The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

炎の少女カットニス ハンガー・ゲーム

 タイトルは「炎の少女チャーリー」のノリで。
 おそらく、人間がただ快楽のために娯楽として嗜む行為の原点には「人間同士が争う様を鑑賞する」というのがあると思うのだけれど、現在でもそういう点はプロレス、ボクシング、柔道など格闘技観戦につながるだろう。さすがに現在においてはリアルに殺しあうさまを楽しむなどというのは表社会には出てこないが、フィクションの世界ではよく出てくる設定である。少年少女が殺し合いをし、それを人々が楽しむという世界を描いた「ハンガー・ゲーム」を観た。

物語

 未来。北米の国家、パネムでは過去に反乱を起こした12の地区を首都のキャピタルが支配している。各地区から少年少女一組を選び出し一人になるまで殺し合いをさせる「ハンガー・ゲーム」は各地区と国民を支配するための見世物。毎年開かれ国民は熱狂していた。
 炭鉱を生業とする第12地区に住む少女カットニスはプレイヤーを選ぶ「刈り入れの日」に選ばれた妹に代わって志願する。彼女に思いを寄せるピータとともにキャピタルに向かうカットニス。彼女たちには過去の優勝者で教育係に当たるヘイミッチや衣装係のシナなどがチームとして携わる。2週間の訓練を経てスポンサーを確保するといよいよハンガー・ゲームが始まる。24人の参加者中生き残れるのはたった1人・・・

 実は正直、それほど興味がわかなかった。原作はいわゆるヤング・アダルト小説で予告編などでも「アイ・アム・ナンバー4」とか「トワイライト」系のとりあえず美男美女が出てくる(だけの)映画だと思っていたのだ。でも観てみたら意外に面白い映画だった。
 少年少女が殺しあう作品、ということで「バトルロワイヤル」との類似が指摘されていたりするけれど、この手のデス・ゲームというのは何も「バトル・ロワイヤル」が最初ではない(あの作品はスティーブン・キングの「死のロングウォーク」という作品に影響を受けているし、僕は手塚治虫の「火の鳥 生命編」を思い出す。キングの別作品に「バトルランナー」があり、なんといっても「デスレース2000年」があるようにさして珍しいものではない。
 歴史的には多分、古代ローマの剣闘士がそういう物の初めに近いのではないかと思うが、多分この「ハンガー・ゲーム」の作者(スーザン・コリンズ。脚本や製作でも関わっている)が意識したのも古代ローマのそれだろう。その証拠というわけではないが登場人物のうち、体制側あるいはカットニスと敵対する者の名前がコラリオラヌス、シーザー、セネカ、ケイトー(カトー)など古代ローマ風の名前になっている。おそらく(原作は読んでない)物語的にはスパルタカスの反乱を元にした展開になっていくと思われる。
 ハンガー・ゲームの舞台となるのは一見豊かな自然に囲まれているがその実全てを完全制御された空間。ゲームそのものは完全な実力勝負と言うより、多分に主催者側の恣意的な操作が入るもので主人公のカットニスにはスポンサーが付いているため要所々々で特別アイテムが貰えたり、カットニスが進みすぎるとかなり強引な手段で押し戻したりする。そもそも同じキャピタルに隷属する12の地区の間でも更に差はあり、裕福な第1、2地区では小さい頃からゲームに出場するための訓練を受けた少年たちが自ら志望するのに対して(優勝者もほとんどこの地区から誕生)貧困の激しい11、12地区は選ばれたらほぼ死に至ることが確定的となっている。
 実際問題として本当の殺し合いなんて見て楽しむ、なんてことよほど精神が壊れているか、周りの環境がそういうものを当たり前と思っている状況じゃなきゃ難しいと思うのだが*1、それにしても劇中出てくる「過去の大会のハイライト」が廃墟で馬乗りになってがれきで殴りつける、というものなのだからカタルシスも何もあったもんじゃない(いや、TVゲームなんかでは僕もひたすら殺戮に勤しむ鬼畜プレイやったりしますけどね)。
 まず、ゲーム開始が24人全員同時スタートで目の前には武器の山があるってシチュエーションがおかしいよね。ゲームとしてのバランス悪すぎ。案の定この時点で凄惨な殺戮が起きて一気に12人減ってしまう。とはいえあれがゲーム開始最初の(劇中観客の楽しみにする)見せ場なのだろうか。そのあとは個人で頑張る者、チームを組むものが現れゲームは進んでいく。
 一応劇中行われるのは第74回ハンガー・ゲームということで少なくとも現在より100年ほどは進んでいる社会である。特に説明はされないが科学力は進んでいて、12地区の前時代的な暮らしぶりとは対照的になっている。ゲーム内でもひどい傷が一日で治ってしまう薬や遺伝子改良した生物などが登場する。ラスト近く、主催者側が無理やりゲームを締めに持っていくために放された猛獣がよく分からないのだが、事前に用意されていたのではなくその場で創りだされたようなセリフでどういうクリーチャーなのだろう。ただ、あの猛獣だけいかにもCG生物な感じでこの映画の中ではちょっと白けてしまったかなあ。

 事前に出てると知っていたキャストはジェニファー・ローレンスドナルド・サザーランドの二人だけで、後はこれからな若者たちばかりなのだろうと思ったらいきなりスタンリー・トゥッチが出てきたり、ウディ・ハレルソンが出てきたりしたのでビックリしてしまった。トゥッチはゲームの解説者で事前に出場者の少年少女にインタビューしたりしてくる。ウディ・ハレルソンはカットニスたちを教育する過去の優勝者ヘイミッチ。具体的に訓練をつけるというよりゲームにあたっての心構えを説く、という感じ。その他エリザベス・バンクストビー・ジョーンズ。バンクスは化粧が濃すぎて最初はパーカー・ポージーかと思ったぜ。トビー・ジョーンズは未来のアデランスの中野さんという感じですね。
 そして、衣装係のシナはレニー・クラヴィッツジェニファー・ローレンスは以前「X-MEN ファースト・ジェネレーション」で娘のゾーイ・クラヴィッツと共演してましたね。
 若者たちは主人公カットニスにジェニファー・ローレンス。元々すごい美少女という感じの人でもないし、前半のすっぴん&下膨れ顔で結構辛いのだが、意志の強さというか、単なる外見を越えた描写で美しく見えてくるから不思議だ。ちなみに妹のプリム役の子とお母さん役の人はダコタ・ファニング系の目の大きな美女(美少女)なのだけどカットニスだけちょっと家族の中で雰囲気違うね。
 カットニスと同郷で互いに少なからず思っている仲なのがリアム・ヘムズワース演じるゲイル。名前の通りソーことクリス・ヘムズワースのロキじゃない方の弟。クリスとメル・ギブソンの若いころを足して2で割ったような顔。今回はほとんど出番はないが、続編で活躍するのか。一足早く彼の活躍が観たい方は「エクスペンダブルズ2」をどうぞ!
 カットニスと同じ第12地区から選ばれたプレイヤー、ピータを演じるのがジョシュ・ハッチャーソン。「センター・オブ・ジ・アース2」で主人公なのに一番目立たなかった(今書きながら調べて初めて「センター・オブ・ジ・アース2」の彼だと知った)彼だが、よく見りゃ典型的な白人のハンサムガイ。と言うより最近のトレンドだとドラコ・マルフォイ系のいじめっ子な敵役が似合うルックスだと思う。実際敵役となるケイトー役の人も白人ハンサム。ところがこれが実にいい役なのだな。ピータはカットニスに惚れており、また彼女の実力を知っているので自分は彼女のための捨て駒になろうとしている愛の人でもある(このゲームはあくまで1人だけが優勝者であり同じ地区出身でも最終的には敵となる)。やがてカットニスもピータを見直して、そしてそれはテレビ中継され故郷で見ているゲイルは・・・という次回に含みをもたせた展開。

ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)

 最初に期待しなかったせいもあるが、とても面白かったです。すごい派手というわけでもないし、前半とても丁寧に描いているので人によってはテンポが悪い、と思う人もいるだろうけどきちんと世界観の描写がされていてよかったです。それこそ「バトルロワイヤル」と同じだと思って観に行くと痛い目にあうかも。
ハンガー・ゲーム2 上 燃え広がる炎 (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム2 上 燃え広がる炎 (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム2 下 燃え広がる炎 (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム2 下 燃え広がる炎 (文庫ダ・ヴィンチ)

 続編も順調に製作中のようです。
 
 さて、こっからは長めの愚痴。今回僕は109シネマズで料金の安い日に観に行ったのだが、その時にとても酷い目にあってしまった。最初の指定席は両側に巨漢が座りその圧と匂いと口の中でくちゃくちゃする音が耐え切れず、本編が始まってこれ以上入場者が出ないのを確認した後トイレに行くふりしして席を立ち、一番前に移動したのだが、今度は2列ほど斜め後ろの方に座っている爺さんが、袋から食べものを出しながら食べだし、更にいちいちうるさかったりしてうんざりしてしまった。映画自体は面白かったのでなおさらそんな映画体験が残念。結局映画が終わって他の客が全員出ていって1人ぐったりしてたら劇場の人に「大丈夫ですか」と声をかけられ、後ろを向いたらその爺さんの座ってた席の足元に食い散らかしたゴミが広がっているのを見てげんなりしてしまうところまでが映画鑑賞。例えば仮面ライダーの映画とかを観に行って子供が映画に合わせて騒いだりするのは程度にもよるが全然許容範囲。むしろ子供向け映画なのにいい大人が一人で観に来てごめんね、とか思ってしまう。しかし大人は別だ。なんで事前にくどいぐらいマナー啓蒙CMやってるのに守れないんだろう。いや、まあ映画料金安い日は比較的マナーの悪い客が多いのは分かっていたのだけれど・・・
 
 というわけでこの「ハンガー・ゲーム」は別日にリベンジにを挑んだのである。今度はTOHOシネマズのプレミアムシート吹き替え版。吹き替えの出来も良かったし、座り心地も最高。最初からこっちにすれば良かったよ・・・
【教訓】109シネマズで見るときはエグゼクティブシートが取れない時は諦める!
ハンガー・ゲーム3 上 マネシカケスの少女 (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム3 上 マネシカケスの少女 (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム3 下 マネシカケスの少女 (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム3 下 マネシカケスの少女 (文庫ダ・ヴィンチ)

*1:最近、同じ事件を元にした「アメリカン・クライム」と「隣の家の少女」を見たのだが現実に起こった事件だとは思えないぐらい酷いものでした