映画のミカタ
先日の「踊る大捜査線3」を巡る論争(?)は一応、当事者同士の間で解決したようです。あんまりスカッとしないけどとりあえず本人同士で納得したならまあ第3者が口を出すことではないのだが・・・(とりあえずこの件については後述)
僕自身、過去に何度か「ダメ邦画がヒットする日本はおかしい」という内容の記事を書いたことがあるので侍さん(id:samurai_kung_fu)の言わんとするところは分からないでもないです。
参照記事
今年の出来事 Best5 2009 ⑤ - 小覇王の徒然はてな別館
小覇王の徒然なるままにぶれぶれ!: 今年の出来事 Best5←こちらは2008年の末に書いたもの
ただ、映画の観方そのものは色々あっていいと思うし、参照記事でも述べてる通り、邦画がヒットする、それ自体はむしろ喜ばしいことだと思う。
例えば今回の「踊る大捜査線3」は僕は観ていないし観に行くつもりもないけれどそれはこの映画がつまらないだろうから、というよりは僕がこのシリーズにもう、魅力を感じていないからに過ぎない。
もともとこのTVシリーズは従来の刑事ドラマを脱構築したところが魅力的だった。警視庁と所轄署をそれぞれ本店、支店と呼んだり、大会議室で捜査会議を開いたり、重要な事件では所轄の刑事は警視庁捜査一課の手伝いであったり、という描写がいままでの刑事ドラマとは違っていた。僕自身TVシリーズは再放送やビデオ録画を含めて繰り返し何度も見た(サントラも何枚も買った)。その延長線上に映画版第1作はあった。当時京都に住んでいた僕は公開1週間後ぐらいにその映画版を観た。ほぼ満員の劇場で上映終了後拍手が鳴り止まなかった。僕も参加した。劇場の客の一体感が半端無かった*1。言っておくが初日とか舞台挨拶があったとかではない。普通の上映での話だ。
だから、僕の「踊る大捜査線」一作目の評価というのはこの劇場体験と切り離せない。今思うとあの作品にもどうしようもない欠点もあっただろう(個人的には「天国と地獄」引用シーンがあからさま過ぎてダメ)。それでも個人的に忘れがたい高評価な作品なのだ。
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が、今では知っている。内部のものによる改革なんて結局期待できない、と。だから、今回の映画は期待していないのだ。あれから十数年経っていて室井さんはかなり出世したはず。現実の警察を見ればあの当時とほとんど変らないことが分かる(例えば取り調べの全面可視化とか)し、逆に劇中では室井さんが劇的に警察を変革した、というのならそれはそれでもはや現実との接点をなくしたSFである。僕は現実に堕した青島刑事や室井さんなど見たくないのだ。これが「踊る〜3」を観に行かない理由である。後は水野美紀が出ないのも観る気を削ぐ(何気に一番大きな理由かも)。
とはいえ、他の人が楽しみに観に行ったり、今でも「シリーズ大好き!」という人がいても全然構わないと思う。
で、実はこっからが本題。映画の価値、というものは単にその映画の質によるものだけでは無い。映画を観た時の状況、誰と観たのか、どこで観たのか、などが関わってくると思う。もちろん映画の質は一番重要な要素だが一般的にくだらないとされる作品でも俺だけは好きだ!という物もあるだろう。単純に劇場で観るのと14インチのTVで観るというだけでも同じ作品の評価が変わっても全然不思議ではない。
例えば僕が好きな邦画に「湘南爆走族」という作品がある。吉田聡原作の暴走族漫画の映画化で江口洋介(江口洋助役!)や今回も話題の織田裕二、そしてVシネ大王になる前の竹内力なんかが出演している。
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え〜と、だんだん自分でも何書いてるかこんがらがってきたのだが要するに「観た映画を語る」ということは自分の人生を語ることと一緒なのだ。ただ単に上質な作品を観て面白かったね、だけでなく
「映画は良かったけど、隣の客が最低だった」
ので、良い思い出とはいえない、とか
「映画たいしたこと無かったけど、恋人と始めてみた映画」
なのでその映画は大好き、とかでも全然構わないと思うのだ。
僕は半ばニート生活をしてたときは毎日のように「大脱走」を見ていたがこれが当時の自分の状況とまったく関係なく「良い作品」だから見ていたわけでは無い。閉塞した状況を打ち破りたいが中々上手くいかない、という鬱屈を「大脱走」を観ることで晴らしていたのだと思う。
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最後に冒頭の論争の終結について少し。基本的に当事者間で解決したのなら構わないのだが、紛争部分だけ公開され和解部分が公開されないのではモヤモヤしたものが残る。少なくとも現状だと罪山さん(id:tsumiyama)が
- 追記を削除
- (問題になった)最後の段落を一部変更
という処置を行っている以上、侍さんの脅し(だよね、あれは)に一部屈したかのように思われてしまうのではないか。個人的には記事を変える必要は感じないし、「追記」はあの記事にはふさわしくないものの別記事としてエントリすればよかったと思う。このままでは2人とも損した形になってしまうので大丈夫な部分だけでも公開したほうがいいと思う。余計なお世話ですが。
後、侍巧夫さん(の、あの態度)をもって「真摯な映画好き」のモデルにされると映画好きのはしくれとしては困ります。
*1:近年だと「THIS IS IT」を観た後、拍手をする、ということがあった