シェルターとゴーレム 10クローバーフィールド・レーン
ここしばらくブログも更新せず何をしていたかというと、5月下旬はずっと「銀河英雄伝説」のOVA(全110話)を第1話から見なおしていて、6月に入ってからは、なぜか急にドラゴンクエストがやりたくなって、DS版の「ドラゴンクエスト5」を引っ張り出してきて遊んでいたりしていたのであります。ちなみに「銀河英雄伝説」は中学の時に知ってから、なぜか定期テスト前の切羽詰まった時になると原作を第一巻から読み直す、という事があって、今回は原作でこそなかったけれど、その時の現実逃避に近い感覚だったのかも。ドラクエ5もそれに近いものがあって、幼少期から結婚、双子の子供とのヴァーチャルな生活を現実逃避して楽しんでおりました。ちなみにDS版の「ドラクエ5」はプレイ3周目なので、花嫁はデブラです*1。そして、ドラクエ5をクリアした後はそのままドラクエ熱が持続してしまい、今のところオンラインゲームである「ドラクエX」以外では唯一プレイしたことのなかったナンバリングタイトル「ドラクエ6」をプレイしているところです。
さて、そんなわけで家にいるときはずっとゲームをプレイしたりしていたわけですが、映画もそれなりに観ていたりはします。もう「劇場で観た映画は感想を書く」というこのブログの俺ルールは有名無実化したわけですが、アメコミ、スーパーヒーロー関係で「デッドプール」「変態仮面2」「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」は感想書きます(できれば6月中に)。ただ今回はちょっと別の映画を。J・J・エイブラムス制作の話題作「10 クローバーフィールド・レーン」を鑑賞。ドラクエの話題を冒頭に持ってきたのはちょっと本題とも関連あるからです。
物語
恋人との別れを決意し一人車を走らせるミシェル。しかし追突事故に遭い、車は転倒。気づくと見知らぬ場所に監禁されていた。監禁した主はハワードという初老の男。彼によると世界は何者かに攻撃され大気が汚染されたため外に出ると死んでしまうという。ハワードは自分の作ったこの地下シェルターへと急ぐ途中でミシェルの車に追突してしまい、怪我した彼女を救ってここに連れてきたという。シェルターには食料や水、エアフィルター、そして娯楽が完備してあり、何年でも暮らせるようになっていた。もう一人シェルターにはハワードのシェルター製作を手伝い、その縁でシェルターに逃げこむことができたエメットという青年がいた。ミシェルはハワードの言を信じず、脱走を試みるがその時エアロックで窓から恐ろしい光景を目にすることに。実際に外で何かが起きたことは確かだ。シェルターの中でミシェルとエメットそしてシェルターのボスとして君臨するハワードの3人の奇妙な生活が始まった。
タイトルと製作者J・J・エイブラムスから分かる通りあの「クローバーフィールド/HAKAISHA」の関連作。とはいえ物語は全然違っていて、一応続編らしいのだが世界観がつながっているのかも不明だ。共通点といえば主人公たちが謎の根幹に関わるわけではないので何も解明せず翻弄されるところだろうか。「HAKAISHA」は今のアメリカの怪獣映画ブーム(モンスターズとかパシフィック・リムとかゴジラとか)の先駆けと言ってもいい感じで怪獣そのものは魅力は薄かったが作劇にPOVを採用していて作品としては面白かった。映画そのものとは別にネット上で作品を紐解く上で重要なことが展開されていたりしてその辺でも面白かったものだ(もっとも僕はあんまりそういうのを見たりしないので謎は依然として謎のままだったのだが)。
監督は新人のダン・トラクテンンバーグ。TVシリーズ「バフィー〜恋する十字架〜」でサラ・ミッシェル・ゲラーの主人公バフィーの妹ドーンを演じたミシェル・トラクテンバーグとは関係無いようです。長編はこれがデビュー作の模様。
映画はIMAX上映もされている作品で僕もIMAXで観たのだが、その価値があったかは疑問。というのもこの作品上映時間の殆どは密室に近い舞台で展開するのだ。最初の追突事故のところは音響でびっくりしたけれど、それ以外は特にアクションやSFX的に派手な見せ場があるわけでもない。IMAXが駄目とは言わないけれど通常の上映で十分だと思います。
そう、この作品は一見するとSF映画だが実際は閉鎖空間での人間劇だ。「スカイライン」のもっと閉鎖的な息詰まる作品。あるいはスピルバーグ(JJとは縁深い監督だ)の「宇宙戦争」のトムとダコダ・ファニングが逃げ込んだ先にいたティム・ロビンスとの一時的な暮らし。あんな感じの部分に特化した作品である。途中で人類ではない何かに侵略され、それで外に出れなくなった事態が分かるが、それも物語の主目的というよりは舞台を作り出すための設定にすぎない。
サバイバリスト
映画ではジョン・グッドマン演じるハワードという男がサバイバリストとして地下シェルターに君臨している。サバイバリストは映画では「トレマーズ」シリーズのマイケル・グロス演じるガンマーとその妻だったり、あるいは最近の作品だと「プリズナーズ」のヒュー・ジャックマン一家。前者は純粋に生き残りのために備えるのが趣味の男で、後者は宗教的な価値観が根底にある。映画ではハワードのサバイバリズムの根底に宗教が関連しているのかは特に語られないが、実際に事が起きる前は地元では変人と思われていたことは分かる。
で、実際に世界が崩壊し、ハワードはその備えによってシェルターに君臨するが、元々他人を救う気などこれっぽちもなく人とのコミュニケーションもろくに取れないような男。彼にシェルターに匿われ助けられてもまともな関係を築くなど不可能なのだ。
そしてハワードには秘密があって、おそらく彼はペドフィリアの殺人犯で、ミシェルに語っていた娘が実は行方不明になっていたエメットの妹の同級生で、このシェルターに監禁された挙句殺された可能性があることが判明する。小説のタイトルをその単語を使わず説明して当てるゲームではエメットがヒントとしてミシェルのことを指すとハワードは「少女」とかばかり言いエメットが「ミシェルは女の子じゃない。大人の女性だよ」とか言うシーンがあり(ハワードは「Little Princess小公女」と答えるが正解は「Little Women若草物語」)、ここはハワードがミシェルを大人の女性ではなく子供として見ていて、しかしそれが性的対象になっている不気味さを理解させるシーン。
もしかしたら最初のきっかけとなる事故も、ハワードは緊急事態に家路を急いだハワードが誤ってミシェルの車に激突したと説明するが、これもウソで最初から拉致監禁のために狙ったのもしれない。
違うシェルターへ
ミシェルは開始早々、急ぐように荷物をまとめ、恋人との生活を後にする。恋人であるベン(声だけの出演だが演じているのはブラッドリー・クーパー)からはしつこく電話がかかってくるがそれにミシェルが答えることはない。ここでも明確には説明されないが、おそらくミシェルはベンからドメスティック・バイオレンスを受けている。だから逃げ出したのだ。この物語の舞台は生き延びるための自家製地下シェルターだが、DVに遭った被害者が加害者から避難し保護されるための施設もDVシェルターなどと呼称される。もしかしたらミシェルもそんなDVシェルターを目指していたのかもしれないが、彼女が連れて来られた先は別のシェルターであった。
映画のキャッチフレーズは「奴らはあらゆるフォームでやってくる」で、これはオリジナル「MONSTERS COME IN MANY FORMS」の日本語訳。実際見ると別に「あらゆるフォーム」とか特に意味なくね?」と思う。ただこの「MONSTERS」を宇宙人だと思うのはミスリードで、ベンやハワードの姿を取って絶え間なくミシェルを襲う男性(に代表される暴力)のことなのかもしれない。
ゴーレム
さて、ここからはひとつこじつけを。エメットはそれなりに優秀な青年で都会の大学に行くチャンスが有ったにも関わらず不安から地元に残ってしまった。そしてハワードに雇われてシェルター作りに従事する。その御蔭で緊急事態に真っ先にハワードのシェルターへ逃げ込む選択ができたのだが、おそらくハワードに取っては異分子以外の何物でもなかったのだろう。そんなエメットが食事の時に刺青について語る。こんな事態になったのだったら世間体など気にせず刺青を入れまくったら良かった、と。腕、身体はもちろん額にEMMETTと自分の名前を入れる、など。このシーンを見て僕がふと思い出したのがユダヤ教の伝承に登場するゴーレム。ゴーレムは泥土で出来た人形だが作った主人の命令を実行するロボットのようなもの。このゴーレムは額に「真理(英語でemeth)」と書かれた護符のようなものを貼り付け動き出す。そして額の文字を一文字削り「meth(死亡)」とすることで崩壊させることができる。多分僕が思っただけで制作者がそこまで考えいたかは分からないが「エメットEMMETT」と「EMETH真実」は似ていないか?(エメットの元の意味は「力強い」「パワフル」などで全然違う)
エメットはミシェルと共謀して銃を持っているハワ−ドを捕縛して脱出する計画を立てるがそれが露呈するとミシェルをかばいハワードに撃たれ死亡する。この時直接的な描写はないが、至近距離から撃たれ、おそらくその即死したことから頭、額を撃ち抜かれたと思われる。emethからmeth。真実を知って死んだエメット。シェルターづくりに従事させられ必要なくなったら何の躊躇もなく殺されるエメットはゴーレムと存在が重なってしまった。僕がゴーレムの存在を初めて知ったのはおそらく「ドラゴンクエスト」の城塞都市メルキドを守るゴーレムだが、ここでは城塞に入るためではなく、城塞=シェルターから脱出するためにゴーレムの死が起きる。
さて肝心の地上を侵略した何かについては、漠然とまあ宇宙人なのだろうなあ、という感じしか分からない。一応「HAKAISHA」の怪獣も宇宙から来たのか?と思えるような描写もあるのだが(最後の主人公が過去に撮影したシーンでさり気なく「空から海に落ちてくる何か」が映っている)*2、、本作との直接的な関連も不明。タイトルの「10 クローバーフィールド・レーン」もハワードのシェルターがある付近の住所という以上のものもない(「HAKAISHA]ではもっと意味不明ではなかったか?)。
ラスト、ミシェルはシェルターを脱出すると休息する間もなく宇宙人に追われこれに抵抗するのだが、この作品明らかに力を入れているのはシェルター内の方なのでここはもうシェルターを脱出したら、謎の何かがバーン!!で終わっても良かった気がする。本来なら「宇宙戦争」みたいに一挿話で済む話で一本仕上げたようなもんだからね。下手に宇宙人とのファイトを入れたせいでテーマがぼやけたような気もする。
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果たして関係あるのかないのか製作のJ・J・エイブラムス監督による「SUPER8/スーパーエイト」感想記事。
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*1:余談だが僕はギャルゲーとかでも結構一途に一人のキャラに尽くすタイプなので1周目でビアンカ以外(フローラとデブラ)を選べる度胸がありません
*2:J・J・エイブラムスが監督した「SUPER8/スーパーエイト」の宇宙生物もシルエットが似てるので関係有るのかなー?とか思ったり
混沌英雄神話 バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生
今回の記事は劇場公開終了後、ソフト発売前の空白期間という中途半端な時期の感想であり、途中まで書いた記事が消えると言うアクシデントを経たことで著しく熱意に欠けたものとなっていることをご了承ください。
今、映画史上に残る壮大なプロジェクトとして躍進を続けるマーベルスタジオによるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)だけれど、それではアメリカン・コミックスのもう一方の雄、DCコミックスはどうしているかというと、その答えがバットマンとスーパーマンが共演する「マン・オブ・スティール」とその続編である。映画におけるDCユニバース作品(DCエクステンデッド・ユニバースというそう略称はDCEU)、ザック・スナイダー監督「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生(以下BVS)」を鑑賞。一応ね3回観ました。
物語
スーパーマンの登場とゾッド将軍との戦いから2年、スーパーマンは恋人ロイス・レーンをテロ組織から救出したが、そこには別の集団によってテロリストたちが惨殺され、その責任がスーパーマンにあるのでは?という疑惑がかけられた。
一方ゴッサムシティでは町の守護者バットマンの自警行為が過激化し、スーパーマン/クラーク・ケントが警戒。バットマン/ブルース・ウェインも2年前にメトロポリスで自社の人員に多大な被害を受けたことでスーパーマンを許せないでいた。
メトロポリスの若き企業家レックス・ルーサーはスーパーマンらクリプトン星人に影響を及ぼす放射性鉱物クリプトナイトを見つけ、その塊の国内への輸入を上院議員らに許可を得ようとする。ブルースは追っていたテロリストからルーサーへの足がかりを見つけ、彼の主催するパーティーへ。そこへは取材に来たクラークも。三者三様の思惑が交わる……
前作の感想はこちら。
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かつてマーベルコミックスが自社のキャラクターを実写化する際、別々の映画会社にその都度権利を分けていたので、なかなか実写映画でのクロスオーバーができなかったと言われていた。一方でDCコミックスは1950年代からワーナー・ブラザーズの子会社となっていて、必然的にその映画化は全てワーナー作品となる。だから一時期は実写映画で本格的なクロスオーバー作品が作られるならDCのほうが先だろう、と言われていたのだが、結果としてマーベルに先を越される結果となった。
マーベルコミックスがMCUとして実写映画版マーベルユニバースを大成功させる一方、DCもその構想を持ちながら今まで実現しなかった。もちろん、実写作品に限ってもすでに映像化作品のクロスオーバーはこれまでもあって、アニメの「ジャステス・リーグ」はもちろん、TVシリーズ「ヤング・スーパーマン(SMALLVILLE)」でもフラッシュやサイボーグ、アクアマン(となる少年たち)との共演があったり、スペシャルドラマとしてスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン抜きの「ジャステス・リーグ」が作られたりした。このドラマではフラッシュが仕事が早すぎて逆にサボっているように見えてすぐクビになるダメ社会人になっていたりする。現在はTVシリーズ「ARROW」を中心に「フラッシュ」や「レジェンド・オブ・トゥモロー」などが同じ世界観を共有するTV版DCユニバースを構築している。ただ、それが映画となるとかなり難しかったようだ。一時はライアン・レイノルズ主演の「グリーン・ランタン」が映画版DCユニバースの始めとなる作品とか噂されていて、あの作品自体の出来はともかく、作品の雰囲気や大風呂敷を広げた世界観はそれに相応しいと思っていたのだが、興行的に振るわず作品自体が1作で終わりとなった。
アメコミの2大出版社といえばDCとマーベルだが、単にアメコミの2大ヒーローといった場合スーパーマンとバットマン、とDCのヒーローが1,2フィニッシュを決めるだろう。1938年に生まれたスーパーマンはすべての元祖となるスーパーヒーローであり、翌年に生まれた常人ヒーローであるバットマンはその対比として完璧だ。スーパーマンの光とバットマンの闇。ここに女性スーパーヒーローの代表となるワンダーウーマンを加えてこの3人は全てのスーパーヒーローの雛形となった。
有名すぎるDCコミックスの3大ヒーローだが、逆にいうとこの3人が偉大すぎるからこそそのクロスオーバーが難しかったとも考えられそうだ。ここ10年でもスーパーマンは「スーパーマン リターンズ」、バットマンは「ダークナイト」トリロジー。ワンダーウーマンも映画化こそまだだが、TVシリーズはずっと企画が上がっては消えていた。この3人が突出しているからどうせなら単独シリーズとして作りたいという思惑があったのではないか?
スーパーマン
前作「マン・オブ・スティール」は僕としては「自分の理想とするスーパーマンとは違う」というような理由で評価は低めであった。映画、コミックス、アニメ、ドラマといったこれまでに作られたスーパーマン作品が自分の中で築き上げた理想のスーパーマンとザック・スナイダーの思い描くスーパーマンはかなり差があったからだ。ただ、本作は2作目であり観る側のこちらもすでにザックのスーパーマン観は了承して臨んでいるわけで今更そこに文句を言うつもりはない。映画はブルース・ウェインの両親の死から始まるが、やはり全体としては主役はスーパーマンである。
スーパーマンはクラーク・ケントとして新聞記者を務める一方、スーパーマンとしての責務も果たしており一部からは賞賛を受けるが一方で全ての原因として憎むものもいる。
ザックの描くスーパーマンの問題点(とあえていってしまおう)のひとつはスーパーマンの飛行に全く優雅さが欠けるところであろう。全部弾丸系。ふわっと浮き上がって飛行を楽しむみたいな描写が皆無。クリストファー・リーブその他のスーパーマンなら女性ならずとも抱きかかえられて一緒に空の旅を愉しみたいとか思うけれど、ヘンリー・カヴィルのスーパーマンには抱き抱えられたくないもの。ただこの常に切羽詰まっているような余裕のないスーパーマンにはあっている描写で逆にいうとスーパーマンがもっと飛行を愉しめばあの世界も余裕あるものとなったりするんじゃなかろうか。
ヘンリー・カヴィル自身は前作に比べるとユーモアも感じられるようになって、前作より断然良いです。この前の主演作「コードネーム・U.N.C.L.E.」におけるナポレオン・ソロの大人の余裕たっぷりのカヴィルが最高に良かったので、次あたりはもっとその辺の魅力もスーパマンに取り込んで欲しいですね。
ロイス・レーンもペリー・ホワイトも再び登場。次々超人が登場する中でちょっとロイスの影は薄いか。最初の中東かアフリカと思われる地域での取材で出てくる実はCIAの局員だったカメラマンがジミー・オルセンという説もあるそうだが、ちょっとジミー・オルセンのキャラクターとは違いすぎて信じたくない。
カル・エルの実父ジョー・エルは今回は登場しないが養父ジョナサン・ケントはスーパーマンの見る幻影として登場。助けられ役としてのヒロインとしてはマーサ・ケントの方が印象深いかも。こっちはブルースにとってもヒロインだしね。
バットマン
映画は映像化されたものとしては何度目かのトーマス&マーサ・ウェインの死から始まり(ちなみに父親であるトーマス・ウェインを演じているのはザックの「ウォッチメン」でコメディアンを演じていたジェフリー・ディーン・モーガンでありトレードマークであるヒゲも生やしたままなのでとても強そう)、前作のクライマックス、スーパーマンとゾッド将軍の戦いに巻き込まれるウェイン・エンタープライズのビルから社員を救い出そうとするブルースのシーンにつながる。前作の時点ではクライマックスの戦いがそれほど911をイメージしているとは思わなかったのだが、本作では明確に911をイメージしているだろう。また過去の戦闘に巻き込まれて被害に遭い、残された者がその原因となった主人公を憎むという展開は「ガメラ3」を思わせる。
同じ大爆発&大破壊でも例えばマイケル・ベイなんかだと「今回も派手にやってるなー。たーまやー!」という感じであんまりそこに劇中では出てこない犠牲者の存在を感じ取ることはないのだけれど、ザックの場合「主役たちが派手にやりあっているその見えないところで何十人も犠牲になっている……」とか思ってしまう。これが娯楽作品の監督としてどちらが良いのかは判然としないのだけど。ただ、その辺の見えない被害者の存在が感じられるのは製作のクリストファー・ノーランの影響もあるのかもしれないけれど、はっきり言えばザックは人の生死の描き方としては雑(ウォッチメンのザック独自の描写に顕著)。また例によって無意味なザック擁護の代わりにもはやヘイト(憎しみ)と言っていいノーラン批判(批判でもないな)があったりしたのだが、何度も言うように褒めるにしろ貶すにしろそれはザックに向けてでなければおかしいと思う。
過去のバットマンの映画化作品ではどちらかというとブルースの父親トーマスとの絆が描かれてきたが*1本作ではどちらかと言えば母親との関係が重視される。これはスーパーマンの方でクラークの母マーサ・ケントとブルースの母マーサ・ウェインがともにマーサという名前である事による。このマーサかぶりが1940年代当時のコミックスにおいて偶然なのか狙ったのかは分からないが、本作ではともすれば収集のつかなくなりそうな展開に有無を言わせぬ力強い説得力を与えている。「スパイダーマン」の最初の読み切りの時、なぜスタン・リーがピーターをわざわざ叔父夫婦に育てられる孤児として描いたのか不思議だったりしたのだが、よく考えると元祖スーパーヒーローのスーパーマンとバットマンからして孤児なのだな。というかスーパーヒーローは孤児が多い……
バットマンについてはすでに活動して20年ということが語られていて、確かに演じるベン・アフレックの年齢から言ってもそれぐらい経っていても不思議ではないのだが、やはり 劇中ではこの2年ぐらいで急に出てきたコスチューム姿の自警者という印象になってしまう。やはり間にアフレック版の「バットマン」を一作製作しておくべきだったのではないかなあ。多分これまでもゴッサムの守護者として活動してきたが、スーパーマンの登場を受けたここ2年ぐらいで急に過激化した、ということなんだと思うが。
またゴッサムシティがメトロポリスと並ぶもう一つの舞台として出てくるが、ちょっとメトロポリスとの位置関係がよくわからない。最初に観た時は独立した都市ではなくメトロポリス内の一区画なのかな、とも思ったけれどやはり基本的には別都市のよう。ただ凄い近いぽいです。原作だとニューヨークを挟む形で存在するんだっけかな。まあ、ゴッサムもメトロポリスも元々はニューヨークの異名だったのだがそれぞれニューヨークの明るい面、暗い面と特化して独立した感じなのだけれど(たしか初期のコミックスでは共にニューヨークそのものが舞台ではなかったか)。
演じるベン・アフレックは過去にデアデビルを演じていて、スーパーヒーローとしてはこれが2本目ということになるがデアデビルにしてもバットマンにしても顔の下半分を出すタイプのマスクは彼の四角いアゴにピッタリだと思う。そしてベン・アフレックといえば実はスーパーマンも演じているのだな。厳密には1950年代のTVドラマ「スーパーマン」でスーパーマンを演じたジョージ・リーブスを「ハリウッドランド」という作品で演じたのだ。ジョージ・リーブスはこのスーパーマンのイメージが強すぎて不遇の死を遂げるのだが、当然劇中でもスーパーマンの格好をするシーンが存在し、ここでのアフレックのスーパーマン姿はよく似合っていた。コミックスだと長方形の四角い顔なのでアゴに特徴のあるベン・アフレックは結構ヒーロー向きなのだ。多分(間接的とはいえ)スーパーマンとバットマンの両方を演じた俳優としては唯一なんじゃないかな?と思うのだが、本作のブルース・ウェインではちょっとアゴがしゅっとしたというか痩せた感じもした。まさCG修正ではないとは思うけど、ハンサム度は増したが、マスクのヒーローとしてはもっとアゴを強調したほうが、とか思った。
そのバットマンのコスチュームはこれまでのラバー製のボディスーツと言うよりはコミックスに近いタイツっぽい仕上がりで個人的には鎧系より好き。スーパーマンとの一騎打ちでは「ダークナイト・リターンズ(DKR)」オマージュと思われる特殊装甲のスーツも。今回直接的なストーリーには「DKR」は関係ないけれど画作りの部分ではかなりDKR色は強いです。もう今更ザック・スナイダー監督に拠る「DKR」はいらないね。フランク・ミラーの「DKR」発表後バットマンの映像化作品は大なり小なりその影響下にあるのだけれど、そろそろバットマンを「DKR」の呪縛から解き放ってほしいと思う。画作りの面ではこの「BVS」がここまでやり遂げたのだから。
バットマン側の人物としてはアルフレッド・ペニーワースが出ていて演じるのはジェレミー・アイアンズ。これまでのアルフレッド役者と比べてもかなり若がっていて、ブルースとの関係も擬似親子というよりは義兄弟と言った感じに。いろいろメカニックも担当している。今回は基本的にはバットケイヴでサポートと言う従来の役割をそれほど逸脱はしていないのだが、普通に強そう。次のバットマン映画では犯罪組織への潜入捜査ぐらいはして欲しい勢い。アルフレッドもああ見えて元軍人(それも特殊部隊?)の舞台出身のシェイクスピア俳優、といういろんな設定背負っているので。
メカニックといえば今回はバットモービルとバットウィングが登場。バットモービルは「ダークナイト」トリロジーのタンブラーぽい部分も残したデザインだが、バットウィングはがっつりコウモリ(というかバットシグナル)のシルエットを残したデザインなのが嬉しい。
そういやクレジットではバットマンの原案にボブ・ケインだけでなく「with Bill Finger」とビル・フィンガーの名前もきちんと出ていた。「ダークナイト ライジング」ではまだボブ・ケイン単独クレジットだったと思うのでこれが初かな。ビル・フィンガーが初期のバットマンでボブ・ケインとともにストーリーや設定を固めた人です。
ワンダーウーマン
基本的にはタイトル通りバットマンとスーパーマンの出会いと対立、融和の物語なのだが、事前に出るらしいよ、と言われていたのがワンダーウーマン。メインというほど物語には関わってこないがゲストというには活躍しすぎ、という感じで登場。ワンダーウーマンは1941年にデビュー。原作者のウィリアム・モールトン・マーストンは心理学者で嘘発見器を発明(そのものではないんだったかな)した人でもある。異星人であるスーパーマンと常人であるバットマン。そこに加わる第三のヒーローはギリシア神話を由来とするスーパーヒロイン。本名はダイアナ・プリンスでスーパーマンに匹敵する身体能力に超能力、更には不老の存在でもある。マーベルだとソーが近いのか。
本作ではレックス・ルーサーのもとにある自分の過去のデータを処分するべく暗躍しブルースに近づく。ダイアナがらみのシーン全体的に謎の女スパイと言うイメージでもあり、過去のDC映画だとキャットウーマンに近い感じ。実際パーティーなどでブルースと出会うシーンは「バットマン・リターンズ」や「ダークナイト ライジング」のキャットウーマン登場シーンを匂わせている。70年代に作られたリンダ・カーター主演のTVドラマシリーズだと第1シーズンはWW2が舞台になっていて、その後第2シーズンから現代を舞台に展開するのだが、レックス・ルーサーの持っていた資料だと100年前の第一次世界大戦の時点ですでに活躍していたがその後姿を消したという。世界大戦で人類に幻滅してその後のさらなる地獄を見なくて済んだか。
演じるガル・ガドットはカーデシア人みたいな名前だけどとにかく格好良くて「ワイルド・スピード」シリーズ(MAX以降)に出演してた。トム・クルーズ&キャメロン・ディアスの「ナイト&デイ」にも出てたらしいんだけどちょっと思い出せず。もう映画のバランスを壊すぐらいクライマックスで活躍するので見どころではあると思う。スーパーマンとの絡みはほとんどなくクライマックスで「あんた誰?」状態だったりするのだが。
他にもフラッシュとアクアマン、サイボーグがルーサーの持っている資料映像として登場。それぞれ今後の映画化が控えている。フラッシュはTVドラマの方も展開中で正体は同じバリー・アレンだが、映画はまた別物で演じるのはエズラ・ミラー。また未来の彼は時空を越えてブルースに警告を与えた。アクアマンはサモア系のレスラーみたいな雰囲気のジェイソン・モモアでどうやらクールカットのアクアマンではなく、ロン毛にヒゲの方のアクアマンとなるようだ。サイボーグもその誕生が簡単に描かれている。スーパーマン含めDCEUでの超人類はメタヒューマンと呼称されルーサーは彼らに対抗する人類の代表みたいな意識もあるようだ。
レックス・ルーサー マーシー・グレイブス ドゥームズデイ
スーパーマンの宿敵レックス・ルーサーが登場。これまでの作品と比べてもかなり若い天才科学者兼経営者として登場し、クリプトナイトの国内持ち込みを巡って議会と対立する。演じるジェシー・アイゼンバーグはこれまでにもエキセントリックな天才役(感想書いてないけど「エージェント・ウルトラ」もそんな感じ)が多かったけど、本作もそんな感じで落ち着きのない陰謀家と言ったところ。ジェシー・アイゼンバーグとヘンリー・カヴィルは共に1983年生まれであるけれど印象としてはカヴィルのほうが年長で設定は分からないが単純にスーパーマンとの対比では今までで最も若いルーサーだろう。基本的に本作はスーパーマンとバットマン、そしてルーサーの三すくみの対立となっていて、互いに共通する部分もあれば激しく対立する部分もある。ホリー・ハンターの演じる上院議員とのちょっとマザコンちっくな一連のシーンはちょっとドキドキする。
ルーサーの忠実な秘書であるマーシー・グレイブスはハーレイ・クイン同様ブルース・ティムのアニメ版「スーパーマン」のオリジナルキャラクターでそこから原作や他の作品に逆輸入された。アニメではルーサーの運転手兼ボディガードで企業家・メトロポリスの名士としてのルーサーだけでないヴィランとしてのルーサーの顔も知る人物。アニメでのハーレイ・クインとのキャットファイトシーンが最高に好きです。
マーシーを演じるのはTAO。「ウルヴァリン:SAMURAI」でヒロインを演じていた。それに続くアメコミ映画出演となるわけだが、本作のスタイル抜群の冷徹な女秘書という役柄にはぴったりでもしかしたらこの映画で僕が一番好きなキャラかもしれない。で一回目観た時には単純に次回作が愉しみ、って思っていたのだが、ニ回目冷静に観るとマーシーはルーサーの人身御供に…ルーサー許すまじ!
最終的に本作のラスボスとなる相手がドゥームズデイ。「スーパーマンの最後」で出てきた肉体的にはDCユニバースでも最強のモンスター。本作では前作でゾッド将軍たちが乗ってきた宇宙船にルーサーがアクセスし、クリプトンのデータベースからゾッド将軍の肉体を元に培養再生したクリプトンの最強生物という設定。復活の際にはルーサーの血液も使用しているためか、ルーサーのいうことは聞く感じに。前作のゾッド将軍といい今回のドゥームズデイといいいきなり強いキャラ出してくるなと思った。スーパーマンにもメタロとかトイマンとかいっぱい魅力的なヴィランはいるのに。というか最初はゾッド将軍の肉体を使用したビザロ(スーパーマンの劣化クローンとでも言うキャラクター)が出てくるのかな?とか思った。なんか映画だと肉弾戦ばかりやっているけど、意外とスーパーマンはそういうキャラクターよりミスターミックス(異次元世界の妖精みたいなキャラでスーパーマンをギャフンと言わせることに懸命なっている)とかのほうが好きです。ドゥームズデイは最初は「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくるトロールという感じでまた魅力なくアレンジしたな、と思ったのだけれど途中から変化しコミックスに近い容姿に。
で、スーパーマンのヴィランとしてはドゥームズデイも前回のゾッド将軍も個人的にはあんまり好きではないんだけど、これがバットマンの敵としてはまた別。映画のバットマンはどうしても同じ人間キャラクターばかりが相手になってしまうことが多いんだけど(コミックスはもっと自由)、本作でいきなりバットマンの相手として超生物であるドゥームズデイを相手にしたことでバットマンの自由度はかなり高まったのではないだろうか。どうせなら今後展開するバットマンの新作でもジョーカーやトゥーフェイスとかばかりでなく、クレイフェイスとかキラークロックみたいなヴィランとも盛大に戦ってほしいですね。
映画としてはかなり歪で(明らかに観客に説明されない必要なシーンが欠けてる気がする)、そりゃ「アベンジャーズ」の時点でも5作も作られて臨み、現在10作を越える作品数を誇るMCUに比べたら急ごしらえのクロスオーバーという感じは否めない。MCUが丁寧に作られたフルコースのフレンチだとすればこっちは闇鍋という感じ。ただ闇鍋にも闇鍋の魅力はあるし、その混沌とした感じは個人的に僕が思うDCコミックスの雰囲気に近い。全然練られていない世界観はそれゆえに神話的な有無を言わせぬ迫力もある。
DCユニバースとしてはTVドラマの方も拡大しているがMCUの場合と違ってあくまで映画とTVは分けられて展開していくようだ(TVも全部が全部つながっているわけではない)。MCUも基本的には映画だけ追っかけていけば問題ないのだが、それでもやはり「エージェント・オブ・シールド」などで映画のサイドストーリーなどがあると気になるが、さすがにアメリカ本国とのタイムラグがあるので海外のファンには映画とTVが別なDCコミックスの展開のほうがありがたいかも。
今後の展開としてはまずはDCコミックスの悪役がチームを作る「スーサイド・スクワッド」があり、ワンダーウーマン、フラッシュ、サイボーグ、アクアマンそしてバットマンのそれぞれの単独作が待機しており、その後で念願の「ジャスティスリーグ」が待っているのだろう。おそらく流れとしてはスーパマンの復活とマーシャン・マンハンター(火星のジョン・ジョーンズ)を巡る物語となるのではないかと思う。最終的にはダークサイドとの対決となるのかな?とも思うが(本作でも少しその暗示がある)、ただダークサイドにしてもブレイニアックにしてもすでにMCUの方で似たキャラクターであるサノスやウルトロンが映像化されているのは辛いところ(キャラクターのデビュー自体はDCの二人のほうが早いはず)。がやはりDCEUにとってもこの二人のヴィランはいずれ必ず登場するであろう。その時はもう思い切ったアレンジもいいかもね。
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個人的にザックのスーパーヒーロー観や演出には疑問も多いんですが、次への期待も込めて結論としては圧倒的に賛です。
で、実はマーベルの「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」もかなり似た話だったりするのです……(以下続く‥かもしれない)
ここ最近で起きたこと
すっかりブログ更新の頻度が停滞しているこのブログですが、前回の「レヴェナント」の感想記事をアップした後いろいろ個人的に衝撃なことが起きてちょっと元気をなくしておりました。と言っても体調が悪いとか(それは慢性的なので平常運転)とか自分の身に何か起きたとかではないのですが。
水谷優子さん
まずは声優の水谷優子さんが亡くなりました。まだ51歳という若さです。彼女は1988年頃、僕がアニメをアニメ雑誌(僕が購読していたのは「アニメディア」でした)などを購読しながら見るようになったり、声優という存在をはっきり意識して見るのを始めた頃*1に最初に意識した声優の一人で、女性声優の中では一番好きな声優でした。デビューは「機動戦士Zガンダム」の端役で、後に同じ番組の中で主要人物の一人サラ・ザビアロフを演じます。その後「マシンロボ クロノスの大逆襲」でのヒロイン、レイナ・ストールなどを演じました。一般には「ちびまる子ちゃん」のおねえちゃん役で知られているでしょうか。
僕個人としてはまず、「赤い光弾ジリオン」のアップルと「天空戦記シュラト」のラクシュ。このタツノコプロ制作でスタッフも共通することが多い2作は主人公に関俊彦、その相棒に井上和彦、そしてヒロインに水谷優子、という布陣も共通していて、僕はこのトライアングルが好きでした。
ちなみに「天空戦記シュラト」の方ではヒュウガの堀内賢雄とリョウマの山寺宏一のコンビも活躍し、この二人は同時期にディズニーのTVシリーズ「チップとデールの大作戦」でもチップとデールとしてコンビを組んでいて、当時「シュラト」のイベントでこの二人がチップとデールのぬいぐるみを抱えながらキャラソンを歌うなんて風景もあったはず。ただ現在はこの二人が声をあてた「チップとデールの大作戦」は封印扱いのようで今見れるのはディズニー公式のピッチをいじった高い声のやつですね。でも僕にとってはチップとデールといえばこの二人なのです。
さらに話が外れるとこの二人のコンビを基本として、そこに大塚芳忠が加わると「フルハウス」(現在続編フラーハウスも!)、江原正士が加わると「宇宙船レッド・ドワーフ号」になるのですね。
水谷優子さんはその力強い声と子供の声の使い分けが上手で、大人の女性も小さな子どもの声もどちらも演じられる人でした。前者だと吹き替えですが「ビバリーヒルズ高校白書」「同青春白書」のアンドレア、少女役だと「ふしぎの海のナディア」のマリーや「ブラック・ジャック」のピノコでしょうか。「デジモンアドベンチャー」の空なんて年齢的にはまだ子供だけど子供たちの中ではまとめ役というか大人な性格のキャラクターで両方を併せ持った演技ではなかったでしょうか。
僕にとっては水谷優子さんは最も好きな海外TVドラマシリーズ「バフィー〜恋する十字架〜」での主人公バフィーを演じるサラ・ミッシェル・ゲラーの声の人でもあります。ゲラーの出演する映画作品においてはフィックスというほど定着していたわけではないのですが、何シーズンも続いている作品だと断然吹き替えで親しんでいるので、映画でも別の人の吹き替えになると違和感を感じることが多いですね(具体的に言うとサラ・ミッシェル・ゲラーと「スタートレックTNG」で馴染んでいるパトリック・スチュワート)。
- アーティスト: 水谷優子,木本慶子,田辺智沙,日々安里,山上路夫,わばまさみ,米山ともみ,杉山卓夫,山本ヒロアキ,安井歩,楠瀬誠志郎
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時々このブログでも訃報を取り上げることはありますが、水木しげるやイーライ・ウォラックなどは高齢だったのでそりゃ確かに亡くなったのは寂しいけれど、まだ全然受け入れられるのです。ですがまだ51歳という若さだとちょっとショックが大きくて精神的にきついです。最近だとプリンスやデヴィッド・ボウイが亡くなった時もショックだったけれど、小さい頃からの身近さということではこちらのほうがきつかったですね。
冨田真由さん
で、そのショックも癒えた頃に東京都小金井市で「女性シンガーソングライターが刺された事件」が起きました。冨田真由さんは元シークレットガールズのメンバーでした。女児向け雑誌「ちゃお」の企画として生まれたアイドルユニットで、他のメンバーにアイドリング!!!から朝日奈央さん、橋本楓さん、伊藤祐奈さんが参加していたこともあって、イベントが行われた時は僕も見に行ったりしました。
事件以前に冨田真由さんと「仮面ライダーフォーゼ」を結びつけて書いた記事はそう多くなかったようで、事件直後には凄いアクセスがありました。
冨田真由さんがアイドル活動していたのはこの「シークレットガールズ」のみでその後は女優やシンガーソングライターとして活動していたそうです。僕は一応アイドリング!!!からの縁でツイッターをフォローさせてもらっていたのですが、ほとんど気にはとめていませんでした。ただ一度でも直接見たことがある人に起きた悲劇にショックを受けてしまいます。
事件は当然ですが一方的に加害者が悪いです。そりゃストーカーへの対処として至らない部分もあったかもしれませんが、そもそもストーカーがまず悪い。事件当初メディアの殆どは「地下アイドルがファンに刺された」という報道の仕方をしましたが、それもまた偏見混じりでした。2014年に起きたAKB48の握手会での鋸斬りつけ事件」などとも絡めて、アイドルの握手会や特典商法が原因かのような報道も多くありましたが、本件とは直接関係ないでしょう(AKBの奴も犯人は別にAKBファンではないので特典云々は関係ない)。別に握手会や過度な特典についての批判は批判としてやればいいと思いますが、この事件とは別のところでやればよいでしょう。何よりこれらの報道で「悪いのはファンの好意を煽ってたくさん買わせながら袖にしたアイドルのほう」みたいな意見が見受けられうようになったのは重大な放送倫理違反だと思います。
吉田豪氏がTV(フジテレビ)からこの件で電話取材を受けたものの、全然言ってないことを放送された、ということもあったそうで、もう最初から思いついた結論ありきの報道なんでしょうね。
吉田豪さんが『冨田真由さん刺傷事件』についてTV番組からの電話取材を受けた結果→「こんな説明していない」意見続々 - Togetterまとめ
個人的に何より悲しく思うのは、どうやら一連の報道で一番ひどく、今も冨田さんの肩書について「アイドル」を使用しているフジテレビ(及び産経新聞などフジサンケイグループ)は「シークレットガールズ」において制作・放送した局であり、いわばホームみたいな部分もあるのにこの扱いだということです*2。もちろんドラマとワイドショーでは同じ局とはいえ制作陣も違うのでしょうけど。現在は警察のミスも指摘されてきていますが、まず被害者にも落ち度があったみたいな報道はやめるべきです。
個人的に「仮面ライダーフォーゼ」が大好きというのと、アイドリング!!!がここ数年一番入れこんだグループということもあって、アイドリング!!!と「仮面ライダーフォーゼ」の出演者には、たとえちょっとの端役だったとしても幸せになって欲しいと願っています。その両方に関係した冨田真由さん。現在も意識不明の重体が続いているそうで、回復を祈って止みません。
*1:ちょうど「鎧伝サムライトルーパー」で何度目かの声優ブームが起きていた頃。ちなみに昨年は女性声優グループが紅白歌合戦に出演したり、刀剣擬人化物が流行ったりしたので、今年は再び「鎧伝サムライトルーパー」とNG5ブームが起きるのではないかと夢想
レオナルド熊の死と新生 レヴェナント:蘇りし者
レオナルド・ディカプリオがついにオスカーを獲ったよ!ということで話題となった最新作「レヴェナント:蘇りし者」を鑑賞。これは「ズートピア」と同じ日に観たのであるが、同じ動物が出てくる映画でもぜんぜん違うよ(当たり前)。この映画のちょいグロシーンでカップルがキャーキャー言ってたが「ズートピア」でも見てろ!ってツイートを見かけたりしたんだけど、個人的には「ズートピア」の方がハードだよ!(もちろんグロ描写的な意味ではないですが)。短め、駆け足的に感想いきます。
物語
1823年アメリカ北西部、極寒の寒さの中狩猟をして毛皮を調達する一団。彼らはインディアンに襲われ多大な犠牲を払いながら難を逃れる。自然に詳しいヒュー・グラスは体調の信頼も厚い。インディアンとの間にもうけた息子ホークとこの一団に参加しているが、それゆえに白い目で見るものもいる。フィッツジェラルドもその一人だ。グラスが見回りに出た朝、熊の親子と出会い瀕死の重傷を負う。このままでは足手まといになり、全員が遭難しかけないことから、グラスの死を看取り埋葬したら合流するメンバーを募る。ホークとフィッツジェラルド、そしてまだ若いブリッジャーがその任に着く。
フィッツジェラルドはグラスの了承のもと彼の息の根を止めようとするがホークに見つかりホークを殺してしまう。フィッツジェラルドは現場にいなかったブリッジャーを騙しグラスに僅かな土をかけ、その場を離れる。
動けないまま息子が殺されるところを見ていたグラスはやがて奇跡的に一命を取り戻し、フィッツジェラルドへの復讐を誓って必死のサバイバルを始める……
監督は「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。前作がほぼ劇場という閉じた空間で展開されたのに対して、本作は大自然が舞台。雪景色、極寒の山、森、川。実際に撮影の多くは自然の中で行われ、しかも脚本通りに、順繰りに撮影されたとかで、古き良き超大作という趣もある。
事前にはレオナルド・ディカプリオと熊が戦う、というぐらいしか知識がなくて「レオナルド熊だね」とか「『レオVS熊』って表現するとライオンと熊が戦うみたいだね」とか冗談言っていたのだが、映画はそんな冗談のいえる雰囲気のものではなかった。
実は途中で少し眠ってしまったのだが(グラスがバッファローの群れと出会うところから目覚めたらインディアンが吊るされていた)、特に大きな影響はなしか。熊(ハイイログマ)との戦いは物語の序章であって、メインではなかったです。
ディカプリオはこれでオスカー(主演男優賞)を獲って、そのことについては申し分なかったのだが(ただ個人的にはもっと早く取っていても良かったと思うし*1、その上でこれで?と言う思いはちょっとある)、セリフは少なく、生き延びようとするその強い意志がが前面に出てくる感じ。ヒゲの容貌に凍りついた鼻水もそのままで全編を通す。
ディカプリオは41歳なので10代後半の息子(ホーク)がいても全然おかしくないのだが、やはりこの映画でもその若さがちょっと災いしてホークとの親子の描写はちょっと不自然に感じることも。「インセプション」とかのまだ小さい子供がいる描写なら全然自然なんだけどね。
で、ディカプリオといえばなにげに数多くの実在の人物を演じた俳優なのだが、本作で演じたヒュー・グラスも実在の人物でアメリカの西部開拓時代初期を代表する伝説的な人物だという。僕も本作で知ったぐらいだが、この映画で起きた出来事はほぼそのまんまということらしい。
映画では熊に襲われたあと、奇跡的に生き延びたグラスの決死行が描かれるが、その中で何度も象徴的な死と新生が描かれる。特に死んだ馬の腹を切り裂いて、内臓を取り出し、その腹の中で暖を取るシーンはその最もたるものだろう。グラスが生き延びる代わりにホークが、インディアンが、隊長が死んでいくのも象徴的だ。
主人公であるディカプリオ以外は宿敵となるフィッツジェラルドにトム・ハーディ。ここでは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」とは真逆の環境のなか悪役を演じた。なんでしょう?基本的にむさい男だらけで個々の判別もつきにくい中、トム・ハーディの出演しているシーンは周りと温度が違うというか、ちょっとぴりっとした雰囲気になっているのはさすがだ。
ほかに隊長に「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」でファーストオーダーのハックス将軍を演じたドーナル・グリーソン。後は個人的にジム・ブリッジャーを演じたウィル・ポーターが印象深い。この人は「ナルニア国物語」の第3章で主人公兄弟の嫌味な親戚ユースチフを演じたが、顔はそのまま、身体だけ大きくなって「メイズ・ランナー」でも主人公と反発するガキ大将のような役柄を演じていた。いや全然美形でないんだけどいい表情の持ち主なんですよ。
ただ、観ていてどうしてもゲームのプレイ動画を見ているような気持ちになった。それはCGが多く使われているとか、設定がゲームっぽいとかではなく(そういう意味ではむしろ正反対な作品だ)、大自然なのに自在なカメラワークとか編集とかの部分で最近のオープンワールドのコンピューターゲームぽいなあ、とか思ってしまった。具体的にはやはり雪山で熊と戦うシーンがある「レッド・デッド・リデンプション」なのだが、最近の「アンチャーテッド」というゲーム(僕自身は未プレイ)のCMなど「これはゲーム画面です」と言う断り書きが必要なぐらい実写と見まごう映像でしかもカメラワークは自在と言う画面が先にゲームで慣らされていて、映画で出てくると「ゲームっぽい」と脳が判断してしまうのかもしれない。
結果として監督の前作「バードマン」と全然趣は違うにもかかわらず、近い雰囲気はある。どうにもまだ映像の凄さが物語の中で生かされている、と言うよりこれみよがしな技術のひけらかしっぽく見えてしまったりするんだよな(ただこの作品撮影監督のエマニュエル・ルベツキの意向もかなり強いみたいです)。
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*1:「ギルバート・レイプ」でとってても良かったと思う
金曜29日はキン肉の日!筋肉映画ベストテン!(選・小覇王)
今日は何の日?昭和の日?そんなのしるか!
金曜日になる29日はキン肉マンの日!
というわけで、相変わらず最高の展開が続くゆでたまご「キン肉マン」ですが、そろそろ最終局面に移りそうです。さてキン肉マンといえばその筋肉!去年のワッシュさんのベストテンはおっぱい映画でしたが、今年は筋肉映画。
去年雄っぱいだったため、惜しくも漏れたあの映画も入ってますよ。昨年のはこちら。
一応の自分で決めた基準としては、アクション映画ではなくあくまで筋肉映画なので劇中で上半身裸になるシーンがあること。一俳優一作品。そのぐらいかな。それではランキング。
- ドラゴンへの道(ブルース・リー ブルース・リー監督1972年)
- 燃えよドラゴン(ヤン・スエ ロバート・クローズ監督1973年)
- コナン・ザ・グレート(アーノルド・シュワルツェネッガージョン・ミリアス監督1982年)
- HK/変態仮面(鈴木亮平 福田雄一監督2013年)
- G.I.ジョー(イ・ビョンホン スティーブン・ソマーズ監督2009年)
- スコーピオン・キング(ザ・ロックakaドウェイン・ジョンソン チャック・ラッセル監督2002年)
- キングコング対ゴジラ(ゴジラ 本多猪四郎監督1962年)
- マイティ・ソー(クリス・ヘムズワースケネス・ブラナー監督2011年)
- キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(クリス・エヴァンス ジョー・ジョンストン監督2011年)
- X-メン(ヒュー・ジャックマン ブライアン・シンガー監督2000年)
まあ、順位なんてあってないようなものです。
ドラゴンへの道(ブルース・リー)
やはり、一位はブルース・リー。とはいえ作品としては比較的緩い部分もある「ドラゴンへの道」から。もちろん「燃えよドラゴン」のリーも最高なんですけど、この後に亡くなった、という目で見るからなのか、どうにも今にも張り裂けそうな緊張感にあふれていて、正直つらい部分もあるのです。そんなわけで比較的穏やかに見れるこちらのブルース・リーを。
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燃えよドラゴン(ヤン・スエ)
で、その「燃えよドラゴン」からはブルース・リーではなく敵として登場するヤン・スエ(ボロ・ヤン)を。引き締まったリーの肉体と比べるとリアリティのあるレスラーっぽい肉体で、また正直美形とはいえない彼の容姿とも相まって全然別の魅力を映画に与えています。実は前回「おっぱい映画」と聞いて真っ先に思い浮かんだのがこのヤン・スエだったりします。なので今度こそランクイン!
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コナン・ザ・グレート(アーノルド・シュワルツェネッガー)
ミスター・オリンピア、SF超人ヘラクレス。ボディビルダーとして最高の実績を引っさげてハリウッドにやってきた一人ゲルマン民族大移動。初期の出演映画ではもれなく脱いでその極限まで鍛え上げられた肉体を晒しているが、その中では初期主演作である「コナン・ザ・グレート」を。まだ英語がたどたどしいため台詞も少なく、寡黙な蛮勇を好演。このあと殺人サイボーグを経て国民的人気俳優に。政治家としても成功し、一時はアメリカ大統領に!ともいわれてた(アメリカ生まれではないため不可能なのだが)。ちなみに「コナン・ザ・グレート」と「スターウォーズ帝国の逆襲」はともにクライマックスでジェームズ・アール・ジョーンズが「私がお前の父だ。共に世界を支配しよう」みたいなことをいう映画なのだが、そこでうろたえるのがルーク・スカイウォーカーで、躊躇なく首をはねるのがシュワ。
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HK/変態仮面(鈴木亮平)
今年は第2弾も控えている、顔を隠して身体隠さずな日本のヒーロー。鈴木亮平が30越えにして高校生を爽やかに演じています。その鍛えあげれた肉体が美しい。ちなみに鈴木亮平はこのあとドラマのほうではやせ細った病身の役などもメイクでなく演じて、ちょっとした和製クリスチャン・ベイルと言った趣もある俳優に。肉体美とは無縁ですが凄みという部分では安田顕の偽変態仮面も見どころです。
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G.I.ジョー(イ・ビョンホン)
韓国映画の男優も脱ぎたがりな一面があるように思えるけれど、その代表格としてイ・ビョンホン。「レッド2」も良かったけれど、やはり白ニンジャストームシャドー役で出演した「G.I.ジョー」。ライバルであるスネーク・アイズ(レイ・パーク)が一切素顔を晒さないのに対し、もうすきあらば脱ぐ。韓国は徴兵制があるせいか、男優が基本的に鍛えられている印象はありますね。
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スコーピオン・キング(ザ・ロックakaドウェイン・ジョンソン)
ザ・グレート・ワン、ピープルズ・チャンピオン、業界一シビれる男、ブラマ・ブル、ロック様の初主演作。「ハムナプトラ2」のラスボスだったスコーピオン・キングの前日譚(スピンオフ)。古代エジプトを舞台にサモア系アメリカ人と中国系ハワイ人のヒロイン(ケリー・フー)が暴れまわる。「ハムナプトラ2」ではオープニングでその勇姿を見せるものの本編ではしょぼい味のあるCGモンスターになってしまったロック様であるが、こちらでは堂々主役。シリーズとしては続くがロック様が出ているのはこれのみ。この時は制作にWWEが関わっていることもあって、「ザ・ロック」名義で出演。現在は俳優活動は本名のドウェイン・ジョンソン、たまにWWEのリングに上がるときはザ・ロックと使い分けているようです。「ヘラクレス」もオススメ。
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キングコング対ゴジラ(ゴジラ)
ちょっと反則技なんだけど、怪獣映画で一番の観客動員数を記録した(今はどうなんだったかな?)「キングコング対ゴジラ」から我らが怪獣王ゴジラさん。いわゆる怪獣プロレスとやゆされることもある路線の第一弾なんだけれど(ゴジラの逆襲ではまだ格闘という感じではなかった)、腕の太さ、胸筋、爬虫類っぽい頭、とここでしかミられないゴジラの造形が最高。対するアメリカから(正確にはファロ島)やって来た王者キングコングとも対等に渡り合う。ゴジラの造形としては後の平成VSシリーズの方がマッチョかなとも思うけれど、いわゆるプロレスラーに近い放射熱線よりもあくまで肉弾戦にこだわるゴジラとしてはこっちですな。
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マイティ・ソー(クリス・ヘムズワース)
ここからはアメコミ・ヒーロー3連発(画像なし)。まずは北欧から来た暴れん坊雷神ソー。演じるクリス・ヘムズワースはこの前に「スター・トレック」でカーク船長の父親を演じていて冒頭数分の出番だったが強い印象を残した。ただ、その時は惑星連邦の艦隊の制服を着ていたこともあって、それほどマッチョな印象はなかったのだけれど、こちらではムッキムキに荒々しい北欧の雷神でありながら妙にチャーミングなソーを魅力的に演じた。この時点でのMCU主演俳優では一番無名だったけれど、その後の活躍は御存知の通り。
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キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(クリス・エヴァンス)
今日(4月29日)公開されました「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の第一弾。他のMCU作品と違い第二次世界大戦を舞台にした前日譚的な物語。ひ弱な青年スティーブ・ロジャースが超人兵士製造計画の被験者となって常人を凌駕する肉体を手に入れキャプテン・アメリカとなる!この映画では実験前のひ弱なスティーブと実験後のムッキムキスティーブが登場するけれど、ひ弱な方がスタント&CGでムッキムキな身体がクリス・エヴァンズの自前。
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現在のアメコミ映画の隆盛の元となったのはこの映画から。そして一番人気のミュータント、ウルヴァリンはいきなり裸で登場。原作コミックスの身長160㎝の小柄な男は188cmの長身に。我らがヒュー・ジャックマンが世界に、そして日本に初お披露目した作品。この後はウルヴァリンの粗野な役だけでなく、元々地元オーストラリアでは知られていたミュージカル俳優としての美声も発揮したりしていまや21世紀を代表する俳優と言えるだろう。
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てか「キン肉マン」入ってないよ!(TVアニメはともかく劇場映画はあんまり……)
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動物に託された偏見からの脱却 ズートピア
例によってお久しぶりです。「バットマン V スーパーマン」の感想が結構書いたところで全部消えたので意気消沈しています。誰か新しいパソコンくれ!*1
とりあえず数少ない劇場鑑賞からディズニーの最新作「ズートピア」の感想を箇条書き形式で。めっちゃハードでした!
物語
草食動物も肉食動物も共に共存する世界。哺乳類は人間のように文化を発達させ暮らしています。ウサギのジュディはウサギ初の警察官を目指し、警察学校を主席で卒業。大都市であるズートピアへの赴任が決まりました。その頃ズートピアでは肉食動物の行方不明が続出、しかし配属初日のジュディは捜査には加えてもらえず駐車違反の取締に回されるのでした。その中でキツネの詐欺師ニックと知り合うジュディ。都会の現実に打ちひしがれるジュディですがたまたまカワウソの主人が行方不明になったオッタートン夫人に捜査の安請け合いをしてしまいます。勝手に捜査を引き受けたジュディに署長は48時間以内に解決できなければクビという条件をつけて捜査をさせることに決めました。捜査資料にあった最後のオッタートンの写真にはニックからアイスキャンディを買う姿が。過去の詐欺の告白を録音したデータを餌にジュディはニックに捜査に協力させます。ウサギとキツネのコンビが誕生。しかしこの事件の裏には巨大な陰謀が…
ディズニーの3DCGアニメ作品としては「塔の上のラプンツェル」「シュガー・ラッシュ」「アナと雪の女王」「ベイマックス」に続く第5弾(「ボルト」もそうなのかな?まあ僕のブログ上での鑑賞では第5弾ということで)!ただTVスポットなどで「ラプンツェル、アナ、エルサに続くニューヒロイン」みたいな紹介のされ方をしていたのだが、僕の中では同じディズニーの3DCGアニメ作品でも「塔の上のラプンツェル」「アナと雪の女王」の古典童話を題材にした作品と「シュガー・ラッシュ」「ベイマックス」のオリジナルSF作品*2とでは明確に別の枠に区分されていて本作「ズートピア」は後者。だから童話路線の作品と一緒にされるのはちょっとどうなの?という部分はある。
とはいえ、僕自身ちょっとこの作品を侮っていたところはあって、「ああ、動物の擬人化ものね。「カーズ」の動物版みたいなものか」って感じでそれこそ「シルバニアファミリー」とかみたいなかなりファンシーな子供向け作品だと思いこんでいた部分はあった。でもそれは大きな間違いでめっちゃハードな社会派サスペンス映画でした!
内容としてはそれこそ「カーズ」「プレーンズ」系の「擬人化された何かを人間社会に置き換えたもの」なのだが、作りこみが半端無く、正直「カーズ」の世界はこれに比べるとかなり適当な感じさえ今となっては見えてしまう。
まずこの「ズートピア」は「哺乳類の肉食動物・草食動物が共に暮らす文明社会」という世界だが、まず連想するのがただいま放送中の「動物戦隊ジュウオウジャー」。どっちがコンセプトとして早かったのかわからないが、あちらもジューマンと呼ばれる動物たちがジューランドと呼ばれる世界で人間のように暮らす(が主人公たちは人間の世界に来てしまう)世界を描いた番組だ。ただ「ジュウオウジャー」はメンバーにサメがいたり(サメ自体は戦隊では定番の動物モチーフだが、明確に魚類なのでせめてイルカとかシャチとかにできなかったものか)、レッドは鳥だったり*3イマイチ徹底していない。人間を自動車や飛行機に置き換えた「カーズ」世界も同様で、牛や虫まで自動車だったりしてその世界観はあやふやだ。それに比べると「ズートピア」の世界は完全に哺乳類に限定しており、さらにそれは現在の我々の世界において野生動物として生きる種に限られる。つまり犬や猫、馬や牛といった愛玩動物・家畜である種類は登場しない。また猿やチンパンジーといった霊長類、イルカやクジラといった海の哺乳類も登場しない。あくまで陸生の野生動物に限られるのだ(一回観ただけでの感想でパンフレット等も読んでいないのでもしかしたら見落としあるかもですが)。これは人間を模した社会を形成しながら人間を観客に意識させないことに成功している。またここまで徹底したことで、単なる児童向けのファンタジーではなく、もっとSF的な背後の設定まで予測することもできる(つまり人類が滅び、そして如何に野生動物が共存文明化した世界が誕生したのか?とか)。ズートピアにおける様々な大きさの動物たちがうまく共存しているさまもスムーズに描かれる。ちなみに肉食動物は植物や昆虫を材料としたものを食べている、という劇中直接出てこない裏設定があるのだそう。
物語は表向きは肉食動物の行方不明者を探し、その捜査の過程で明らかになる陰謀を暴く物語だが、その裏には現在の人類社会が今のなお抱える様々な問題を提示している。
僕は映画の予告編(具体的な物語紹介はなし)を観た時に、「またキツネの詐欺師か。こういうある種族の動物に特定のステロタイプな役割を押し付けるのはどうなの?」というような疑問を持った。食いしん坊のブタ、亀の長老、知恵者のマンドリルといった具合。そろそろこういうのもある種の人種差別民族差別として問題にされてもいいんじゃないの?と。しかしそんな疑問を持った人こそ、この映画の格好のターゲット。そういう疑問に答えた映画であるともいえるだろう。
主人公のジュディはウサギでありながら警察官を志すキャラクターだが、やけに色っぽく描かれている。これ自体、ウサギは好色という俗説を利用したものといえるだろう。雑誌「プレイボーイ」のシンボルはウサギだし、バニーガールなんて衣装もある。手塚治虫の「W3」のヒロイン、ボッコなんて人間態の時よりうさぎの姿のほうがエロティックだ。他の動物擬人化キャラクターはそれほど性差を外見に現れるものとして描かれていないが(服は着ているし、警官なんてほぼマッチョな雄なので判別はつくけれど、ボディラインとしては特に差はない)、ジュディと例外的にトムソンガゼルの歌手ガゼルが色っぽく描かれている。これによって警察内での「弱い存在」としてのジュディが際立つわけだ。そしてジュディはその偏見を退けようと奮闘する。
一方でジュディはキツネという種にいかがわしさをもっていて、その態度は自分でも知らぬうちにニックに対して向けられてしまう。ニックもキツネというだけで虐げられた結果、ズートピア社会でまっとうに生きる道を見失い詐欺師として生きている。この二人の互いを分かり合いぶつかり合う過程も見どころだ。
ちなみに制限時間48時間の警官と犯罪者のバディもの、というのは「48時間」だね。
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物語は肉食動物の行方不明事件は実は野生化した動物を市長(ライオン)が密かに保護していたものと判明する展開を迎える。保護というか隠蔽工作。そして野生化の原因が不明のまま、しかし肉食動物の身にだけ起きる、と民衆に伝えた結果、草食動物と肉食動物の間に相互不信が拡がる。ニックもジュディの何気ない偏見に基づいた言葉で彼女の元を去る。
この展開は何よりアメリカ国内の人種問題を元にしているのだろうが、僕はまず永井豪の「デビルマン」(原作版)を連想した。あの中でデーモンが人間への合体攻撃を繰り返した結果、ある科学者が「デーモンの正体は社会に不満を持った人間だ!」と結論しその結果を発表することで人類は魔女狩りを行い自滅する(実はサタンであった不動明の親友飛鳥了がそれに拍車をかける)。
- 作者: 永井豪
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結果として「なりたいものになれる」という、それこそ「カーズ」や「プレーンズ」そして「モンスターズ・インク」などで描かれたテーマの最も優れた作品となったのではないだろうか、と思う。ホッキョクグマを従えるネズミのマフィアとかその動物の持つギャップをギャグにしている一方で、相棒としてのキツネ(西欧社会では往々にして嫌われている存在)や善良な存在として描かれることの多いヒツジが黒幕だったという展開は我々の持っており動物のイメージから脱却している。ちなみにヒツジはキリスト教において人間を意味する存在でもあり、多分この物語に出てくる唯一、現実の人間との関連を伺わせる存在でもある(前述したとおりこの世界には基本的に現在の人間と縁が深い家畜、愛玩動物や人間に近い霊長類は登場しないが、ヒツジはほぼ唯一の例外ともいえるだろう)。動物擬人化ものの枷から我々を解放してくれる物語だ。
動物擬人化ものの枷から我々を解放してくれる、と書いたが、実は一人だけ従来のイメージを引っ張ったままなのがイタチのウィーゼルトンで、イタチの持つ小賢しい悪党、といったイメージを踏襲している。ただ、これは英語版で演じているのがアラン・テュディックで、この人はここ最近のディズニー映画では「シュガー・ラッシュ」のキャンディ大王、「ベイマックス」のアリスター・クレイと悪役で常連出演していて、なにより「アナと雪の女王」では小悪党ウェーゼルトン公爵を演じていて、ウィーゼルタウン(イタチの町)と名前を間違えられるというキャラだった。今度はまんまイタチであるウィーゼルトンを演じているわけで、これは別の作品のキャラがそのまま別の作品に登場するスターシステムの亜種みたいなものと思っていいのではないだろうかと思う。
- 作者: ディズニー・パブリッシング・ワールドワイド
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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今回は同時上映作品はなしで、日本語吹き替え版で鑑賞。ジュディを上戸彩が、ニックを森川智之が演じていて特に問題はなし。上戸彩は以前にやはり3DCGアニメとして作られた「鉄腕アトム」のリメイク「ATOM」でアトムの声をやっていて、その時はやはり少年の声というよりはどうしても少女の声になっていていまいちだったのだが、今回は少女らしさももつ大人の女性ということで特に違和感はなし。言われなければ気づかないレベルだと思います。森川智之はもちろん最高。
他に劇中で出てくる歌手のガゼル(英語ではシャキーラが演じている)にE-girlsのDream Ami(一部歌も)、警察のぐうたらな受付のチーター、クロスハウザーにサバンナの高橋茂雄。サバンナ高橋はもしかしたらサバンナという点での起用だったのかもしれないけど普通に上手かったです。関西弁になるわけでもないしね。
ただ、上戸彩、Dream AmiということでどうにもEXILEの影がちらつくのがちょっと不信感。なんといっても同じディズニー制作のMCU「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の日本版イメージソングをEXILEの人がやっているということでちょっとこれ以上こっち来ないで!という感じ。
ディズニーにしろ、ピクサーにしろ、あるいはドリームワークスにしろここ最近のアメリカの3DCGアニメ映画はほぼハズレがない状態なのだけれど、この「ズートピア」はその中でも最高レベルの傑作ではないでしょうか。オススメ!
老いてますます盛ん!なんだけどちょっと… 仮面ライダー1号
はい!また一ヶ月間が空いてしまいましたが、もうあんまり触れませんよ。慢性化してるからね(スイマセン!)。
というわけで、もう4月です。3月は2本しか劇場で映画鑑賞ができなかったけれど、なんとか鑑賞本数もブログ更新スケジュールも今までのように戻していきたい。でも!3月に観た2本はもう少しだけ置いといて、今回は4月1日に観た映画の感想を。「仮面ライダー1号」を鑑賞。
物語
かつて一世を風靡した悪の秘密結社ショッカー。しかし今はショッカーとそこから独立したノバショッカーに分かれて互いに争っていた。鍵となるのは立花麻由という高校生の少女。2つの組織に狙われた彼女を助けた仮面ライダーゴースト=天空寺タケルは彼女の秘密を探るため、教育実習生として彼女の高校、陵南大付属高校へ赴く。再びショッカーが彼女を襲い、ゴーストも立ち向かうが、麻由を助けたのは一人の男だった。彼こそが最初のライダー、仮面ライダー1号本郷猛…
えーと、一応年末に仮面ライダーゴーストと仮面ライダードライブのMOVIE大戦「ゴースト&ドライブ超MOVIE大戦ジェネシス」も、年明けの「手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー」も劇場で観てはいます。この2つに関してはまた別に後で感想書きますが、とりあえず現役ライダーの最新作です。
一応ライダー誕生45週年記念作品で、最初に発表された時は「仮面ライダー3号」に続く感じなのかな、と思ったんですが、これ「企画・藤岡弘、」でもあります。個人的にはどうせやるなら本当に藤岡弘、単独主演でゴーストとか今のライダー絡めない作品が良かったのですが、TVスポットなどから予想されている以上にゴーストはゲスト出演ではなく、ゴーストの映画でもありました。
脚本は「鳥人戦隊ジェットマン」などの井上敏樹。TVシリーズの最初の「仮面ライダー」を始めとして数々の特撮作品を手がけた伊上勝の息子。今回は一応「仮面ライダーゴースト」の映画でもあるが、前回藤岡弘、が素顔で出演した「平成ライダー対昭和ライダー」に比べると、登場作品が最初の「仮面ライダー」と「仮面ライダーゴースト」に限られ、登場ライダーも1号、ゴースト、スペクターの3人、ゴーストの敵組織である眼魔も登場しない事もあって、この手のイベントムービーとしては比較的よくまとまっていたほうだと思います。
物語としてはおそらく本郷猛側から見ると「仮面ライダーBLACK RX」の最終回から繋がる形でしょうか。以前に藤岡弘、が素顔で登場した「平成対昭和ライダー」とはパラレル。
事前に話題になっていた新造形の1号のデザインは元のデザインのスリムさから遠く離れ、モチーフであるバッタの脚力とは無縁な感じに。どちらかと言えばダンゴムシを連想さえする。てっきり最初は元の(旧1号とは言わないまでも)デザインのライダーとして変身して劇中で新しいデザインにパワーアップするのかな?と思ったのだが、最初からこのデザインで登場。ただ、本郷猛を演じる藤岡弘、が45年前に比べると当然だが太っているので(といっても全然スタイルはいいと思う)変身後と変身前のギャップが少ない、という意味では合っているデザイン。でもやっぱりこのデザインだと技の1号というよりは力の2号ッて感じ。
本郷猛は21世紀のライダーとしては稀有なノーヘルでバイクに乗るライダーです(さすがに公道は走ってなかったと思うけど)。
ショッカーとノバショッカーの違いはショッカーが旧来の再生怪人なのに対して、ノバショッカーが新しい怪人といったところか。ショッカー怪人としては毒トカゲ男とガニコウモル、シオマネキングの3体が登場。毒トカゲ男はともかく、ガニコウモルとシオマネキングはもうこの手の映画などではほぼ皆勤賞に近いのでは?東映はこの2怪人にはシリーズ功労賞を挙げるべきだと思いますね。ガニコウモルはTV後半ショッカーがゲルショッカーに変わってからの最初の怪人で、子供の頃見た時(といってもリアルタイムではなく再放送)はその役も造形も含めてとても怖かった記憶があるのだけれど、これは以前も書いたと思うけれど、現在の発色の良い画面で見ると凄くしょぼく見えてしまう。そろそろガニコウモル自体の再デザイン、新規造形をしてあげて欲しい。シオマネキングは今のデザインでも十分ショッカー怪人としてよく出来ていると思います。ただほぼショッカーの怪人としては出ずっぱりなのにあんまり印象に残らない怪人でもあるのだけれど。
ショッカーの大幹部として大杉漣の演じる地獄大使が登場。大杉漣の地獄大使は「仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」に続いて二度目。デザインも特徴的なシルエットは残しながら黒いカラーリング。ちょっと大杉漣の顔の形と兜がフィットしてなくて隙間が見えるような感じだったのが残念か。ガラガランダにも変身、なんとライダーと並んで見得を切る
ノバショッカーはショッカーの若手が独立した組織でこれまでの破壊工作による征服手段から経済を掌握することによる征服を企むが、まあ最終的にはショッカーとそう変わりません。これまでもいろんなショッカーを名乗る組織が出てきたし、その中にはショッカーを名乗るのもおこがましい物もありましたが、このノバショッカーは比較的小規模ながらかなりよくやった方ではないでしょうか。最初の方針に徹してればよかったんだよ……
ちなみに山口組の分裂とそれに伴う山口組と神戸山口組をショッカーに託してもっとも早く映像化した作品が本作である、という説を唱えてみたのですがどうでしょうか?
ノバショッカー幹部はウルガ、バッファル、イーグラの3人。リーダー格のウルガは狼怪人に変身するが、バッファルはゲバコンドルを再デザインしたっぽい怪人に。名前からするとバッファローぽいのにね。そしてイーグラは長澤奈央が演じる女性幹部だが彼女だけ変身せず。名前からするとイーグル=鷲っぽいがサーベルをフェンシングのように扱う戦い方からすると蜂女なのだろうか。
物語はヒロイン立花麻由の中に眠る英雄眼魂を巡って展開するのだが、この眼魂がいったい誰のものなのか映画を見ながら予想していた。「ゴースト」では英雄の魂が宿る眼魂を使って変身するのだが、そのラインナップが結構あやふやで確かに英雄というのもあれば、架空(実在したか怪しいロビン・フッド)の人物や、業績が過大評価されているもの(ねずみ小僧やビリー・ザ・キッド)、全然英雄じゃないむしろ弱そう(ツタンカーメン)など知名度優先な感じ。ただ逆に何でもありなラインナップではある。麻由はその影響で時折別人格が現れるのだ。最初は普通に大首領のもの。ショッカーとノバショッカーが争い、地獄大使にその眼魂を手に入れろ!と何者か(ゴーストの登場人物?)が告げるのだが、一番しっくり来るのが大首領の魂だろう。しかし今回は大首領のことはまったく触れられなかった。次に立花藤兵衛その人。立花麻由は名字で分かるようにシリーズでは欠かせなかったおやっさんこと立花藤兵衛の孫。後述するけれど、麻由の本郷猛への態度などからむしろ孫に宿ったおやっさんその人なのでは、とも思った。そしてその眼魂が出てくる直前に連想したのがチンギス・ハーン。世界を最も広大に征服した英雄といえばチンギス・ハーン。イーグラがまだ変身していないし、彼女がチンギス・ハーン眼魂を使って「ジンギスカンコンドル」になるのでは?!などと思ってしまった。
そして実際に出てきたのはアレキサンダー大王!まあ確かにアレキサンダー大王ならチンギス・ハーン時比べても遜色ない英雄ではある。このアレキサンダー大王の眼魂でウルガがパワーアップ、しかし制御しきれなくなったウルガをライダーたち(&地獄大使)が倒す、という展開へ。アレキサンダー大王は奇しくも同じ日に観た「バットマンVスーパーマン」の方にもちょこっと出てきて面白いシンクロ。
クライマックスの戦いで出てくる仮面ライダーWの眼魂を始めとしたW以降のライダーの眼魂を使っての変身は劇中ではどうやって手に入れたのかまったく言及されず、いきなり出てくる。TVの方でもなかったと思う。Web限定の前日譚ムービーか何かあるのだろうか。ただ、もうその辺は僕の中では気にならないというか、この手のイベントムービーでは気にしてもしょうがない、という境地にあるので普通に楽しかったです(Wとフォーゼが出てくるとそれだけである程度許せる、というのもある)。
さて、事前に聞いていた本郷猛と言うより藤岡弘、本人の説教臭い授業シーンなど一部で「宗教」と言われているような部分も確かにあったのだけれど、まあ藤岡弘、が企画はもちろん脚本にも関わっているようなので、その辺は歪ではあるけれど許容範囲。個人的にもやっとしたのが本郷猛とヒロイン立花麻由の関係性。
先述した通り立花麻由は立花藤兵衛の孫娘で、両親はすでに亡く本郷猛はおやっさんからの遺言でその行く末を託された。で「大人になるまで見守る」ということだったのだけれど、本郷猛は彼女が中学の時点でどこかに行ってしまう。義務教育終了の時点でもう大人と思ったのか?それでは現在はちょっときついっすよ本郷さん。物語開始時点では本郷猛はタイにいるんだけど、特にその説明はない(おそらく海外のショッカー残党を追いかけていた、とかではあるのだろう)。
そして戻ってきた本郷猛は高校生になった麻由から「猛」と名前で呼び捨てにされる。劇中でもクラスのモブの生徒から「猛って…」みたいなツッコミもあるのだけれど、これがかなり不自然。この高校生による約50歳年上の相手への呼び捨てがあまりに不自然なので先述した「見た目は女子高生だけど、実は中身はおやっさんその人」とかまで想像してしまった。これがアメリカとかだったらそう不自然ではないんだけど、別に本郷猛が立花麻由を海外で育てた、とかいう設定もないようだし。日本だと「ルパン三世 カリオストロの城」でクラリスがルパンへの呼びかけに使った「おじさま」とかのほうがまだ自然かな‘(あれはあれでちょっと気持ち悪くもあるんだけど)、普通に「猛おじちゃん」とかで良かったじゃないでしょうか?
その後の描写を見ても制作側はこの50歳近く年齢差のある二人の関係を保護者と被保護者の擬似親子というよりは恋人同士のように描いていると思う。もちろん児童向け作品なので直接的な描写はないけれど。
別に年齢差のあるカップルがいても良いんだいけれど、それならせめて麻由の設定を高校生ではなく大学生にできなかっただろうか?立花藤兵衛の孫という設定ならもっと上の年齢でも全然問題なかったと思うんだよね。麻由は制服を着ての登場シーンも多いんだけど、これは僕の個人的な考えだけど、学校の制服と言うのは「まだ子供」であることの象徴だと思う。だから高校生同士ならともかく、大人と制服を着た高校生の恋愛(准恋愛)は本来庇護する大人が子供に手を出している風に見えてしまう。これが大学生なら、まだ社会に出ていないという部分では高校生と変わらないけれど、常に私服なのでそういう印象が小さくなる。藤岡弘、自身は70歳という年齢の割には見た目も中身も若いとは思うので若い女性(と言ったって20代)との恋愛ものがあったって全然不自然とは思わないけれどさすがにちょっと…。立花麻由を演じた岡本夏美はルックスも声も武田梨奈をに似た感じで良かったです。
藤岡弘、って70歳なんだよね。今「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部がアニメ放送されているけれど、その第3部「スターダスト・クルセイダーズ」に出てくるジョセフ・ジョースターが69歳。子供の頃連載で第3部を読んでた時は「こんなマッチョな老人はいねえよ!」とか思ってたんだけど、普通にいるね。シルベスター・スタローンも69歳だし、シュワも68歳。チャック・ノリスに至っては76歳だ!そういやビンス・マクマホンも今年70歳。世の爺さんは元気だ。
ゴースト側の出演は物語の邪魔にならない程度に爽やかで良かったと思います。前回(MOVIE大戦ジェネシス)でも竹中直人ワンポイント怪演が目立ったけれど、今回も似た感じ。ちなみにTVシリーズの方のラスボスは蘇って再び世界を征服せんとする豊臣秀吉=竹中直人、と言う説を僕は唱えています。
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藤岡弘、が顔出しで出ている前作。