The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

ホームセンターあらし イコライザー

 デンゼル・ワシントンって不思議な俳優で僕はあんまり劇場で出演映画を観たことはないのだけれど、紛れも無い現代アメリカを代表する俳優で黒人俳優としてもまず真っ先に挙げられる俳優だと思うけれど、その割にいわゆる黒人俳優らしさを感じさせない。例えばエディ・マーフィーやサミュエル・L.ジャクソンあたりと比べてもその演技スタイルは人種を感じさせないだろう。もちろん彼も「グローリー」「遠い夜明け」「マルコムX」といった人種に根ざした役を演じてはいるが、サミュエル・L.ジャクソンが「遠い昔、遥彼方の銀河系」の人物を演じていてもそのファンキーな黒人らしさが全開なのとは対照的だ。悪役を演じるたびに「あのデンゼル・ワシントンが悪役を!」みたいな宣伝のされ方をするのは逆説的に彼がある種の理想型のスターとして受け入れられている証とも言える。そんな彼の最新作、「イコライザー」を観賞。

物語

 ホームセンターの従業員マッコール。昼は真面目に働き、同僚の相談にも乗る。夜は本を片手にいつものダイナーのいつもの席で読書をするのが日課だ。ある時知り合いのロシア人娼婦の少女が客に逆らったことで元締めのロシア人ギャングから酷い暴行を受けたことを知る。マッコールはギャングのもとに行き、彼女を自由にするよう求める。しかし要求は却下。するとマッコールはその場にいた、屈強なギャングたちをわずか19秒ですべて殺してしまうのだった。実はマッコールは腕利きの元CIA捜査官で、現在は過去をすべて消し去って新たな人生を歩んでいたのだ。
 配下のギャングが殺されたことでロシアからテディという男がやってくる。彼はロシア系のみならず町のギャングをすべて締め上げ、犯人を追い詰めようとする。マッコールとテディの対決が始まった。

 実はこの映画、元は「ザ・シークレット・ハンター」というTVドラマシリーズのリメイクだそうで(原題が「EQUALIZER」)、そちらは僕は見たことがないので詳細はよく分からないが1984年から1989年にかけてアメリカで放送されたそうで、おそらく日本でいうところの「シティハンター」とか「キイハンター」とかあんな感じのドラマかと思われる(邦題もその辺から付けたのかしら)。

 そして、このオープニングで分かる通り、オリジナルの主演は白人俳優。それをデンゼル・ワシントンが演じている、そして全く問題ないあたりも彼の芸風といえるのかも。もっとも映画は物語もオリジナルでどこまでドラマ版が反映されているかは分からないが。タイトルの「イコライザー」は「均一化するもの」とかいう意味で音響装置なんかに使われる言葉のようだけど、あえて意訳すると「町の害になるものを排除して均す」とかそんな感じだろうか。
 映画は例によって日本で流れた予告編とはかなり趣が違って、別にマッコールは「19秒」という時間にこだわっているわけではない。劇中最初の仕事に必要な費やす時間が19秒だった、というだけで時間に常に注意する(ストップウォッチ使用)描写はあるけれど全部が19秒というわけではないし、「仕事請負人」とされていたけれど、別に誰かに頼まれて、とか金で請け負うわけでもない。

 デンゼル・ワシントンは年齢がわかりにくい部分もあるけれど、一応のヒロイン(とはいえ前半で退場してエピローグまで再登場せず)となるのがクロエ・グレース・モレッツでもう娘、下手すりゃ孫の世代なので特に恋愛関係と言うより庇護するべきものを庇護したという感じか。
 その他、ホームセンターの同僚なんかもいい味を出していて、この辺、たしかに元がTVシリーズぽいなあ、とは思う(先述したとおりどこまでTVの設定が今回の映画版に生かされているかはわからないですが)。

 敵となるテディは元スペツナズのロシアンマフィアでそのキャリアもマッコールと対になっている。性格も冷酷でアメリカに置いてロシア系以外のマフィアを支配下に置くがこれが僕にはカツラを被ったケビン・スペイシーにしか見えなくて困った。びっちり七三分けなんだけど地毛に見えない。演じているのはマートン・ソーカスという人。ちなみにスペツナズといえばスペツナズナイフであるが、個人的にこの武器大好きなのでどうせなら使って欲しかった。
 サスペンスとしてみた場合はやはりちょっと粗くてやはりアクション映画と思ったほうがいいのだろう。僕はもっとホームセンターが舞台であることを利用したDIY溢れるアクションシーンが満載なのかなと思ったけれど、前半は特に活かされることがなかったが、後半のクライマックスではホームセンターそのものが舞台となりテディの率いる部隊と戦う。ここではマフィアの粋を越えて本格的な軍装で挑むテディたちに対してホームセンターのものを生かして対抗するのが楽しい。
 他にも実は悪徳警官だったマスターズを演じたデヴィッド・ハーバー絡みのシーンも全体的に楽しかった。
 ラスト、デンゼルがロシアまで行っちゃうのはさすがにマッコール超人すぎだろ、と思わず笑ってしまったが、その辺からもこの作品のシリアスな部分と妙に面白い部分が交錯している印象。主人公が実は超腕利き、全体的にシリアスでありながらところどころゆるい描写、というあたりトム・クルーズの「アウトロー」と似ているかも。ライアン・ゴズリングの「ドライヴ」だとちょっとシリアス方向に行きすぎか。


 仕事(非合法)に使った道具をしれっと売り場に戻す優良従業員デンゼル。でも元ホームセンター従業員としては見過ごせませんなあ。

タイトルこちらから。今日はこの辺で短めに。Французский Прощайте
Frantsuzskiy Proshchayte(ロシア語で「さらば」だそうですよ)