The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

高級食材・残念料理 カウボーイ&エイリアン

 男の子の大好きなキーワード満載の映画「カウボーイ&エイリアン」を観てきた。

 一時期ほどではないにしろスピルバーグブランドというのは未だ効果絶大で、「スピルバーグ製作総指揮」というとそれだけで観に行きたくなってしまうのは80年代を少年として過ごした人間の性なのかもしれない。加えてこの映画は「007」のダニエル・クレイグ、「スターウォーズ」「インディ・ジョーンズ」のハリソン・フォードが共演。監督は「アイアンマン」のジョン・ファブロー、舞台は西部、登場するのはエイリアン。もうわくわくするようなキーワードが満載。
 スピルバーグジェームズ・ボンドインディ・ジョーンズ!アイアンマン!西部劇!エイリアン!とこれを眺めて興奮しない人はいないのではないだろうか。
 で、僕も予告編からとても楽しみにして公開日を待っていたのだった。ところが実際公開されて見るとどうにも微妙な評価しか聞こえてこない。そして自分で確かめると確かにこれは微妙な映画だった。

物語

 1873年、一人の男が荒野で目覚める。男は右腕に謎の腕輪をはめている。記憶はない。旅の一行を襲い服を奪った男は近くの町へ向かう。そこは牛の売買で資産を築いたダラハイドの支配する町でダラハイドの息子パーシーが今日も乱暴狼藉を働く。男はパーシーをぶちのめす。怒ったパーシーは間違って保安官補を撃ってしまい保安官に捕まる。男もまた賞金首ジェイク・ロネガンであったことが判明し捕まりパーシーと共に判事のいる町に送られることになる。一方息子の逮捕を聞いたダラハイドは息子を奪還しようとやってくるがそこに謎の飛行物体が襲来。そのときジェイクの嵌めている謎の腕輪が反応し狙いをつけると飛行物体を撃ち落した・・・

 最初の西部劇の雰囲気はなかなかで、普通に西部劇でいいんじゃないかな、などと思いながら観ていたのだがやはり実際にエイリアンが登場してから変な風になる。一言で言えばこのエイリアンがあまりに頭が悪いのだな。地球にやってきて金の採掘をする技術力がありながら宇宙人本体はかなり野獣なのである。いや、別に地球人と同じ生態、考え方でなければならない理由はないがそれにしたって知性がおよそ感じられない。ウガアー!と唸って人間襲ったりするのだもの。プレデターさんたちのほうがよほど理知的に見えるよ。
 いや今思うとプレデターの皆さんはデザインや行動で上手く「文明レベルは高いけど文化として野蛮なことをたしなむ人たち」というのを表していた。それに比べるとこの人たちはまったく理性的に見えない。そういうエイリアンならそういう描き方をすればいいのだが、妙に機械工学的に発展した部分も見せるので半端なのである。
 まあ、「ウルトラマン」の昔から「なんで高度に文明が進んだところからやってきてるのに最後は宇宙人自ら肉弾戦すんの?」というのは半ばネタ的に言われてきたわけだがそれにしたって「ウルトラセブン」のビラ星人とかだって見た目海老でもきちんと知性が感じられたよ。
 で、何よりデザインがあいつなのだ。「クローバーフィールド」や「SUPER8/スーパーエイト」のあいつとそっくりなのである。大きさこそどんどん縮んでいるが近縁種といっても差し支えないデザイン。「クローバーフィールド」と「SUPER8/スーパーエイト」はJ・J・エイブラムスが関わっており、「SUPER8/スーパーエイト」と本作はスピルバーグでつながっているがもう少し独自性を出せなかったものか。まあ、もしもこの三つが世界観がつながっている、という公式設定でもあるのなら別ですが。
 
 一方人間編。ダニエル・クレイグの記憶喪失の男は良かったと思う。いつもの演技といえばそれまでなのだが、無頼漢だが筋は通す男、という感じが良く出ていた。
 ヒロインのオリビア・ワイルドは埃だらけの西部の町で明らかに浮いている美人なのだが、やはり人間ではなくほぼ「トロン:レガシー」と同じ役どころだった。ちなみに実際の映像に比べポスターのオリビアさんはあきらかにおっぱい盛ってると思うがいかがか。
 ファブロー監督の前作「アイアンマン2」からサム・ロックウェルが登場。町の酒場の店主で皮肉屋の小市民といったところ。奥さんをエイリアンにさらわれ、エイリアン討伐隊に加わる。普通にいい人で拍子抜けだった。
 町の実力者のバカ息子パーシーにポール・ダノ。この人は「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」で初めて見たがそのヒョロッとした頼りなげなルックスながらどこか狂気を秘めた演技が抜群に上手くて日本だと黒田勇樹を思わせる(黒田氏は最近大分狂気が先行してますが)。前半はそのマルフォイぶりが素晴らしいがその後エイリアンに捕まって退場。
 そしてその町の実力者ダラハイドにハリソン・フォードインディ・ジョーンズを思わせる格好で出てきてエイリアンにさらわれた息子を助けるため討伐隊を率いる。町は彼の商いで成り立っているがその暴虐ぶりからよくは思われていない・・・のに保安官の孫や息子のお目付け役だったインディアン等になぜか慕われている。
 そう、人間は全員いい人たちになってしまうのだ。例えばサム・ロックウェルだったらひそかにエイリアンに通じている裏切り者、とかのキャラでも良かったし、インディアンとダラハイドの義理の親子関係を強調するなら最後息子をぶん殴るとかすれば良い。ただ漠然と全員がいい人で終わってしまうのでなんとも物足りないのである。特にハリソン・フォードのキャラは徹底的に悪者(エイリアンとは関係なく権力を行使する自己中心的な悪役とか)にするべきだったと思う。ロックウェルの銃の練習だとか保安官孫のナイフだとか伏線はきっちり回収してあるのだがその辺まで「別にいらないよな〜」と思ってしまった。
 途中出てくる無法者達はなかなか面構えが良かったけど。ダニエル・クレイグに殴られた人はいろんなところで見かける印象。結局人間はいい人ばかり、エイリアンとはコミュニケーション取れず、でドラマが薄っぺらいんだよなあ。 
 ファブロー監督はジョー・ジョンストンの「ジュマンジ」の続編である「ザスーラ」を手がけ、「アイアンマン」と「キャプテン・アメリカ」で作品世界を共にしているなど共通点が多い。が、これで少し味噌をつけてしまったかなあ。とにかく綺麗にまとめよう、という感じが伝わってきて思い切りが足りない。元々キーワードだけで展開されたような企画なので無理もないのかも知れないが人間、エイリアン共に課題の残る描写だった。なんだかとても高級な食材なのに調理過程でダメになってしまった料理のようだ。
 
 一応原作はあってパンフを見る限りこちらの宇宙人は映画よりはまとものようなのだが・・・映画を見てみて面白かったら原作も買うつもりだったが当分保留。

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 ところでチリカワアパッチといえばこの人ですよね!

村枝賢一「RED」よりチリカワアパッチのチリカ。「オレらからみりゃあ、『エイリアン&エイリアン』だよ!」
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 腕輪から光線出すのはアイアンマンのリパルサーを思わせて格好よかったよ!