The Spirit in the Bottle

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ホラーの皮を被ったコメディ! ホーンズ 容疑者と告白の角

 新作が公開されるとシリーズの過去作だったり主演俳優の過去作だったり関連映画が地上波でも放送されることが多いけれど、あれできれば各局気ままに放送せず、ちゃんと企画をすりあわせて放送順を調整して欲しいものです。「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」公開に合わせて6月26日に日テレで「アベンジャーズ」」が放送されるんですが次の27日にフジテレビで「アイアンマン」が放送されたりするんですよね。「マイティー・ソー ダーク・ワールド」や「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」はまだ無理としてもどうせならフジは「アイアンマン3」なんかを放送できればシリーズの順番的にも良かったと思うんですが(もちろんやらないよりは全然良いんですが)。
 以前「ハリー・ポッター」シリーズの最終作の公開時期だったかは本当に各局自由気ままにシリーズを放送していて順番がメチャクチャだったりしたもので色々制約はあるんだろうけど、もうちょっと融通して欲しいものです。それに比べるとこの間まで日テレで4週連続で「ハリー・ポッター」シリーズを「賢者の石」から「炎のゴブレット」まで順繰りに放送する企画というのは実はかなり優れた企画だったりするのです。来年は後半4作を連続放送するそうですよ。
 そんなハリー・ポッターといえばダニエル・ラドクリフ。シリーズのタイトルロールを演じ、子供から大人まで演じきったイギリスの俳優です。例えばリチャード・リンクレーターの「6歳のぼくが、おとなになるまで。」という実際の子役の成長に合わせて撮影したという映画が昨年話題になりましたが、個人的に「それだったらシリーズとしての『ハリー・ポッター』のほうが凄くね?」と思ったり、それでなくてもTVシリーズだったら最初のシーズンでは子供だったのが最終シーズンの頃にはすっかりと大人になって、とかは結構普通なのでそれほど制作過程そのものは凄いとは思わなかったりします(まあ僕は件の作品をまだ見ていないので内容については論評出来ないのですが)。
 で、本題に移るとダニエル・ラドクリフです。彼は子役として当たり役を得てしまったため、たくさんの俳優と同様そのイメージの呪縛から逃れようともがいています。ハーマイオニー役のエマ・ワトソンも結構苦労してイメージからな脱却を計った印象が有りますが、それとくらべても主役である彼は更に大変なはず。今回の作品はそんなダニエル・ラドクリフが「ハリー・ポッター」の呪縛から逃れるべく出演した作品とも言われています。アレクサンドル・アジャ監督「ホーンズ 容疑者と告白の角」を観賞。ちなみに劇場で観た前日はテレビで「ハリー・ポッターと秘密の部屋」見ました。

物語

 田舎町。恋人メリンダが殺されたイグはしかし自分が容疑者となっていることで喧騒といらだちの日々を送っている。ある時、彼の額には2本の角が生えていた。角が生えたその時から町に人々はイグの前では嘘がつけず、馬鹿正直になる。イグはその角の力を使って真犯人探しをすることを決意。これまで見えなかった人々の悪意や感情を目の当たりにしながら徐々に真実に近づいていくが…

 多分日本ではあんまりコメディーとしての売られ方はしてないと思うんですが、これはコメディーです。もしかしたら出演者もそうは思ってはいないかも。さすがに監督は「ピラニア3D」のアレクサンドル・アジャなので自覚があると思うけれど。例えばちょっと前なら脚本はそのままに「ブルース・オールマイティ」とか「ライアー・ライアー」みたいな路線でジム・キャリー主演でコメディ映画として撮られていてもおかしくない感じ。悪魔のような角が生えて真実を聞き出すことのできる主人、という設定は「一日だけ神様になった男」だとか「嘘がつけなくなった弁護士」だとかと共通する。だから作品の雰囲気としてはホラーやサスペンスの雰囲気を持っているけれど、本質はコメディだと思います。僕はディッド・ボウイの「HEROES」がかかるとそれだけで傑作認定してしまいがちで、本作でも流れるんだけど。多分「HEROES」が流れたシーンでこんなに笑ったのは多分初めて。
 ダニエル・ラドクリフは生真面目に演じているけれど、それ故にシモネタやゲスい部分が笑えるようになっていて、最初にかかりつけの医者に角を切断してもらおうと思って麻酔をして起きたら手術そっちのけで医者が看護婦とセックスしてるシーンとか、その「真実の告白」部分がかなりゲスいのであります。ここではかなり大きなモザイクが掛かって、多分これは日本独自の処理だと思うんだけど(他にもクライマックスの人体破壊シーンでカットがある)、不思議と「ドラゴン・タトゥーの女」のベッドシーンのモザイクと違って雰囲気を邪魔していないというか、むしろそのモザイクがバカらしさを強調していてこれは良かったように思います。「ドラゴン・タトゥーの女」のモザイクは自然な流れのベッドシーンのドラマをそのモザイクによって突然アダルトビデオを見せられているような異物感がありましたが、この作品では逆にその異物感がコメディ感を強調したというか。
 そもそもの設定がかなり馬鹿らしいので、真面目な作品と言うよりはコメディだと思ったほうが良いと思います。 

 ダニエル・ラドクリフハリー・ポッターからの脱却が出来たかは分かりませんが、ハリー・ポッターだったからこそ意味がある、というようなシーンも多くて、まず今回のイグ役はパーセルマウス(蛇語を解する者)です。後半になると真実を聞き出すだけでなく蛇を操って自分を嵌めたと思われるものに報復をしたり、三叉のフォークを持っていかにも悪魔という出で立ち。そもそも「イグ」という普通の英語の人名ではまずお目にかかれない名前もラブクラフトクトゥルフ神話に出てくる神性、蛇神イグを連想させます(イグはもっと長い名前の愛称で劇中でも出てきたと思うが忘れちゃった)。
 劇中ではイグたち主要人物の子供時代が時折挿入されますが、ここでは当然のことながら別の人物がダニエル・ラドクリフの子供の頃を演じています。中々ハンサムで利発そうなお子さんです。しかし、我々はダニエル・ラドクリフの実際の子供の頃をよく知っている身。観客の殆どがそうでしょう。さらに僕など前日に「秘密の部屋」でちっちゃい頃のダニエル・ラドクリフを見たばっかり。だからこのイグの子供時代に妙な「コレジャナイ感」を覚えてしまいます。
 最後は「レジェンド/光と闇の伝説」のティム・カリー演じる魔王のちょっとかわいい感じにまでなりますが、この辺、主役がハリー・ポッターだった!というのが上手いスパイスになっていて、他の俳優が演じていたら感じ方がかなり違ったではと思います。

 この映画、最後まで角が生えた原因・経緯については語られず、その超常現象的な部分には科学的にもオカルト的にも特に説明はありません。その辺もホラーであるとともにコメディぽさに貢献しているような。原作にはその辺書かれているのかしら。
 原作はジョー・ヒルという人で主に幻想文学の人。メイン州出身ということやそのルックスがスティーヴン・キングを彷彿とさせる・・・とおもったら本当にキングの息子です。言われるとちょっとキングと作風も似てるような。

ホーンズ 角 (小学館文庫)

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 ダニエル・ラドクリフが本作でハリー・ポッターのイメージから脱却できたかどうかは分かりませんが、新境地を開いたことは間違いなさそうです。といっても僕は劇場でラドクリフの作品見るのは「ハリー・ポッター」以外ではこれが初めてなんですが。

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