角なし角竜行状記 ウォーキングwithダイナソー
みんな恐竜は大好きだよね。巨大で、現生の生物のどれにも似ておらず*1、そしていまはもう滅んでしまって存在しない。そんな恐竜たちにはロマンと呼ばれるものが目一杯詰まっており、子供はもちろん大人も魅了してやまない。怪獣好きだけど恐竜は嫌い、という人もあんまりいないと思うし、特撮映画の原点に「キングコング」など恐竜が出てくる作品を上げる人も多いと思う。僕ももちろん大好き。というわけで恐竜の青春?を描いた「ウォーキングwithダイナソー」を観賞。
物語
現代。妹のジェイドとともにザック叔父さんの化石発掘に付き合わされたリッキー少年。小さい頃は恐竜好きだったが今はTVゲームのほうが面白い。二人が化石発掘に向かう中、一人自動車のそばでゲームに興じていると1羽のカラスがリッキーに話しかける。それは彼らの先祖、恐竜の物語・・・
今から7,000万年前、白亜紀末期のアラスカ。パキリノサウルスのパッチは兄弟の中でも身体が小さく味噌っかす扱い。ある日巣の外にでたところをトロオドンに襲われ、頭のフリルに穴が開いてしまったが、これが彼のトレードマークとなる。親友となるアレクソルニスのアレックスや兄のスカウラー、そして憧れのジェニパー。移動を繰り返す群れの中でパッチたちは大きくなっていく・・・
基になったのはイギリスのBBC制作のTVシリーズ「ウォーキングwithダイナソー〜驚異の恐竜王国」で舞台版もあったりする。今回の映画版はドキュメンタリー要素は省いてあくまでドラマとして作られている。僕はてっきりフルCGアニメーションのみの作品だと思っていたので冒頭でいきなりカール・アーバンが出てきたのでびっくりした。ザック叔父さんとして登場してまあ本当にちょびっとの出番なんだけど、なんとなく「センター・オブ・ジ・アース」シリーズのブレンダン・フレイザーやロック様(ドウェイン・ジョンソン)を思い出す役柄。あ、今ふと思ったけどブレンダン・フレイザーとロック様の共演映画観たいとつねづね言っていたけどそこにカール・アーバンも加えたいですね。
で現代からカラスが少年に説教する形で白亜紀へと続くのだが、この辺はもうすっかりお馴染みの恐竜の子孫は鳥類、という学説をなぞった形ですね。僕の子供の頃はまだティラノサウルスやイグアナドンが直立で尻尾引きずって歩いていたイメージが主流だった気がする。この映画の上映前に年明け公開の「獣電戦隊キョウリュウジャーVSゴーバスターズ 恐竜大決戦! さらば永遠の友よ」の予告編が流れて*2そこでは過去の恐竜モチーフ戦隊である「恐竜戦隊ジュウレンジャー」と「爆竜戦隊アバレンジャー」も登場する。予告編でもティラノサウルス型のロボである守護獣ティラノサウルス、爆竜ティラノサウルス、ガブティラが勢揃いするシーンもあるがそれぞれの時代のティラノサウルスの研究結果が反映されてて興味深い。ジュウレンジャーの頃はまだ直立歩行姿勢だが、アバレンジャーの時代は頭と尻尾が地面と平行になる姿勢。そして現在のキョウリュウジャーは姿勢はアバレンジャーと一緒だが、羽毛らしきものが装飾としてほどこされている。
この「ウォーキングwithダイナソー」も一部恐竜(主にディノニクス系)に羽毛が生やされている。が!実はこの羽毛が生えている恐竜描写、あんまり従来の恐竜・怪獣ファンには評判が良くない。やはり羽毛や体毛が生えていると恐竜独自の恐ろしさというかそういうものが削がれてしまうのだな。今後羽毛恐竜の描写が当たり前になり、そのもとで育った子どもたちが成長していけばまた別だが、やはり僕としてもあまり毛を生やしてほしくはないなあ、というのが正直なところ。この映画ではその辺を考慮したのか、はたまたそれが正しい描写なのか、メインの敵役として登場するゴルゴサウルスには毛が生えていないのが嬉しい。ゴルゴサウルスもティラノサウルスと同じ獣脚類だし生えているんじゃないかなあ、とは思うんだけど。
物語としては草食恐竜が主人公だし、児童向けなのでこんなものかな、という感じ。身体の小さい主人公が恋に冒険に頑張り、やがて群れを率いるリーダーとなる。そのまま、現代の例えば水牛の群れの話にしたって通じるような話で新味は正直ない。パッチの親友となるほぼ鳥に近いアレックスなんかはディズニー作品などでお馴染みの役柄だ。敵役としてはともかく恐竜自体を主人公にしたドラマを作るとどうしても肉食恐竜は主役にはなりにくいのかもしれないがやはり草食恐竜では物足りない。昔、子供の頃シートン動物記の「灰色熊の伝記」のティラノサウルス版みたいな漫画を読んだ記憶があるのだが、あの「灰色熊の伝記」の主役熊ワーヴみたいな孤高の肉食恐竜の誇り高き修羅の生き様を描いた作品があればもっと大人向け作品としていいんじゃないかな、と思う。
後はやっぱり恐竜たちだけの世界の物語だから人間との絡みがなくその大きさが実感しにくいのだなあ。映像化される作品に限ればやはり恐竜が現在に何らかの形で現れる、という作品のほうが僕は好きだ。
とはいえ、その恐竜の描写はCGアニメーションとはいえ、限りなくリアルに描いているのでまるで本当の白亜紀に行って実在の恐竜を録画してきたのか、と思うほど。この辺は確かに一見の価値ありだ。
今回は2D吹替版で観賞。主人公パッチの声はとんねるずの木梨憲武。けっして下手ではなかったがちょっとふにゃっとした演技で作品世界自体に合っていなかった気がする。また子供時代のパッチから声を担当しているのだが、例えば恐竜解説を担当した鈴木福くんが小さいころのパッチを演じ、解説を木梨憲武、とかのほうが良かった気がする。ほかは特に申し分なし。英語版はパッチにジャスティン・ロングくん、アレックスにジョン・レグイザモというちょっと異色のコンビ。これは英語の方が見たかったかも。またこれはもしかしたらの話だが、日本語台本は英語では沈黙の部分にかなり台詞を付け足しているのではないか、という気がする。昨年の作品だと「モンスター・ホテル」や「トランスフォーマー・プライム」などで見られたようないわゆる「日本側の悪のりが過ぎる」吹替か。個人的にはそういうのは嫌いでは無いのだけどね。字幕版を観ていないので何ともいえないが、この作品いわゆるリップシンクロしてない(それはおそらく英語版でも一緒だと思う)からそう思えるのかもしれない。
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