何がマントの十字軍騎士に起きたのか? バットマン:ザ・ラスト・エピソード
というわけでバットマンである。バットマンの異名には映画のタイトルにもなった「ダークナイト(闇の騎士)」のほかに「ダークナイト・ディティクテブ(闇夜の探偵)」、そして悪役からは「ポインティ・イヤー(尖った耳)」などと呼ばれている。そして本作のタイトルを飾る言葉「ケープド・クルセイダー(マントの十字軍騎士)」もバットマンの異名である。
ところで今時十字軍と聞いて正義の軍隊とか思う人は少なくなってきたと思う。まあ、あれは野蛮なヨーロッパ人が当時の文明先進国アラブに攻め込んで三光やったってのが本当のところだからね。アメリカだとブッシュがイラク戦争を十字軍に例えて不評を買ったりしていたが日本軍がアジアで良い事をした、とか言ってるのと同じ感覚なんだろうね。
あのポール・バーホーベンがその昔ハリウッドのお偉方に3つ企画を出した時の出来事。その企画は、
- 歴史に忠実な実録十字軍物
- イエス・キリストを世界最大の詐欺師として描く伝記物
- 痴漢透明人間が暴走するSFX映画
映画会社の上役は「…3番でいいです・・・」と答えるしかなかったとさ。閑話休題
前回の「スーパーマン:ザ・ラスト・エピソード」と20年以上の時を経て対になる作品が「WHAT EVER HAPPENED TO THE CAPED CRUSADER? 何が”マントの十字軍騎士”に起こったか?」だ。タイトルからしてアラン・ムーアの「何が明日の男に起こったか?」と対になっている。
バットマン:ザ・ラスト・エピソード (ShoPro Books)
- 作者: ニール・ゲイマン(作),アンディ・キューバート、ほか(画),関川哲夫
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 大型本
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作画はアンディ・クバート。僕なんかの印象だと主にマーベルを主戦場にしているイメージがある。以前に発売された「ウルヴァリン:オリジン」もこの人ですね。
X-MEN ウルヴァリン:オリジン (SHO-PRO BOOKS)
- 作者: ポール・ジェンキンス,光岡三ツ子
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2009/09/01
- メディア: 大型本
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バットマンの最後というとフランク・ミラーの名作「ダークナイト・リターンズ」が有名だが、あれは現在では別の世界であるエルスワールドものということになっているらしい。
ゲイマンによる本作はファンタジー作家らしく現実と妄想の境目が不明で実にメタ的。アルフレッドがあんなことやそんなことをするのはちょっと卑怯。クバートの絵は過去のバットマンの絵柄を上手く引用している。キャットウーマンの初期コスチュームとか。猫の被り物まんま被ってたりする。
現在のところ、アメリカではどういう風に物語が進んでいるのか気になるところだ。
その他の収録作は「BLACK AND WHITE WORLD」。暴力的な画風で知られるサイモン・ビズリーの一作。アンソロジー「ブラック&ホワイト」に収録済み。
バットマン:ブラック&ホワイト2 (DC super comics (No.013))
- 作者: アレックス・ロス,海法紀光,石川裕人
- 出版社/メーカー: 小学館プロダクション
- 発売日: 2003/07/06
- メディア: コミック
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最後になぜ、バットマンは「十字軍騎士」なのか?もちろんアメリカでは未だに(というかバットマンが登場した当時は)正義の軍隊という風に捉えられている可能性もある。ただ、バットマンはヴィジランテである。勝手に警察の領域を侵して悪人を退治する。ある意味で一人十字軍ではあるといえるだろう。(とはいえそんなこと言ったらスーパーヒーローなんてみんな同じだけどね)