The Spirit in the Bottle

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デジタル時代の聖書 トロン:レガシー

 映画「トロン:レガシー」鑑賞。

 まずはこれの前作に当たる「トロン」の感想を参照してもらいたい。

映画の公開前に予習復習をしておこう トロン - 小覇王の徒然はてな別館

物語

 サム・フリンが7歳の時に巨大企業エンコムのCEOである父ケビン・フリンが失踪する。20年後成長したサムは父の親友で後見人だったアランから当時のポケベルに連絡があったことを知らされる。父親が昔経営していたゲームセンターに行ったサムはそこで「トロン」というアーケード拠体の後ろに隠し部屋を発見。そこで父のコンピューターを発見する。やがて物質転送機が作動しサムは光に飲み込まれた。
 気付くとそこはデジタルの支配する世界。何も分からぬまま危険なゲームに参加させられるサム。プログラムではなくユーザーであることが発覚するとサムは世界を支配するクルーという若き父と同じ容貌の男と引き合わされる。
 5VS5のライトサイクルで敗れ絶体絶命のそのとき謎のライトランナーに救われる。救ったのはクオラと名乗る美女。そして彼女に連れられた先で年相応に老いた本物の父ケビン・フリンと出会う・・・


 

トロンはどこだ?

 最初に予告編を見たときは「トロン」が何を意味するか分からなかったので全然気にならなかったのだが、前作を見た後思ったのは「トロンはどこに行ったの?」だった。「トロン」という名称が前作でアランが作り出したプログラムのことであり、その続編である以上、プログラムとしてのトロンが登場しなければタイトルに偽りあり、だと思ったため*1。その後予告編でサムに鍵を渡す男がアランであり役者(ブルース・ボックスレイトナー)は登場することを知った。劇中でトロンはケビンに誘われケビンの理想とするデジタル世界を作るために前作のコンピューターから連れてこられた。さらに「完全なものを造るため」ケビンが造り出したのがクルーだった(トロン世界ではプログラムはユーザーと同じ顔をしている)。世界を想像するうちアイソーと呼ばれるミュータントプログラムが誕生する。ケビンは彼らに未来をみたがクルーは「邪魔なもの」とみなしケビンに対するクーデターを行う。トロンはケビンを逃がすため犠牲に。またアイソーたちもクルーによって虐殺されてしまう。
 で、多分勘のいい人なら途中で出てくる覆面の戦士リンズラーが実は洗脳(方向性を変えられたプログラム)されたトロンであると気付くと思うがちょっとあの最後は物足りないなあ(最後まで顔出さないし)。

 キャスト方面ではまずはジェフ・ブリッジズ。前作に引き続き登場。クルー役は彼の顔をデジタルで若返らせたものであくまでCGで、ブリッジズとは別らしい。こういう若返らせた画像って「X-MEN」でパトリック・スチュアートイアン・マッケランでもあったけどあちらが妙に気持ちの悪かったのに対して違和感はない。
 一応主役のサム役は特に言うことなし。子役もそっくりでこれもCGで若返らせたのかな、とか見ながら思った。
 そして!一番はやっぱりクオラ役のオリヴィア・ワイルド。美貌プラス通常の人間とは少し違ったふしぎちゃんぽさが非常に魅力的。とはいえこの髪型、このメイクというのも大きい要素だと思うので、他の作品で見て同じように思うかは微妙かも。でもとりあえず彼女を見るためだけでも価値はあるように思う。
 出番は少ないながらも印象を残すのがズース役のマイケル・シーン。往年のデヴィッド・ボウイを髣髴とさせる。こちらもマイケル・シーンだとは気付かず。ずっとアラン・カミングかなとか思ってた。
 コンピューターの世界から以下にして現実世界へ脱出するかというのが一応の目的なのだが一度デジタル世界に入ると現実世界が出てこないので緊迫感が足りない。また最初のほうに出てきたエンコムのいかにもな社長や前作の悪役デリンジャーの息子プログラマーとか出てくるのに全然生かされていない。
 人間がプログラム化(データ化)してデジタル世界に行くのは理解できるのだがプログラムが現実世界で実体化するというのはよく分からない。 
 

映像

 で、この作品はIMAX3Dで鑑賞したわけですが、なんかそんなに3Dは生かされてなかったかなあ。実写映画(これなんてほとんどCGかも、だが)は劇映画の場合あんまり3Dに向いてないのかも、とかこの一年それなりに3D映画を見て思ったりした。
 また、デジタル世界の表現も正直つたない前作の方がそれっぽかった。リアルな表現がそのままリアルな世界というわけでもないのだなあ。ライトサイクルでの攻防もめまぐるしくカットが変わる今作より平面的だった前作の方がデジタルぽかったなあ。多分ポリゴンが粗い感じの方がデジタルっぽさが増すのだろう。贅沢な文句ではあるけどね。あ、後、ID代わりのディスクを武器にして戦うってなんでそんな大事なものを武器にしなければならないのだろう。イザという時大変だろうに(実際大変なことになる)。
 まあ、とはいえアクションシーンはじめする映像が見所であるのは間違いない(あと美女)。 
 
 

サム=キリスト説

 あんまりエンターテインメント作品に対して「あれは何とかを表している」とか「あのシーンは何とかの隠喩」とか解釈する(羊が出てきたら大概キリスト教がらみの解釈が出来る)のは好きではないのだけど、思いついたのだからしょうがない。パンフとかにも「デジタル世代の神話」とか載っているが僕が思いついたのはキリスト教に絡めてのもの。つまり「父なる神=ケビン」「子なるキリスト=サム」「聖霊=クオラ」の三位一体というもの。さらに言うなら「ケビン=新約聖書の愛の神」に対して「クルー=旧約聖書の神」という見方もできる。旧約聖書の神は厳しい、気に入らないと平気で滅ぼしたり、いけにえ求めたり、オナニー禁止したりする。それに対して同じ神のはずなのに新約聖書の神は慈愛の神である(まあ、相変わらずオナニー禁止だったりするが)。
 とまあ、このようにデジタル世界の聖書物語としてみることも可能である。ユダもいるしね。でも普通に楽しめばいいと思うよ。

トロン [DVD]

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トロン:レガシー オリジナル・サウンドトラック

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ちなみに予告編は「グリーン・ホーネット」。面白そうではあるけれどこれをIMAX3Dでやる必要はあるのかな?

*1:まあ勿論そういう映画もたくさん存在するのでだからダメというわけではないが