The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

トリックスター多くして船山昇る? スーサイド・スクワッド

 例によってお久しぶりでございました。さて、今年のアメコミ映画を締めるのはDCエクステンデッドユニバース(DCEU)の「スーサイド・スクワッド」となります。とはいえこちらももうほとんど公開は終わっているのかな。いっそ「シビルウォー」みたいにソフト発売まで書くのを待とうかな?とかも思ったりしたけれど、まだ記憶が残っているうちに感想を書こうと思います。世間での評価は映画そのものはいまいちだけどキャラ、特にハーレイ・クインは最高!という感じだったのかな?DCEUとしては第3弾。アメコミ映画としてもちょっと特殊なヴィラン大集合の映画「スーサイド・スクワッド」DEATH!

物語

 スーパーマンの死によって緊張感を増す世界。特殊な力を持つメタヒューマンの存在も多数確認されるようになってきた。スーパーマンは味方だったが、スーパーマンと同じような力を持つものが敵だったら?米国の秘密機関ARGUSの高官アマンダ・ウォーラーは塩漬けになっていた計画「タスクフォースX」を進めようとする。それは一筋縄では行かない犯罪者たちによる特殊部隊。計画の要となるのは古代の魔女〜現在は発見した考古学者ジューン・ムーン博士の中にいる〜エンチャントレスの存在。アマンダは彼女の心臓を手にすることでエンチャントレスを操ることに成功。エンチャントレスの監視・警護役リック・フラッグ(ムーン博士と恋に落ちたがこれもアマンダの計算のうちだ)を指揮官に選ばれたのは一癖も二癖もある犯罪者たち。しかしエンチャントレスはアマンだとフラッグを欺いて弟を復活させ、ミッドウェイシティ駅を占拠する。
 要人の救出を目的として集められた犯罪者達によるタスクフォースX。狙撃の達人フロイド・ロートン=デッドショット、元精神科医で犯罪王子ジョーカーの情婦ハーリーん・クインゼル=ハーレイ・クイン、ワニのような肌と力をもつミュータントウェイロン・ジョーンズ=キラークロック、オーストラリアからやって来たブーメラン強盗ディガー・ハークネ=キャプテン・ブーメラン、人体発火ギャングチャト・サンタナディアブロ、投縄の達人クリストファー・ワイス=スリップノット。そして彼らが裏切った時の処刑人として夫の魂が込められた刀をふるうカタナがいた。各々それぞれの条件を付け参加。ミッドウェイシティに向かう。そこで出てきたのはもはや人とも言えない敵だった!決死部隊(スーサイド・スクワッド)の運命や如何に!そしてハーレイを取り戻すべくジョーカーも…

 DCEU第三弾はかなり毛色の変わった物となった。主役級の二人デッドショットとハーレイクインにウィル・スミスとマーゴット・ロビーの「フォーカス」のコンビを迎え、その他にも豪華な人物を迎えたピカレスクロマンとなった。やっぱり「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生(BVS)」で唐突にバットマンが登場した印象は拭えず、バットマンの主演映画を間に作ったほうが良かったんじゃないかな、とは思うのだけど、DCEUの闇鍋感は今回も健在。冒頭でくどいようにキャラクター紹介されてるにも関わらず、なんか必要な描写入れ忘れてないか?ッて思うような展開も多い。
 冒頭にアマンダ・ウォーラーが他の高官に説明する形で各キャラクターの紹介映像が順繰りに出てくる。デッドショットのプロフェッショナルな仕事ぶり、娘を溺愛しつつバットマンに捕まる顛末。ハーレイがどのようにしてジョーカーに魅入られてハーレイクインとなったか。そしてバットマンに捕まる顛末。ブーメラン野郎がフラッシュに捕まる顛末エトセトラエトセトラ…
 僕なんかは「うへえ。これ全員分やんのかよ」とか思ったのだが評価は様々で「この紹介シーンは最高だったけど本編は微妙」と言う意見も多いみたいだ。僕は逆にこの紹介映像はたるかったけど、本編始まったらそれなりに見れたと思ったのだが。
 監督はデヴィッド・エアーで僕はこの前にシュワルツェネッガー主演のやはりちょっとイカれた麻薬取締部隊を描いた「サボタージュ」を劇場で観ている。あの時は「シュワ主演で『ダークナイト・リターンズ』を実写映画化すればいいんじゃないかな?」とか書いたのだが、程なくDC作品を手がけることとなった。もちろんバットマンベン・アフレック)も出てきます。
 この作品はマーベルの方の「デッドプール」とよく比較されるが、確かに共にアンチ・ヒーロー映画ともいえる代物だが、あちらはR指定だったのに対してこちらは全年齢の模様。そのせいか、悪党を主人公にしてる割には描写がぬるい、というような意見も見られた。日本では公開が遅れたが、本国ではほぼ同時期公開。先に「デッドプール」の成功を受けて制作したのだったら、こっちもR指定上等でもっと表現もキャラの設定も過激になっていたかもしれない。

 主役となる悪党たちは長い歴史を持つDCユニバースのヴィランたちで、ヴィランと言っても世界征服を狙うとかそういうのよりは犯罪者がメインなので、中心となっているのはバットマンを宿敵とするキャラクターたち。後はアーカム精神病院行きよりはもうちょっとまともなタイプか(彼らが収容されているのはベル・レヴという刑務所)。主人公格はデッドショット。バットマンヴィランの一人で百発百中の腕を誇る殺し屋。原作では白人だが、今回は黒人のウィル・スミス。オレ様であるウィル・スミスが演じるということで悪党としては骨抜きにされているんじゃないかと不安視されていた。それは半分ぐらい的中と言う感じか。今回は敵が超常現象的な存在になっているので作戦自体でそれほど悪党と言う感じはしない。ただ娘を溺愛しつつ、別れた妻のことはロクデモナイ奴ぐらいに思ってるのはなんか家族だけは偏愛しつつ、他者には思いっきり冷酷になれる悪人という感じはする。バットマンは娘と一緒にいるデッドショットを襲撃して捕らえる。このシーンでも「バットマンならそんな酷いこと(娘の前で父を捕まえる)しないのでは?」という意見も見たが、この娘(ラストにも出てくる)の年齢からして、それほど昔の出来事ではなく、スーパーマン登場によってより自警行為が過激化したバットマンのしわざと考えればそれほど矛盾はしないのでは?と思う。

 後は個人的にお気に入りのキャラクターはキャプテン・ブーメラン。コミックスの方では主に「フラッシュ」の宿敵の一人でブーメランの達人だが常人。僕は詳しく知らないがオーストラリアからやってきた犯罪者という設定はそのまま。演じているのがなぜかハリウッドで抜擢され続けている印象のあるジェイ・コートニーで、他には「ターミネーター:新起動」ではカイル・リースを演じている。悪い役者とは思わないが、これといって華があるわけでもないのでアクション大作で主人公のヒーローを演じるのは結構見てるほうが辛かったり。ただ今回のブーメラン野郎は最低すぎて最高!今まで見た中でもベスト・オブ・ジェイ・コートニー志はなく、すきあらば酒を飲み、自分でヤる前にまず他人に試させ(スリップノットあえなく死亡!)、コトあればまっさきに逃げ出し、手当たり次第に女を口説き、そしてユニコーンののぬいぐるみを大切に肌身離さず持っている。ハーレイやデッドショットがある程度主人公としての制約を背負っているのに対し全然大物ではないけれどそのチンピラぶりがいっそ清々しいです。あとフラッシュが出てくるんだけど、正直日本の特撮ヒーローみたいなデザインは90年代のTVドラマ版や今も展開してるTVの「FLASH/フラッシュ」に比べるとダサい……まあ来たる単独主演のタイトル作での見せ方とかで今後いくらでも印象は変わると思うけれど。
 今年のハロウィンでもおそらく仮装人気が高いであろうハーレイクインは1992年のブルース・ティムによるアニメ「バットマン」のオリジナルキャラクター。ヴィランとしては最も古いキャラであるジョーカーの情婦というありそうでなかったキャラクター。アニメ「バットマン」を象徴するキャラクターでその人気から原作コミックのほうにもすぐに登場することとなった。
 今回の映画ではもうキャストと彼らが扮した姿を見た時点で個人的には及第点な作品だったのだが、その中でも一番はやはりハーレイということになるのだろう。ただ僕にとってはやはりハーレイはブルース・ティムの描くものこそベスト。劇中でもちょっと出てくるが全身タイツのピエロ姿のハーレイがいいんですよ。アメコミの場合多くの作家によって描き綴られていくのが普通なので、その時代その人それぞれのバットマンやジョーカーがあっていいのだが、ハーレイだけはブルース・ティムの絵柄じゃないと受け入れづらいのです。
 映画ではクライマックス近くエンチャントレスによって自身が理想とする世界を幻覚として見せられてハーレイの場合薬品槽に落ちることなく素顔のハーレイとジョーカーが幸せな家庭を築く、というものなのだが、これはちょっと解せませんでしたね。多分この幻覚はコミックスの「MAD LOVE」(アニメの人気を受けてブルース・ティムポール・ディニがコミックスとして書き下ろした作品で後にアニメ化された)での似たようなシーンが参考にされてるのかな?と思うんだけれど、こっちはきちんと漂白されたジョーカーと悪党として夫婦生活を営んでいる妄想なのですよ!なのでそんな健全な家庭を理想とするハーレイはおかしい!

 今回は「バットマン」シリーズだけでなくアメコミを代表するヴィランである犯罪界の道化師ジョーカーが出てくる。実写作品では「ダークナイト」のヒース・レジャーの強烈なジョーカーの後を受けてなので演じたジャレット・レトも大変だったと思うのだけれど、ヒースやジャック・ニコルソンのジョーカーとは別に新たなジョーカー像を描いていたと思う。今回のジョーカーに関しては出番が少ないとか邪悪さが足りないとか文句も出ているけれど、出番がそんなに多くないのは予告編見れば予想はつくだろうし、これまでの実写映画での一本限りの出演となる悪党ジョーカーと比べると今後もちょこちょこ他のDCEU作品に顔を出しそうなジョーカーはどちらかと言えばコミックスやアニメのジョーカーに近いのではないのかと思う。あのくらいの身軽さ(設定的にもアクションとしても)でむしろ良かった。「ダークナイトトリロジー」でのスケアクロウみたいなメインを張るというよりはいろんな作品で気軽に悪を働く感じ。ジョーカーはこの30年くらいでちょっと邪悪な存在になりすぎた。その邪悪さと存在感の大きさと引き換えにかつて持っていた自由さを失ったような気もする。ジョーカーがハーレイにあんなに執着するのはおかしいのではないか?と言う意見も見たが、個人的にジョーカーは自分が興味をもつうちは自ら奪還しにも行くし飽きればあっさり撃ち殺すタイプだと思う。
 で、今回は紹介編でもあるのでジョーカーの情婦という側面がクローズアップされているが、個人的にハーレイクインの魅力が発揮されているのはジョーカーと居るよりもポイズンアイビーと一緒に居る時。ハーレイはアイビーの前では幼児性を全開にするし、アイビーもそんなハーレイの前ではいつもの冷たい側面が緩和して丸くなる。

 ポイズンアイビーは昔からいるキャラクターだが、ハーレイの他にもブルース・ティムの作りだした女性キャラクターは全部魅力的で「スーパーマン」の方のライブワイヤーやロキシー・ロケットもそれぞれ魅力的。そしてすでにDCEUでは死んでしまったマーシー・グレイヴスも…(ザック許すまじ!)

 アマンダ・ウォーラーはある意味でこの映画の一番の悪人というようなキャラクターでそのふてぶてしさが憎々しい。このアマンダ・ウォーラーは個人的にバットマンと並ぶDCユニバース最強の常人と言うイメージもあって、あくまで個人事業として犯罪者と戦っているバットマンブルース・ウェインと比べると国を動かして具体的に大作に取り組んでいる女傑。映画ではいろいろ説明がハブられている部分もあるのだが、この人は夫を犯罪で亡くした後5人の子供を育てながら自分も大学に行って政府の高官まで上り詰めた人である。彼女の鉄の意志はそのあだ名ザ・ウォール(壁)」からも明らかであろう。そんな彼女なので口封じにスタッフを自ら射殺するようなシーンが必要だったかはともかく、最後は彼女を殺して大団円とするのはちょっと違うだろうと思うので彼女は厳然としてそこに存在するラストで良かったと思う。

 この映画は予告編が最高によく出来ているので、その期待のまま観るとちょっとテンポが悪い、と感じてしまうかもしれない。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」はじめとした楽曲の使い方はかなりベタなんだけれど、多分自分がセレクションしても似たような感じになりそうな気はする。 自分的にはここまでで作られたDCEU作品の中では一番好きです。MCUにはない混沌さは健在。こじんまりとした話かと思ったら意外と無駄に壮大だったのも悪くない。待っている「ジャスティス・リーグ」への橋渡しとしても良かったと思います。ただジョーカーのロビン殺しとか「BVS」時点で臭わせる必要はなかったよ。
 今後は「ワンダーウーマン」「フラッシュ」「アクアマン」が待機。「ワンダーウーマン」は第一次大戦をメイン舞台に「BVS」の前日譚的な作りになる。MCUで言うところの「キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャー」のような立ち位置になるんですかね。後は本作のラストでも「ジャスティス・リーグ」への布石が。個人的には「ワンダーウーマン」がDCEUのなかでは珍しいくらい「きちんとした」作品になりそうな気がします。 さて、批判の一つとして、なんでこの事態においてバットマンたちスーパーヒーローが出張ってこないの?という意見も見たのだが、(それ言ったらヴィランによるチームって設定が成り立たないだろってのは置いといて)簡単にいえば舞台となるミッドウェイシティはゴッサムでもメトロポリスでもセントラルシティもないからだよ!*1

*1:ミッドウェイシティはホークマンホークガールのホームタウン。DCEUにこの二人が出てくるかは不明