ジョー・ジョンストン、もう一つの戦前ヒーロー ロケッティア
マーベル・スタジオによるマーベル・シネマティック・ユニバースは世界観が共通しているが演出している監督はそれぞれ違う。勿論、製作や脚本の部分で各作品間における統一感や矛盾がないように共通した人物はいるのだろうが。結果、それぞれの作品で監督の個性が発揮されながらもリンクするという今までにないシリーズとなっている。
この秋に日本公開される「キャプテン・アメリカ: ザ・ファースト・アベンジャー」の監督はジョー・ジョンストン。「スター・ウォーズ」の頃から活躍するSFXマン出身の監督である。彼がキャプテン・アメリカの映画を担当する、と聞いた時多くの映画ファンは納得の人選だと思ったはず。何しろ彼にはやはりWW2時期のヒーローが登場する映画「ロケッティア」を監督し成功しているからだ。この人は特撮マン出身らしくVFX大作も撮るが何と言うかどこか温かみのある古き良き味のある作品が多い。CGが話題になった頃に作られた「ジュマンジ」ではお猿さんだけ妙に作り物っぽかったが、あれは猿だけ悪事を働くから子供への配慮であえて作り物っぽくしたらしいですよ。
で、この間、テレビ東京「午後のロードショー」で放映されていたので改めて見て、「キャプテン・アメリカ」への簡単な予習のつもりで記事を書いてみた。
物語
舞台は1938年のアメリカ。飛行機乗りのクリフは偶然から背中に背負って空を飛べるロケット・パックを見つける。彼は空飛ぶヒーロー、ロケッティアとして活躍するが実はこのロケットパックをハリウッドスター、ネビル・シンクレアも狙っており、彼に雇われたギャングやFBIも巻き込んで大騒動となる。実はシンクレアはナチスのスパイで・・・
驚いたのは時代が1938年ということ。太平洋戦争どころか第二次世界大戦自体まだ始まってないのだな。ドイツがポーランド侵攻を開始してWW2が始まるのが1939年9月。アメリカが参戦するのは1941年12月なのでまだナチスドイツと交戦状態ではない時期なのだ。勿論、突然仲が悪くなって戦争するわけではないので、30年代からその空気はあったのだろうけど。
ちなみに「キャプテン・アメリカ」がデビューしたのは1941年11月でアメリカ参戦の一ヶ月前。にもかかわらずその表紙はキャップがヒトラーを殴りつけている、という強烈なものだった。
確か小野耕世氏の「スーパーマンが飛ぶ」だったと思ったがスーパーマンがヒトラーとスターリンを国連の場に拉致してきて裁判を受けさせる、という戦前のエピソードを紹介していた気がするし、戦争前に既に対独戦の空気は一般人の間にも出来上がっていたのだろうか*1。
ティモシー・ダルトン演じるスター俳優ネビル・シンクレアはギャングとつながりがあって、まあそれは洋の東西問わずありがち(西のフランク・シナトラ、東のジミー・ウォング)なのだが*2、彼はドイツのスパイなのだが、面白いことに彼に雇われていたギャングがナチに利用されてたことを知ると「身体は裏社会でも心はアメリカ人だ!」とシンクレアを裏切り、主人公の味方になるところである。この手の愛国心の描写というのはやはりアメリカが一番いきるなあ。やはり戦時中を舞台にしたマーベルとDCのクロスオーバー「バットマン&キャプテン・アメリカ」ではジョーカーが似たように愛国心を発露するというが、こちらは「お前は違うだろ」感が拭えない。
あと、クライマックスではナチ部隊が登場したりするのだが交戦時ならともかくまだ交戦前の1938年時にアメリカ内地に部隊送り込んだらその時点で大問題になるよね。
後はやはり、ヒロインが重要で「ハルク」でもアメコミヒロインを務めたジェニファー・コネリー!当時21歳!クラシックな雰囲気に良く似合うが、やはり胸に目が行ってしまう。
とにかく本作はヒーロー分とジェニファー・コネリー分が(ついでにナイスミドル分も)十分に摂取できる良作。「キャプテン・アメリカ」の前に見ておいても損はないと思います!
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