スパイディはプロレスラー? ハウス・オブ・M
ここ最近ヴィレッジブックスから発売されていた「X-MEN」と「ニュー・アベンジャーズ」のシリーズのクロスオーバー「X−MEN/アベンジャーズ:ハウス・オブ・M」を読了。
- 作者: ブライアン・マイケル・ベンディス,オリビア・コワベル,石川裕人,御代しおり
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2010/10/30
- メディア: 大型本
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物語
アベンジャーズを崩壊に導いたスカーレット・ウィッチの現実改変能力。彼女の対応を巡ってニュー・アベンジャーズとX−MENが一堂に会する。彼らが下した決断にスカーレット・ウィッチの双子の弟クイック・シルバーは反発する。
新たな世界。そこはマグニートー率いるマグナス王家が君臨するミュータントと人類の共存が実現した世界。理想の世界で以前の世界の記憶を持っているもの達がいた。彼らは過酷な現実を取り戻すべく仲間を探す・・・
タイトルの「ハウス・オブ・M」とはマグナス王家、つまりエリック・マグナス・レーンシャーことマグニートーとその家族のこと。マグニートーの双子の子供、ワンダ(スカーレット・ウィッチ)とピエトロ(クイック・シルバー)のマキシモフ姉弟。二人とは腹違いの妹ローナ・デイン(ポラリス)など。彼らがロイヤル・ファミリーとしてジェノシャ(かつてミュータントを奴隷として酷使していた国家)を王都としている。
ラトヴェリアのヴィクター・フォン・ドゥーム(ドクター・ドゥーム)やアトランティスのサブ・マリナーらとは友好国として緩やかに全人類に君臨している。
マグニートーは御存知磁界の帝王、磁力を自在に操れる地上最強のミュータントの一人である。その子供達もまた然り。「エイジ〜」の世界ではプロフェッサーXに代わりX-MENを率いてたように決して根っからの悪人ではない。
今回の単行本はクロスオーバー「HOUSE OF M」のなかから本筋だけ集めたもの。
改変世界
マーベルユニバースでは過去に2度大きなパラレルワールド・クロスオーバーが起こっている。一つはミュータント差別が極限まで進み迫害されている近未来を描いた「デイズ・オブ・フューチャーパースト」であり、もう一つはプロフェッサーXが若くして不慮の死を遂げ、結果魔神アポカリプスの支配する「適者生存」が正義になっている歴史の「エイジ・オブ・アポカリプス」。どちらも人間とミュータントの平和共存というX-MENの理念からは遠い世界だ。
それに比べると今回の「ハウス・オブ・M」はミュータントが上位に来ているとはいえそれは緩やかなものでありある意味プロフェッサーXの理想が達成された世界といえる。
しかし、マーベルのパラレルワールドは必ず元の世界に帰ろうとする。「エイジ〜」の時は未来からやってきたビショップが唯一実際の歴史の記憶を持つ者としてきっかけになるし、今回はローガンが元の世界の記憶を持っている。
また、逆に改変世界のキャラが消え去らずに元の世界に残るということもある。「エイジ〜」のX−マンとかはその代表だろう。そして今回もこの改変世界は大いなる影響をユニバースに与える・・・
DCコミックスにもパラレルワールドはあるが(アース1、アース2など)マーベルに比べると鷹揚に思える。というかDCはマーベルほど世界観が一貫してない気もするが。
今回は、それまでの改変世界と違うのはそれが理想に近いということだ。変えない方がいいんじゃないか、と思ってしまうのだ。
スパイダーマン
この改変世界ではヒーロー達が別の道を歩んでいるのを見るのも楽しみのひとつである。例えばキャプテン・アメリカはWW2中に南極で氷付けになるということがなかったので現在はそのまま老人である。
で、今回個人的に面白かったのがこの世界ではスパイダーマンことピーター・パーカーがプロレスラーとして生計を立てていることだ(MJは女優になっており、ピーターは死ななかったグエン・ステーシーと結婚している)。スパイダーマンとプロレスラーといえばサム・ライミ版映画の1作目でパワーを得たピーターがプロレスで賞金稼ぎをやったシーン(相手はボーン・ソウことランディ・サヴェッジ!ちなみに原作での名前はクラッシャー・ホーガンである。)を思い出す人も多いだろう。
そして、映画でもひときわ個性を放ったもっとも原作に近いビジュアルだったデイリー・ビューグルのオーナー編集長不屈のジョン・ジョナ・ジェイムソン(JJJ)がなんであそこまでスパイディを目の敵にしてるのかいまいち理解できなかった人もいるのではないか。特に原作では様々なヒーローがいる中なんでJJJがスパイディだけ集中的に攻撃してるのか*1?
実はスパイディがヒーローとして活躍するまでを考慮すると納得できるのである。映画ではプロレスの賞金をもらえず、腹いせに強盗を見逃し、その結果その強盗がベン伯父さんを殺し、自責の念からヒーローになるのだが、原作ではプロレスの賞金はきちんともらえるのだ。で、その賞金でスパイダーマンの衣装やウェブ・シューターを作りなんとまず芸能人としてデビューするのである。半年ほど芸能人として活躍し人気者に。その上で天狗になっているところを強盗に入られ、
「何で捕まえてくれなかった。あんたなら簡単だろ」
「だって僕の仕事じゃないし」
というようなことがあって結果ベン伯父さんを失うのである。
「大いなる力には大いなる責任が伴う」
反省したスパイダーマンは芸能界を引退しクライムファイター系ヒーローとして犯罪退治に専念するのである。だからもしも世界が平和ならそのままプロレスラーや肉体派芸人として活躍していてもおかしくないわけだ。
一方JJJである。JJJは偏屈で頑固だがけっして邪悪な人間ではない。またチャラチャラした芸能界など嫌いな人間だ。彼は以前に妻を強盗で失っている(映画では健在)。その際犯人はフルフェイスの覆面をかぶっていて素顔が分からなかった。つまりかつては芸人で素顔を隠しているスパイダーマンはとてもじゃないがヒーローとして好感を持つことは出来ないわけだ。そのほかのヒーローに比べてスパイディだけねらい打ちしてるのはそういうわけなのである。同じニューヨーク在住ヒーローでもファンタスティック・フォーは素顔出して正体さらしてるし、デアデビルはスパイディみたいに表に出てこないしね(ちなみに映画「デアデビル」でデアデビルの正体を探ろうとする記者ユーリックはデイリー・ビューグルの記者、つまりJJJの部下でピーターの同僚。映画ではニューヨーク・ポストになってるけど)。
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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そういえば「アマルガム・コミックス」も広い意味でパラレルワールドだけど元に戻ろうとする話だね。
アマルガムコミックス (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2003/12/17
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ああ、何かいつにもましてグダグダだ・・
*1:まあ、他のヒーローにも決して肯定的ではないのだが特にスパイディを目の敵にしている