The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

昨日の自分を打ち破れ! 大脱出

 去年の映画における出来事の一つにアーノルド・シュワルツェネッガーが「ラストスタンド」で俳優本格復帰!というのがあるがその復帰第2弾が盟友シルベスター・スタローン主演作。「エクスペンダブルズ」シリーズではあくまでゲスト/友情出演といった感じだったが、こちらはきちんと共演!といった感じ。シルベスター・スタローンアーノルド・シュワルツェネッガー共演映画「大脱出」を鑑賞。

物語

 レイ・プレスリンは自ら入獄して脱獄することでその刑務所の欠陥を指摘する刑務所のセキュリティに関する第一人者。今日もとある刑務所から見事脱獄に成功しその穴を指摘した。
 そんなレイの次の仕事はCIAが密かに建設した凶悪犯ばかり集めた極秘の民間刑務所。スポンサーを納得させるためにレイに入獄してセキュリティに欠点があれば指摘してほしいという。場所も施設の概要も事前に知らされないこのミッションにレイの仲間たちは心配するがレイはこの依頼を引き受ける。しかし連行されてすぐに事前に聞いていた所長とは別の人物が現れ、自由になるはずのコードも通用しない。レイは本格的に囚人として収容されてしまった。所長ホブスの監視を受ける中、レイはエミル・ロットマイヤーという国際的な義賊でホブスが居場所を聞き出そうとしているマンハイムという人物の部下と出会い彼の助けも借りて本格的に脱出しようとする・・

 実はこの作品は昨年の内に試写会で鑑賞済み。ただ、娯楽作品としてはとてもおもしろかったので(例によってTOHOフリーパスがあったこともあって)公開されてからももう一度観に行ったのだった。ただ、本当はこの作品、せっかくのスライとシュワの共演作ということも合ってどうせなら二回目は吹替で観たかったのだな。もちろんスライ=ささきいさお、シュワ=玄田哲章で!ただ残念ながら今回は吹替版での公開はなかった模様。これは吹替も同時公開すべき映画だよなあ。とりあえずソフト発売時に期待します。
 映画はあくまでスライが主演でシュワは助演と言った感じで展開。シュワもそうだが突然予定外に放り込まれた監獄でスライも誰を信用していいのかわからない。事情を知っているはずの所長は別人だったし、何しろ連れてこられるヘリの中で看守が他の連行予定の囚人を殺して捨てるのを目撃してしまっている。凶悪犯ばかり集めたというとおり囚人は皆一癖も二癖もありそうだし、看守は一人を除いて仮面をつけてるので個の判別がはっきりしない上にコミュニケーションもとりようがない。さあ、困った!これは完璧だ!と思ったら実はその監獄はスライ=レイの著書に描かれた設計思想に基づいて作られているものだったのだ。自分を閉じ込めているのは自分の作った(正確には違うけれど)監獄!
「大脱出」というタイトルからつい「大脱走」を連想してしまうが、映画としては「大脱走」ほどアンサンブルキャストというわけではない。スライとシュワの絶対的個性を他のキャストが支える感じ。それにジャベドというアラブ系のムスリム囚人を束ねるボスが登場するが囚人で個性があるのはほぼその3人。最初はシュワも一大派閥を築いているような描写もあるが、最終的にシュワもジャベドも部下とか関係なく自分達ですべて手がける。
 この映画は脱出の過程における綿密で緻密な作戦の描写と、大雑把な快感を優先した描写が監獄脱出ものというジャンルの中でうまいこと融合されている。とはいえそれはメガネで作った六分儀で緯度を計算したり、金属片を磨いた鏡で光を集めてネジを緩めたり、と言ったかなり力技ではあるんだけれど。

 劇中の監獄はまあ実際にはありえないレベルで劣悪なのだが、そこの所長ホブスを演じているのがジム・カヴィーゼル。とてもじゃないがスライやシュワと対等に立ち向かえるオーラの持ち主ではないが、そこは全然別のインテリ風味でねちっこく、というアプローチで立ち向かっている。彼の場合は完全に囚人を管理することにうっとりしている気配があり、そのことは蝶の標本を作るシーンでその辺が暗示されている。だからラストに近づくにつれ自ら銃を取って普通の悪役になっていくのはちょっと残念だったかな。それでも死に様は最高であのなんて言うんでしょう、他の映画でもよくあるけれど死ぬ直前にワンテンポ間を置いて「オッ、オー」と「やっちまった!」みたいな表情をして直後に盛大な死を迎えるって描写は最高ですね。
 インテリなホブズに対して看守の代表でアクション方面でスライ&シュワに立ち向かうのがヴィニー・ジョーンズ演じるドレーク。ヴィニー・ジョーンズは元サッカー選手(元ウェールズ代表!)だけれど、「X-MEN ファイナル・デシジョン」のジャガーノートではプロフェッサーXとの関係(原作では義兄)を全く無視した猪突猛進男を演じていた。その他ストーン・コールド・スティーブ・オースチン主演の「監獄島」でもオースチン演じる主人公の最後の敵を演じていた。」どうにも苦み走ったルックスでヒーローよりも悪役のほうが似合う俳優だ。今回も粗暴でホブスにあしらわれるドレークという看守を楽しそうに演じている。
 後はサム・ニール!悪魔の子ダミアンの成長したあの人も今回はいい人です。他メインの出番は少ないものの、ヴィンセント・ドノフリオやなどベテランの演技派がうまく脇を閉め、更にエイミー・ライアンやケイトリオーナ・バルフェといった美女も出てきます。まあ女性はこの2人のみでそれもほぼ最初と最後だけッて感じだけれど。

 スライの脱出計画とは別にホブス所長によるマンハイムの居場所を聞き出せ大作戦も同時展開されるが、まあこの辺はなんとなくオチは読めるかな。ラストが近づくに連れ当初の知性的な脱出劇は影を潜め、大味アクション映画としての雰囲気が締めていくが、まあそれもある意味予定調和。とても笑えるハイチーズ!の場面もあるし、シュワがとある武器を手に入れるところなんてスローモーションになって大爆笑間違いなし。先述したホブスの死に様もまた楽しい。
 またスライもシュワももう役作りみたいな部分を半分やめている部分もあってシュワの役は「ラストスタンド」に続いてドイツ出身という設定でドイツ語を喋るシーンもあるし、スライもイタリア系という設定だった気が。長年培われてきたアクション映画での役柄と彼ら自身のキャリアがそのまま次の映画に反映されている、という感じ。ある意味でこれはジャッキー・チェンの映画におけるジャッキーの役に近いのではないかなと思う。役名ももう下手に覚えることもなくスライ&シュワでいいんじゃないかな。

 さて、もう公開からかなり経ってるしそもそも予告編やポスターに出ているぐらいなのでいいと思うけれど*1この舞台となる監獄は巨大なタンカーを改造したもので海の上を移動している、という意味でも脱出不可能な感じなのですな。劇中ではスライがずっと地下に建造した監獄と予想し、いざ外に出た時に船だったことが絶望感を煽るのである(というほど大げさではないが、いままで狭い空間で繰り広げられていたドラマがぱっと広い空間に変わるためそれなりに衝撃的ではある)。それで「日本の宣伝はクソ」みたいな意見も見受けられた。僕自身は船だとわかった時に「ああ、そういえば予告編で船って言ってたなあ」という程度でそれでもそれなりに驚きを持ってそのシーンを迎えられたし、2回目観る時は最初から知ったうえで楽しめた。まあ某映画の件以来ネタバレには恐怖(ネタバレを知ることではなく、自分がネタバレしてまうこと)を覚えているのだが、僕自身はあんまりネタバレとか気にしないタイプなのでそんなに頭にも来ないかなあ。そんなちっちゃいこと気にするタイプの映画でもないと思うしね!
 それよりもやっぱり吹き替え版がみたいですよ!この映画に関しては!
 監督はスライではなくミカエル・ハフストローム

*1:「DVD・ブルーレイでーた」の特製チラシなんて船監獄の図解まで載ってる