The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

星屑の義士団 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

遠い昔 はるかかなたの銀河系で…

エピソード4 新たなる希望

時は内乱の嵐が吹き荒れるさなか凶悪な銀河帝国の支配に対し反乱軍の宇宙艦隊は秘密基地から奇襲攻撃を仕掛け、初めての勝利を手にした。
その戦闘の間に、反乱軍のスパイは帝国の究極兵器に関する秘密の設計図を盗み出すことに成功した。それは「デス・スター」と呼ばれ惑星を丸ごと粉砕できる破壊力を兼ね備えた恐るべき武装宇宙要塞だった。
邪悪な帝国の手先どもに追われながらも、レイア姫は自らの宇宙船を駆って、盗みだした設計図を携え故郷の星への道を急いでいた。この設計図こそが、人民を救い再び銀河に自由を取り戻すための鍵となるのだ・・・
(DVD「スターウォーズエピソード4新たなる希望」日本語吹替版オープニングクロールより)

という話です。

 ルーカスフィルムがディズニーに売却されたことで再始動したスター・ウォーズ作品の第2弾。前回はナンバリング作品ということで新たなる三部作の1作目「エピソード7」であったが、本作はスピンオフとしてこれまで概要だけは知らされていたが、具体的に映像化されなかった物語を映画化。「エピソード4」の直前、その最初の部分のオープニングクロールを映像化したものである。「エピソード3」から約20年後、銀河帝国が一番勢力を伸ばしていた頃だが、その崩壊のきっかけとなった出来事、SWの世界は我々の世界で言うような年号や西暦のようなものがなく、EP4のヤヴィンの戦いを1年としてその何年後とか何年前とかいう感じで時代を計算すると思ったけれど(これはあくまで我々が判断する材料で多分ちゃんとした紀元があるのだとはおもうけれど)、本当にEP4直前の物語である。「エピソード3.5」と言うよりは「エピソード3.9」と言う感じ。
 僕は以前も「フォーズの覚醒」の感想で書いた通り、それほど熱狂的なスターウォーズファンというわけではない。もちろん普通に好きでひと通りチェックしているし、旧三部作は間に合わなかったけれど、新三部作は全部劇場で鑑賞しているし、なんならソフトも持っているのだけれど、でもやはり他のSFシリーズ、例えば「スタートレック」であるとか「猿の惑星」とかと比べるとランキングではそれほど上位には来ない感じ。ただシリーズそのものに強い思い入れはない一方で映画史の中でSWが果たした役割は大きいと思っていて、それゆえにこのシリーズだけはジョージ・ルーカスがまさに神のように君臨してファンの言葉など無視して自分の好きなように作って欲しかったと思ったりする。その意味ではこのディズニー製作の新展開はルーカスが直接関わってないこともあってそういう意味でのモチベーションは下がるのだが、それでも直接「EP4」につながる作品なので「フォースの覚醒」よりは古いSWファンにもアピールする部分は多そうだ。
 一応スターウォーズではあるけれど、スピンオフなのでスカイウォーカーの血脈に関する要素は殆ど無い。従来のキャラクターが一部登場する程度。フォースも広く信じられているけれど、ジェダイ騎士団はすでに無く、フォースが使われることはない。逆にジェダイがいないから、一般人の間でこの時期ジェダイとフォースがどういう風に思われていたかなんかを類推することはできるのだけれど。
 監督は「モンスターズ」「GODZILLA」のギャレス・エドワーズ。元々歴史ものの再現映像みたいな者を撮っていた人なので割りと本筋に近いかもしれない。ただ、本作は再撮影が多くあって、その部分はエドワーズ演出ではないなんてことも聞くけれど。
 シリーズとしての作品の立ち位置はやはり日本のSFシリーズ「機動戦士ガンダム」と比べると分かりやすいと思う。富野由悠季監督の手がけた宇宙世紀を舞台にしたガンダムのうち最初の「機動戦士ガンダム」の劇場3部作を「プリクエル3部作(EP1〜3)」、「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダムZZ」「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」を「オリジナル3部作(EP4〜6)」に比定して*1同じ宇宙世紀の物語ではあるものの富野監督以外が手がけTVシリーズでなくOVAとして発表された「0080ポケット中の戦争」「0083STARDUST MEMORY」「第08MS小隊」なんかが今回の「ローグ・ワン」はじめとする「スター・ウォーズ・ストーリー」にあたると思う。これらのOVA作品では作品の重要なテーマであるニュータイプが語られないが本作でもジェダイやフォースについて具体的に描かれないのも似ているところだろう。

 で、これらのOVAシリーズって当時最新の技術を駆使して過去の出来事を描くということで物語・劇中の歴史的な部分はともかく、演出やデザインで妙な違和感を感じてしまったものだった。モビルスーツなどのディティールの細かさやアクションシーンのテンポの良さ、カット割りといった部分が「過去の話なのに未来(Zガンダムとか)よりも進んでる!」と言う違和感。まあこの辺はアニメだからどうとでもなるのだが、本作にも似た違和感はある。これがEP4の30年〜20年前ぐらいを描いたEP1〜3の時は時代がさかのぼりすぎていてあんまりそんな違和感は無かったんだけど、今回はEP4直前の物語ということでちょっとその辺も気になったりした。
 EP4は他の作品に比べるとまだ1970年代後半のアメリカの風俗が銀河にも影響を与えているというか、反乱同盟軍の服装とか髪型とかちょっと70年代味あふれるのだけれど、その辺は上手く再現している。反乱同盟軍の幹部会議とかかなり70年代風。またデス・スター内部の操作盤とかも当時の物っぽさを再現。一方で設計図のデータが収まってるスカリフのシタデルなんかは今風と言う感じだったけれど。
 後はやはりアクションシーン。これはどうしようもないことだけど、アクションやそこにおけるカット割りなどはどうしても現代風。多分劇場で「ローグ・ワン」を観て、続けて自宅で「新たなる希望」を見たという人も多いと思うんだけど、そうするとやっぱりアクション部分ではかなり時代の差を感じてしまう。特にスカリフの攻防戦はかなり大掛かりな地上戦、空中戦、宇宙戦があるので、どこかゆっくりしたEP4とはちょっと趣が異なる。SW世界の歴史ではヤヴィンの戦いの方が重要度は高いけど、戦闘の規模は今回のスカリフの戦いの方が上に見えてしまうのはどうなんだろうとちょっと思ってしまった。
 で、前半にあるジェダでのシーンでは中東を思わせる町並みにAT-STが現れたりするのでまたぞろ「メタルギアソリッド」の4の冒頭を思い出したりしてしまった。最近はいろんな映画から「MGS」の影響を感じることは少なくないのだけれど、まさかスターウォーズでそれを感じるとは思わなかったなあ。

 物語は銀河帝国が成立してしばらくしたあたりから始まり、15年を経て本編となる。この過去のシーンがあって、そこから一気にメインとなる時代に飛ぶ、という手法もこれまでのSWでは無かったはず。これもスピンオフだからこそ可能な方法。ここでは帝国の技術者だったゲイレン・アーソとその娘であるジン・アーソの過去が描かれる。ジンが主役となるので「フォースの覚醒」に続き女性主人公。デス・スター自体は時系列的には「EP2」でその計画が出てきて、今回やっと完成するわけで約20年がかり。で「新たなる希望」で反乱軍に破壊され、「ジェダイの帰還」では第二デス・スターが急ピッチで建造されて完成間近となっていた。第ニデス・スターの建造スピードからすると最初のデス・スターに何年かかってるんだよ!とか思ったものだが、今回の物語を加味すると実際に建造が始まってからもなかなかうまく行かず、ゲイレンを技術責任者として迎えてやっと具体的に動き出したものの、あえてゲイレンは時間をかけたのかもしれない。
 ジンを育てたソウ・ゲレラは過激派の反乱軍という感じで現在は反乱同盟軍からも距離を取っている存在。彼と連絡を取るべくジンを仲介者として物語は動き出す。
 反乱軍の仲間は主に裏仕事(銀河帝国の圧政に対抗し銀河に自由を取り戻すためとはいえ、綺麗事だけでは革命もできず表に出せない仕事を手がけている)を中心に活動していたキャシアン。銀河帝国パイロットだったがゲイレンに共感し、情報を携え脱走してきたボーディー。帝国の戦闘ドロイドだったが再プログラミングされたことで反乱軍の頼もしい味方となったK-2SO、ジェダで仲間となった盲目の武道の達人チアルートと傭兵スタイルのベイズのコンビが中心となる。
 この中でK-2SOは「アイアン・ジャイアント」を思わせるちょっと宮崎駿天空の城ラピュタ」のロボットも連想させ魅力的。演じているのはアラン・テュディックで、多分声だけでなくモーション・キャプチャーか何かで動きも演じている。
 一番世間的に話題なのはチアルートを演じたドニー・イェンだろう。座頭市を思わせる盲目の武術の達人。アメリカ映画での出番というと「ブレイド2」のスノーマン(ヴァンパイアの特殊部隊の凄腕)を思わせる。彼はジェダという惑星のジェダイ寺院の守護者、という役割だったが帝国の成立とジェダイ迫害によって追われたという感じなのだろう。深くフォースを信じているがおそらく彼自身にジェダイの才能はなく、ジェダイ騎士ではなく一民間人の立場でジェダイ寺院のボディーガードをやっていた、という感じだろうか。ジェダイ騎士になるには結構血統主義で小さい頃から修行しなければならないのだが、そのいろんな条件に当てはまらなかったのだろう(盲目であることが先天的か後天的なものかは分からないがそれ自体は特に関係ないと思う)。ただジェダイでなくとも凄腕はいるわけで(ボバ・フェットやグリーバス将軍とかね)、ジェダイでないものがたどり着ける体術の最高峰がドニーさんという感じだろうか。相棒のベイズはチアルートとは対照的な重銃火器を装備していて、おそらく共和国時代はどこかの傭兵部隊に所属していたと思われる。装備もちょっとマンダロア兵を思わせる。最初このチアン・ウェン演じるベイズはあんまり喋らないのかなあ、と思ったのだけれどこれが結構喋って存在感を示す。
 個人的に今回一番好きなキャラクターは元帝国のパイロットだったボーディー。ギョロッとした目も魅力的。
 演じた役者は亡くなっているが、いわゆるアーカイブ出演というのかCGを使って出ているのがグランド・モフ・ターキンのピーター・カッシング。同様にレイア姫も若いキャリー・フィッシャーの姿で出てくる。キャリー・フィッシャーの方はこの撮影時はまだ存命で(彼女のエピソード8の出演部分は全て撮影済みだそう)、本人も了承済みなんだろうけど、ピーター・カッシングの方は完全にCGで再現した形での出演なので、素直に喜んでいいのかちょっと微妙なところ。顔を映さずに声だけ、とかそういう感じにはできなかったのかなあ、とも思う。

 今回はまず日本語吹替版で観て、二回目を字幕版で観賞。吹替は概ねよく出来ていて、めまぐるしい戦闘アクションも多いので吹替版もオススメです。ちょっとの出番であるC-3POなんかもちゃんと岩崎ひろし。ただ、ダースベイダーの声が大平透ではないのであるな。大平透さんは2016年の4月に亡くなっていて、その少し前からTVアニメである「反乱者たち」では楠大典が担当していて、本作でもそのままベイダー卿の声をあてている。楠氏のこれまで担当した声は「TIGER & BUNNY」のロックバイソンだったり巨漢系のキャラクターが多いのだが、どうにもベイダー卿の今回の声には合っていなかった気がする。「反乱者たち」を観ていればまた別なのかもしれないが、映画のほうだとどうしても大平透さんの声の印象が強くて…。もちろん大平透さんはすでに亡くなっているので、声をサンプリングしろとか加工しろとかそういうことではなく、もっと話し方を寄せるか、銀河万丈玄田哲章みたいな重く低いけど魅力的な声をあてるって方法もあったんじゃないかなあ、とか思ったりした。

 原語ではオリジナルの声であるジェームズ・アール・ジョーンズが今回も担当していて、僕は字幕版の方はもうこのジェームズ・アール・ジョーンズの声を聴きに劇場へ足を運んだようなもんなんだけれど、安心してください。これがもう見事なまでに大平透の声。「大平透が蘇った!英語喋ってるけど!」と思ったぐらいだった。いやあ元々そっくりだったけど、ちょっと嬉しくなってしまった。
 ちなみに「スターウォーズ エピソード5 帝国の逆襲」と「コナン・ザ・グレート(1982年版)」は両方共ジェームズ・アール・ジョーンズがクライマックスで主人公(ルーク・スカイウォーカーシュワルツェネッガー演じるコナン)に対して「私がお前の父だ。親子で世界を支配しよう」みたいなことをいう映画なのだけれど、そこで呆然としてしまうのがルーク。躊躇なく首をはねるのがシュワ。

 身体の方のダース・ベイダーを演じているのはさすがにデヴィッド・プラウズでもセバスチャン・ショウでもヘイデン・クリステンセンでもなく別の人(複数?)が演じていて、「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」でスターロードのウォークマンを取り上げた人らしいです。で、最後のライトセーバーで敵の銃撃を弾き飛ばす仕草もオリジナルに比べると、ちょっとアナキンよりというか素早い感じになってましたね。この直後にレイア姫のオルデラン船につながるのでちょっと違和感感じる人はいるかも。
 後はストームトルーパーがあのちょっとユーモラスなヘルメットをかぶってたくさん出てくるのだけれど、こいつらは概ねマヌケでEP4のマヌケで憎めない感じがつながるので良かったです。その分デス・トルーパーという黒尽くめの兵士が強くなっているけれど。エピソード3のクローン・トルーパーから20年でストームトルーパーは大分質が落ちたんだなあ。

 後は反乱同盟軍の提督としてモン・カラマリの人物が出てきます。ラダス提督。黒い体表の好戦的な頑固親父、と言う感じ。のちに英雄となる我らがアクバー提督と比べると大分付き合いが悪そう。SWのキャラクターではアクバー提督が大好き!というのは結構言っているんだけど、今回別のモン・カラマリのキャラクターが出てきたことで、単にアクバー提督のクリーチャーとしての造形が好きなだけでは無かった、ということが再発見出来ましたね。アクバー提督はモン・カラマリだから魅力的なわけではないのです。モン・カラマリであることも含め、アクバー提督だから魅力的なんですよ!ラダス提督もそれなりに魅力的だけど。一番の違いはきぐるみのアクバー提督に対してラダス提督はCGで表現されてることだろうなあ。

音楽はマイケル・ジアッキーノ。ジョン・ウィリアムズの各種テーマ曲も使用されているけれど、そうじゃない部分、ウィリアムズ手がけていない曲の変にウィリアムズっぽいところが、逆に偽物ぽく聞こえてしまって妙な居心地の悪さを感じてしまった。
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー  オリジナル・サウンドトラック

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー オリジナル・サウンドトラック

 物語の構造上、ここで活躍するキャラクターたちがその後の物語に出てこないのはわかっていて、つまり最後は全員死んで終わる、というのは予想ができたのだけれど、ドニーさんが出てることもあってか、「孫文の義士団」を思わせる造り。ジェダイでも正規の反乱軍でもない、歴史的には名も埋もれたローグ・ワンの面々を「星屑の義士団」と呼びたい。

 今後は2017年暮れに「エピソード8」が、そして次の年に若いころのハン・ソロを描くスピン・オフ(スター・ウォーズ・ストーリー)が、そして2019年に「エピソード9」で一応正伝は完結、といったところだろうか。まだまだ銀河の歴史は続く…

*1:F91」や「Vガンダム」が「EP7〜」と言う感じか