The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

VSシリーズ最高傑作! 特命戦隊ゴーバスターズVS海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE

 「特命戦隊ゴーバスターズ」もいよいよクライマックス。そしてこの時期になると恒例の「スーパー戦隊VSシリーズ」です。前回は35作品目というアニバーサリーだったこともあり、ちょっと早めに「ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦」が公開されたが、今年は例年通りこの時期に。オリジナルビデオから始まって途中で劇場用として公開されるようになったこのシリーズ。仮面ライダーの「MOVIE大戦」と比べてもイベント色の強いシリーズですが新旧の戦隊の個性もぶつかって小粒ながら秀作が多いシリーズです。
 で、先に結論から言うと、今回の「特命戦隊ゴーバスターズVS海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE」はシリーズ最高傑作と言っていい。

物語

 皇帝が死んで混乱するザンギャックを制したのはアクドス・ギルの甥にあたるバッカス・ギルが率いる一団だった。宇宙で最も巨大な力を持つという「幻のレンジャーキー」その最後の一本を追い求めて新生ザンギャックは黒いガレオン船で因縁の惑星地球へとやってくる。それに協力するのはエンター。
 ザンギャックを探知した特命戦隊ゴーバスターズ、だがその前に立ちはだかるのは黒ずくめの格好をした35番目のスーパー戦隊である海賊戦隊ゴーカイジャーだった!2つの戦隊がぶつかり合い、事情を知らない鎧も現れて混迷を極める中、遂にエンターが5本目のレンジャーキーを手にい入れる。しかし5本揃ったレンジャーキーの力は暴走し、時空が歪みヨーコ、ゴリサキ、J、そしてゴーカイジャーの6人はそれぞれ過去に飛ばされてしまう・・・

 VSシリーズももう長いもので「オーレVSカクレンジャー」から19作目(スーパーヒーロー大戦やゴーカイVSギャバン含まず)だが実はこの「ゴーバスVSゴーカイ」が一番大変なのではないかな、と思っていた。というのも「ゴーカイジャー」はそれまでの34作品を全て含めた作品なのに対して、「ゴーバスターズ」はあえてエネトロンという新エネルギーが普及したという現実とは違う設定などこれまでの戦隊シリーズとは別な世界観であることを示していたからだ。まあ元々戦隊シリーズは「デンジマン」と「サンバルカン」を除いて世界観は繋がっていないので「VSシリーズ」がイベントとして特別ではあるのだが。
 ゴーバスターズはSFとして詳細に世界設定がされた作品、一方ゴーカイジャーはそれこそ豪快に力押しですべての戦隊シリーズをつなぐ勢いで押し切る作品。それでも今回のVSは其々個性の違う戦隊が互いの設定のいいところを抽出してうまい具合に融合させたという意味で理想的なクロスオーバーといえるのではないかと思う。
 だいたい、このシリーズにも定番の流れがあって、

  • 新しい戦隊(ホスト側)が活躍する世界に、
  • 以前の戦隊の敵が現れ、旧戦隊も登場、
  • 最初は敵対したり、いがみ合ったりするものの
  • なんだかんだで(この時点で少人数に分かれて別の世界に飛ばされたりする)互いを認め合い、
  • 最後は一致団結して敵と戦う

 というのがどの作品にもほぼ共通する流れだと思う。もちろんこの作品でもこの流れは踏襲している。
 今回は「ゴーカイジャー」最終話で皇帝アクドス・ギルが死んで内乱状態の中、ザンギャック本星に向かったゴーカイジャーのその後。彼らはバッカス・ギルに敗れゴーカイガレオンを失うが、バッカス・ギルの目的が地球と知り、鎧とナヴィを先に地球に戻し、自分たちはバッカス・ギルの配下となる。もちろん目的は幻のレンジャーキーをバッカス・ギルより先に手に入れその野望を防ぐことだ。ゴーカイジャーが元々偽悪を良しとする戦隊だから、こういう悪の側に回ってしまう展開が多用されるの致し方ないがそれでも「スーパーヒーロー大戦」のマーベラスジョーにも何も話さず1人で(正確には門矢士と一緒にか)悪の帝王やってたのに比べるとシナリオ上もとても活きていると思う。
 上手いのは豪獣ドリルのタイムマシンとしての設定がうまくゴーバスターズ側に転用され、ゴーバスターズ側が豪獣ドリルの機能を解析し、バスターマシンに活かすことで過去に飛んだそれぞれを助けだすという設定。こういう互いの設定を抜き出し上手いこと融合させる描写がとても上手い。

 黒ゴーカイジャーの面々。
 敵はザンギャックの新司令官にバッカス・ギル。もちろん、「馬鹿すぎる」という言葉とかけたネーミングだが、もうひとつはギリシア神話の酒の神バッカスともかけているのだろう。常に酒瓶を離さないような人です。たぶんね、この人アクドス・ギルやワルズ・ギルが生きている時はその帝室にあるまじき酒癖の悪さから勘当されてたような人物ですよ。でなければ甥という間柄、普通に後継者としてすんなり認められてザンギャックが内乱に陥るようなこともなかったでしょうし。それが叔父のアクドス・ギルが死んで自分の目が回ってきたと考えたのでしょう。ちなみにアクドス・ギルとワルズ・ギルは写真で登場。額に三角巾巻いてます。あ、あとねこれ又勝手な予測ですけど、この人達(ザンギャック帝室)、人種的には「特捜戦隊デカレンジャーVSアバレンジャー」に出てきたギンジフ星人カザックと同じ種族じゃないかと思いますね。

特捜戦隊デカレンジャーVSアバレンジャー [DVD]

特捜戦隊デカレンジャーVSアバレンジャー [DVD]

 後はTVで出てきたデラツエイガーの色違い怪人としてワレドナイヤーが出てきます。
 ヴァグラスは基本はエンターさん1人でザンギャックに協力する形ですが、新しいアバターとしてエスケイプやダマラス、バスコなんかが登場します。この点でも分かるように時間軸はクリスマスか年明け一発目のエピソードの直後ぐらいですかねえ。バスコはせっかく細貝圭さんが登場するのでもうちょっと見せ場があると良かったかなあ。

 もちろん、素晴らしい!最高傑作!といってもそこは子供も向け映画の、しかもイベントムービーなのでご都合主義と言える部分もあります。何の描写もなく突然過去からゴーカイガレオンが出てくるところとか、あるいは幻のレンジャーキーによる大いなる力のセレクションとか。多分現在のゴーバスターズの巨大ロボを「メガゾード」と呼称するのはアメリカ版戦隊である「パワーレンジャー」から引用されているのでその大元である「ジュウレンジャー」の大獣神が選ばれるのはよく分かる。また陣マサトの中の人(元マジイエロー)絡みでマジキングが出てくるのも(なんだか懐かしい!)。その他は比較的最近の戦隊のロボットだが、残り一体がなぜか「フラッシュマン」のフラッシュキング。これはなんでなんだろう。たまたまロボットのきぐるみが残っていたとかなのかなあ。それでも前回の巨大ロボ戦が主にバンク使用が多かったのに比べると新たな映像で往年の巨大ロボの活躍が観れたのは嬉しかった。
 もちろんゴーカイジャーの面々はそれぞれ様々な過去の戦隊にゴーカイチェンジします。
 あとクライマックスの次元の穴を閉じる展開などは「アベンジャーズ」を意識してる部分があると思う。でも上手く換骨奪胎出来てたと思うし、「スーパーヒーロー大戦」よりよほどクロスオーバー作品として機能していたよ!
 イベントといえば新戦隊の登場。今度は「獣電戦隊キョウリュウジャー」ということでそのネーミングとデザインの直球さは「ゴーオンジャー」や「ガオレンジャー」を思いだしたりしますが。「ゴセイジャーVSシンケンジャー」の時のゴーカイジャーの登場は後に本編にも関連してて大いに驚いたのだが(確かに映画だけだと矛盾も合ったのだ)、これまではあくまでゲスト出演という感じで主役の2戦隊とは出会わずひっそりと敵の別働隊を倒す、という感じだったが今回はキョウリュウレッドがマーベラス&ヒロムと出会う。どちらかと言うと仮面ライダーの夏映画における新ライダーとの出会いに近い感じで、これまたTV本編、あるいは来年の映画などでフィードバックされるのかなあなどと期待してしまう。ちなみにキョウリュウレッドを演じている人は竜星 涼(リュウセイ リョウ)という芸名で一瞬「これは役名だろ?」とか思ってしまった(役名は桐生ダイゴ)。ゴーバスターズではリュウジが少し年長の28歳という設定だが「キョウリュウジャー」でも16歳から32歳とメンバーの年齢差が幅広いようだ。メイン脚本が「仮面ライダーW」の三条陸氏、監督も坂本浩一氏ということで楽しみである。
 
 とにかく、江戸時代の町並みに降り立つメガゾードε(イプシロン)などビジュアル的にも優れた所も多いし、現時点では今年No.1といってもいい作品です。おそらくゴーカイジャーの名前がタイトルに入る作品はこれが最後となると思うが最後の作品が出来が良くてよかった。「スーパーヒーロー大戦」が最後だったらかわいそうだったもんなー。「スーパーヒーロー大戦2」はスタッフと評判を聞いてから見るかどうか決めようと思ってます。

 ゴーバスターズの方は、これまでの流れの他にバディロイドというこの作品独特の設定があるので(似たようなのはゴーオンジャーの炎神があったが)その方面のドラマが充実している。ぶっちゃけこの展開はテレビ本編に取っておいても良かったのでは、と思うほど。今回はドラマ性という部分ではシリーズ一。上映時間は1時間ちょっとだが、いい意味で長く普通に二時間ある映画のような充足感。この映画は特別料金1200円なので普通にTVで毎回見るような人はぜひとも見ることをおすすめします。 ジェラシットも出てるよ!(ヤツデンワニもね!)