The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

志は高く低空飛行 プレーンズ

 新年早々嫌なこともあったりしたけれども、今年も頑張っていきますよい!さて、しばらくは昨年観た作品の感想が続く予定。今回はピクサーの「カーズ」シリーズと同じ世界観の話を描いた「プレーンズ」。要するに今までは自動車だったけど、今回は飛行機というわけですな。

物語

 農薬散布機のダスティーの夢は世界一周の飛行機レースに参加すること。元々レース用機体ではない彼は周りからバカにされながらも予選に参加するがあと一歩及ばず敗退する。しかし予選突破者がドーピングで失格になり繰り上がり突破。夢の世界一周レースへの参加が決まった。ダスティーは街に住む退役戦闘機のスキッパーの指導を受けながら本番に備えるが、実はダスティーには高度300m以上に上昇できない高所恐怖症という重大な欠点を抱えていたのだ!

 3月公開のディズニーの新作映画「アナと雪の女王」からの抜粋シークエンス「Let it go」が上映され、てっきり同時上映かと思ったのだが、どうやら違くていろんな作品の上映前に公開されてるみたいだ。「塔の上のラプンツェル」の更に進化したような感じでそれ自体は素晴らしい出来だったのだが、その後いろんな作品を見る際にもついてきて公開2ヶ月前に既にちょっと飽きてきた。
 で、本編の「プレーンズ」に入る直前に続編の「プレーンズ ファイアー&レスキュー」の予告編が流れてちょっと唖然としてしまった。いや流すのはいいけど終わった後にしてよ。まだダスティーがどんなキャラかもよくわからないのに「今度はダスティーが消防士に」みたいな事言われても困りますよ。どうやら全3部作となるらしいです。
「カーズ」は僕は2の方を先に見て同じ世界観、登場人物で合っても1と2では物語のジャンル自体が違うのであとで1の方を見て逆にびっくりした口。「カーズ2」公開当時は「1と違う」って感じで低評価が多かった気がするなあ。
前作の記事はこちら。

どこでもありのまま カーズ2

 そして、僕も勘違いしていたし、意外と多くの人が勘違いしていると思うのだけれど、これはピクサー作品ではないのだな。確かに冒頭に「カーズと同じ世界に基づく」と出てくるし制作にジョン・ラセターの名前もあるが、これはあくまでディズニートゥーン・スタジオ作品。最後まであのピクサーロゴが出てこないので初めて気がついた。元々は劇場公開用ではなくオリジナルビデオ作品として制作されたのを劇場公開したらしいのだが、確かに一本の劇場公開作品というにはちょっと色々と物足りない部分が目立つ作品だった。いやもちろん映像は素晴らしいし物語だって決してつまらないわけではなく水準以上だと思う。ただ脚本はやはり練が足りないというか、悪い意味で子供向けだからこんなもんでいいだろ、という感じが透けて見えてしまう。
 例えばダスティーが農薬散布機という自らの出自に誇りを持っていない風なところ。「農薬散布機でもやれば出来るんだ」ではなく「オレの才能は農薬散布機にしとくにはもったいないぜ」という感じ。途中でレースには余計な備え付けの散布機を取外し、そのおかげで好成績を残すのだが、これがその後全く出てこないのだな。ラスト近くボロボロに成ったダスティーが皆の協力で綺麗にレストアされるのだが、個人的にはこの時に取り外した散布機をあえて取り付けて農薬散布機としてのアイデンティティーを取り戻しつつ最後はそれをうまく利用して勝利する、みたいな展開だったら文句なかったのに。
 また、高所恐怖症という設定も克服するわけではなく、高所恐怖症なら高所恐怖症なりに頑張る、という設定なのでちょっと消化不良。まあもしかしたらこの辺は続編でさらなる課題として取り上げられるのかもしれないが。
 後はこれは「カーズ」という世界観そのものに付いてだんだんシリーズを重ねると色々気になるところも出てくるもので、例えばダスティーが農薬散布するその農作物は一体あの世界では誰が食べるのか?全部バイオ燃料になるのか?とか疑問が浮かんだりするのだけれど、この世界は人間が全くいないからなあ(農作物に関しては実際バイオ燃料となるようだ)。スキッパーの回想では太平洋戦争当時の日本軍との戦闘が出てきたりするのだが(絵的には一番迫力があるところかもしれない)、そうやって遡って行くと産業革命以前の彼らはどうなっていたのかなあ、とか疑問が次々出てきてしまう。まあ人間の代わりとしての乗り物意外にも牛代わりのトラクターや羽の生えた虫のような自動車とか出てくるので余計にわかりづらい。彼らは生まれるのか作られるのか、とこの辺は前作の時にも浮かんだ疑問だった。シリーズが増えれば増えるほど矛盾は出てくる世界観ではあるなあ。

 今回は日本語吹替オンリーの公開体制のようだ。主人公ダスティーの声は瑛太ででもこれが予想以上に上手い。普段の瑛太の演技を思い浮かべても全然別物。きちんと3DCGアニメの演技となっている。ここ最近「ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE」「劇場版 HUNTER×HUNTER -The LAST MISSION-」そしてこの「プレーンズ」とアニメ作品が続き、そのどれもにいわゆるタレント吹替が合ったのだけれど、いずれも予想以上にうまくてびっくりしたのだった。僕は必ずしもタレント吹替絶対反対というわけではないので、単なる宣伝目的ではなくきちんと適材適所でキャスティングしてくれたら問題ないです。
 でもスキッパーが石田太郎だったりベテランも普通に出ていて声の点では申し分なし。英語版ではテリー・ハッチャージョン・クリーズヴァル・キルマーなんかも出てるみたいです。
 日本代表の機体としてサクラというキャラが登場し、ダスティーの盟友となるメキシコのエル・チュカパブラが恋に落ちるのだが、このサクラと言うキャラはオリジナルではカナダ代表のロシェルでデザインも微妙に変更。その他公開される各国に合わせて設定と名前、デザインが変更されるみたいです。この辺はCG制作で容易になっているんのだろうか。僕はその昔のユニバーサルの「魔人ドラキュラ」がヴェラ・ルゴシ以外に同じセット、脚本を使ってしかし別キャストで同時にスペイン語版を作った、というのを思い出す。ちなみにサクラを演じているのは仲里依紗です。この人に関しては最初に知ったのがアニメの方の「時をかける少女」だったりしたので全然違和感はないですね。
 ダスティーのお相手となるヒロインはインド代表のイシャーニ。彼女は敵役のリップスリンガーに買収されて新型プロペラを装備し、しかし最後はダスティの熱意に打たれそのプロペラをダスティにプレゼントするのだが、でもこのプロペラ元はリップスリンガーのものだよ。しかもそのカラーとかをそのまま使用するからちょっと残念。色ぐらいは塗りなおして欲しかった。「ティターンズカラーはお嫌でしょ?」という台詞が見ていて脳内に浮かんできてしまった。

 面白いことは間違いないです。ただやはり元がビデオ用だったせいか脚本にしても作りこみが甘いなあ、という感は拭えない。それでも飛行シーンや回想の戦闘シーンなどはとても迫力があったので劇場で観る価値はあると思う。続編にはもうちょっと完成度の高いものを期待したい。でも普通におもしろいとは思うので見て損はないです。

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