The Spirit in the Bottle

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黒豹 武装蜂起のバラード ブラックパンサー

 アメコミ映画だけは感想書こうと思っていたのにこの体たらく。昨年の「X-MEN」シリーズのヒュー・ジャックマンのラストウルヴィー「ローガン/LOGAN」も書けず、DCFUのとりあえずの最初の頂点「ジャスティス・リーグ」も色々思うところはあったが書けてない状態です。そしてMCU、すでに年末に「マイティ・ソー:バトルロイヤル」が公開され、年明けには「ブラックパンサー」が。そしてついにフェイズ3最大の山場「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」が公開されます。今回は大分遅れた「ブラックパンサー」の感想ですが、同時にMCUフェイズ3の簡単な復習もしたいと思います。なんならまだ「ブラックパンサー」は公開中で「アベンジャーズ」とハシゴできるのかな?MCU17本目!(多分)

 ちなみに「星の王子ニューヨークへ行く」はザムンダでワカンダとは別のアフリカの国で、「特命武装検事・黒木豹介」とはまったくの別人です。

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  • 物語

 アフリカの小国ワカンダ。世界のほかの国々からは発展途上の一農業国に過ぎないと思われているこの国には秘密があった。それはかつてこの国に落ちたヴィブラニウムの隕石の力で他の国を凌駕する最新科学を備えていたのだ。国を治めるのはティ・チャラ。テロによって亡くなった先代ティ・チャカ王の後を継いで国王となった。それは同時に、国の守護神ブラックパンサーとなることでもある。

 ティ・チャラのもとにかつてワカンダからヴィブラニウムを盗んだ武器商人ユリシーズ・クロウの所在が判明したと報告が入る。国王の親衛隊ドーラ・ミラージュの隊長オコエ、ティ・チャラの元恋人で今は国外で活動するナキアと共にクロウ捕獲に向かう。そこにはCIAのロス捜査官もいたが、クロウを捕獲。しかしクロウは謎の男エリック・キルモンガーに奪われてしまう。キルモンガーはワカンダと深い関わりがあって……

  MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のフェイズ3はいきなり「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で最高潮に達してしまいその後は宇宙でも地球でも特に大きな動きは無かった。「ドクター・ストレンジ」と「スパイダーマン:ホームカミング」の2本は新ヒーローの登場編で、それぞれの存在感を示したがMCU全体の物語としては大きな動きはなかった(アガモットの目がインフィニティストーンの一つとして登場したことぐらいか)。

 宇宙に目を向けると「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」は時間軸的にはフェイズ2に属する物語でスターロード=ピーター・クイルの出生の秘密が分かったりしたものの前作以上に他の作品との絡みは少なく、ラストにサノスに対抗しうるアダム・ウォーロックの誕生を伺わせる程度。

 そして「マイティ・ソー:バトルロイヤル」*1ではアスガルドをめぐり壮絶な戦いが起きた結果、ソーは行方不明になっていたハルクと再会し、しかしアスガルド自体が難民となって終わる。

 MCUという世界においてヒーローたちの内紛という重大な出来事を描いた「シビル・ウォー」のその直接の続編として始まっているのが今回の「ブラックパンサー」だろう。「シビル・ウォー」でデビューした彼はテロによる王の死という緊急事態を受けての参戦したが、今回正式な国王となる。

 映画はしかし現在から30年ほど昔の1990年代初頭から始まる。先代ブラックパンサーことティ・チャカ国王はアメリカで活動する弟の元を尋ねる。実は弟である王子はワカンだのヴィブラニウム製の武器をもって黒人革命を起こそうと画策していた。しかしそれは鎖国を国是とするワカンダに反する行為。国王は自ら弟を始末するのだった。この時ティ・チャカの身につけているブラックパンサースーツは全身は見えないがティ・チャラのスーツにアフリカの民族衣装の意匠を少し混ぜたような感じ。個人的にはなんなら最新のスーツより格好良く思えた。90年代初頭とかいってもすでに映画のほうで「バットマン」や「バットマン リターンズ」があった頃だから実写のヒーロースーツもそれなりにボディスーツっぽい物。どうしてもマーベル映画で過去の話(主人公の子供の頃とか)が出てくると現在(2018年)基点だから90年代とか「アメスパ2」で出てきたように2000年代とかでおかしくないのに、1960年代を思い浮かべてしまうなあ。特にこの作品の場合内容的にも「ブラックパンサー」というタイトルからも60~70年代の黒人公民権運動などを連想してしまうから。

ブラックパンサー」というタイトルからはどうしても「ブラックパンサー党」を連想するがこちらのほうが1966年デビューでブラック・パンサー党より登場は一年早い。しかしこの二つの黒豹が同じ名前なのは全くの偶然なのではなく、その前に存在していた黒人団体が黒豹をロゴにして用いていたことから別々にインスピレーションを受けたようだ。

 MCUでは「アイアンマン2」でウォーマシンが、そして現在におけるキャプテン・アメリカの相棒としてファルコンがすでに「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」で黒人ヒーローとしてデビューしているが、単独主演は初。映画で登場する主要登場人物で非黒人キャラは武器商人ユリシーズ・クロウとCIA捜査官のエバレット・ロスぐらいしかおらず、舞台も含めてここまでアフリカが強調された作品も珍しい。

 ワカンダの描写は国全体を覆うホログラムでカモフラージュされており、そのホログラムを抜けると本当のワカンダ王国が現れる。そこは最新科学と伝統的文化が見事に融合された世界。最新科学の一方で国王即位の儀式などでは伝統も重んじられ、農業や牧畜も盛んなある意味理想国家として描かれている。ワカンダでしか産出出来ない鉱物ヴィブラニウムと人間に超人的なパワーをもたらすハート型のハーブの力で国王はブラックパンサーとして国を守護する。

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 主人公ティ・チャラは「シビル・ウォー」に続きチャドウィック・ボーズマン。宿敵となる、マイケル・B・ジョーダンとはまた別の人懐っこそうな魅力を持つ。「キング・オブ・エジプト」では知恵の神トートを演じていたが、この人はアフリカン・アメリカンにありがちなストリートの匂いをまったく感じさせないというか、貴族的な育ちの良さを感じるのでその辺もこのヒーロー兼国王というキャラクターにピッタリだった。

 他にも色々個性的なキャラクターが登場し、特に女性陣は皆魅力的。オコエやナキアなど普通に主人公を凌駕する力を発揮するヒロインもいいがティ・チャラの妹でブラックパンサーのバックアップをするシュリが個人的には好き。演じているのはレティーシャ・ライトは1993年生まれなので25歳だが劇中ではもっと若く見えおそらく作品の設定的にはまだ10代だろう。このシュリが天才科学者として今回のブラックパンサーのスーツ、装備、後方支援を担当。その技術力はトニー・スタークやハンク・ピムを凌駕しているように思える。スターク系はアイアンマン、ウォーマシン、スパイダーマン。ピム系はアントマン、ワスプ、イエロージャケット。そしてシュリ系はブラックパンサーとヒーローの強化スーツを系統立てれると思う。それぞれ注力したポイントが異なるけれどスターク=火力、ピム=縮小機能、シュリ=耐ショックといったところか。「シビル・ウォー」でのブッラクパンサースーツはヴィブラニウムを織り込んだボディスーツという感じだったが、今回新たに登場したスーツは首飾りからナノマシンが放出されて全身を覆う感じで変身/変身解除が思いのまま。

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 とにかくこの妹様シュリがさりげなくMCUでも一二を争う天才なのに、一方で普通の今どき少女っぽいのも良い所。シーンシーンによっていろんな魅力を出しています。またティ・チャラとシュリの母親である王妃にはアンジェラ・バセット。90年代に女性アクション俳優といえばこの人だったイメージがあります。実際撮影現場でも出演者からかなりのリスペクトを受けていたようだ。

 ヴィランはエリック・キルモンガー。元米国の特殊部隊として世界中で殺戮を繰り広げた男。正体はティ・チャカの弟ウンジョブの息子でありティ・チャカがウンジョブを処分した時にそのままアメリカに置き去りにしてしまった悲劇の王子である。彼は血統の正統性と儀式によってティ・チャラを破りワカンダの国王となる。そしてヴィブラニウムの武器を世界中に配り父の果たせなかった世界一斉蜂起、黒人革命を試みる。

 演じるのはマイケル・B・ジョーダンで監督のライアン・クーグラーとは「フルートベール駅で」「クリード」に続き3作目のタッグ。アメコミ関連映画としては(アメコミ原作ではないが)「クロニクル」「ファンタスティック・フォー」のヒューマントーチに続く。ヒーロー一転ヴィランである。この人の特徴は悲劇的な役柄を演じていてもその親しみやすさでどこか希望を残すところで、本作のキルモンガーも悲劇的な出自を持つが、どこか明るくそしてカリスマ性を持っていて一時的とはいえワカンダの国王になるだけの器量を垣間見せる。ただ、最初の方のアフリカの祭祀用の仮面をかぶる姿と違って、クライマックスではブラックパンサーのバージョン違いのスーツを着用する。二人のブラックパンサーは色合いが極端に違うわけではなく、戦闘の舞台も暗いところだったりするので見分けがつきにくく混乱してしまってちょっとその辺は残念。いわゆる主人公と同型で能力的には凌駕するヴィランというパターンだがその辺ではちょっと物足りなかったかな。

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 数少ない白人キャラはマーティン・フリーマンエヴァレット・ロスとアンディ・サーキスユリシーズ・クロウ。二人ともMCUではすでに登場済みのキャラクターだが、今回は共演し、ロスがクロウを尋問するシーンも有る。この二人といえば「ホビット」のビルビ・バギンズとゴクリ/ゴラムである。あの時は特殊メイクやCGで共演していたが、その二人が今回は生身で共演。だからといって特にこの二人のやりとりが「ホビット」を連想させたりはしないんだけど、その分鬼気迫るものはありました。

 今回はティ・チャラがワカンダの国王として自らを確立する物語であり、クライマックスの戦いもちょっとした内戦でありコミックヒーローの戦いというのとも少し違うかもしれない。またこの物語を通してワカンダという国を紹介する役割を負っている。

 ラスト、無事国王に返り咲いたティ・チャラは国連でこれまでの鎖国政策を止め世界に広く文化を開放することを宣言する。弱小の農業国としか思われていなかったワカンダだが、その世界の最先端を行く科学力や希少なヴィブラニウムは世界を大きく変えていくことだろう。良くも悪くも。


Black Panther - Official Teaser Trailer | HD

 オマケ映像はワカンダの子どもたち懐かれている謎の男。その正体はウィンターソルジャーことバッキー・バーンズ。「シビル・ウォー」ラストで本人の意志により洗脳が完全に解ける手段が見つかるまでワカンダの科学力で冷凍睡眠されることとなったが、内戦のさなかの混乱で解除されたのか?ここでは「ホワイトウルフ」と呼ばれるが、「インフィニティ・ウォー」でもウィンターソルジャーでなくホワイトウルフとしてクレジットされているとかいないとか。

 BLACK PANTHER WILL RETURN IN AVENGERS : INFINITY WAR.

そして物語は「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」へと続きます。


Marvel Studios' Avengers: Infinity War Official Trailer

 予告編を観る限りわりと「ブラックパンサー」からすぐつながる物語っぽく今回登場したキャラクターの多くはそのまま登場するっぽい。同時にやっと「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が他の作品と明確に絡んでくることも確かで宇宙の話と地球の話がひとつになります。前後編の前編と言われているので「インフィニティ・ウォー」だけで完結はしないと思われるけど十分見応えはありそうです。

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 ブラックパンサーが出てるMCU前作。 

  

ライアン・クーグラー監督の前作。感想記事のタイトル「父親越えの神話」はそのまま今回の記事にも使えそう。監督デビュー作が実録社会派「フルートベール駅で」だったため社会派のイメージがあって、その意味では今回のMCU参加は「ロッキー」シリーズである「クリード」以上に意外だったのだが、娯楽作の中にきっちりテーマを盛り込むことでは一級の力を見せたと思う(ただアクションシーンの演出はルッソ兄弟に比べるとちょっと下手かな)。

ブラックパンサー ザ・アルバム [Explicit]

ブラックパンサー ザ・アルバム [Explicit]

 
ブラックパンサー (オリジナル・スコア)

ブラックパンサー (オリジナル・スコア)

 

  もう発売されちゃったね。

 さあ、明日はインフィニティ・ウォーだ!!

*1:しかしやはりこの邦題は間違いだと思う。「ラグナロク」に戻してほしい