The Spirit in the Bottle

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現実、虚構、現実への再変換 死霊館 エンフィールド事件

 前回記事の「シン・ゴジラ」のキャッチフレーズは「現実(ニッポン)対 虚構(ゴジラ)」だったのだけれど、このフレーズ(ニッポンやゴジラと言ったフリガナは無視)が一番しっくり来るのはやはり実際に起きた事件の映画化!を謳った実録映画の類であろう。現実はどうだったのか?それが映画化にあたってどのように脚色、虚構部分が追加されているのか?という部分でも楽しめる作品群である。
 今回観たのは多分2013年に当ブログで一番アクセス数を稼いだ(そのほとんどは「三角絞めでつかまえて」さんからのリンク)映画「死霊館」の続編。再び実在した超常現象研究家夫婦、ウォーレン夫妻の活躍を描いた第2弾「死霊館 エンフィールド事件」を鑑賞。

物語

 ペロン一家能事件を解決した後、ウォーレン夫妻はアミティビル事件の調査に赴く。そこでロレインは尼僧の格好をした邪悪な何かを見る。そして夫の死の幻視も。
 イギリス、ロンドンのエンフィールドでは母子家庭のホジソン一家、その次女であるジャネットの身に不可解な事態が起き、それはやがて警察や周囲を巻き込んでいく。最も長く続いたポルターガイスト現象とされるエンフィールド事件の始まりである。
 ウォーレン夫妻はエドの死を予感させるロレインの幻視に不安を抱きつつも事件の解決のためにイギリスへ向かうのだった……

前作の感想はこちら。

 現実では前回は1971年。アミティビル事件が1976年、そして今回の事件が1977年である。映画の中では比較的連続して3件の事件が起きているように描かれている(ウォーレン夫妻の娘に特に成長が見られない)。この3件、一応全て実際に起きた事件であるが(本当に心霊事件だったのかはまた別)、おそらく一番有名なのはアミティビル事件だろう。「アミティビルホラー」として「悪魔の棲む家」など映画化もされている(「amityville」で画像検索すると「horror」を付けなくてもあの特徴的な舞台となった家ばかり出てきます)。なので前回の最後に次の仕事がアミティビル事件とほのめかされた時は続編があるならガッツリアミティビル事件が舞台かな?とも思ったのだが、本作の冒頭部分であっさり終了。ただこの映画のスタンス(あるいは本物のウォーレン夫妻の見解か)ではアミティビル事件も実際に心霊現象があったもの、としてとらえられている(現実にはほぼ嘘だったことが判明済み)。
 本作の舞台となっているのはイギリスはロンドン。史上最も長く続いたポルターガイスト現象として有名だそうです。

 出演はウォーレン夫妻は前作に引き続きパトリック・ウィルソンヴェラ・ファーミガ。前回同様(基本はカトリックの立場から)、夫のエドが科学的に、妻のロレインが霊媒体質を使って霊感などに頼って調査、という役割だが、前回よりはっきりしているように思える。監督は前作同様ジェームズ・ワン。ホラーだけでなくアクション大作である「ワイルド・スピード SKY MISSION」もよく出来ていたのでもう安心して観れる監督ではあると思う。
 心霊現象の被害に遭うホジソン一家は子供4人の母子家庭。別れた夫がきちんとお金を入れてくれず経済的に困窮している。この辺は前作のペロン夫妻も同様だった。アミティビル事件も貧乏というわけではなかったが、色々と金銭的な問題が原因だ。貧乏が悪魔を引き寄せる。金持ちが悪魔に取り憑かれるのって女優の娘だった「エクソシスト」のリーガンぐらいじゃないか。悪魔が本当に人間世界を混乱させたいなら貧乏人を困らせるより金持ちに取り憑けばいいんだよ!てか金持ちが悪魔に違いない!きっとそうだ!(時期的にこの事件が映画「エクソシスト」の影響を受けた可能性も否定出来ない)
 ホジソン一家が住んでいるのはエンフィールドの家は前作の広い屋敷と比べるとロンドン郊外の建売住宅、というか日本で言うなら長屋に近い。もちろん日本より広いのだが同じ構造の家がズラッと並んでいる。なので前作に比べると幽霊屋敷、という印象は薄い。映画のトーンが全然違うけれど「パディントン(観たけど感想書いてない物件)」に出てきた家と似た造り。
 母親を演じているのはフランセス・オコナーでやはり前作での母親役リリ・テイラーと似た雰囲気に。このフランセス・オコナーはリリ・テイラーとは違って「悪いことしましョ!」(これも悪魔が出てくる!)の明るいイメージが強いので最初は気づかなかった。子供たちは女の子二人、男の子二人の構成で全員利発そうなお子さんで好感度大。特に重要な役割を果たすマディソン・ウルフはナタリー・ポートマンに似た感じの頭が良さそうな美少女。やはり前作のジェイミー・キングとはまた別の方向に頭良さそう。

 映画は上映時間も長く(133分)、ホラー映画としての部分と人間ドラマとしての部分がどっちも同じくらい充実しているので結構観終わった後にどっと疲れが来る。でも見応えがあるしとても良く出来ていたと思う。(超常現象の類を一切信じてないこともあって)僕自身はもうちょっと科学的見地によったものであってもいいんじゃないかと実録路線を謳う以上思うのだが(あくまでインチキ、ジャネットのヤラセを疑う女性学者がちょっと悪人ぽい印象で落ち着いてしまうのは残念)、映画としてはかなり面白かった。
 ところで「エクソシスト」でもこの作品でも舞台はイギリス(エクソシストの方はモデルになった事件はアメリカ)なのだが、わざわざカトリックの人間が悪魔祓いをするのがちょっと気になった。イギリスと言えば英国国教会。いわゆる新教だが他のプロテスタントとはちょっと成り立ちが異なるため、新教の中ではカトリックに近い教義や儀式を持つはず。プロテスタントは確か幽霊の存在を認めていないので仕方ないが国教会では解決できないのだろうか。


 ラストは前作同様、実際の事件で撮影された写真と映画のそれを再現したシーンを比べるようなエンドクレジット。
 で、やっぱり気になるのは現実のエンフィールド事件はどうだったのか?ということ。映画観終わった後軽く調べたのだけれど、あれ?もしかしてウォーレン夫妻は関わってない?!全く無関係ということではないみたいだけど、より深く関わっているのは映画でも出てきたモリス・グロス(演じるのはサイモン・マクバーニーで「マジック・イン・ムーンライト」で彼が演じた役柄と対称となるような感じ)で、彼は劇中でもちょっと彼の口から語られた娘の交通事故死をきっかけに心霊現象の研究に取り組んだそう。実際の事件の概要を読む限り、彼を主人公として彼と事件の関わりを中心に描いたほうがよほどドラマチックなんじゃないか、と思えた。もしこの映画が最初から「死霊館」の続編として企画されたのでなければ彼が主人公となっていただろう。あと、実際の事件は特に劇的な形ではなくある日突然ポルターガイスト現象は終わったそうです。得てして現実はそんなもん。

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 「死霊館」冒頭で出てきたアナベル人形の話を描いた外伝。ウォーレン夫妻は出てこない(というかウォーレン夫妻が関わる前を描いた作品)。アナベル人形は本作でもちょこっと出てきます。

監督の前作、前々作。

Conjuring 2 - O.S.T.

Conjuring 2 - O.S.T.

 前作の舞台のモデルとなった家は前作ヒットの後、家を訪れる人が後を絶たず家の住人がワーナーと監督を訴える事案が起きたりしているそうです。現実は虚構より怖い。げに恐ろしきは人間なり。