The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

光の国神話再臨! ウルトラマンサーガ

 ここ数年、仮面ライダースーパー戦隊の映画はほぼ欠かさず見ている。とはいえブログを見てくださる方はわからないと思うが、僕が劇場まで特撮ヒーロー映画を見に行くようになったのはちょうどブログを始めた時と同時期でそれ以前は劇場では観ていなかった。そのへんはやはり「ディケイド」の全ライダー登場と「侍戦隊シンケンジャー」の魅力のおかげなのだな。TVシリーズ自体もスーパー戦隊シリーズは見ていたが、平成仮面ライダーシリーズは「仮面ライダー龍騎」を途中で見るのをやめてから「電王」でふたたび見るようになるまで間が空いている。この辺は後述するが、さて、日本の特撮ヒーローといえば仮面ライダースーパー戦隊と並ぶのがウルトラマンである。しかしこれまでウルトラマンは当ブログでは取り上げてこなかった。というのもここしばらく特に21世紀に入ってからのウルトラシリーズはほぼ無知に近い状態だったのだ。
 しかし現在新作映画「ウルトラマンサーガ」が公開されていてこれがなかなかに高評価だったのでつい気になって最近の流れを全く知らない状態で観に行ってしまった。

物語

 触覚宇宙人バット星人に侵略され実験場と化した地球。ほとんどの人類が姿を消した世界で女性だけで構成される地球防衛隊「チームU」がバット星人の操る怪獣相手に孤軍奮闘していた。その日も無人のスーパーで物資を調達していたチームUの前に凶暴怪獣アーストロンが現れる。絶体絶命の危機を救ったのは謎の銀色の巨人だった・・・
 別の宇宙ではウルトラセブンの息子であるウルトラマンゼロが敵と戦い続けいていたが、そこへ謎の声から呼び出しを受ける。ゼロはその声に答え声の主が示す場所、地球へ向かう。一方光の国のウルトラ兄弟も悪の気配を感じてたがすべてをゼロに託すのだった。
 更に別の世界、ネオフロンティアでは英雄アスカが行方不明になってから15年が経っていた。スーパーGUTSの新人隊員タイガは攻めてきた宇宙船に捕まり別の地球へ運ばれてしまう。地球ではゼロと宇宙船から出現した戦闘機が戦っていたが巻き込まれた子供を救うべくタイガは戦闘機に突撃、それを見たゼロが彼と一体化することで命を救った。困惑するタイガ。そこに深海怪獣グビラが現れるが変身を渋るタイガの前に現れたのはウルトラマンコスモスだった!
 コスモスに変身するムサシはやはりゼロ同様声に導かれてこの地球に来たという。タイガとムサシはチームUに合流しこの地球の現状を知る。二人を呼んだ声の主はウルトラマンダイナことアスカ。しかし彼はバット星人の切り札宇宙恐竜ハイパーゼットンから守るために犠牲になっていたのだ・・・

 僕のウルトラマン体験はもっぱら再放送のマン〜レオが中心だ。世代的にちょうどリアルタイムでTVシリーズが無かった時期に子供時代を過ごしている。「ウルトラマン80」はリアルタイムで見てるはずなのだが当時3歳ぐらいでほとんど覚えていない。ただ古いシリーズについては頻繁に再放送されいたので「ウルトラマン」から「ウルトラマンレオ」までに関してはほぼ一通り子供時代に見ている。余談だが子供の頃友達と遊んでいたら母親に「ウルトラセブンやってるから見なさい」と言われてTVの前で鎮座していたら怪獣があらわれたものの熱海の温泉を遅い何時まで経ってもセブンは登場しなかった。後のその作品が日活の「大巨獣ガッパ」という映画だったと知った。母はゲーム機全てを「ファミコン」と呼ぶ感覚で怪獣物をウルトラセブンと呼んでいたのだろうか。
 実際にリアルタイムの新作ウルトラマンは海外で製作された「ウルトラマンG」や「ウルトラマンパワード」でそれでも既に中学高校ぐらいだったと思う。平成に入ってからの新作ウルトラマンウルトラマンティガ」は毎週ではないものの時折見ており特に最終数話はクトゥルフ神話オマージュで楽しめた。続編の「ダイナ」は途中までしか見ておらずおそらく大学進学した時期とかぶっていたのだろうそこから見なくなってしまった。元々特撮ヒーローは大好きだったが、やはり人前でファンを公言するには恥ずかしいお年頃。リアルに子供として楽しむには大人すぎ、今みたいに開き直って楽しむには若すぎた
 なので、今回の映画を見るにあたっても最近のウルトラシリーズの流れはほとんど知らないまま観に行ったのであった。なので以下の感想はそういう人物の見たウルトラマン評だと思ってください*1

 で、結論から言うと今作に限って言えば事前の知識(勿論ウルトラマンというシリーズの大前提となる知識はある程度必要だが)はほとんど知らずとも楽しめる作品だった。
 まず、舞台を並行宇宙のこれまでウルトラマンが現れたことのない地球に設定し、そこに別の各並行宇宙からウルトラマンがやってくる、という設定にしたので観客の目線が劇中のチームU、あるいは子供たちと更にはDAIGO演じるタイガと同じ立場に立てる。またウルトラシリーズの中心である光の国のウルトラマンの他、つまり今回出てくる中で僕のあまり知らない(勿論名前ぐらいは知っていたのだが)ダイナ、コスモスについても簡単ではあるが劇中で説明してくれるので戸惑うことはない。
 最初、無人となった地球でチームUが物資補給をするのだが、その時に使用する変形メカがあんまり円谷っぽくない無骨なデザイン。余談だが特撮にもやはりお国柄というか制作会社ごとの特色はあって、個人的な印象だが巨大戦における巨大感の出し方や、演出は東宝・円谷特撮のほうが優れている。一方バトルのテンポや事巨大ロボットの演出に関しては東映のほうが一歩進んでいる、という感じだ。
 物語の主人公としてはDAIGO演じるタイガと彼と一体化しているウルトラマンゼロということになるのだろうが、キーマンになるのはダイナである。コスモスはどちらかと言うと客演という感じ。DAIGOって僕と一つしか年齢違わないからああ見えて新人特撮ヒーローとしては結構年配なのだが、そのキャラクターも相まって向こう見ずな新人としてはいい味を出している。ゼロと一体化してもウルトラマン(ダイナ)に対して複雑な思いがあるため素直には変身せず、ゼロと対等に口論する。そういや古いウルトラマンしか知らないのでゼロの言葉遣いは少し新鮮だった。まあDAIGOは演技と言うよりは素のまんまという感じではあるが。どうにも軽いのでトラウマ系の演技は微妙だったけど。個人的にはダイナに思い入れがあまりないため「スーパーGUTSの一員とするより最初からチームUの一人」にしといたほうが面倒がなくていいんじゃないかなあ、と思ったりしたがこの映画「ダイナ」TVシリーズの後日談でもあるようなのでやはりアレはアレで必要だったのだろう。ちなみにスーパーGUTSの一員を演じている小野寺丈氏は「仮面ライダー」原作者石ノ森章太郎の息子。「サイボーグ009」の小説を手がけたりもしている。
 そのダイナは冒頭でチームUを助け、この地球における最初のウルトラマンとなる。ゼロとコスモスを呼び寄せるものの彼らが地球に着く頃にはゼットンから子供たちを守るため、石化してしまう。人間態アスカを演じるつるの剛士は(おバカキャラとしてではあったが)コンスタントにTVに出てて最近は家族思いの父親キャラでもあるため、子供たちを救うために犠牲になる姿も自然だ。
 そして冒頭の光の国描写。ウルトラマン、セブン、ジャック*2、エース、レオが人間態(勿論演じているのは過去に演じた本人)が登場。ゼロに託す形での客演だがこういうのはやはり燃えます。ゾフィー、タロウ(ついでにアストラも)がいないのは少し寂しい。
 登場する怪獣はオリジナルデザインに近いグビラとかはもう少し何とかならなかったのかなあ、と思う一方ゼットンとかは虫みたいな時はともかくハイパーゼットンは頭が小さすぎて「俺の知ってるゼットンじゃない!」などと思ってしまうのでわがままなものである。
 ボスである侵略宇宙人バット星人も大分スリムなデザインに変わっており、顔部分はともかく身体部分はまるで「マイティ・ソー」のアスガルドの戦士のようであり格好いい。余談だが彼の声は元宮崎県知事の東国原英夫が演じている。まあ元々芸人(てか今は芸人に戻ったのか?)なので比較的達者ではあった。ウルトラマンキングを小泉元首相にやらせるよりはまだましかな。悪役だしね。
 三人のウルトラマンが合体する新ウルトラマンウルトラマンサーガ(この映画のタイトルは物語を示すサーガとキャラクター名であるサーガがかけてあるのだろう)は通常のウルトラマンの頭部がレオのような火焔型土器風になった感じ。後は体色は青・赤・銀のウルトラマンカラーであるものの色分けが従来のウルトラマンと違ってグラデーションになっているのが特徴。多分しっかり物質化しているというよりエネルギー体に近いイメージでデザインされているのではないかと思う。出自からして早々簡単には次の登場は無いだろうが映画単体ならではの主人公パワーで最後は魅せてくれる。

チームU

 さて、本作の肝となる地球防衛隊のチームUだが全員女子で、AKB48のメンバーが演じている。数人除いてほとんど知らないがやはり「ゴリ押しか」的な批判も見受けられる。とはいえ、この映画の設定的には彼女たちは必然の存在である。誰もいなくなった地球で自分たちだけで子供たちを守り、行方不明者を捜索する。女子だけだからこそ、アスカやタイガ、ムサシ達が引き立つし彼女たちが「地球防衛隊」を名乗る必然性も出てくる。個人的にはチームを引っ張る隊長役の秋元才加は強さと美しさを備えたキャラとして素晴らしかったと思う。いっその事ゼロに変身するのが女性である彼女や宮澤佐江演じる男勝りのサワでも良かったのではないかと見た直後は思ったりした。勿論、普通の女優でなく全員をAKBで占めたのは色々と裏の事情もあろうが設定としては単なるタイアップを越えて納得できるものだった。

光の国神話

 スーパーヒーローはよく神話的か民話的かなどと区分けされる。マーベルヒーローは民話的、DCヒーローは神話的と言った具合。ウルトラシリーズは明らかに神話的だろう。僕が好きなのもその神話的な部分で特に「光の国」M78星雲のウルトラ兄弟の設定が大好きである。ウルトラの父を頂点としゾフィーを長男に見立てたウルトラ兄弟はまるでギリシア神話のオリンポス十二神のようである(現在はウルトラマンメビウスまで含めて11人兄弟になっているらしい。12人まであと一人!)。日本のフィクションの生んだ神話的な作品としては「ビックリマン」「キン肉マン」に並ぶ詳細な設定(かつ多少の矛盾は気にしないおおらかさ)の神話性を持った物語だと思う。「キン肉マン」はそもそもウルトラシリーズの影響を受けているしね。
 作品単体としてはハードSFとして評価の高い「ウルトラセブン」も好きだがシリーズとしてみた場合、この「光の国神話」とでも呼びたいその核となるウルトラ兄弟の設定が大好き。「ウルトラマンティガ」の時は世界観がこの光の国とは別だったので単独作品としてはともかくシリーズとしてはいまいち乗りきれなかったのも事実なのだ。ティガの中で過去の円谷プロに主人公がタイムスリップする楽屋落ち的な話もあったしね。
 で、僕は知らなかったのだが「ウルトラマンメビウス」でこの世界でのTVシリーズが復活し、さらに並行宇宙世界を採用することで世界観が違うそれぞれのウルトラマンが出会うことが可能になった*3。勿論中心になるのは光の国の戦士たちだ。
 ゼロは現時点でその最新の戦士でウルトラセブンの実の息子。過去にはウルトラマンタロウウルトラの父ウルトラの母の実の息子であったが(セブンの母とウルトラの母は姉妹らしいよ)マンを差し置いてセブンとは。相変わらずセブン人気は凄まじいなあ。

 ラスト、平和が戻った地球(というか日本)には光が戻り東日本が映し出される。実はあんまりこの映画が震災後の映画という意識は無かったのだが(ウルトラマンとしては街が破壊されたりするのは普通なため)ここで少しうるっと来た。とはいえ、そんなに気張ってみるタイプでもない。普通に大人も子供も楽しめる映画である。
 これを観て久しぶりにウルトラシリーズにも興味が湧いてきたのでちょっと過去作を観てみようと思ってます。

ウルトラマンサーガ オリジナルサウンドトラック

ウルトラマンサーガ オリジナルサウンドトラック

Lost the way(DVD付A)

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*1:映画を見てからこの記事を書くまでの間に直前の映画を見てはいますが

*2:僕の子供の頃は書籍などでは新マンと呼ぼれていたけどいまはジャックというのね

*3:これは「トランスフォーマー」シリーズと同じ構図で実写映画版も含めあのシリーズは全て並行宇宙でつながっている。すべての世界を行き来できるのはユニクロンのみ