The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

童貞とカトリックとヴァンパイア 渇き

 一昔前までアジアの娯楽映画といえば香港だった。それに時折、台湾(「幽玄道士」)やタイ映画(「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団)が混じる程度。そのほかの国の映画が公開されることがあっても大抵はお堅い文芸作品だったり、芸術性の高い映画だったりした。しかし、映画が産業として根付いている国で娯楽映画が無いなんてことは有り得ない。例えばインド映画といえばサタジット・レイとかが公開されてたが実際にインドで支持を集めてた映画はアクションあり、歌あり、踊りありで時間は3時間とかの超娯楽作なのだ。
 韓国映画も日本で娯楽作が公開されるようになったのは1999年の「シュリ」からではないだろうか。その後は(主にTVを主体とする韓流ブームもあって)向こうでヒットした作品はほぼ公開されている。僕自身韓国映画を意識してみるようになったのは「シュリ」以降だ。
 で、今回観たのはその「シュリ」で主人公の同僚で友人を演じてたソン・ガンホの主演映画「渇き Thirst」だ。ソン・ガンホの主演映画は劇場で「シュリ」グエムル 漢江の怪物」「グッド・バッド・ウィアード」、DVDソフトで「反則王」「殺人の追憶」などを見てるがとてもいい顔をした俳優である。

物語

 カトリックの神父ソン・ガンホは病院で重病患者の最後を見取るのを主な仕事としている。仕事に行き詰ったガンホはとある病気の検体となりに行く。その病気(エマニュエル・ウィルス!)は白人とアジア人の男性にしか発病しないウィルスで聖職者に患者が多い。つまり童貞が感染しやすい病気なのだ。
 500人の被験者の中で唯一、生存したガンホは韓国の重病患者などから「聖者」扱いされる。
 そんなある日、昔の知り合いの家族と出会うガンホ。そこの嫁テジュとガンホは惹かれあう。エマニュエル・ウィルスから生き残ったガンホの身には異変が起こり感覚が研ぎ澄まされ肉体能力も常人をはるかに超える。太陽にあたれず、血を欲する吸血鬼と化していたのだった。
 惹かれあう、ガンホとテジュは邪魔な夫を消すことを考えるが・・・


 というわけで今回のガンホは童貞でカトリックの神父でヴァンパイアである。過去に色々なガンホを見てきたがこれほど弱弱しいガンホも初めて。自分の性欲を収めるために自分で鞭みたいので自分の身体をビシバシしばいたりするのだが、これは実際にカトリックではやるはずで、そんなことしてるからカトリックは変態ばっかりになっちゃうんだよ!*1 通常、男のヴァンパイアといえば女性を襲うのが定番なのだがガンホはヴァンパイアになっても根はまじめなので人を襲えず、事情を知ってる盲目の上司からおすそ分けしてもらったり、意識不明の患者の点滴管からチューチュー吸ったりする。この光景はかなりシュール。
 一方ヒロインのテジュは小さい頃に両親が蒸発して以来育ててもらった家族の息子とそのまま結婚させられたという設定で最初に登場したときは芳本美代子を思わせるけだるい感じの女性。夢遊病を詐称して夜中に裸足で街を走り回ることでストレスを発散している。それがガンホと不倫に走るにつれて徐々に美しくなっていく。
 
 監督は「オールド・ボーイ」「親切なクムジャさん」のパク・チャヌク
 

ネタばれ注意

 さて少しネタばれすると、ガンホはテジュに自分の血を飲ませ同族としてしまう。だが「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」でも分かるとおり、女性ヴァンパイアは奔放である。自殺志願者から血を分けてもらうガンホに対して好きに人を襲い始めるテジュ。精神的に解放されたようでこの映画中ここからのテジュ*2が一番美しい。 
 テジュは間違って義母(ガンホによって殺されたテジュの夫の母親でこの時点では植物状態)に自分の血を一滴吸わせてしまい、それで少し元気が出た義母に犯行を暴かれ、しょうがなく麻雀仲間を殺してしまう。この義母はじめ麻雀仲間はみんな嫌な感じ(フィリピン妻イブリン除く)なので殺されてもむしろテジョに共感してしまう。しかし義母のみは生き残るのであった。

おまけ

 どうでもいいが、今回隣に座ったテジョの義母に似たおばさんが途中入場、途中退場、紙袋をガサガサ、とマナーにかける行為を繰り返し非常にウザかった。劇中でガンホとテジョに共感してしまうのはそういったわけもあるかもしれない。

*1:ブクマでid:antonianさんより指摘あり。別にカトリック全てがやってるわけではなく、一部異端宗派がやってたものだそうです。過去に何度かそういうシーンのあるドラマ(いずれも時代劇)を見たことがあるので公式の修行だと思ってました。

*2:多分このテジュが女優の地の顔で他のシーンが疲れメイクをしているのだと思うが