神よ、貴方はなぜ邪悪なものをよこすのですか？試練にしても酷すぎます!

　もともとカトリックというものはイカレポンチの養成所みたいなものではないかと常々思っていたのだが、どうやらその認識は間違いではなかったようだ。女性を徹底的に遠ざけ、妻帯はおろかセックスすら否定する。生まれるのは見事な変態だ。
　先週、今週の「松嶋×町山　未公開映画を観るＴＶ」は「Deliver Us From Evil　我らを悪から救い給え」。
　この場合の悪とは何か？それはカトリックの神父で司教として地元（カリフォルニア州、ストックトン）の信者から絶大な尊敬を受けてきたオリバー・オグレディである。彼は尊敬を受ける影で１０余年間に渡って信者の子供５０人以上に深い傷を残した。ズバリ書くと性的いたずらを繰り返したのだ。
　もちろん、歴史的に表向きは地元の名士だけど裏に回れば犯罪者なんてのはこれまでもたくさん存在した。ジョン・ウェイン・ゲイシー *1とかウィリアム・ブロディ*2とか。宗教家でもいわゆる生臭坊主の類はたくさん居ただろう。にもかかわらずオグレディの件が酷いのはバックのローマ・カトリック教会が事件を隠蔽しようとしたからである。
　銀河帝国皇帝パルパタイン(にそっくりな）ことベネディクト16世率いるバチカン市国は一独立国としては世界最小だが、ローマ・カトリック教会の総本山であり、ローマ教皇を頂点とし、信者数は全世界に10億人を越える世界最大の宗教団体ともいえる。
　司教はバチカンの管理によってそれぞれの教区へ派遣され、地元民の洗礼、結婚などの冠婚葬祭、礼拝などを取り仕切る。敬虔な信者にとって神父は人生の指導者であり、神の代理人だ。
　被害者の一人が教区の責任者に訴えた時の出来事が奮っている。被害者に「貴方は女性ですよね」と尋ね被害者がそうだ、と答えると「なら問題ない。もしも相手が少年なら聖書の教えに反するが」と（多少記憶が曖昧だけどおおよそこんな感じ）言ってのけるのだ。本当にできの悪いジョークを聞いているようだ。同性愛はロリコンよりも罪が重い！しかも実際はオグレディは少女だけでなく少年にも手を出していた。
　このドキュメンタリーで一番驚くのは、事件の当事者（現在はアイルランドに居る）オグレディが堂々と登場し半ばナレーターまで務めていることだ。教会は彼を事件が発覚しそうになるたびに別の教区に転々とさせた。結果として被害が拡大することになる。
　オグレディの上から目線の謝罪は気持ち悪くなる。

私は事件を認め謝罪の気持ちでいっぱいです。
私の謝罪を受けることで、
あなたは未来へと踏み出せるでしょう。

　
　後半はいよいよ事件が発覚するところから始まる。例えば教師が起こした事件で「被害者が悪い」とか言って減刑署名運動をしたりする輩がいるように最初は親たちは信じない。だが、徐々に自分たちの子供も被害にあっていたことを知るのだ。
　事件の発覚からわずか２ヶ月で結審。これも裁判で余計な事がもれないためだろう。司教と司祭のやり取りは告解（いわゆる懺悔）と同じだから公開できないといって情報の開示を拒否。語るに落ちるとはこのこと。そしてカトリックの司祭の犯した事件はオグレディのものだけではない。
　司教たちは被害報告を握りつぶし、その中にはベネディクト16世もいた。彼は司教の教育を司り、事件を防げる立場にいた。
　
　そもそも何故カトリックの司祭は独身なのか。聖書にはそんなことは記されていない。ユダヤ教もプロテスタントも仏教（宗派によるが）も聖職者の妻帯を認めている。映画の中では4世紀頃、聖職者の遺産を教会が手に入れられるようにするため、と説明される。また、事件を起こす神父の多くが神学校出身だが、実に学生の10人に１人が小児性愛者だという。
　
　ラスト、被害者たちがバチカンに乗り込む。結果は門前払い。
　彼女たちは再び信仰を取り戻せるのか。