The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

母親の無条件の愛 母なる証明

 「MIchael Jackson's This Is It」が公開終了して「イングロリアス・バスターズ」も観てしまったのでとりあえず今年はジェームズ・キャメロンの「アバター」を残すのみ、という状態だったんだけど今日は映画の日!というわけで何か観よう!と思って調べたらポン・ジュノ監督の「母なる証明」がまだ上映中だったので観て来ました。

 ポン・ジュノの作品はDVDで「殺人の追憶」、劇場で「グエムル―漢江の怪物―」を見たけれど*1どれも傑作。物語的に明快に解決せず、微妙に後味は悪いのだけれど不快感は残らない作品たち。特に「殺人の追憶」なんて結局事件は解決しないんだけどそれじゃあ、ひたすら後味の悪さだけが残るのかといえばそういうことはない。
 
 で、「母なる証明」。この作品は「殺人の追憶」に近いサスペンスなんだけど視点が警察でも被害者の遺族でもなく容疑者の母親のもの。
 
 少し”足りない”青年、トジュンが女子高生の殺人容疑で捕まる。息子の無実を信じる母親が独自に真犯人を見つけるべく活動を開始する。
 
 パンフ見て気づいたけどこの主人公である母親には名前が付いてない。ひたすら「お母さん」「おばさん」と呼ばれてる。だから特定の個人というより、母親の公倍数的な存在なのだろう。
 
 
 最初、トジュンが殺人の現場を通り過ぎる場面を観客は見ているのである意味安心して見ていられる。トジュンは無実であり、母親の行動は正しいのだ!と。ところが最終的にその安心感は打ち砕かれる。最初の条件は打ち砕かれるし、真犯人として出てくる男はトジュンと同類のようだ。しかしルックスの良さ(演じるはウォンビン)と家族の愛情というそれなりに恵まれているトジュンに比べてあまりに救いがない。
 
 しかし、この母親が凄いのは、もしかしたらトジュンは無実じゃないかも、という段階になってもトジュンのために尽くすことだ。このトジュンと母親はいい年になっても添い寝してて、近親相姦も思わせてすこし気味が悪いぐらいなんだけどその愛は無条件なので例え息子が真犯人だったとしてもこの母親は息子の無罪のために行動するだろう。
 
 余談だけど、僕が学生のとき、僕の住んでいた近くで殺人事件がおきた*2。その事件は結局容疑者の自殺で終わったんだけど僕の母親が電話をしてきてこう言った。


「まさか、あんたじゃないだろうね!」

 もう少し自分の息子を信用しろよ・・・とまあ、そんなことをこの映画を観ながら思い出した。
 
 後、この映画に雰囲気が似てるなあ、と思ったのはピーター・ジャクソンの「乙女の祈り」だったんだけどまあ、これは上映前の予告編でピーター・ジャクソンの新作「ラブリー・ボーン」が流れたからかもしれない。
 
 で、話を「母親の証明」に戻すと被害者の女子高生にもいろいろと事情があることが分かる。その辺は日本では少し考えられない設定かもしれない。後、トジュンの兄貴分のジンテが自分の家でガールフレンドとHするシーンがあるんだけどこの少女がどう見ても設定は高校生、下手すりゃ中学生ぐらいだと思う*3。それでしっかりセックスシーンで裸を見せるのでちょっとびっくりした。まあ、演じる女優さんはちゃんと成人なんだろうけど。主演の母親がいい顔でアップになる一方でそういう若いこの描写も上手い。
 「殺人の追憶」の容疑者、「グエムル」の主人公、そして本作のトジュンとハンディキャップを負った人間の描写が抜群に上手い。
 後は今作でも一応ドロップキック(&セパタクローの蹴り)は登場。前2作ほど印象的ではないけれど。 
 
 韓国映画って人種的には日本と同じ東洋人なわけで、韓国で作られた映画は日本で作られていてもおかしくはない*4。にもかかわらず現在、映画に関して言えば日本は韓国映画に太刀打ちできないように思える。もちろん韓国映画も上等なものだけが日本公開されていて、その下にはB,C級な映画もたくさんあるとは思うけど、それにしたって邦画はもっと何とかならないか。韓国を叩くより、自らを向上させることに意義を見出しましょうよ。
 
 
 ところで、劇中で出てくる「祈祷院」って何でしょうかね。話の流れから養護施設みたいなものだと思ったんだけど。

*1:ほえる犬は噛まない」は見てないです。見たいけど

*2:結構有名な事件

*3:一方ジンテは兵役を終えてるので20代半ばから30ぐらい(演じるチン・グは1980年生まれ)

*4:もちろんその逆もしかり