The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

その原稿が命とり ゴーストライター

 ゴーストライター、というと真っ先に思い出すのはその昔松本伊代が自伝を出した時に「どんな本になりましたか」と聞かれて「まだ読んでません」と言ってしまったとか、ジョージ・ルーカス名義の「スターウォーズ新たなる希望」のノベライズやジーン・ロッデンベリー名義の「スタートレック ザ・モーション・ピクチャー」のノベライズが実はSF作家アラン・ディーン・フォスターのものだったとか、あるいは「エアマスター」の坂本ジュリエッタとかなのだが、それとは全然関係なく、かなり突発的に「そういやユアンが出てるなあ」とか思ってこの作品を見たのだった。それがロマン・ポランスキー監督作品「ゴーストライター」であった。

物語

イギリスのゴーストライターが前イギリス首相アダム・ラングの自伝の以来を受ける。前任のゴーストライター不慮の死を遂げ、なおかつ彼の書いた原稿がつまらなかったからだ。急なスケジュールやラングの別荘のあるアメリカ東海岸の孤島に赴かねばならないなど幾つかの不満はあったが、ギャラが良かったため引き受ける。
 島に向かい、仕事を始めるゴーストライター。つまらないはずの原稿は厳重な管理を受けており、またその最中にラングの政治スキャンダルが発生する。やがて前任のライターの死に疑問を持つようになるが・・・

 はっきり言って前情報をまったく持たずに観に行ったので始まってしばらく経ってもこれが「ヒューマンドラマ」なのか「ポリティカル・サスペンス」なのか、はたまた「オカルトホラー」なのか、もしかしたらユアンが髑髏姿になって燃えるバイクに乗る映画なのか(それは「ゴーストライダー」)区別が付かなかった。作品自体に奇妙な雰囲気が漂っており、同じ孤島が舞台ということもあってかなんとなく「ウィッカーマン」(オリジナルの方)に雰囲気が似ている気がした。
 ユアン演じるゴーストライターは役名がなく「ゴーストライター」とクレジットされている。一方前イギリス首相アダム・ラングを演じているのはピアース・ブロスナン。設定的にはトニー・ブレア労働党でアフガン戦争時の首相)なのかな、と思うがむしろアメリカ大統領のドナルド・レーガンを思わせる(タカ派なところや演劇をやっていたところなど)。で、ピアース・ブロスナンということでどうしても007を思い出してしまうのだが、その辺も狙ったのか、物語の中心は「実は首相は学生時代にCIAのエージェントとなっており、これまでの政治活動全てアメリカの意志によるものだったのではないか」という疑問を巡るサスペンスとなる。
 原稿を巡るサスペンスから前任ライターの死を巡る疑惑まで後半はスリラーとして機能するのだがちょっとユアンの空回り(妄想?)感がありその辺が奇妙な感覚に囚われる。
 
 島の老人(ユアンに決定的な情報を与える重要な役)になんとイーライ・ウォラック彼を見たときは嬉しくなった。まったく意識してない作品で好きな俳優が出てくると凄い嬉しい!
 そのほかサービスカットとしてユアンの尻などがあります。
 出てくる女性はラングの秘書でおそらく愛人でもあるアメリアに「スタートレックVI 未知の世界」のヴァレリア大尉を演じたキム・キャトラル。肉感的なタイプの人。そして前首相夫人であるルースにオリヴィア・ウィリアムズ。アメリアとは反対にスタイリッシュな美人。そして実は・・・
 ラストは実はCIAのエージェントだったのは首相ではなく夫人のほうだった!という事実が判明するのだが、この直後のエンディングが凄い。「ピラニア3D」並の唐突さ。これが事故ではなくCIAによるものだったなら仕事早いなーと思う。
 
 監督はロマン・ポランスキー。スイスで拘留されたりしていた前後の撮影だと思うが曇り空のロンドンと雨ばかりの孤島が舞台なので常にどんよりしており不思議な雰囲気をかもし出している。ポランスキーはそれこそ早く自伝的映画を作らないかな。下手なフィクションより、よほど面白いのだが。
 
 ところで僕はWWEスーパースターの自伝を何冊か持っているが彼らの自伝には本人のほかに共著者というかサブの人の名前が明記されている。なのでアメリカ(この作品はイギリス人を主要人物とする映画だが)ではあんまりゴーストライターとか使わないのかな、と思っていたのだが、政治家とかの話になるとまた別なのだろうか。日本でも政治家とかはゴースト使ってそうだよね。

ゴーストライター (講談社文庫)

ゴーストライター (講談社文庫)