The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

実録犯罪コメディ? ピザボーイ 史上最凶のご注文

 「リアル・スティール」と「仮面ライダー」を観た同日に最後の締めとして観たのが「ピザボーイ 史上最強のご注文」だった。ただ、先に観た2本が非常に熱量の高い映画だったのに対してこちらはどちらかと言うとマニア向けのコメディー映画。なので感想も先の二本が勢い良く書けたのに対して、ちょっとこちらは停滞気味。僕の場合こういう状態だとあんまりうまく書けなかったりするのでご容赦ください(予防線)。

物語

 ピザ宅配のバイト店員ニックは親友のインド人チェットと怠惰な日々を過ごしていた。チェットの双子の妹で彼女のケイトが就職で遠くへ越すことに。チェットにケイトとの付き合いを告白すると、怒ったチェットはかつてニックの親の浮気をばらし離婚に追い込んだ原因が自分であることを激白。二人は絶交してしまう。
 一方その頃、やはり怠惰に暮らす二人組がいた。兄貴分であるドウェインは宝くじで一山当てた退役軍人である父親を知り目に弟分の爆弾マニアトラヴィスとしがない毎日。あるとき父親にバカにされるのに限界が来たドウェインは風俗嬢の提案で父親の殺害を計画。殺し屋を雇うために10万ドルの準備に追われる。手っ取り早く10万ドル入手するにはどうすればいいか?たどり着いた結論が見知らぬ相手に爆弾を取り付け銀行強盗をさせること。ピザ屋の宅配員なら自分たちにたどり着くことはない。そして宅配を任されたのはニックだった・・・!

 そもそもこの映画を観ようと思ったのは昨年のスマッシュヒット「ゾンビランド」の監督/主演コンビによる新作であったこと。そしてストーリーを聞いてピンとくる人も多いと思うがこの映画こう見えて実は実際の事件を元にしている実録犯罪コメディとでもいうものであることだ。
「ピザ配達人(首輪爆弾)爆死事件」、とでもいうのだろうか正式名称はいまいち分からないが、2003年、ペンシルバニア州。ピザ屋の宅配員が突然銀行強盗の暴挙。金を受け取るもすぐに警察に囲まれる。彼は首輪をを示し、宅配先で首輪を嵌められ、銀行強盗をしなけければ爆発させると脅されたというのだ。見るとたしかにその首輪には爆弾が仕込まれており、解除は難しく、警察の爆弾処理班が来るのを待たずしてTV中継されたまま爆弾は爆発してしまう。当然配達人は即死、というショッキングな事件だった。

再現ドラマ付きのビデオ。ショッキングなのでご注意ください。その他にも「ピザ」「首輪爆弾」などで検索すると動画もたくさん出てきます。
 一応容疑者は捕まったらしいのだが詳しくは今もまだ不明などこまでも不気味で後味の悪い事件であった。詳しくはこちらなど→

首輪爆弾銀行強盗事件 その1 - Qたろうの、役にたたない読書案内

 映画では首輪でなくベストになっているし銀行強盗をした後も話は続く(そして主人公は死にはしない)がとにかく、この映画はそういう事件をモデルにしてることは明らか(とはいえパンフその他では不思議なくらいにこの事件については触れられておらず、いままでにない脚本、というい言い方をされている)。しかしそこがシリアスな実録ドラマではなくコメディになってしまうのが懐の深いところだ(とはいえこの事件自体はいずれシリアスに映画化されるだろう)。
 
 全体としてニックとチェット、ドウェインとトラヴィスのそれぞれのコンビによる漫才めいたトークを楽しむ感じなのだが、そこはいかにもタランティーノ以降の映画やサブカルについてのウィットに富んだ会話が多い。
 主演は「ゾンビランド」「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ。やはり天才よりはこういうボンクラ然とした役のほうがいいね。
 相棒のチェット役にはアジズ・アンザリ。僕はこの映画で初めて知ったがアメリカでのインド人のステロタイプなイメージって感じなのかな。「40歳の童貞男」に出てたインド人もこういう真面目だけど早口で喋る男、という感じだった。余談だがこのアジズ・アンザリのフィルモグラフィーに「40男のバージンロード」とあるがこれは「40歳の童貞男」とは別だよね。
 一方、チェットの双子の妹ケイトを演じるのはやはりインド系(パキスタン出身)のディルシャド・ヴァドサリア。最近僕のお気に入りでもあるフリーダ・ピントもそうだけどインド出身の女優さんって本当綺麗だよね。このディルシャドも誰もが納得する美人ん。というか南アジア、中東の人は他の地域より一般人でも基本的な美男美女の率が高いと思う。
 ドウェインを演じていたのは「トロピック・サンダー」で爆発好きの効果マンを演じたダニー・マクブライド。相方というか舎弟のトラヴィス(関係ないがトラヴィスという名前は即座にボンクラを思わせる名前。あんまりインテリな人物にトラヴィスという名前がついてるのは想像できない)はニック・スウォードソン。マクブライドとは似たルックスながら背の小ささなどで立場が伺える配役。

 前半は各コンビのボンクラ会話、いざ話が展開して結局チェットしか頼りにできないニックがチェットに相談し二人して銀行強盗のためにあたふたするシーンなどは面白いのだが、強盗が終わってしまうと急に失速してしまう。やはりこの辺は実際に無かった話だから落とし前をつけるのが難しかったのだろうか。個人的にはトラヴィスと殺し屋はともかくドウェインがまるでハッピーエンドのように終わってしまうのは少し違う気がしたなあ。一方でニックたちがまんまと10万ドルせしめるラストはそんなに気にならないんだけど。
 
 実際にあった犯罪をコメディとして描く、というのは一部成功しているが一部失敗している。まあ、スキーの目出し帽被っても明らかにばればれな二人とかスラップスティックに面白い部分も多い。

 原題は「30 Minutes or Less」で日本でもお馴染みのピザ配達のルール「30分以内に届けられなければタダ」みたいな意味ですかね。普段から30分以内に届けられるように奮闘している(しかし正直やりがいを感じない仕事である)主人公が爆弾をくくりつけられ規定時間内に金を用意するため悪戦苦闘する。
 ところでこういう時間厳守とかいかにも日本的な気がするけどピザ屋に関してはむしろアメリカ発なのだろうか。この辺は日本の出前の「苦情の電話が来てから『いま出ました』と応対する蕎麦屋」とかを見習いたいものだ。 

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