The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

高まる前半、失速する後半!でもミッチーは最高! スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号


 はい!「相棒」シーズン13、大変なことになりましたね。賛否両論(と言うか圧倒的に否?)喧々諤々。カイトくんが犯罪者、それも特命係に来たぐらいから地道にヴィジランテやってたって設定で「ダークナイト*1」などというあからさまなネーミングまで付いて(というかエピソードタイトルでもある)これまでにない相棒退場となりました。まあ、「相棒」という物語自体は例えば(一部世界観を共有していると思われる)「警視庁捜査一課9係」などと比べてもSF的な話があったり比較的突拍子もない展開もあり得るものだと思っているのでこのオチ自体は別にいいと思っています。ただ見せ方はよくなくて、このオチなら今シーズンすべてがこの大オチに向かうために存在するべきだった。本来ならカイトくんが特命係に来たシーズン11からじわじわ伏線を張るべきだったし、それは(多分最初からこのオチが決まっていたわけではないだろうから)無理だとしてもせめて今シーズンは最初から伏線をしっかり貼るべきだった。もしかしたら伏線あったのかもしれませんが少なくとも後から思い出して「嗚呼あれが!」というレベルでは展開されませんでしたね。後は妊娠・病気になった悦子さんが可哀想だし初回で出てきた仲間由紀恵の社さんが最終エピソードでも出てくるのかと思ったら…とか色々(社さんは途中で出てきたけれど)。ただ、かねてから語られてきた「右京さんの真っ直ぐすぎる正義」がまだ若いカイトに悪い影響を与えた、という展開自体は悪くなかったかな、とも思います。あまりに評判が悪いので人気の「相棒」もこれで終わりか?等と言われていますがさすがに最低もうワンシーズンは作って決着を付けて欲しいところ。個人的にはもう杉下右京も定年近いだろうし(劇中では無期謹慎という形で終わったけれど年齢を考えれば依願退職扱いでもおかしくない)、新しい相棒と言うよりは亀山薫、神戸尊、甲斐享それぞれと右京さんが改めて向かい合う形で最期を描いて欲しいと思います。
 さて、長々と「相棒」を前振りに使いましたが、カイトくんがバットマンならぬバッタモンダークナイトであったなら、イタミン伊丹刑事こと川原和久はアポロガイストでもあります(右京さんは「バンパイヤ」のトッペイ)。そして今度は神戸くんが新たにヒーローに加わりました。「スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号」を観賞。

物語

 1973年2月10日。仮面ライダー1号本郷猛と仮面ライダー2号一文字隼人のWライダーはショッカー大首領を追い詰めた。しかし爆発するアジトの中から封印されたはずのショッカーライダー仮面ライダー3号が現れ、Wライダーは敗れてしまう。ショッカーの時代に!
 現代。ロイミュードを倒した仮面ライダードライブ泊進ノ介と霧子はエネルギーの波のようなものに巻き込まれた。そこはもうショッカーが支配する世界!霧子は元の意識のままだが進ノ介はショッカーに反するものと戦うショッカーライダーとしての意識に。そこに仮面ライダーBLACK南光太郎が現れ、彼の戦いぶりに感化され進ノ介は正義に目覚めるのだった。そして彼の前に現れる、仮面ライダー3号黒井響一郎。彼は自分がWライダーを倒したせいで世界がショッカーのものとなりライダーは倒されるかショッカーライダーとなっている事実を告げる。彼らの前に現れるゼロノス、555、ギャレン。本当の世界はどっちだ?!

何度も書いているけれど、スーパー戦隊に比べると仮面ライダーは直近のシリーズとのクロスオーバー作品である「MOVIE大戦」シリーズ以外はあまりうまくいっていない。これはひとつにシリーズとはいっても作品一つ一つがかなり独立しそれぞれに独自な設定を持っているためすり合わせが難しいのと(MOVIE大戦は前後する2作だけだからまだいいがオールライダーなどそれが膨大な量になる)、何故か安易に「ライダー同士が戦う」というコンセプトにこだわり続けいているためではないか、と思う。そして何よりスタッフの愛情を感じにくい。今回も「脚本:米村正二」と聞いてかなり観る気が無くなったのも事実なのだ(制作白倉伸一郎はいわずもがな)。だから当初はスルーする予定だった。ただそれら不安を上回る期待要素が仮面ライダー3号という新ライダーを及川光博=ミッチーが演じるというものあった。

 ミッチーが演じる黒井響一郎こと仮面ライダー3号は封印されていた最強のショッカーライダーという設定。これが1号、2号のデザインラインではあるものの明らかに洗練されていて、1,2号以降V3以前に作られたライダーとしては明らかに不自然。どちらかと言うと「仮面ライダー THE FIRST」の延長線上にあるデザインだろう。なので最初は「計画はショッカー(ゲルショッカー)時のものだけれど、実際に製造されたのはもっと後」とかそういう設定*2があるのかと思ったのだけれど、実際は普通にショッカー時代であった。とするとやはり違和感はあるなあ。
 ミッチーはこの公開されるちょっと前に新曲のリリースイベントで生で見かけてその格好良さに新ためて惚れなおしたのだが(そこで見かけたことも今回の映画を観に行く大きな原動力)、初めてとは思えないほど違和感がない。ミッチーは自身も特撮好きで初めて役者を意識したのが宮内洋だったとか。藤岡弘、佐々木剛はあくまで本郷猛、一文字隼人本人として認識していたが宮内洋はV3の他にもアオレンジャー快傑ズバットがあって同一人物が別人物として出てくる=役者という仕事を初認識。この例で言うと僕の場合は大葉健二が初認識の役者かもしれないなあ。ミッチーは先輩で親友でもある唐沢寿明の「イン・ザ・ヒーロー」にもちょこっと出ていたけれど、本格的なヒーローものは初めてか。
 ちなみにミッチーはパンフレットで「20歳頃スーパー戦隊のオーディションを受けた。クールな”青”を演じたかった」というようなことを言っていた。どの作品なのだろうと気になったのだが、ミッチーは1969年生まれなので20歳頃というと1989年前後。この時期は「超獣戦隊ライブマン(1988.2〜)」から「鳥人戦隊ジェットマン(1991.2〜)」ぐらいまで。この中で「クールな青」というと「高速戦隊ターボレンジャー」のブルーターボぐらいなのであるが、どうもイマイチしっくりこない。ここはやはり色こそ青でなく黒だが「ジェットマン」のブラックコンドル=結城剴のオーディションを受けたと思うと夢が広がる。結城剴は若松俊秀のはまり役だったけれど、もしもこの役をミッチーが演じていたとしたら?若松さんの剴よりもっとしなやかな印象の剴になっていたかな。

 ドライブは主人公ライダーだが、イマイチ設定に納得がいかず、これ別に霧子だけ元の世界の記憶を持っているという設定にしてショッカーのために尽くす進ノ介の描写ってい必要だったか?最初から二人(あるいは剛含む3人)して変化した世界に違和感を感じたってことで良かった気がするのだけれど。

 他には顔出しのライダーは去年に引き続き仮面ライダー555半田健人仮面ライダーゼロノス中村優一、BLACK、BLACK RXの倉田てつを。後述するけれど南光太郎がそれぞれ別人という設定は辛い…
 ゼロノス=桜井侑斗の中村優一はしばし俳優業を休業していたそうでその影響か否か以前より声が低くなっていた気がするのだけれど、劇中で剛(マッハ)におじさん呼ばわりされてたのは納得いかない!「オレはかーなーり強い!」の決め台詞は健在。デネブも出るでよ。

 顔出しライダーのトリは「仮面ライダー剣」から仮面ライダーギャレンこと橘朔也。演じるは天野浩成。僕はTVシリーズの「剣」は見ていないので詳しいことは分からないので天野浩成は「仮面ライダーフォーゼ」の速水校長のイメージ。なので裏切るのかな?と思っていたら案の定、でも最後はって展開はよかったです。ただ顔出ししない他の剣のライダーたちはよく分からん。
 ショッカー(というかゲルショッカーのはずだが)は大首領の声が関智一なのだが、これが見事なまでに納谷悟朗!あるいはちょっと穿っても飯塚昭三だと思う声で、とてもかつてドモン・カッシュだったり、あるいは現在のスネオの声だとは思えません。
 後は高田延彦ブラック将軍を演じている。ブラック将軍は以前は日本一の斬られ役福本清三が演じていてそのミイラのような枯れた演技が独特の凄みを出していたが、今回は打って変わってアグレッシブ。ヒルカメレオンにもなります。ただ、ショッカーに支配された世界ってのが明らかにナチスモチーフで(ショッカーユーゲントなる少年仮面ライダー隊の鏡のようなものまで登場する)これだったらブラック将軍でなくゾル大佐のほうが良かったのではないかと思う。余談だがブラック将軍ロシア帝国の軍人からアフリカのゲルダム団と出会い、さらに首領に見出されるまでの人生とても気になります。ゾル大佐や死神博士より数十歳年長のはず。
 シオマネキング、ザンジオー、ギリガメス、カメバズーカといった常連再生怪人に加えて劇場版オリジナル怪人としてチーターカタツムリという新怪人も登場。2つの生物の融合であるとか比較的グロ目のデザインとかあきらかにゲルショッカー系列の怪人です。なぜゲルショッカーじゃないんだろう?

 物語は前半は比較的よく出来ていてこれまでのライダー同士が戦う映画の中では比較的理屈がちゃんとしていたと思う。本郷猛の家が豪邸でそこには禿の執事立花藤兵衛が居る、とかは原作版をなぞった展開で、オオッ!ともなるのだが、そこで失速。後半になるとメチャクチャで物語としては実質ここまでが見どころだろう。
 ラストはライダーそっくりの巨大ロボット(大首領。超ダセえ!)が出てくるのだが、これを倒すために出てくるのがなんと「手裏剣戦隊ニンニンジャー」。いや、そりゃ今回の映画版タイトルは「スーパーヒーロー大戦」と入っているけれど、客の殆どは仮面ライダーの劇場版と思って観に来ていると思うのですよ。それを突然スーパー戦隊が出てきてしかもラスボスを担当する(また!です)って…巨大戦担当は仮面ライダーJがいるわけだしここでスーパー戦隊が出てくる必要は全くなし。百歩譲って出てくるとしてもきちんと物語にも絡めてその上でってことにしてもらわないと。ちなみに今回はゼロノスが登場(ゼロライナーもちょっと登場)するわけでニンニンジャーじゃなくトッキュウジャーならきちんと物語に絡めることが出来た気がするなあ。それならまだ分かるのだけれど。
 こういう特撮ヒーロー映画って物語の完成度を度外視してまでサービス?シーンを入れることがあるけれど、あれもいい加減にして欲しい。あれで本来のターゲットである小さいお子さんは喜ぶんでしょうか?仮に喜んだとしても大分バカにした話のような気もする。
 後は個人的に「仮面ライダーBLACK」の南光太郎と「仮面ライダーBLACK RX」の南光太郎が別人って設定もやめていただきたい。そりゃ最初の復活(倉田てつをその人が登場するという意味で)はディケイド絡みだったのでまだいいけれど(昭和ライダーも作品ごとに別々の世界という設定)、もう関係ないじゃん!普通に最初の変身でBLACKになって二段変身でRXになるとかでいいんじゃないの?
 そして入場者特典のおまけDVDですね。前回の「ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル」のおまけDVDはTVの「仮面ライダードライブ」の第0話、前日譚ということで良かった。今回も前日譚だと思ったらなんと後日談。それ自体はいいのだけれど(劇場に来て貰うということはもう本編を見てからおまけDVDを見るわけだし)、問題はこの後日談、このDVD一枚では完結しないことである。全3話の内の第1話だけが収録されていて残りはdビデオで独占配信!とのこと。これってちょっとどうなのだろう。確かに劇場版のあの終わり方はTVとパラレルだとしても気になる終わり方ではあるしそこに続きがあるのなら見たい。でも必ずしも全員が見れるメディアではないところで展開されるのはフェアとは思えない。これなら普通に物語が続く続編として劇場公開される、という方がまだましである*3
 面白かったか否か、と言われれば面白い作品だとは思います。ただ例によって悪い意味で適当な整合性の付け方はファンならずとも微妙だし商業的理由からか取ってつけたようなニンニンジャ−の登場など一作品としてはかなり完成度は低いです(正直基幹となる物語はもっと魅力あるものに出来るだけの素材だと思います)。ただミッチーはじめ顔出しで出演する役者、特に過去にライダーを演じた人たちの魅力に助けられています。「スーパーヒーロー大戦」よりはマシ、というのは全然ダメなんだと思います(正直自分でも感覚が麻痺してきてはいた)。製作期間をもっと幅をとっても構わないからもっとこだわって作って欲しいですね。

*1:「相棒」世界では「ダークナイト」は公開されているのだろうか?というか東映宇宙的にはダークナイトといえばメギド王子!

*2:ガンダムで例えると同じザク2(1号2号)の後継機でもV3はハイザックで3号はザクⅢみたいな感じか

*3:最近日テレのバラエティ番組見てると最終的にhuluに誘導されてイラッとするのだけれどそれとちょっと似た感覚