The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

うつし世はゆめ よるの夢こそまこと インセプション

 早いもので「ダークナイト」日本公開からまもなく2年*1。あの当時は頭の中が「ダークナイト」一色の生活(主に精神的に)だったがあの衝撃作を物にしたクリストファー・ノーラン監督の新作が公開された。
 まずは予告編、


 この予告編見て連想した作品。まずどうやら「夢」とか「記憶」とかがキーワードらしい。その上で、

などなど、いずれも仮想と現実、曖昧な記憶、などがテーマとなっている作品でもある、様々な過去の作品を連想するのだが、それではこの作品はオリジナルのかけらもない作品なのかというと決してそんなことはないに違いない。それはノーランに対するある意味絶対的な信頼感みたいなものである。それにノーランは過去にもこういったテーマの作品を撮って来た。
 
 と、ここまでが実際に映画を観る前に書いた部分。こっから先は実際に作品を見た後での感想となります。

物語

 浜の真砂は尽きるとも世に産業スパイの種は尽きまじ。新時代の産業スパイは人の夢に入り込み潜在意識にある「アイデア」を抜き取る。そのプロフェッショナルであるコブ(ディカプリオ)は企業家サイトー(渡辺)*2より新しい依頼を受ける。それはアイデアを抜き取るのではなく「インセプション=植え込む」ことだ。いわば人の夢を使った洗脳だがとても難しく潜在意識の層を何層にもし夢の奥の奥に植え込まなければならない。とても困難なミッションだがコブには受けなければならない理由があった。早速チームを編成しターゲット周辺を探る。ターゲットは大企業の跡取り息子ロバート・フィッシャー(マーフィー)。彼が受け継ぐべき王国を独占を防ぐため分割させるのが狙いだ。上手く彼の夢の中に入るがハプニングが相次ぎどんどん夢の夢へと入っていく・・・

 まずは実にオリジナリティあふれる脚本に乾杯。ビジュアルイメージも強力。それぞれ専門分野のプロフェッショナルであるメンバー集めから始まって夢の世界を分かりやすくビジュアル的に解説。その上でハプニング(コブ達はいわば夢世界に侵入するウィルス。それに対してホストは防衛本能を働かせて排除しようとする。また先に夢の中で死んでも目覚めるだけで害はないと説明されるが今度のミッションではそれが通用しない)やコブのトラウマなどがミッションの邪魔をする。
 
 最初、例によって「トンデモ・ジャパン」が登場するので嫌な予感がするのだがこれはあくまで夢の世界であることが分かる。またアイデアを「抜き取る」作業と違い「植え込む」作業は難しく、本人に違和感を抱かせないため

  • 深層意識のさらにその奥に入りこまなければならない
  • 植え込むアイデアは複雑なものは無理
  • 本人の意識とある程度リンクさせなければならない(例えばいきなり「私は宇宙人だ!」と思い込ませるのは難しい)

 
 病床(ミッション時に死亡)の父親と関係が上手くいっていない(と思っている)ロバートは単に父親が自分を嫌ってるから会社を受けつげないようにしている、といわれても納得しないので、関係を修復させた上で「おまえのことを思っているから会社を継がせないんだ」と持っていかなければならない。そのためにコブ達は3層に渡ってロバートの夢の中に入り込む。
 集められたメンバーはコブとその相棒アーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィットakaコブラコマンダー)の他にコブの恩師であり舅でもあるマイルズ(ケイン)の優秀な教え子でもあるアリアドネエレン・ペイジakaシャドウ・キャット)。ターゲットが現実と騙される世界を作る「設計士」。
様々な人に化けてターゲットを騙す「偽造士」イームス(トム・ハーディakaシンゾン)。
 複数の人間が一人の夢をシェアしたり、睡眠時間を調節したりする「調合士」ユスフ(ディリーブ・ラオaka「スペル」のインド人)。
 そして依頼主でありミッションの監視者である「観光客」サイトー(渡辺謙)。
 
 彼らが存外に活躍し個性あふれるので「スパイ大作戦」のようなチーム物としても見ることが出来る。大体特徴的なアクション部分はディカプリオじゃなくて主にこの仲間達が担当してるのだ(特にマトリックスタッチなアクションをするのはアーサー)。
 また舞台となる夢もそれぞれ特徴的でトンデモ・ジャパンに始まり、土砂降りの都市、ホテル、まるでシャドー・モセス島(「MGS」)のような雪原の基地要塞、そしてゴーストタウンと化したビル街、と様々な夢を見せてくれる。また奥へ行けば行くほど時間の進み具合が異なりそれがサスペンスを生み出す結果ともなっている。
 
 結局ミッションは成功しロバートの会社は分割される。実力のないロバートはサイトーにはかなわないだろう。でも(自分の夢の中とはいえ)父と和解したことで彼も救われるので被害者な感じはしない。
 後は小道具として登場する独楽(コマ)も象徴的。ラストはどうとでも取れる終わりかた。
 要所要所で現れるコブの妻モルを演じているのは「エディット・ピアフ/愛の賛歌」でピアフを演じたマリオン・コティヤールだけど劇中にはピアフの歌も流れます。
 
 前作「ダークナイト」の大ヒットと高評価の後でこれを撮れるノーランは凄いと思う。是非とも次はバットマンの3作目で見事に完結させ*3また僕らを驚嘆させて欲しい*4
 
 ところでコブという名前はノーランの過去作品「フォロウィング」に出てくる同名のキャラから取ったらしい。そのほかコブの妻モルとかアリアドネとかアーサーとか何か意味のある名前のような気がする・・・が深読みかな?
 

追記

 名前の件に付いては深読みでは無い模様。
 アリアドネギリシャ神話でクレタ島ミノタウロスの住むダイダロスの迷宮の脱出法をテセウスに教えたミノス王の娘。どっかで聞いたことあると思った。まさに設計士にふさわしい名前。
 モルはおそらく数量をあらわす単位名でそこにあるかどうか分からないぐらい小さいもの(理数は苦手なので勘弁)。現実かどうか不明な様を表しているのではないか(と思ったがよく調べたらスペルが違うや)。
 他はちょっと分からないが何か意味があるのかも。さすがにサイトーは斎藤で単に日本人によくある苗字という以上ではないだろうけど。
 

*1:左のサイドメニュー、リンクの「小覇王の徒然なるままにぶれぶれ!まとめ」から「ダークナイト」関連の過去記事に飛べます

*2:全然ヤクザじゃなかったね。悪役かどうかも怪しい

*3:まあ別に完結せずにずっとシリーズが続いてもいいんだけどグダグダになるよりは有終の美を飾ってくれた方が良い

*4:だが次の企画として「スーパーマン」の名前も挙がっているのだった…