The Spirit in the Bottle

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悪夢と家族 少女と巨漢 その1 サイレントヒル リベレーション


 7月の「絶対観るぞ!」ムービーは「サイレントヒル リベレーション」と「飛びだす 悪魔のいけにえ」の2本。その両方をやっとのことで観ることが出来ました。両作とも大好きなシリーズで、無論決して第1作を超えることは出来ないのは承知のうえでの観賞ではありますが、それでも観ること自体がもうイベントと化しているので十分満足でありました。
 両方共3D作品。日本公開が7月12日、13日と近いのですがそれ以外にもいくつか共通点がある作品でした。とりあえず先に「サイレントヒル リベレーション」の方の感想を。

物語

 ローズ・ダ・シルヴァは養女シャロンの隠された過去を知るべくサイレントヒルに向かい謎を解いたが現実に戻ってくることは出来なかった。ローズはなんとかシャロンだけ現実世界に戻すことに成功。ローズの夫クリストファーはシャロンを守るべく名前を変えながら逃亡生活をすることとなる。
 18歳になったシャロンはヘザー・メイソンと名乗り新しい学校へ。クラスメイトと壁を作るシャロンに声をかけたのはやはり転校生のヴィンセントだった。下校時に彼女を探していたという探偵に出会うが彼はシャロンの目の前で謎の化け物に殺されてしまった。ヴィンセントに助けられ家に帰るもそこにはクリストファーの姿はなく壁には「サイレントヒルに来い」という血文字が。シャロンは再び忌まわしきサイレントヒルに向かう・・・

 何度か書いているけど僕は映画第1作が好きで、昨今は珍しくもなんともなくなったTVゲームソフトの映画化作品としては一番出来が良かったと思っている。監督は「クライング・フリーマン」「ジェヴォーダンの獣」のクリストフ・ガンズ、脚本はロジャー・エイヴァリーという豪華制作陣だった。僕はゲームの方はプレイステーションの1作目しか遊んでいないが、それでもこの1作目はやりこんだ思い出のゲームのひとつ。ゲームをそのまま映画化するのではなく映画ならではのアレンジも効果的で特に最後のクライマックスの一大虐殺シーンは恐怖と後ろめたさと爽快感が合わさった素晴らしいシーン。この時点では知っている役者はショーン・ビーンロード・オブ・ザ・リング)とアリス・クリーグ(スタートレック ファースト・コンタクト)の二人のみだったが、それ以外にもラダ・ミッチェルデボラ・カーラ・アンガー、ロリー・ホールデンなども素晴らしかった。しかしなんと言っても重要なシャロン/アレッサ役としてカナダの女優ジョデル・フェルランドが素晴らしかった。劇場で観たのはどちらが先か忘れたが、同時期にテリー・ギリアム監督の「ローズ・イン・タイドランド」にも出演していて確実に僕の中に彼女の名前が刻まれた。最近は「キャビン」「パラノーマン」などにも出ており、主にホラー映画ではあるが確実にキャリアを増やしている。特に「パラノーマン」における彼女の役どころアギーは「サイレントヒル」のアレッサへのオマージュが感じられ彼女が一種のアイコン化しているのが分かる。余談だがジョデル・フェルランドはまだ18歳。おそらく出演作にホラーが多いのはカナダで撮影される作品にのみ出演する、という制約があるからではないかと推察する。もうちょっと経てば広くアメリカ映画で彼女の活躍する姿が観れる様になるかもしれない。
 今回の続編、「サイレントヒル リベレーション」はもちろん続編であることは知っていたのだけれど、実はそんなに事前情報は得ていなくて、スタッフが総入れ替えのあまり続編という意識は持っていなかったのであるが、結構1作目のキャストが続投していて、物語的にも意外なほど続編としての色合いが濃かったのがびっくりだった。ショーン・ビーンデボラ・カーラ・アンガーが同じ役で出演していて、さらにラダ・ミッチェルも出ている。ただ、ラダ・ミッチェルのシーンは直後に出るシャロンがジョデルっぽい部分もあったのでもしかしたら前作からの未使用シーンか何かかな、と思ったのだがどうなんだろう?また、前作での悪役に当たるアリス・クリーグが演じたクリスタベラなどもセリフで言及され、前作を見ていない人には結構不親切な作り。
 ここまで前作のキャストが出ているとやはりシャロン/アレッサ役にはジョデル・フェルランドに続投してもらいたかったというのが本音だが、まあ今回の金髪・ショートヘアのシャロンはあんまりジョデルでは似合わなかったかな、という気もする。物語的にもちょうど前作から6〜7年経ってるし年齢的には全くジョデルで良かったと思うのだが、やはり撮影場所などの問題か。と思ったらこの映画セットが立てられたのはトロントだというので別な理由か。
 新しい、シャロン(ヘザー)/アレッサ役はアデレイド・クレメンス。僕が観た作品では岩井俊二の「ヴァンパイア」でレディーバードを演じていたとても少女っぽい女優さん。ミシェル・ウィリアムスやキャリー・マリガンに似た目鼻立ちがくっきりしたと言うよりは赤ちゃんを想起させる日本人好みの容貌というべきか。「華麗なるギャツビー」にも出てたらしいがちょっとその時は気づかなかった。

 クリストフ・ガンズに変わり監督したのはイギリス出身のマイケル・J・バセット(脚本も)。先述した通り僕は原作となるゲームは1作目しかプレイしていないが、それでも今回は「ああ、ゲームの映画化っぽいな」という感じはした。定本となったゲームはプレイステーション2で発売された「サイレントヒル3」だそうで、もちろん僕は未プレイなので細かい差異は分からないが、ゲームならではの「お使いを果たしたら次のお使い」みたいな流れがとてもゲームっぽくうまく映画にアレンジしきれてないな、という感じ。もちろん前作もそういう部分はなかったわけではないのだが(小学校に行って、ホテルに行って・・・)そこはうまく映画的アレンジがされていて違和感は感じなかった。
 キャラクターの名前で言うと、前作はゲームではシャロン父親が主人公だったが映画では母親に代わり名前もローズ・ダ・シルヴァとクリストファーに変わっていた。今回の続編では逃亡中の偽名としてクリストファーが1作目の主人公ハリー・メイソンを名乗って整合性をつけているのが面白い。
 前作では燃え続ける地下火災(アメリカ、セントラリアの炭鉱火災がモデル)によってゴーストタウンとなった「表のサイレントヒル」と雪のように灰が降る霧に包まれた「裏のサイレントヒル①」とサイレンとともに赤銅色に変化しモンスターが跳梁跋扈する「裏のサイレントヒル②」があるが、今回は「表のサイレントヒル」はなかったことにされ自動的に「裏のサイレントヒル①」に入り込むことに。また前作ではアレッサによって全滅したと思われた教団には残党(あるいは同教団内の別の党派か)がいたのか街の外には出ることは出来なかったのに、特種な印を身体に刻むことで外の世界へ出ることができるようになり、シャロンたちへの追手となる。
 シャロン以外の新しいキャストとしては、まずヴィンセント役のキット・ハリントン。ひとの良さそうな感じでヒーローとしては頼りにならないが好感は抱ける。今回の教団の指導者(そしてヴィンセントの母親)であるクローディアには「マトリックス」シリーズのキャリー・アン・モス。このクローディアは前作のクリスタベラと今回も出てきたデボラ・カーラ・アンガー演じるダリアの姉に当たる。一応のラスボス的扱い。ただ、前作のクリスタベラほどの狂気さは感じなかったかな。このクローディアやゲームでのダリア、映画のクリスタベラはもともとゲーム「サイレントヒル」のモデルとなったスティーブン・キングの「ミスト」のカモーディ夫人の影響を受けたキャラクターなのかな、と思う。そしてこの三姉妹の父親で今はクローディアによって精神病院(といっても治療らしきことはゼロ)に拘束されているのがマルコム・マクダウェル。この人もすっかりいろんな映画のスポット参戦が当たり前になってしまったが、正直映画における位置付けが不明で脱出に必要なメダルを完成させるためだけに出てきた感じだが、もうちょっとなんとかならなかったかなと思う。出すにしてももうちょっと意味のある役を・・・
 
 登場するクリーチャーはマネキン人形で構成された蜘蛛みたいなモンスターは外見も動きも面白かったけどやはりこのシーンだけでの登場で「とりあえず出しました」って感じ。前作から登場しているレッドピラミッドと動きや光に反応するダーク・ナースは今回も活躍。ダーク・ナースは今回も危うい「だるまさんがころんだ」を見せてくれるが、それにしても教団の奴らわざわざあの部屋に連れて行ったのに(おそらくあの部屋にナースがいることを知って)何の対処もできず死んでいくのが結構間抜け。
 レッドピラミッドは最初は当然敵として出てくるが、後にシャロンがアレッサ(アレッサは狂信者である叔母たちの手によって火刑に処され、その火でサイレントヒルは火災が続いている。動けないアレッサは自分の善なる部分としてシャロンを、復讐心の具現化としてダークアレッサを創りだした)と一つになったことで逆にシャロンのボディーガード的存在となる。そして最後は完成した印の力で父親同様クリーチャーと化したクローディアと戦う。このクローディアが変身したクリーチャーも造形はともかく動きがカンフー映画のような素早い動きで正直「サイレントヒル」の雰囲気には合っていなかったと思う。
 前作における10歳前後のアレッサの描写もあるがやはりジョデルにはかなわないのである。またアレッサの存在が随分単純化されているような部分も気になるところである。

 全体としては今回はゲームの映画化であるよりも映画「サイレントヒル」の続編にこだわって作ったほうが良かったんじゃないか、と思う感じで、前作との整合性が釣り合わなかったりする部分も多い。まあそれでも作品を観ること自体がイベントとして楽しいものであったし、細かく文句は言っても大きくは満足した。3D作品ということだが今回は2Dでの観賞。観る限りそんなに3Dぽい部分はなかったように思えるがその辺は保留。
 次回作があるなら、ゲームのシリーズとは切り離して映画シリーズ(世界観が1作目同士の時点で既に違う)としての作品を作って欲しいと思う。

サイレントヒル

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 映画「ミスト」の感想。少し「サイレントヒル」について触れています。旧ブログ。
 
魔女?死者?あの子と話そう パラノーマン ブライス・ホローの謎
 個人的には前作と姉妹作のような関係にあると思っているストップモーションアニメーション作品。
 「パラノーマン」の映像で「サイレントヒル」の予告編というMAD動画もありました。

で、続けて観た「飛びだす 悪魔のいけにえ」と「サイレントヒル リベレーション」には最初に述べた通り色々共通点が多かったのだが、その辺は次回!