The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

さよなら3組またきて地獄 アナザー/Anoter

 前回、「桐島、部活やめるってよ」の感想で橋本愛を評するのに「まだ見ていないが同時期の「アナザー」のような」と例に出してしまったこともあって「これは観ねばなるまい」と思って観に行ったのであった。もちろん、橋本愛その人に見惚れたから、というのも大きい。

物語

 1998年、春。15歳になる中学3年生の榊原恒一少年は父の仕事の都合で亡き母の実家である山間の地方都市、夜見山市に引っ越してくる。新学期から新しい中学校に転入する予定だったが持病の発作で入院、そこで眼帯を付けて人形を抱いた少女と出会う。
 5月、恒一は新しい学校3年3組へ。そこには眼帯の少女がクラスの一番後ろの席にいたが、不可思議なことにクラスの誰もが彼女の存在を知らないという。やがて恒一は彼女の存在を確かめるべく追い始める。その少女の名前は見崎鳴。しかし彼女と恒一が一緒のところを見たクラス委員の少女が恒一たちの目の前で事故死を遂げる。
「あんたのせいよ・・・」
 やがて26年前に起きた事件のせいで3年3組では犠牲者を増やさないためにクラスの1人を一年間「いないものとして扱う」という風習があるのだということを知る。見崎鳴は自らその役目を買ってでたというのだ。そして異分子である恒一も二人目の「いないもの」にされてしまう・・・

 以前、本作の古澤健監督と一緒に食事をする機会があったのだが、その時に監督がちょうど手がけていたのがおそらくこの作品だったと思う。監督はヒロインである橋本愛にぞっこん惚れ込んだというようなことを言ってらっしゃった。それで気になってたのも確かだ。
 僕は綾辻行人の原作もアニメ化作品も見ていない。映画を観る前の物語に関する事前知識もなし。だからあくまで映画だけで感想を書こうと思う(見た後に多少Wikipediaなどで知識の補強はした)。
 田舎町を舞台にしたティーンが主要人物を務めるホラー作品ということでゲーム初である「ひぐらしのなく頃に」とかの流れなのだろうか。ホラーとミステリー両方の要素を含んでいる。ただ、プロットに酷い欠点があるのも確かで例えば3年3組から「いないもの」を出す、という風習は端的に言ってオカルトにかこつけた集団無視「いじめ」であるし、しかも先生公認であることや4月の段階で生徒が納得してるということは、その前から知っているし、おそらく学校、保護者は愚か自治体レベルで公認の風習となっているのだろう。そんなのたとえオカルト的事項が明らかだとしても例えば3年3組そのものを無くしてしまうとか対策は可能なはず。こんなことが許されている、という時点で3年3組の生徒はもちろん、担任の先生とかが死亡しても全然可哀想とは思えなくなってしまう。

 橋本愛は「いないもの」である見崎鳴を演じていて、最初のうちは恒一にしか見えない幽霊か何かなのか?と思わせるが実はそうではないことが判明する。髪型などは「桐島、部活やめるってよ」とほぼ一緒なのだが、撮影時期はこちらのほうが早いせいか、あるいは中学生という役柄のためかこちらのほうが若干幼く見える。彼女は人付き合いを避ける性格でくじ引きで「いないもの」の役を引いてしまった女生徒に変わり自ら引き受けていた。しかしなのになぜ彼女が病院にいたのかは謎だ。後は26年前の「ミサキ」が見崎鳴といっしょなので関係有るのか無いのか分からなかったのだが、どうやら単に「ミサキ」であって苗字か名前かわからない、ということのようなのだな。共通してみせることで見崎鳴のキャラクターを不可思議なものにしているのだろう。
 ただ、一度正体が明らかになるとむしろ普通の少女であることが判明する。恒一も二人目の「いないもの」にされてしまうと一緒に学校生活を楽しんでいる描写が微笑ましい。ただ!僕も映画を見ながら「橋本愛と一緒に二人きりの中学生活ならそれはそれでいいかも」などと思ってしまったが、これまでは(そしてこのあとも)「望まないものが1人でいないもの扱い」されるのだからやはりこのいう形で先延ばしして来た学校側に大いに責任はあるだろう。
 見崎鳴は一旦正体がわかると至って普通の少女であることが分かるのだがそれでも「人形の目」によって死者もしくは死にゆく者が見える、という設定だったりする。この見崎鳴の「ミサキ」あるいは26年前の「ミサキ」はおそらく幽霊として伝わる「七人ミサキ」からとっているのだろう。>七人ミサキWikipedia

桐島、部活やめるってよ」の橋本愛と比べると実は対照的な役柄ではないかと思う。本作の見崎鳴はでは一見不可思議な少女だが実はいたって普通の少女であったが、「桐島」の東原かすみは普通の美少女のようで実は一番謎が多い(雰囲気)。ともあれ、やはりこの映画も見所は橋本愛のミステリアスな美少女ぶりであってその魅力については十分に描いていると思う。さすが惚れ込んだだけのことはあります。
 主人公の男の子、榊原恒一を演じた山崎賢人も僕はこの作品で初めて見たが線は細いが一本芯が通った役をうまく演じていたと思う。多分彼に感情移入が出来るかどうかがこの作品の評価の分かれ目になるとも思うのだが、彼はその点では合格だった。
 田舎の中学校という高校より一段回若い年齢ということもあって、学生たちは総じて芋っぽい。下手に美男美女ばかり揃えなかったのは正解だ。しかしこの3年3組(担任含む)は基本全員「死んで当然」と思えるような描写になっている。その上で例えば担任が寝たきりの母親の世話をしている描写を挟んだりするため、見てるこちらも複雑な心境にさせられるのだな。生徒も同様で恒一たちと仲直りさせるのかと思ったらその後醜い感情を発露させたり、製作者の意地の悪さがかいま見える。
 しかし、中でも1人だけ徹頭徹尾悪役と言える生徒がいて彼女は最初から最後まで悪役として貫いたキャラがいてその役を演じたのは秋月三佳。「仮面ライダーフォーゼ」の修学旅行の回で弦ちゃんに惚れて暴走した少女を演じていた。あの時も恋愛に暴走気味だったり、ユウキのはやぶさくんを人質にとって脅迫していたりと少し怖かったが、今回はとにかく怖い。それでも他のキャラクターのような偽善ぶりが無い分、いっそ清々しかったりするのだが。
 ただ、1人だけそれまで全く触れられていないながらヒーローとなった男子がいる(クラスの女子から太ったオタクと言う目で見られていたような男子)。彼は火事で崩落した建物の中をチェーンソーで切り開き無事クラスの女子を救出に導くヒーローとなるのだ。以前お会いした時、監督は「悪魔のいけにえ」について熱く語っていらしたものだがおそらく彼は「悪魔のいけにえ」リスペクトのキャラだろう。
 大人組は加藤あい袴田吉彦。ふたりとも生と死の間に生きるキャラであるのだが実はこのへんの描写がよくわからないところであった。加藤あいは一時期油が完全に抜けたように地味な時期があったが今は再び美しくなっているね。袴田吉彦はハンサムに似合わぬオーバーアクトで結構好き。

Another(下) (角川文庫)

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 後はホラー映画ならではの死に様ですね。前半は特に誰かに殺される、というのではなくて一見事故死に見える、という感じなのだけれど特に最初のクラス委員の子が死ぬところとかは事前に「こりゃ死ぬわ」って状況が完備されすぎて思わず笑ってしまったです。

その手を離さないで アベックパンチ

アベックパンチ ?通常版? [DVD]

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監督の前作。