The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

美しくってごめんね サニー 永遠の仲間たち

 普段、劇場で映画を見る時の基準というのは大画面、大音量で観る価値があるか、と言うことに重きを置いている。なので必然的にSF、アクション、ホラーそして音楽映画といった作品に偏ってしまうのだが勿論話題作だとか好きな俳優、監督の作品だったりはその限りではない。その意味で今回観た韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」は知ってる俳優・スタッフの作品ではないので必然的にスルーする予定だったのだが、これがtwitterのTLで大絶賛を受けている。それもマニア的な(一部邦画や低予算作品にありがちな)褒め方ではなく絶賛している人たちの熱量が半端ない。それで非常に気になって近場の映画館で上映終了の一週間前になって観てきたのだった。

物語

 2010年韓国ソウル。専業主婦イム・ナミは夫と高校生の娘と幸せに暮らしているがどこか物足りない。ある日母と同じ病院に入院中の高校時代の旧友ハ・チュナと再会する。チュナはガンで余命2ヶ月だという。チュナはナミに高校時代の仲間たち「サニー」の面々に会いたいと頼む。
 1986年。田舎からソウルの女子高に転校してきたナミは訛りを馬鹿にされているところをチュナに助けられ彼女の仲間たちを紹介される。姐御肌でリーダーのハ・チュナ、二重まぶたに憧れるキム・チャンミ、国語教師の娘でありながら罵り言葉を使いこなすファン・ジニ、見た目は清楚な文学少女だが武器をもたせると凶暴化するソ・クムオク、家が美容院を経営していてミスコリアを目指すおしゃれ少女リュ・ポッキ。そしてクールな美少女チョン・スジ。敵対するグループ「少女時代」の撃退に功があったナミは仲間に向かい入れられラジオ番組に投稿してグループは「サニー」と名付けられる・・・

 一言で言うとゲキはまりしました!今年はこのあとに「アメイジングスパイダーマン」「ダークナイト ライジング」「アベンジャーズ」とアメコミ映画の大作が3連続で続くので最終的にはどうなるか分からないけど、現時点では今年No.1の作品。とても大好きで愛すべき作品になった。1回目を観たその足で二回目のチケットも買ってしまった。
 とにかく出てくるキャラクター達が個性豊か。主人公達はもちろん、1986年の女子高における名もない昼の放送係(名前あった。DJキムです)から、敵対する少女時代のリーダーまでみんないとおしい。最初私服での学校でアメリカの高校と言うよりは教室や机の様子が日本と変わらないので小学校?とか思い、教室の表示が「2−3」とか出たので、ああ中学生だったのか。と修正、更に物語の中で大学進学の話が出るにいたってやっと高校生だったのか!と分かった感じだった。キャストもリーダーであるハ・チュナ役のカン・ソラ(1990年生まれ)を除くと10代前半にしか見えなかったのだがナミ役のシム・ウンギョン(1994年生まれ)以外は全員2010年時点で二十歳越え。後でパンフを読んでびっくりした。ナミはアイドリング!!!23号伊藤祐奈に似た表情の豊かな少女。ジージャンを着た姿やマンガチックに頬を赤らめる姿がカワイイ。その他には大橋のぞみがそのまま成長したようなファン・ジニ役のパク・チンジュ(1988年生まれ)や見た目は清楚ながら凶暴な文学少女ソ・クムオク役のナム・ボラ(1989年生まれ)がイチオシ。ナム・ボラは「悪魔を見た」にも出ていたそうだけどどんな役だろう?多分チェ・ミンシクに酷い目にあわせられる役なんだろうな・・・
 で、なんといっても超美少女のスジ役のミン・ヒョンリン(1986年生まれ!)である。小西真奈美似の美人だが物語のなかではタバコを吸ったりある意味一番大人っぽい。サニーの中でナミを受け入れないスジ(理由はナミの訛りがスジの義母と似てたから)がナミと一緒に屋台で酒を交わしながら「美しくってごめんね!」と(酒の勢いで)本音をぶつけあうシーンが一番のお気に入り。明らかに似合ってない口紅を付けたナミが可愛い。ミン・ヒョンリンは韓国では歌手としても活躍しているらしくとてもキュートなPVも見つけた。

 2010年においても1986年に置いても物語のきっかけになるのはハ・チュナなんだけど必ずしも物語の中心にはいない。彼女のことは殆ど語られずその死も以外なほどあっさりとした描写である。なのでラストが多少唐突ではある。でも彼女のついてはあえて描かないことで彼女がどのくらい慕われているか、というのを観客の想像力に上手く委ねている。

 この映画、物語は勿論だけど映像的にも優れた部分が多く、例えば2010年と1986年の切り替えが実に自然であからさまではない。最初の女子高の坂をぐるっと廻るカメラワークに始まり、娘を尾行するシーンで門に隠れて再び顔を出したら高校時代に戻っていたとか。この自然なつなぎと丁寧な描写が最終的に高校時代のナミを大人になったナミが慰めるという、普通では絶対ありえないシーンを違和感なく見せている。
 後はサニーのメンバーが少女時代と激突するシーンでカメラが引くに連れて「サニーと少女時代」「学生運動と機動隊」「ロッキー4の看板におけるロッキーとドラゴ」が上手く構図上の面白さにつながっている。その後のアクションシーンも含めてテンポとカット割りもうまかった。
 後は結構日本とかぶる80年代の衣装や小道具もこだわりを感じられた。
 音楽の使い方も当時のヒット曲を上手く使い時代を表現している。勿論韓国のヒット曲などは分からないがナミの恋のテーマである「ラ・ブーム」主題歌「愛のファンタジー」やグループ名の由来になる「サニー」、そしてシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム(コチラはカバー)」や「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハブ・ファン」などなど。日本でもお馴染みのヒット曲。特にオープニングとエンディングで使われる「タイム・アフター・タイム」は涙腺を刺激する。

1986年の韓国

 僕なんかだと1988年のソウル・オリンピックで韓国という国を強く意識した世代((オリンピック自体意識したのは1984年のロサンゼルスオリンピックだろう)なのだが、今では想像しづらいが1980年までの韓国は軍事独裁政権だったのだな。今の我々は現在の韓国と北朝鮮を比較してしまい、在日朝鮮人の人たちが「なんで北朝鮮籍を選んだのだろう」などと疑問を持ってしまうが50年代には「北の楽園」と「南の軍事政権」という選択肢だったのだ。民主化が始まっても大統領は軍人出身であり(86年当時は全斗煥大統領)、さらなる民主化を求める学生と政府の機動隊が衝突するなんてのが日常的な風景だったのだろう。この作品の中でも2010年のソウルと1986年を上手に対比させている。例えば当たり前のように道端にいる機動隊員たちとか、ジュノを尾行するナミのシーンで国歌が流れ、敬礼しながら尾行を続けるシーンとか。
 例えばパク・チャヌク監督「オールドボーイ」では日本の原作では10年間だった監禁期間を5年伸ばし15年にしてスタートを80年代末期にすることで「解放されたら世の中変わってた!」というのを強調している。ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」では軍事政権下の田舎警察のかなり杜撰な捜査方法が問題になってたりする。また同じポン・ジュノ監督の「グエムル-漢江の怪物-」では怪物に立ち向かう一家次男が元学生運動の闘士で現在は身を持ち崩しているなどの描写はナミの兄貴とかなりの部分で重なるだろう。
 「サニー」で最初に観たときは小学生かと思った女子高のに制服がなく私服だけというのも軍事政権下での反動らしい。
 民主化して30年。ようやくこの時代をエンタメとして消費しつつ描くことが出来るようになったのかもしれない。

 ええ、二回目も見に行ったんですけどね。もうタイトルの「サニー」が出た時点で涙が出てきたですよ。本当にtwitterでこの映画を紹介してくれた方々に感謝です!

サニー (2011) 韓国映画OST(韓国盤)

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第七章 美しくってごめんね(初回生産限定盤)(DVD付)

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