自分的には意外でもなんでもなく、あんまり邦画の戦争モノは好きじゃないです。前回感想を書いた「この世界の片隅に」は面白かったけれど、更新はされないかなあ。後は見たつもりになってるて実は見てない映画もこのジャンルは結構多かったことが今回改めて選んでみて反省。つまり過去の作品でも見てない有名作品はいくらでもあるわけで、今後新作に加えてそういう過去の作品も見て改めて入るかもしれませんね。
前回のベストテンはこちら(それ以前はこの記事のリンクからさかのぼっていただけると助かります)。
*1:正式名不詳