The Spirit in the Bottle

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やらなきゃよかった 仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦

 新戦隊「特命戦隊ゴーバスターズ」も順調に面白くなってきた。「仮面ライダーフォーゼ」も後半に向けてますます上り調子。まあ前半ほど学園映画の要素が見受けられなくなってきたのはしょうがないことだと思うけど(やはりピークはプロムか)。ただ、「ゴーバスターズ」と「フォーゼ」の面白さってベクトルが少し違ってて、過去のいろんなSF作品(僕がぱっと思いついたとこでは「新世紀エヴァンゲリオン」「ジャイアントロボ地球が静止する日」「勇者王ガオガイガー」そしてアメリカ版戦隊である「パワーレンジャー」といった辺り*1。他にも色いろあるだろう)が参照されているように思える「ゴーバスターズ」は頭で考える面白さ。勿論「フォーゼ」もいろんな映画(主にアメリカ学園映画)が参照にされてるが物語そのものは感情に訴える面白さ、という感じがする。「らーめん才遊記」でいうなら「ゴーバスターズ」はフムフム。「フォーゼ」はワクワク、といった感じだろうか。もちろんそれぞれ違ってていいのだ。今後の展開に向けて両方共楽しみな作品である。
 で、そんな両シリーズがクロスオーバーする映画「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」を観てきた。一言で言うととても残念な問題作で怒り半分、呆れ半分といったところである。

物語

ある時、突如として門矢士 / 仮面ライダーディケイドが「大ショッカー」の大首領として歴代ライダーの悪を束ねて全てのスーパー戦隊たちを倒し始めた。時を同じくしてキャプテン・マーベラス / ゴーカイレッドが「大ザンギャック」の大帝王として歴代戦隊の悪を率いて全てのライダーたちを倒し始めた。
そして時は2012年4月21日。如月弦太朗 / 仮面ライダーフォーゼ桜田 ヒロム / レッドバスター達が所属する特命戦隊ゴーバスターズはこの争いを止めるべく戦い、デンライナーもこの謎を解くべく過去の時間へと向かう。

 今回自分であらすじ書くのが面倒だったのでWikipediaの当該項目から引用しました。
 もう物語を語るのも大変なほど行き当たりばったりな展開なのだが、正直良くこれで脚本がOKでたな、と思う。どうやらこの企画まずは「ディケイド」ありき、だったようでどうして失敗作である「ディケイド」にそこまでこだわるのか理解できない。勿論企画発表当初、スーパー戦隊仮面ライダーの一大クロスオーバーに胸を躍らせたのは確かなのだが片方のメインがディケイドと聞いてがっかりしたのも又事実。「ディケイド」基準なのでオーズやフォーゼ、ゴーバスターズのTVシリーズとはパラレルだろう(てかそうでないと困る)。
 そもそも、全スーパー戦隊と全仮面ライダーを登場させる必要はないわけで戦隊側はゴーカイジャーのみにして仮面ライダーはオーズかフォーゼのどちらかに絞るべきだったと思う。そもそもゴーバスターズ自体が戦隊の総まとめだったゴーカイジャーを経て仕切り直し的な側面がある作品なのですよ。独特な世界設定はこれまでの戦隊と世界観を共有していないことの意思表示でもある。だからゴーカイ×ゴーバスだけでも大変だと思うのに仮面ライダーまで含めるんだからよほど脚本を調整しないと難しいのは確かなのだ。
 結局、出来上がった作品は方向性が一定しない、ふらふらしたものになってしまった。そもそも軸になる作品が「ゴーカイジャー」「ディケイド」「オーズ」「電王」「フォーゼ」「ゴーバスターズ」と6つもあってどこに軸足を置けばいいのかわからなくなっている。
 
 中盤、大ショッカーと大ザンギャックの首領に扮している門矢士とマーベラスを置いてけぼりにして(そりゃ、あの状態の二人で物語を動かすわけにはイカンわなあ)ジョーとハカセ、比奈ちゃんとディエンドである海東の4人が物語を回していく。今回実質的な主人公はジョーにあたるだろう。ハッキリ言っていきあたりばったりな展開でなかでも噴飯物なのがデンライナーで過去から連れてきたアカレッドアカレンジャー(ブクマで指摘あり。アカレッドではなくアカレンジャーでした)が実はマーベラスだったという謎展開。過去から連れてきたんですよ。
 勿論、ヒーロー同士が戦う、という展開はいいんですよ。今までだってスーパー戦隊の「VSシリーズ」はタイトルにもなっているどおり新旧戦隊が戦うのが見所だ。マーベルヒーロー総登場の「アベンジャーズ」だって予告編を見る限り、ヒーロー同士が仲違いしながらそれでも最終的には力を合わせるのが見所なのだが、「スーパーヒーロー大戦」ではマーベラスとディケイドが悪の首領となって本気で争ってるように見えるので対立といっても度が過ぎている。悪の組織を騙すためといっても例えば「シンケンジャーVSゴーオンジャー」のように人質を取られ、互いを倒すように強要される、とかなら理屈もつくし観客も共感しやすい。これでは子供が置いてけぼりにされるのも致し方あるまい。
 中盤、ジョーも海東も倒されついにハカセ(と変身はしない比奈ちゃん)だけが残されてシルバが「ライダー粒子、レンジャー粒子共にすべて消滅した」とか言う場面があるのだがそこでハカセがまだ残っているのに終了宣言してしまうのもハカセのキャラ的なものより単に脚本の不備に思えてしまう。
 ラストなんとか事前に敵組織の野望を打ち砕いて、でもビッグマシンとやらが登場してないしどうするのだろうと思っていると突然ディエンドが裏切り「僕を騙すなんて許せない」とか言って敵のラスボス敵位置に収まってしまう。ここまで味方としてやってきた海東なんの伏線もなく突然裏切る(でもなぜか最後は許される)とか、この展開を好意的に見れる人がいるだろうか。
 
 結局、製作者特に白倉伸一郎プロデューサーはスーパーヒーロー物の脱構築とやってはいけないことが区別がついていないのではないか?という気がする。悪の仮面ライダーとかヒーロー同士の殺し合いとかそういうものをヒーロー物を超える、とか勘違いしているのではないだろうか。
 
 勿論いくつか画的におお!という場面はある。例えば同じモチーフのスーパー戦隊仮面ライダーの戦いとか。剣とジャッカー(トランプ)、龍騎ゴセイジャー(カード)、カブトとレッドバスター(超スピード)などなど。そういえばハリケンジャー(現在ハリケンレッドが大変なことに!)の追加戦士ゴウライジャーを除くと戦隊の方って昆虫モチーフってないのね。やっぱり仮面ライダー(あるいはビーファイターとか)のほうに遠慮というか被らないようにしてたのかな。
 ただそれさえも残念な部分もある。ゴーカイジャーがオーズのそれぞれのコンボをレンジャーキー化して各コンボに変身するというシチュエーションがあるのだがせっかく変身したのにその状態で戦いもせずいきなりガレオンバスターでとどめを刺すだけなのだ。一体なんのために変身したんだよ!と思ってしまう。 
 ゴーバスターズとフォーゼが最後だけ出てきてディエンド操るビッグマシンを倒すのとかは格好良かったけど最初に「こんなシーンがあったらいいよね」というのが先にあってそれを無理やりつなげて脚本作ったのかな、と思ってしまう。
 あと、鳴滝だ!今回鳴滝の役者がドクトルGのリニューアルデザインとして出てくるのだが、やられたあとまた鳴滝に戻るのだ。そしてナゼかディケイドに許されて別次元の彼方に去っていくのである。お馴染みのあのセリフを残して。なんだろう、まだディケイドで何か作るつもりなのかな。
 「おのれディケイド!」っていうのはもはや「仮面ライダーディケイド」という番組そのものを指すのであって鳴滝!オメーも含んでるんだからな!

 僕は以前、「ディケイド」の反省点が「ゴーカイジャー」に生かされた、と書いたことがあったがどうやらそれは間違いだったようだ。いやおそらくゴーカイジャーのスタッフはディケイドの失敗点を学んでいると思う。でもディケイドの製作者はどうやらあれが成功作だと思っているようなのだな。パンフレットの製作者たちの対談を読んでいるとむかっ腹が立ってくるのだが・・・
 
 個人的にはこれが「海賊戦隊ゴーカイジャー」の見納めになる可能性があるかと思うとそれが一番残念(まあ、冬か春あたりに「ゴーバスターズVSゴーカイジャー」が作られる可能性はあると思うが)!
 後は「フォーゼ」のTVシリーズの方に財団Xが出てきましたね!これである意味「仮面ライダーW」との世界観が共通であることが明確になったと思っていいのでしょうか(単なるファンサービスや楽屋ネタではないと思う)。第二期平成ライダーシリーズ共通の敵ということで「フォーゼ」内で完結せず次作以降まで持ち越される可能性もあるけれど、それはそれで期待大です!

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 今回はダメ(多分僕の中では今年度のワースト3に入ります)だったけれど前作は最高の出来だったんですよ!

*1:例えばメサイヤガオガイガーのパスダーとパワーレンジャーのゾードン両方をモチーフにしているのだろう