The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

ロールシャッハ・イン・「エルム街の悪夢」

 いまいち評判の悪い「エルム街の悪夢」を鑑賞。「エルム街〜」といえばその昔、ニュー・ライン・シネマが経営難に陥った時その窮地を救った作品がウェス・クレイブンの「エルム街の悪夢」で、それゆえに後にニュー・ラインが大会社になってもこのシリーズだけは特別扱いしてきたらしい。そんな作品のリメイク作が本作。このところ続いてきた70〜80年代のホラー、スラッシャー映画のリメイクにもひと段落着いたといったところか。
 とりあえず、過去のリメイク作感想。

小覇王の徒然なるままにぶれぶれ!: ロブ・ゾンビ版ハロウィン
 
小覇王の徒然なるままにぶれぶれ!: 13日の金曜日

 「悪魔のいけにえ」のリメイク2作(「テキサス・チェーンソー」「同ビギニング」に関してはまあ、永遠のマスターピースであるトビー・フーパー監督の2作にはかなうはずもないがジェシカ・ビールを発掘した功績と「ビギニング」の「ベトナム帰りVS暴走族VS食人鬼」という魅力的な構図だけは認めざるをえない。
 
 さて、「エルム街の悪夢」シリーズが他のスター殺人鬼な映画と一番違うのは主人公であるフレディ・クルーガーに特定の役者が付いてることだ。他の「覆面の殺人鬼」たちは作品ごとに役者が違ってたりした。しかしフレディを演じれるのはロバート・イングランドしかいない。フレディが夢の中で多彩な殺人術を披露する、という設定とあいまってこのシリーズは比較的ハズレが少ない。まあ、ケイン・ホッダー*1とかガンナー・ハンセン*2とかのインタビューを読んでると覆面殺人鬼役もけっしてガタイが良ければ誰でも出来る、ってわけでは無いのだが。
 で、今回そんなフレディをロバート・イングランドに代わって演じるのは「リトル・チルドレン」「ウォッチメン」のジャッキー・アール・ヘイリー。彼のこれまでのフィルモグラフィーを見れば彼がこの手の役にふさわしいのは明らかだ。実際、配役が発表されてからは期待が高まった。
 パンフレットの柳下毅一郎叔父貴の解説によると、ヘイリーは1984年の第1作目のオーディションを受けていたらしい。もちろん殺されるティーン・エイジャーの役で。結果として付き添いで一緒に受けた友人のジョニー・デップが合格しスター街道を歩み、ヘイリーは役者としては不遇の時代を送る。ああ、それぞれの90年代。
 しかし今やヘイリーはサイコな役をやらせれば天下一品の名優となり、かつて自分を落したシリーズで主役を演じることになるのだから世の中分からないものである。
 
 ではヘイリーのフレディはどうだったのかといわれると、正直微妙という感じだ。それはどうしてもロバート・イングランドと比べてしまうからでもあるのだが。まず基本の服装、装備の鉄の爪は一緒なのだが肝心のメイクが酷い。ケロイド状にこそなってるものの目が小さく奥に入ってリアルなのかもしれないが単にヘイリーが火傷しました、という以上のものではないのだ。鉤鼻や鋭い目が印象のイングランドのフレディと比べると印象に残らない。演出もコメディ要素があり、しかもそれが凄みにつながってるイングランド・フレディに比べるとシリアスなんだけどそれ以上ではない、って感じである。
 
 で、もう一方の主役、ティーン・エイジャーたちは主要わずか5人(内殺されるのはわずか3人)。それ以外に劇中の見えないところでたくさん殺してるみたいだがそれを見せてくれよ!この高校生達、女が妙に大人っぽいのに男がガキっぽいのばっかり。最初主人公だと思ってたトーマス・デッカー(TV「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」でジョン・コナーを演じた人)を筆頭に妙に幼いんだよな。役者の実年齢は知らないが。
 で、最終的に生き残るのが明らかにナードっぽい顔つきの少年地味系美術少女(ギーガー風なグロ絵ばっか描いてる)なのは嬉しいが(この少女の役名がナンシーなので旧作を見てる人は主人公なんだな、と感づくのだろう)。
 過去に起きた事件(これも旧シリーズだと児童連続殺人だが今回は単に性的いたずらってレベルじゃないか。いやもちろんそれでも酷いことに代わりはないけれど)や町の住民が裁判に寄らず私刑でフレディを焼き殺したこと、それに伴う若者の大人への不信感、などは引き継いでるもののいまいち小粒感はぬぐえない。
 というか折角のフレディの個性であるもっとトリッキーな殺しを見せて欲しかったよ。
 
 やっぱ個人的にはシリーズ最高傑作は(シリーズ的には外伝扱いなんだろうけど)「ザ・リアルナイトメア」と「フレディVSジェイソン」だな。特に「VSジェイソン」はそれぞれの個性と設定を上手く生かしてて大好きな一本。

 
 ああ、本作でもあの印象的な数え歌は流用されてます。ただ、字幕が少し納得行かないなあ。

 この映画の一番の欠点は途中で眠気に襲われるところかもしれない。寝てても起きてても殺される!

*1:13日の金曜日」」シリーズで主にジェイソンを演じた人

*2:悪魔のいけにえ」のレザー・フェイス