The Spirit in the Bottle

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怨と念がおんねん 劇場版 HUNTER×HUNTER -The LAST MISSION-

 冨樫義博による漫画「HUNTER×HUNTER」は現在も週刊少年ジャンプ連載中の人気漫画で、僕もその連載当初から欠かさず読んでいる。というかなにげに冨樫作品は最初の連載作「てんで性悪キューピッド」から人気作となった「幽☆遊☆白書」「レベルE」まで全部単行本持っていたりするのだな。「幽☆遊☆白書」初期の頃はこんな作風になるとは全然思わなかったが。現在も連載中と書いたけれど、実際は現在は絶賛休載中であってその連載再開を心待ちにしているファンはとても多いと思う。連載は15年を迎えるがその割に単行本は現在32巻と少ない。同じジャンプの人気作「ONE PIECE」がその一年前からの連載開始だが単行本では倍以上巻数を重ねているのを見ればその休載の多さは一目瞭然だろう。それでも本来なら切られて当然なのに許されているところが冨樫義博という作家のすごいところでそれでも読みたい、という読者が多いということだ。現在は新たな展開を目の前にして止まっているので早く再開してほしいと心から願う。
 さて、そんな「HUNTER×HUNTER」だが二度アニメ化されている(正確にはパイロット版を含め3度)。一度目はフジテレビで放送され、オリジナルの展開などを含みながらヨークシン編の途中まで放送され、その後ヨークシンの完結編及びグリード・アイランド編はOVAという形で作られた。こちらは各主題歌が秀逸で特にヨークシン編でのWINOの「太陽は夜も輝く」は傑作OPだと思う。
 そして2011年からは今度は日テレでキャストを一新して再び一から制作され、今度はオリジナルの展開を含まずに出来るだけ原作に忠実に展開されている。始まった当初は「今再アニメ化する意味があるのかな?」などと思っていたが物語がまだアニメ化されていない「キメラアント編」に近づくにつれフジ版とは違った魅力を出してきたのも事実。特にキメラアント編で原作の残酷も冷徹な描写を臆することなくきちんと描いたのは評価できる。現在は日曜昼ではなく平日深夜二時間を移したが、なればこそより原作に忠実な描写を期待する。てかこっちはこっちでもう原作に追い付きそうでキメラアント編が終わればとりあえずは(一時的かもしれないが)一旦終了かなあ。
 で、本題。その日テレ版の「HUNTER×HUNTER」の劇場版が公開されたのだった。「劇場版 HUNTER×HUNTER -The LAST MISSION-」を観賞。

物語

 天空闘技場にフロアマスター同士の大会「バトルオリンピア」を見に来たゴンとキルア。ズシが大会に出場するというのだ。そこにはネオンの護衛としてクラピカが、またウィングに頼まれてズシの主治医としてレオリオも来場していた。ネテロ会長も訪れて、いざ大会が始まろうとした時謎の武装集団が会場を占拠。「影」と名乗る彼らは「怨」という念とは別の力でネテロ会長を拘束、「全ハンターに死を」と宣言した。ゴンたちは彼らの「怨」の力に勝てるのか。そして「影」のリーダージェドの正体と目的は・・・!

 劇場版の前作は劇場では見ていなくて本作公開に合わせてTV放映されたものを観賞。ジャンプに連載もされたエピソード0の部分は冨樫義博らしいな、とは思ったものの全体としてはイマイチな感じだった。一応前作も本作も原作の中に組み込まれる形をとるのだろうか。少なくと映画オリジナルのパラレルワールド的展開ではなく、TVシリーズのアニメ版とは同じ世界ということで時系列的には「グリードアイランド編」が終わってゴンとキルアがカイトと出合い」彼らとともに生物探索をしていた後に一時的にカイトたちと別れて天空闘技場を訪れた、という形らしい。なのでこの後「キメラアント編」に突入するその直前といったところだろうか。ただ、同じ劇場版が原作に組み込まれる形をとる「ONE PIECE」の「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」や「ONE PIECE FILM Z」に比べるといまいち馴染んでいないというか作品の出来不出来はともかく原作を読んでいても「?」となる部分は多い気がする。
 今回の舞台は天空闘技場だが、もう天空闘技場のフロアマスターって劇中の強さの位置付けではかなり下位に位置する人たちなんだよね。それを象徴するようにキャラクターデザインはやっつけというかみんなフリークスみたいな感じ。最初から彼らはかませ犬だな、という雰囲気がプンプンした。一方ゴンたちの敵役となる劇場版のキャラクタージェド、修羅、煉獄、餓鬼はデザイン的には皆美形悪役という感じか。少女のキャラクターである煉獄を除くと冨樫義博っぽくはなく僕はてっきり桂正和がゲストデザインしたのかな、と思ったのだが、違うのかな。彼らは「念」とはまた別の「怨」という能力を使う、と言っているがまあ根本的には「念」と同種の概念でいいと思う。クラピカが幻影旅団のクロロに念の刃を刺した後、もしも不用意にクラピカを殺してしまえばその念は使用者の怨念で増幅され逆に消えることなく刺された本人が死亡してしまうこともあるから、まずは除念が必要、ということが原作劇中で語られていたが、この死んだ後に増幅した怨念による念を生きているうちに使用できる様になった物が「怨」と言う解釈が妥当かな、と思う。実際煉獄の能力は彼女の死と連動しているし、そもそも彼らはジェドの血液?を体内に入れることで一度人間としては死亡している、ととれる描写もある。

 アニメの動きとしては戦闘シーン、特にジェドたちの動きはとても良かったです。ただむしろゴンたちの描写が変に萌えアニメっぽいというか冨樫義博の画風とも違う「アキハバラ電脳組」みたいな斜めを向いた時の顎の形がフニャとなってて、ちょっと変だった。
 出演はレギュラーキャラクター以外はジェドに中村獅童、修羅にキャイ〜ン天野ひろゆき、そして煉獄に山本美月といういわゆるタレント吹替。僕は事前には知らなかった。でも山本美月はほとんど台詞はないので特に気にならず。中村獅童は本人同様ちょっと美形と言うより苦みばしったキャラの方が似合う声だと思い少し違和感が合ったけれど、そもそも顔は思い浮かばなかったのでまあよし。そして台詞も多い修羅の天野ひろゆき。彼は確かに普通にいい声で彼の声が出てきた時には「あ、これは天野くんか」と分かったけれどそれでも修羅の声として普通にうまいし違和感は全くなかった。よくタレント吹替の批判として「先に演者の顔が浮かんでしまう」というのがあるけれど、今回は浮かんだけれどそれでも普通に美形悪役として見事だった。前回の「プレーンズ」でも書いたけれども、ここ最近観たアニメ作品に限って言うとタレント吹替は概ね成功していると言っていい。
 物語は無理にレギュラーキャラクター(ゴン、キルア、クラピカ、レオリオ、ヒソカ)を出そうとする部分と原作・アニメと連動させようとする部分とのすり合わせがあまりうまく言っていないような気がする。原作に近づけるのなら劇場版だからって無理に(キメラアント編時点で物語に絡んできていない)クラピカ、レオリオ、ヒソカの3人を出さなくてもいい気がするし、逆に全員出さなきゃってことなら完全に劇場版のみのパラレルワールドとして方が良かったかも。フジテレビ版はアニメオリジナルエピソードも多かったので劇場でオリジナルな展開も違和感なかったけど、日テレ版は例えば「銀魂」の「新訳紅桜篇」みたいな原作のエピソードを再構成して、という劇場版の方があっているのではないかなあ、などと思う。
 今回は原作を読んでいない人、アニメも見ていない人には少し不親切な作りであるけれど、原作を読み込んでいてもちょっと不満が出るという作品ではある。それでも色々気になるワードが出てきたりして全く否定する気にはなれない。

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 一応ジャンプ関連映画。好き嫌いはあるだろうけどアニメオリジナルの劇場版を原作の中に組み込んで位置づけようという試みとしてはこちらの「ONE PIECE」の方が成功しているとは思います。
 そして、TVの方はいよいよキメラアント編も佳境!王直属の護衛隊とゴンたちの対決、そしてネテロ会長と王の対決。人間の悪意が見れるぞ!

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