対等な近親婚などありえない
たまにはニュース的な話題なども。先日、ブックマークした話題。
(前略)
匿名という条件で取材に応じた女性が、New York Magazine’s Science of Usに語ったところによると、彼女は実の父親と10年以上離れて暮らしていたという。しかし17歳になった時、連絡を取り合うようになる。そして数週間、ネットで会話を交わした後、2人は再会することになる。
その時の状況を彼女は次のように語った。
「非常に奇妙で、混乱した気持ちでした。出会った時、私は父親にずっと見とれていたんです。それも彼がとても魅力的だったからです」母親にはまだ知らせていない
再会した2人は1週間を共に過ごす。そしてちょうど5日目に、彼らはお互いの魅力について語り合った。やがて女性は生まれて初めて男性との性交渉を、父親と持つことになる。彼らは現在、結婚の約束を交わし、将来子供をもうけることを考えている。(後略)
もちろんこの記事だけではこれが実際に起きた出来事なのかどうかすら疑問は残るがここでは事実として扱う。僕のこの記事に対するはてなブックマークでの感想は以下のとおり。
10代の娘側が、会ったことのない父親への愛情を恋愛と錯覚するのはまだ分かるが、父親側の対応はいかんだろ。あとなんでブコメで「同性婚」云々が出てくるのか分からん。全然違うだろ。 / “米18歳の女性が実の父親と結婚へ…” http://t.co/yzA17olVbF #これはひどい
— 小覇王スー (@susahadeth52623) 2015, 1月 18
この感想には今のところ一番多くのはてなスターが付いていて、スターの数だけが全てではないが、概ね多くのスターを集めた意見は否定的な物が多い。僕自身はっきりと否定的だし、てっきり否定的な感想でブコメは占めると思っていた。ところが意外とこれに理解を示そうという感想も多い。
はてなブックマーク - 米18歳の女性が実の父親と結婚へ。近親相姦を罰しない州へ移住も検討 - IRORIO(イロリオ)
いや、近親姦ですよ?ここでは義理ではなく明確に実の父親と娘とされているし。「本人たちが同意の上なら」とか言っているけれどそういう問題じゃないでしょ。僕の最初のブコメ(ツイート)に書いたとおり、10年以上も会っていなかったティーンエイジャーの娘が父親への思慕・愛情を恋愛感情と混同してしまうことそれ自体はありそうなことで娘側の気持ちは理解できないでもない。ただ父親はどう見ても(この記事から読み取れる限り)クズ。再会してたった数日(記事によると5日から一週間)でちゃんと自分の娘と認識しておきながら性交渉を行うとか到底許されることではない。そもそもどうして別れて暮らしていたのか気になるところだ。もしかしたら幼い娘に手を出そうとしたんじゃなかろうか。
婚姻は現在ではあくまで対等な個人同士の了解によってなされるが、近親、それも父と娘などという間柄で「対等な関係」などはありえない(それ故に僕は「近親相姦」という言葉は使わない。本当の意味で「相姦」であることなどないからだ)。その意味でも通常の婚姻とは全く別なものだ。
もちろん、ここで近親姦を否定する感想を書いた人がこの少女を差別している、とかでは全くないことは自明の理。
あとこの手の話題になると何故か「これに反対している奴は同性婚・同性愛にも反対なのか」などと全く関係ない意見を出してくる奴が必ずいるが、どうして同性愛を近親姦や小児性愛と同一ラインで並べたがるのかまったく理解できない。確かにかつてはともに忌避されていたものではある。いやもしかしたら日本では近親姦や小児性愛はある程度認められていても同性愛はダメ、という風潮のほうが強かったかもしれない。海外でもまだ一部はそういうところも多そうだ。でも同性愛と他の二つは、対等な両者の合意がある、という点で全く違う。もちろん例えば男性の同性愛者が勝手に少年を襲ったり成人であっても合意の上でない性行為に及べば犯罪だが、それはもちろん異性愛者でも同様の話。きちんと合意の上でのつきあいがある同性愛と他の二つは決定的に違う。
記事の中では近親婚が合法な州、という話も出てくるがこれって多分実の父と娘などというダイレクトなものではなくてせいぜい従兄弟同士(アメリカは従兄弟同士の結婚が禁止されている州は多い。日本は合法)であるとか、別れた再婚相手の連れ子(血のつながり無し)とかが想定されているレベルの話ではないかなあ、という気はします。
なるほどかつては近親婚が普通に行われていた文化は世界中あります。ただ、こういうのは伝統や文化の文言で守られるものとは違うと思いますよ。この事案は被害者本人も気づいていないかも知れないけれど立派な虐待です。
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1月22日追記
しかしブクマコメントしてまで近親姦を肯定したい人がいるのにびっくり。あと僕がここでいう「対等な関係」をなんか拡大解釈して、「近親婚に反対するならすべての恋愛関係に反対しないと理屈に合わない」みたいなこと言っている人がいますね。もちろん、実際の恋愛関係においても本当に対等な関係などは少なくて、どちらかが主導権を握るというのが多いかもしれない。でもそれでも建前上は「対等な関係」によって婚姻は認められるべきですし、そうでなければいけません。そして例えば職場の上司と部下が恋愛結婚に発展したとしてもそれが上司による上からの押し付け(いわゆるパワハラ)から発生したのでなければ問題ないです。しかし近親(ここではいとこ婚まで一概には否定しないので2親等以内の関係)間ではもう最初から逃れられないパワーバランスがあります。その意味で到底認められるべきものではないと僕は思っています。
あとぉ当然ながら僕のこの主張は現実世界に置いて行われている近親姦・近親婚には反対していてもフィクションの題材としては特に否定はしません。アダルトビデオや18禁漫画などではそういう題材も多いでしょう。あるいは純文学的なテーマとして取り上げているものも少なくありません。僕自身はそういう題材のものはフィクションであってもドン引きはしますが、存在すること自体は認めます。ただ当然批判もあるというのは当たり前で。
こういう事例は中々表には出てこないし、実際に身近に遭遇することもないでしょうけど、もし知り合い(僕の年齢、性別などから言うと父親の立場で娘と、という人がいるかもしれない)でそんな事に及んでいる奴がいたら殴ってでも止めさせますし、状況によっては当たり前ですが虐待事例として警察なり児童福祉なりに連絡しますよ。今回取り上げたアメリカの話題は17歳という当人の同意があったって十分虐待なのです。