THIS IS IT 3回目 スタッフ・キャストを不当に貶めてはいけない
マイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」の3回目を観た。見終わった瞬間、また見たくなる作品だ。しかし、もう公開は終了。後はソフトの発売を待つしかない。
今回僕は3回目を観るにあたってとあるブログを念頭において観ていた。
『THIS IS IT』の考察 - ハックルベリーに会いに行く
この記事の中で、僕は一切感じなかったことが書かれている。以下に引用する。
非常に興味深いのは、映画を通して(コンサートのリハーサルを通して)、周囲の人たちの反応が変化していっていることだ。おそらく、このコンサートに集結したほとんどのスタッフ・出演者(ミュージシャン、ダンサー)は、初めは観光気分だったと思う。物見遊山だった。マイケルという伝説的な存在と一緒に仕事をするということで、マイケル自身を直に見られるという楽しみもあったし、キャリア面の損得勘定もあっただろう。だから、仕事としてきっちりこなそうという緊張感よりは、ウキウキとした浮かれ気分が大半を占めていたのだ。
ところが、リハーサルが進むに連れて、それが変わっていった。
『THIS IS IT』に参加していたスタッフ・出演者は、ほとんどがマイケルと仕事をするのは初めてのようだった。会話やインタビューの様子から、それが窺われた。だから、彼らはきっと知らなかったのだと思う。最近のマイケルがどういう状態なのかを。なにしろ、彼はここ10年ほどライブをしてなかったし、新曲もほとんど出していなかった。
そのため、もっと言えば彼らはマイケルをなめていた部分もあったと思う。ここ数年、聞こえてくるのはゴシップやスキャンダルばかりだった。だから、さすがのマイケルももう過去の人なのだろうと。もちろん、だからと言ってマイケルの栄光が損なわれることはないから、リスペクトする気持ちには変わりない。ただ、それは引退した老スポーツ選手に対する尊敬に似ていて、例えばプロ野球の新人選手が、全盛期の桑田真澄なら打てっこなかっただろうけど、今の桑田なら打つこともできると思うような感覚――そんなふうにマイケルを見ていたのではないかと想像する。つまり、今のマイケルのパフォーマンスは、もはや過去のような素晴らしいものではなくなっているから、それほど気合いを入れなくても、仕事としてこなせるのではないか――そう思っていたのではないだろうか。
だから、彼らは度肝を抜かれたのではないかと思う。マイケルが、まだ現役バリバリだったことに。ぼくもそこに度肝を抜かれた。まず驚かされたのが、その音楽スキルだ!
(強調は引用者による)
観た方で、少しでも情報を仕入れた方はご存知だと思うが、あの映画は行われるはずだったロンドン公演の曲順予定どおりの進行あって、時間軸としてはまっすぐではない。
ニュースでも使われた死の2日前のリハーサル映像は「They Don't Care About Us」で劇中でも使われてるが順番としては3曲目だ*1。
映画の中ではっきりと時間が分かるのは、ダンサーのオーディション風景と彼らのインタビュー、マイケルのロンドン公演の記者発表が最初のほうということだけだろう。だから断じて、
周囲の人たちの反応が変化していっていることだ。おそらく、このコンサートに集結したほとんどのスタッフ・出演者(ミュージシャン、ダンサー)は、初めは観光気分だったと思う。物見遊山だった。マイケルという伝説的な存在と一緒に仕事をするということで、マイケル自身を直に見られるという楽しみもあったし、キャリア面の損得勘定もあっただろう。だから、仕事としてきっちりこなそうという緊張感よりは、ウキウキとした浮かれ気分が大半を占めていたのだ。
ところが、リハーサルが進むに連れて、それが変わっていった。
というようなことは画面からは判断できない。
そもそもスタッフやキャストはマイケルをなめていたのだろうか。僕にはそうは思えない。ダンサーは皆20代だろうと思うが、わざわざ、オーストラリアからやってきたり、と本気な様子しか伺えない。
バンドのメンバーは若手とベテランを上手く織り交ぜているように思えるし、スタッフはかなりのメンバーが過去にマイケルと仕事をしたことがあるようだ。
僕はダンスについて詳しいわけではないが、ダンサーを目指す人ならマイケルの「スリラー」「今夜はビート・イット」「ビリー・ジーン」あたりは一般教養レベルで習得してる代物ではないかと思う。そして、そのパイオニアをなめている、ということがありうるだろうか。
それに、確かに日本では21世紀に入って以来、ミュージシャンマイケル・ジャクソンというより奇人変人スターマイケル、という印象のほうが強かったのは確かだろう。それはおそらくアメリカやその他の国でも同様だ。ただし、その一方で音楽的にずっとリスペクトされていたはずだ。日本とは比べ物にならないぐらいに。
少し話しはずれるがマイケルのダンスは音なしで見ても、「ああこれはマイケルの踊りだな」と分かるけど*2、マイケルのダンスは「ウェスト・サイド物語」などのミュージカルから影響を受けているように思う。そのせいか、日本のダンスグループと比べて、ダンスに厚みを感じる。
もし、このブログのブログ主が勘違いしたとすれば、時折あらわれる、出番のないダンサーやスタッフが観客として聞いているシーンだろうか。確かに日本人的に膝を正して観る、という雰囲気ではない。でもあれはむしろこう解釈するべきではないかと思う。
最初は憧れだったマイケルが同志になっていった、と。
映画を通じて印象的だったのは、コンサートのスタッフが完全にビビっていたということだ。
これも僕は感じ取れなかった。
多分、ブログ主自身がマイケルをなめていたのをそれでは飽き足らず、映画の中のスタッフ・キャストにまで自分の考えを投影してしまったのではないか。
そして、自分の不明を詫びる代わりにマイケルを持ち上げスタッフ・キャストを不当に貶めたように思う。
「This Is It」関連のブログ記事はもちろん褒め称えるものばかりではない。リハーサルだけあって映像が汚いとか、そもそもマイケルなんて嫌い、とか駄作と認定してるブログもある。
まあ、映画の感想はそれぞれだから嫌い、という人をどうこう言うつもりはない。
むしろたとえ褒め称えていてもこの記事のほうが厄介だと思う。
さて、せっかく3回目を観たんだし、後はソフトが出るときに期待したいこと。
まず、今回は全世界同時公開ということで多分字幕作業も突貫だったと思うけど、ソフトが発売される際には是非歌の部分にも字幕を入れてほしいと思う。マイケルの歌って意外に(失礼!)社会的なテーマ性が強かったりする。字幕なしでそれが伺えるのは「Earth Song」ぐらいだけど、ほかにも歌詞が分かれば深みが増すはずだ。
後はやっぱり、特典。今回は百時間に及ぶというリハーサル映像をまとめたものだけど、当然使われなかった部分がたくさんある。それらを見たい。
また、本来はコンサートのバックで流されるはずだった3D映像をフルで収録してほしい。
ところで、僕は映画を見てる最中、一緒に歌ったり、体を動かしたくてたまらなかった。だから、ソフトが出れば当然一緒に歌い下手なりにダンスを踊りたい。
それで、提案なんだけど、「ロッキー・ホラー・ショー」みたいに観客が一緒に歌って踊れる上映をしてはいかがだろうか。
Michael Jackson's This Is It - The Music That Inspired the Movie
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