The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

怪物(人間含む)たちの饗宴 モンスター・ホテル

 クロスオーバーが盛んなこのご時世だけれど、映画という分野でいち早いクロスオーバーはドラキュラやフランケンシュタインの怪物が一緒に登場する作品群ではなかろうか。ユニバーサル映画ではベラ・ルゴシのドラキュラ、ボリス・カーロフフランケンシュタインロン・チェイニーJr.の狼男などが一緒に活躍する映画が撮られてきた。近年はヒュー・ジャックマンヘルシングモンスターハンターとなる「ヴァン・ヘルシング」などが作られている。ドラキュラやフランケンシュタインの怪物などが共演する3DCG映画「モンスター・ホテル」を観た。

物語

 1895年、トランシルヴァニア。妻を無くしたドラキュラは一人娘メイヴィスを守るため、モンスターたちの憩いの場とするべく、人間が絶対に来ない理想のホテルを作ることを決意。作られたホテルはモンスターたちのヴァカンスの場として隆盛を迎える。
 現代。毎年ヴァカンスの季節とメイヴィスの誕生日がやってきた。118歳になったメイヴィスは今年こそ外の世界に出て行こうと決意する。心良く許したドラキュラ。しかしメイヴィスは近くの村で人間に襲われかけ舞い戻ってしまう。実は近くの村はドラキュラが偽装したものであり、メイヴィスに人間の恐ろしさを伝えるためにしくんだものだったのだ。二度と外へは行かないと誓うメイヴィス。
 そんな時、ホテルに来てはならないはずの人間の青年ジョニーが迷い込む。もしも人間がいるとモンスターたちにバレてしまったらホテルの信用はガタ落ち。ドラキュラはなんとか彼にモンスターのメイクを施しごまかそうとする。更に困ったことにジョニーとメイヴィスは一目あった途端互いに「ビビン」と来てしまったのだ!

 原題は「Hotel Transylvania」もはやトランシルヴァニアと言えばドラキュラなんですね。僕はこの映画を映画館に展示されていたパネルで見てそれこそ「ビビン」と来たのだが、事前の宣伝が殆ど無かったように思う。極端な話日本製なのかと疑ったくらい。どうやら日米同時公開らしい。で、この映画見終わってエンドクレジットで初めて知ったのだがあのゲンディ・タルコフスキーの劇場初監督作品なのだな。タルコフスキーと言えばTVアニメシリーズ「デクスターズラボ」。日本では「パワーパフガールズ」(あちらはクレイグ・マクラッケン監督だが製作はタルコフスキーでありスタッフは共通している)の方が認知度があるかもしれないが、あの騒がしくどこか狂っている(しかし可愛らしい)「パワーパフガールズ」よりさらに狂騒的に狂気度を増したのが「デクスターズラボ」であった。

 このちんちくりんな子供が主人公のデクスター。足の長いのは姉のディ・ディ。天才少年デクスターは家の地下にある広大な研究室(ラボ)で日夜発明や研究に勤しんでいるがライバルのマンダークや体力バカの姉ディ・ディに邪魔されてしまうのだ!
 というこの作品の監督の作品と後から知ったのであるがそういえば、狂騒的な部分がよく似ている。特にジョニーのうざいぐらいのキャラはいかにもタルコフスキーっぽい。タルコフスキーは「スターウォーズ」の毎回わずか3分のTVシリーズ「クローン大戦」の監督でもありますな。他には「サムライジャック」などもタルコフスキー監督作。


 作品の中ではアメリカや日本のアニメなどのパロディが多いのも特徴で「デクスターズラボ」ではG.I.ジョーアベンジャーズのパロディキャラクターなども多く登場している。

 これはおそらくファンが作ったっと思われるアベンジャーズデクスターズラボ版フェイクポスター。グローリー少佐(キャプテンアメリカのパロディ)、バルヘーレン(ソーのパロディ)、クランク(ハルクのパロディ)などがいる。そういえば今回のフランケンシュタインはちょっとクランクっぽいかもね。
 初の劇場監督作となる「モンスターホテル」はTVシリーズほどパロディ感満載というわけではないしが(とは言え大本のネタがパロディそのものだが)こうして見ると雰囲気はタルコフスキーとしか言えない。日本のアニメネタなどにも詳しいのでもしかしたら手塚治虫の「ドン・ドラキュラ」とかが参考にされているのかなーなどと思う。まあネタ自体は今までにもありそうなものではあるが。


 今回は日本語吹き替え版の2Dで鑑賞。というか日本語吹き替え版しか公開してないみたい。パンフレットにも英語版のキャストは載っていない。英語版ではアダム・サンドラー(製作としても関わっている)がドラキュラ、セレーナ・ゴメスがメイヴィス、他にもスティーブ・ブシェミがウェイン(狼男)を演じていたりするようだ。
 日本語吹き替えでは若い二人、メイヴィスを川島海荷ちゃん、ジョニーをオリエンタルラジオの藤森慎吾が演じていて、それを山寺宏一、チョーさん、若本規夫三ツ矢雄二といったベテランが支えている感じ。しかしふたりとも上手い。特に藤森慎吾の上手さは意外な発見だった。彼のチャラ男としてのキャラや「かわうぃーね!」などのセリフも取り入れられているが、あからさまではなく特にタレント吹き替えという意識は感じない。いや厳密にいうと僕は(事前に知らなかったため)「藤森ぽいけど、単に時事ギャグとして利用してるだけで本人ではないだろう」という感じだった。
 それよりも悪ノリしてるのがベテラン陣でそれぞれがもう己のスキルをフルスルットルで発揮している。日本語吹き替え版は明らかに過剰演出気味で好き嫌いが別れるところではあるけれど、昔の海外アニメの声優がアドリブをしまくってオリジナルとぜんぜん違う風にしてしまったり、最近では「トランスフォーマービーストウォーズ」など(最近では「トランスフォーマープライム」もその傾向あり)の悪ノリ吹き替えも存在していてそれらも嫌いではないため、僕は気にならなかった。でも英語版もそんなに変わらないのではないだろうか、という気もする。
 あんまり作品自体については書いていないけれど、物語展開はよくある話とも言える。それでも畳み掛けるギャグやキャラクター造形はピクサーやドリームワークス作品とはまた一味違った魅力があります。
 この作品の前に観た(ええ観たんですよ)「白雪姫と鏡の女王」もそうだけど、ラスト唐突にマサラムービーっぽくなるのは最近の流行りなんでしょうかね。エンドクレジットの2Dアニメ(これはかなり本来のタルコフスキーの絵柄っぽい)や本編とはガラリと変わったしっとりした怪奇映画っぽいイラスト(イメージボード?)をバックに流れるエンドクレジットロールなども楽しかった。

 予告編だと声が本編と違うみたい。
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