The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

重要なのはどう生きるか メガマインド

 以前テレビ東京系で放送されていた「SHOWBIZ COUNTDOWN」という番組で紹介されていて少し気になってその後忘却の彼方に去っていたのだが、日本では結局WOWOWで放送されたきりで、ソフトも出ていない状態の作品、それがドリームワークスの3DCGアニメーション「メガマインド」だ。今回id:doyさんに貸していただいて見る機会があった。ありがとうございます。

物語

悪の天才メガマインドは正義のヒーロー、メトロマンとの戦いの日々についに勝利し、メトロシティを手に入れた。しかし生き甲斐を無くしたメガマインドは新たな宿敵を作ろうとする。代わりにヒーローになったのはこれまで何度も戦いに巻き込まれてきた女性ジャーナリストロクサーヌのスタッフ、カメラマンのハル。しかしスーパーヒーロータイトンとなったハルは悪に目覚めてしまう。メガマインドはロクサーヌとともにハルに立ち向かう。

 大雑把に言って「スーパーマン」を基本にアメリカのスーパーヒーロー物のパロディ。3DCGアニメのヒーローものというとピクサーの「Mr.インクレディブル」があるがあちらは「ファンタスティック・フォー」のキャラクターで「ウォッチメン」を再現、というような感じだったが、こちらはもっと基本的なヒーロー物のフォーマットについてという感じだ。
 冒頭、落下するメガマインドがこれまでの人生を振り返る。メガマインドは崩壊する惑星から両親によって脱出させられる。この展開はまんまスーパーマン。しかしそこに同じような境遇で地球に向かうもう一機の宇宙船が。ひとつは裕福な夫婦のもとに落ちメトロマンになり、もう一人は刑務所に落ちメガマインドとなる。二人は学校で出会うがことごとく対比させられる。
 人は生まれ(遺伝)によるのか育ち(環境)によるのか。もしも桃太郎が老夫婦の元ではなく鬼ヶ島に生まれていたら?その命題を突きつける。映画「大逆転」でも大きなテーマになっている。
 悪役を主人公とした作品と言うと「宇宙猿人ゴリ*1」とか「ウィザードリー4 ワードナの逆襲」とかが思いつく。「宇宙猿人ゴリ」はアメリカでも有名な作品なのでメガマインドの子分であるコブンギョの外骨格スーツがゴリラ風なのはその辺を意識しているのかもしれない。
 メガマインドとメトロマンが学校で出会う場面は「キン肉マン」のスーパーフェニックスが苦労して幼稚園に入ったのにキン肉スグルが王家の生まれというだけで入学出来た、という場面を思い出す。
 毎回なぜか拉致される女性ジャーナリストがいるとか、メガマインドが変装するスペースパパがマーロン・ブランド演じるジョー・エル風だとか基本は「スーパーマン」なのだが他のヒーロー作品のパロディも多く、例えばメガマインドにヒーローとなるべくスーパーパワーを与えられるがそれを悪用してしまうタイトンの名前ハル・スチュアートは「グリーン・ランタン」の2代目ランタン、ハル・ジョーダンと3代目ランタン、ジョン・スチュアートの合成だろう。
 また、メガマインドが特別コスチューム「ブラックマンバ」を装着するシーンやAC/DCが流れる場面は「アイアンマン」を思わせる。
 
 パロディであるがゆえにヒーロー物の本質を鋭く描いているとも言える。卵が先か鶏が先か。よく言われる悪党と正義の味方はどちらかが先か。
ダークナイト」でジョーカーはバットマンに「お前がオレを完璧にするんだ」と言った。You Completed Me.
あるいは自覚的にヒーローと悪役を演じるにはプロ意識がないとやっていけないとか。「Mr.インクレディブル」がオブラートに包んで上手くファミリー向けとして成功してるのに対してマニアックすぎるというか先鋭的すぎるきらいはある(それはある意味社風でもあって「モンスターズ・インク」と「モンスターVSエイリアン」を比べてもよく分かる)。まあ日本での公開は難しかったかな、というのも分かる。それでも面白かったけれど。

 今回は吹き替えでの放送でメガマインドを山寺宏一が演じているが原語版ではウィル・フェレル。そしてメトロマンをブラッド・ピットが演じている。ブラッド・ピットは自身の出演作ではヒーロー物とかないけれど「キック・アス」を制作したり本作に声の出演したり実はコミックスヒーロー好きのかな。

 メガマインドに扮するウィル・フェレル

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*1:後に「宇宙猿人ゴリスペクトルマン」を経て「スペクトルマン」に題名が変わってしまう