壁と迷路と男と女 メイズ・ランナー
めいど!!
さあ、まもなく「ハンガー・ゲーム」の最終作(の前編)「ハンガー・ゲームFINAL レジスタンス」が公開!日本ではイマイチ評価が低い作品ではありますが(というか人によって温度差が激しい作品という感じか)、僕は今最も応援したい熱い作品の一つ。原作の需要度が日本では低いので盛り上がらないということもありますね。
「ハンガー・ゲーム」シリーズはアメリカではいわゆる「ヤング・アダルト小説」と呼ばれるティーネイジャーを主な読者とした小説を原作としていて、このヤング・アダルト小説を原作とした映画は近年、アメリカではそれこそアメコミの映画化作品と並ぶくらいブームになっています。日本で言うならライトノベルと呼ばれる作品で、特殊なシチュエーションを舞台にした若者しか出てこないような作品が多いのでその出来具合はばらつきがあるのですが、それこそ僕の「ハンガー・ゲーム」のようにドはまりするか、あるいは苦手と思うか両極端に分かれることが多いでしょうか。今回はそんなヤング・アダルト小説を原作とした三部作の第1作ということで「ハンガー・ゲーム」とも共通する部分を多く持つ「メイズ・ランナー」を観賞。
物語
また一人の若者が送られてきた。ここは四方を巨大な壁に囲まれた空間。ここでは記憶をなくした少年たちが一ヶ月に一度物資とともに送られてくる。壁の外は巨大な迷路になっており、朝扉が開くと夕方閉まるまでに戻ってこないと迷路の中で怪物に殺されてしまう。迷路の探索者は「ランナー」と呼ばれている。
新入りであるトーマスはリーダーであるアルビーを助けるた迷路に挑む。彼は怪物との死闘でこの迷路の謎の手がかりの一端を得る。
新入りが送られてきた。今度は初めての女性。そして一緒に「これで終わり」と書かれたメッセージも。物資が送られて来なければこれまで何とか送ってきた自給自足の生活も不可能だ。若者たちの取った決断は…
原作はジェームズ・ダーシュナーの「The Maze Runner」。2009年にの1作目から現時点で3部作と前日譚の4作が発表されていて更に新作も予定されているらしい。邦訳は映画に合わせて1作目のみ出た模様。映画はアメリカでは2014年の9月公開で日本ではちょっと間があいた形になるが、おかげで続編の「the Maze Runner:The Scorch Trials」は今年の秋には日本でも公開されるそうなのでそちらも楽しみである。
まず、この映画を見て連想するのは巨大な壁に囲まれた極限状態の若者たちの物語ということで「進撃の巨人」だろう。僕も最初に予告編を観た時連想したのはそれだ。日本でも実写版の公開が待機中で比べられることになるかもしれないと思った*1。
劇中にはクライマックスまで大人が登場しないのでほぼ少年(といっても役者は10代前半から30歳ぐらいまで色々。劇中では一番最初の住人であるアルビーでも20代前半ぐらいの設定だろう)だけで話が進んでいく。いろんなタイプが登場するので一人ぐらいはお気に入りのキャラが見つかるだろう。主役のトーマス、リーダーのアルビー、ランナーのリーダーであるミンホ、副リーダーのニュート、年少のマスコット的なチャック、敵対するギャリー。この内人気が出そうなのはミンホとニュートかな。
ギャリー役のウィル・ポーターは「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」のいじわるな親戚ユースチスを演じていた。あの時点では身体は小さい感じだったが、今回は体躯は立派ながら意地の悪そうな表情はユースチスのまま、という感じ。リーダーシップをめぐりトーマスと敵対する。
主人公のトーマスのディラン・オブライエンは意思の強うそうな美男子。「ヤング・スーパーマン」のトム・ウェリングややはりスーパーマンである「マン・オブ・スティール」のヘンリー・カヴィルをもっと幼くした感じか。
少年たちばかりの世界へ突如送り込まれたたった一人の女性テレサはカヤ・スコデラリオ。僕の中では「美しいとされるお姫様より魅力的な侍女」でお馴染みの「タイタンの戦い」のアンドロメダの侍女役でお馴染み。というかあの頃から注目していた自分の目を褒めたい。
彼女がやってきても少年たちが全く性的劣情を催さず、一個人としてちゃんと受け入れているのはヤング・アダルト小説の都合のいいところか。普通は男たちの中に一人女性が!とくれば「アナタハンの女王」みたいな女性を取り合って抗争がみたいなのが思いつくところ。その辺は妙にお行儀がいい。原作ではどうなっているのか分からないし、もちろんそんな描写はストーリー上邪魔でしかないのだが、人間ドラマそれも負の感情を強調するなら普通にありえそうなものだ。好意的に解釈するなら少年たちは記憶を人為的に封印されて送り込まれているが、その際にそういう性的な部分での抑制も人為的にされているのかも。
でも僕の一番のお気に入りはニュート役のトーマス・ブロディ=サングスターかな!若いころのレオナルド・ディカプリオとリバー・フェニックスを足して割った感じ。あるいは同時代だとデイン・デハーンがもっと親しみやすくなった感じか。
この手の映画だともう一人の主人公といえるのはその舞台。巨大な壁に囲まれたその外では幾重にも迷路が展開ししかも時間によって動き形状が変化する。ランナーはその迷路を駆け抜け、ルートを探り、模型を作り脱出経路を探る。それを阻むのは謎の怪物グリーバー。グリーバーはWRTAデジタル製で「スターシップ・トゥルーパーズ」のウォリアー・バグに「タイタンの戦い」のクラーケンの顔がついた感じ。全体としてなぜかカマドウマを強く連想してしまうビジュアルだが、これは中々よく出来ていて、可能ならもっと明るいところで見たかった。機械と生命のハイブリットな怪物である。
そして、迷路自体はちょっと巨大すぎて後半に行くとあまり「迷路」という感じではなくなっていくのが残念か。しかし少年たちの生活地域である正方形の広場も含め、この舞台となるロケーション自体がもう一人の主役であることは間違いない。ちなみに昔巨大迷路のアトラクションが流行ったことがあって、でも僕はああいうの見るたびに下くぐって脱出することばかり考える不届き者です。後は壁ぶちぬいて直進するとかね。あの迷路を作る理由もイマイチよく分からないが、その辺は続編で解明されるのか。
物語は迷路の外につながり、少年たちは何もわからぬまま次のステージへ。続編も面白そうだが、単純に本作をパワーアップさせたものというより、かなり内容も変わってくるみたい。
さて、「ヤング・アダルト小説」の映画化作品では僕が見た限りでは「ハンガー・ゲーム」シリーズ、そしてこの「メイズ・ランナー」は楽しめ、「トワイライト」「アイ・アム・ナンバー4」はちょっと残念という感じ(他にも見ていないが「ダイバージェント」なんかもこのジャンルに含まれる)。この差は現代を舞台にしているか、現代ではない今とは異なる世界を舞台にしているかの違いが大きように思う。突飛な設定が持ち込まれても未来だとか特殊な状況下を舞台にする作品はまだ受け入れ可能なのだが、現代の日常社会に特殊な設定が侵入してくる作品だと心理的な壁が働くのかもしれない。
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