The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

終わりよければ全て良し! バイオハザード ザ・ファイナル

 2017年の1月ももう後半。1日に「ローグ・ワン」(2回目)を観てからまだ全然新作を劇場では観てないわけですが(ジュウオウジャーVS。ニンニンジャー観ました!)、後半は話題作が続々公開されるのでいっぱい観る予定ではあります。そしてその前に年末に見た映画の感想を。「バイオハザード:ザ・ファイナル」を観賞。

物語

 人類のほとんどが死滅した世界。アリスはアンブレラのレッドクイーンから48時間以内に抗ウィルス剤を散布しなければ全人類が全滅することを告げられ、それを阻止するため、すべての始まりの地ラクーン・シティーへと向かう。途中でアイザックス博士に襲われるがラクーンシティーに辿り着いたアリスはクレアと再会。人類を救うため再びハイブへの侵入を試みる……

 一応ね、シリーズ全作品劇場で鑑賞しているわけですよ。それで、前作あたりはもうワーストに選ぶくらい正直つまんなくて、さすがにもう劇場鑑賞はいいかな…と思ってたんですが、これで最後!ってアナウンスされてるじゃないですか。そうすると最後まで付き合ってみるか、ということで初日に観賞。シリーズは2作目、3作目こそ違う監督が担当したりしていたけれど、後半はほぼポール・W・S・アンダーソンの独占市場。さらにこのシリーズの撮影を通して主演のミラ・ジョヴォヴィッチと監督が結婚してしまったものだから、「いかに自分の嫁を魅力的に描写するか」に尽力したシリーズだったりもする。そして日本での日曜洋画劇場でのヘヴィーローテーション!いやもともと日本のゲームが原作だから日本で売れないことにはどうしようもないのは分かるけど、ちょっと放送し過ぎだよ!というぐらい定番となっていて食傷気味であった。あれだね、TV局が映画製作に携わることの功罪ってあって、それはおいておくとしても例えば日テレの「金曜ロードSHOW!」ならジブリ名探偵コナンルパン三世なんかは日テレが関わってるから放送回数が多くなるのは分かる。テレ朝でも「相棒」なんかは同様。でも別に「バイオハザード」シリーズってテレ朝関わってないですよね?
 で本作。これが以外なことに面白かったのです。前作の最後、ホワイトハウスのウェスカーに招かれて、建物の周りをモンスターがうじゃうじゃしてる状態で「さあ!最終決戦だ!」みたいな終わり方をしたんだけど、この辺はあっさり無かったことに。アリスたちはワシントンD.C.でウェスカーの罠に嵌って全滅。アリスはその唯一の生き残りという具合。一応ゾンビ(正確には口から触手みたいなの出すのはゾンビじゃないんだっけ?)も出てくるけれど、もうゾンビ映画というよりは「ゾンビも普通に出てくるアクション映画」という感じ。ドラゴンみたいなモンスターも出てきます。
 前半の廃墟のワシントンからロードムービーを経て(途中装甲車バトルあり)ラクーンシティーに着いてからは1作目を踏襲。全部で6作ある実写映画シリーズのうち予襲復讐として最低限見ておいたほうがいいのは1作目だけで十分だと思う。

 物語的にはこれまでもクローンだったことが示唆されていたアリスの正体が明かされ、手際よくこれまでの謎解きが進んでいく。アリスは元々アンブレラの創始者であるマーカス博士の娘アリシアのクローン。アリシアは細胞が異常な早さで老化する「プロジェリア」という病気を患っていて、その対処法として開発されたのがT-ウィルスであった。T-ウィルスの危険さを指摘したマーカス博士は共同創始者であるアイザックスに殺されたが、現在ではアリシアもアンブレラの最高責任者である。アリスは生物学的なコピー、そしてレッドクイーンはアリシアの記憶を受け継いだ人工知能であり、若くして老婆となったアリシアの過去と未来がレッドクイーンとアリスであった。アリシアはもちろんミラ・ジョヴォヴィッチが演じているが、さらに今回のレッドクイーンはミラと監督のポール・W・S・アンダーソンの娘であるエヴァ・アンダーソンが演じていて、もちろん単なる親バカ、家族愛からのキャスティングと見ることもできるが、その辺でもアリスとレッドクイーンがアリシアの過去と未来という設定を補完していると思う。
 途中で生き残っている人間たちと合流。お馴染みのクレア(アリ・ラーター!生きてた!)と再会する。ここで日本からローラが出演。元々派手な顔立ちだけど、英語のセリフも違和感なく目立ちすぎず地味すぎず、きちんと印象を残してあっさり退場するのでこの手の出演では良く出来たほうだと思う。
 ハイブに侵入してからは「バイオハザード1」を踏襲した展開に。レーザービームによるサイコロステーキ製造機なんかも再登場。
 全体としてシリーズの中でも面白く、特に前作とは格段に良くなっていたのだけれど、時々変な演出があるのも見どころといえば見どころ。アリスとアイザックスが対峙するときに、目に入った小道具で攻撃する、それに対向する、みたいなのを実際に行う前にシミュレーションするところがある。これは例えば「シャーロック・ホームズ」や「捜査官X」なんかであったような演出なのだけれど、ご丁寧にこれを何度もやる。小道具が3つアレば3つ全部見せる。監督正気か?と思わず叫びそうになったぐらい。
 アイザックス博士は二人いてオリジナルとクローン。共にイアン・グレンが演じていて過去に出てきたアイザックスも(特に3)クローン。クローンのほうが自分がオリジナルと信じてたのに!、みたいな部分はありがちではあるが良いアクセント。
 そしてシリーズきっての木偶の坊ウェスカーは今回も木偶の坊。ゲームの方のウェスカーの出来の悪いコスプレみたいな格好で何度も出てきたウェスカーだが、今回は輪をかけて特に何もせず。もはや人間なのかロボットなのかと言うレベル。レッドクイーンはアンブレラの幹部を攻撃できないようにプログラミングされていて、もうお分かりですね、オチは「ロボコップ」です。アリシアにウェスカーは解雇され、それによってレッドクイーンにやられます。
 
 一応、原題から「THE:FINAL CHAPTER」となっているし、物語的にもこれで本当に終わりっぽい感じ(続けようと思えば続けられる終わり方ではあるが)。あんな乱暴に抗ウィルス剤を撒いただけで、一気に事態が終息するのはご都合主義に思えるし、全人類が5,000人切った状態からの復興は難しそうとかいろいろ思うところはあるけれどとりあえずシリーズを追いかけてきた身には満足できる最後かと。

関連記事

シリーズ前作。

 とりあえず、ポール・W・S・アンダーソンとミラ・ジョヴォヴィッチ夫妻にはご苦労様、と言いたい。監督は次は普通にミラ・ジョヴォヴィッチ主演のラブコメでも撮ってください(この人フィルモグラフィーはほとんどSFやホラー、スペクタクル大作とかだけど、普通にラブコメとかのほうが合ってると思う)。

星屑の義士団 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

遠い昔 はるかかなたの銀河系で…

エピソード4 新たなる希望

時は内乱の嵐が吹き荒れるさなか凶悪な銀河帝国の支配に対し反乱軍の宇宙艦隊は秘密基地から奇襲攻撃を仕掛け、初めての勝利を手にした。
その戦闘の間に、反乱軍のスパイは帝国の究極兵器に関する秘密の設計図を盗み出すことに成功した。それは「デス・スター」と呼ばれ惑星を丸ごと粉砕できる破壊力を兼ね備えた恐るべき武装宇宙要塞だった。
邪悪な帝国の手先どもに追われながらも、レイア姫は自らの宇宙船を駆って、盗みだした設計図を携え故郷の星への道を急いでいた。この設計図こそが、人民を救い再び銀河に自由を取り戻すための鍵となるのだ・・・
(DVD「スターウォーズエピソード4新たなる希望」日本語吹替版オープニングクロールより)

という話です。

 ルーカスフィルムがディズニーに売却されたことで再始動したスター・ウォーズ作品の第2弾。前回はナンバリング作品ということで新たなる三部作の1作目「エピソード7」であったが、本作はスピンオフとしてこれまで概要だけは知らされていたが、具体的に映像化されなかった物語を映画化。「エピソード4」の直前、その最初の部分のオープニングクロールを映像化したものである。「エピソード3」から約20年後、銀河帝国が一番勢力を伸ばしていた頃だが、その崩壊のきっかけとなった出来事、SWの世界は我々の世界で言うような年号や西暦のようなものがなく、EP4のヤヴィンの戦いを1年としてその何年後とか何年前とかいう感じで時代を計算すると思ったけれど(これはあくまで我々が判断する材料で多分ちゃんとした紀元があるのだとはおもうけれど)、本当にEP4直前の物語である。「エピソード3.5」と言うよりは「エピソード3.9」と言う感じ。
 僕は以前も「フォーズの覚醒」の感想で書いた通り、それほど熱狂的なスターウォーズファンというわけではない。もちろん普通に好きでひと通りチェックしているし、旧三部作は間に合わなかったけれど、新三部作は全部劇場で鑑賞しているし、なんならソフトも持っているのだけれど、でもやはり他のSFシリーズ、例えば「スタートレック」であるとか「猿の惑星」とかと比べるとランキングではそれほど上位には来ない感じ。ただシリーズそのものに強い思い入れはない一方で映画史の中でSWが果たした役割は大きいと思っていて、それゆえにこのシリーズだけはジョージ・ルーカスがまさに神のように君臨してファンの言葉など無視して自分の好きなように作って欲しかったと思ったりする。その意味ではこのディズニー製作の新展開はルーカスが直接関わってないこともあってそういう意味でのモチベーションは下がるのだが、それでも直接「EP4」につながる作品なので「フォースの覚醒」よりは古いSWファンにもアピールする部分は多そうだ。
 一応スターウォーズではあるけれど、スピンオフなのでスカイウォーカーの血脈に関する要素は殆ど無い。従来のキャラクターが一部登場する程度。フォースも広く信じられているけれど、ジェダイ騎士団はすでに無く、フォースが使われることはない。逆にジェダイがいないから、一般人の間でこの時期ジェダイとフォースがどういう風に思われていたかなんかを類推することはできるのだけれど。
 監督は「モンスターズ」「GODZILLA」のギャレス・エドワーズ。元々歴史ものの再現映像みたいな者を撮っていた人なので割りと本筋に近いかもしれない。ただ、本作は再撮影が多くあって、その部分はエドワーズ演出ではないなんてことも聞くけれど。
 シリーズとしての作品の立ち位置はやはり日本のSFシリーズ「機動戦士ガンダム」と比べると分かりやすいと思う。富野由悠季監督の手がけた宇宙世紀を舞台にしたガンダムのうち最初の「機動戦士ガンダム」の劇場3部作を「プリクエル3部作(EP1〜3)」、「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダムZZ」「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」を「オリジナル3部作(EP4〜6)」に比定して*1同じ宇宙世紀の物語ではあるものの富野監督以外が手がけTVシリーズでなくOVAとして発表された「0080ポケット中の戦争」「0083STARDUST MEMORY」「第08MS小隊」なんかが今回の「ローグ・ワン」はじめとする「スター・ウォーズ・ストーリー」にあたると思う。これらのOVA作品では作品の重要なテーマであるニュータイプが語られないが本作でもジェダイやフォースについて具体的に描かれないのも似ているところだろう。

 で、これらのOVAシリーズって当時最新の技術を駆使して過去の出来事を描くということで物語・劇中の歴史的な部分はともかく、演出やデザインで妙な違和感を感じてしまったものだった。モビルスーツなどのディティールの細かさやアクションシーンのテンポの良さ、カット割りといった部分が「過去の話なのに未来(Zガンダムとか)よりも進んでる!」と言う違和感。まあこの辺はアニメだからどうとでもなるのだが、本作にも似た違和感はある。これがEP4の30年〜20年前ぐらいを描いたEP1〜3の時は時代がさかのぼりすぎていてあんまりそんな違和感は無かったんだけど、今回はEP4直前の物語ということでちょっとその辺も気になったりした。
 EP4は他の作品に比べるとまだ1970年代後半のアメリカの風俗が銀河にも影響を与えているというか、反乱同盟軍の服装とか髪型とかちょっと70年代味あふれるのだけれど、その辺は上手く再現している。反乱同盟軍の幹部会議とかかなり70年代風。またデス・スター内部の操作盤とかも当時の物っぽさを再現。一方で設計図のデータが収まってるスカリフのシタデルなんかは今風と言う感じだったけれど。
 後はやはりアクションシーン。これはどうしようもないことだけど、アクションやそこにおけるカット割りなどはどうしても現代風。多分劇場で「ローグ・ワン」を観て、続けて自宅で「新たなる希望」を見たという人も多いと思うんだけど、そうするとやっぱりアクション部分ではかなり時代の差を感じてしまう。特にスカリフの攻防戦はかなり大掛かりな地上戦、空中戦、宇宙戦があるので、どこかゆっくりしたEP4とはちょっと趣が異なる。SW世界の歴史ではヤヴィンの戦いの方が重要度は高いけど、戦闘の規模は今回のスカリフの戦いの方が上に見えてしまうのはどうなんだろうとちょっと思ってしまった。
 で、前半にあるジェダでのシーンでは中東を思わせる町並みにAT-STが現れたりするのでまたぞろ「メタルギアソリッド」の4の冒頭を思い出したりしてしまった。最近はいろんな映画から「MGS」の影響を感じることは少なくないのだけれど、まさかスターウォーズでそれを感じるとは思わなかったなあ。

 物語は銀河帝国が成立してしばらくしたあたりから始まり、15年を経て本編となる。この過去のシーンがあって、そこから一気にメインとなる時代に飛ぶ、という手法もこれまでのSWでは無かったはず。これもスピンオフだからこそ可能な方法。ここでは帝国の技術者だったゲイレン・アーソとその娘であるジン・アーソの過去が描かれる。ジンが主役となるので「フォースの覚醒」に続き女性主人公。デス・スター自体は時系列的には「EP2」でその計画が出てきて、今回やっと完成するわけで約20年がかり。で「新たなる希望」で反乱軍に破壊され、「ジェダイの帰還」では第二デス・スターが急ピッチで建造されて完成間近となっていた。第ニデス・スターの建造スピードからすると最初のデス・スターに何年かかってるんだよ!とか思ったものだが、今回の物語を加味すると実際に建造が始まってからもなかなかうまく行かず、ゲイレンを技術責任者として迎えてやっと具体的に動き出したものの、あえてゲイレンは時間をかけたのかもしれない。
 ジンを育てたソウ・ゲレラは過激派の反乱軍という感じで現在は反乱同盟軍からも距離を取っている存在。彼と連絡を取るべくジンを仲介者として物語は動き出す。
 反乱軍の仲間は主に裏仕事(銀河帝国の圧政に対抗し銀河に自由を取り戻すためとはいえ、綺麗事だけでは革命もできず表に出せない仕事を手がけている)を中心に活動していたキャシアン。銀河帝国パイロットだったがゲイレンに共感し、情報を携え脱走してきたボーディー。帝国の戦闘ドロイドだったが再プログラミングされたことで反乱軍の頼もしい味方となったK-2SO、ジェダで仲間となった盲目の武道の達人チアルートと傭兵スタイルのベイズのコンビが中心となる。
 この中でK-2SOは「アイアン・ジャイアント」を思わせるちょっと宮崎駿天空の城ラピュタ」のロボットも連想させ魅力的。演じているのはアラン・テュディックで、多分声だけでなくモーション・キャプチャーか何かで動きも演じている。
 一番世間的に話題なのはチアルートを演じたドニー・イェンだろう。座頭市を思わせる盲目の武術の達人。アメリカ映画での出番というと「ブレイド2」のスノーマン(ヴァンパイアの特殊部隊の凄腕)を思わせる。彼はジェダという惑星のジェダイ寺院の守護者、という役割だったが帝国の成立とジェダイ迫害によって追われたという感じなのだろう。深くフォースを信じているがおそらく彼自身にジェダイの才能はなく、ジェダイ騎士ではなく一民間人の立場でジェダイ寺院のボディーガードをやっていた、という感じだろうか。ジェダイ騎士になるには結構血統主義で小さい頃から修行しなければならないのだが、そのいろんな条件に当てはまらなかったのだろう(盲目であることが先天的か後天的なものかは分からないがそれ自体は特に関係ないと思う)。ただジェダイでなくとも凄腕はいるわけで(ボバ・フェットやグリーバス将軍とかね)、ジェダイでないものがたどり着ける体術の最高峰がドニーさんという感じだろうか。相棒のベイズはチアルートとは対照的な重銃火器を装備していて、おそらく共和国時代はどこかの傭兵部隊に所属していたと思われる。装備もちょっとマンダロア兵を思わせる。最初このチアン・ウェン演じるベイズはあんまり喋らないのかなあ、と思ったのだけれどこれが結構喋って存在感を示す。
 個人的に今回一番好きなキャラクターは元帝国のパイロットだったボーディー。ギョロッとした目も魅力的。
 演じた役者は亡くなっているが、いわゆるアーカイブ出演というのかCGを使って出ているのがグランド・モフ・ターキンのピーター・カッシング。同様にレイア姫も若いキャリー・フィッシャーの姿で出てくる。キャリー・フィッシャーの方はこの撮影時はまだ存命で(彼女のエピソード8の出演部分は全て撮影済みだそう)、本人も了承済みなんだろうけど、ピーター・カッシングの方は完全にCGで再現した形での出演なので、素直に喜んでいいのかちょっと微妙なところ。顔を映さずに声だけ、とかそういう感じにはできなかったのかなあ、とも思う。

 今回はまず日本語吹替版で観て、二回目を字幕版で観賞。吹替は概ねよく出来ていて、めまぐるしい戦闘アクションも多いので吹替版もオススメです。ちょっとの出番であるC-3POなんかもちゃんと岩崎ひろし。ただ、ダースベイダーの声が大平透ではないのであるな。大平透さんは2016年の4月に亡くなっていて、その少し前からTVアニメである「反乱者たち」では楠大典が担当していて、本作でもそのままベイダー卿の声をあてている。楠氏のこれまで担当した声は「TIGER & BUNNY」のロックバイソンだったり巨漢系のキャラクターが多いのだが、どうにもベイダー卿の今回の声には合っていなかった気がする。「反乱者たち」を観ていればまた別なのかもしれないが、映画のほうだとどうしても大平透さんの声の印象が強くて…。もちろん大平透さんはすでに亡くなっているので、声をサンプリングしろとか加工しろとかそういうことではなく、もっと話し方を寄せるか、銀河万丈玄田哲章みたいな重く低いけど魅力的な声をあてるって方法もあったんじゃないかなあ、とか思ったりした。

 原語ではオリジナルの声であるジェームズ・アール・ジョーンズが今回も担当していて、僕は字幕版の方はもうこのジェームズ・アール・ジョーンズの声を聴きに劇場へ足を運んだようなもんなんだけれど、安心してください。これがもう見事なまでに大平透の声。「大平透が蘇った!英語喋ってるけど!」と思ったぐらいだった。いやあ元々そっくりだったけど、ちょっと嬉しくなってしまった。
 ちなみに「スターウォーズ エピソード5 帝国の逆襲」と「コナン・ザ・グレート(1982年版)」は両方共ジェームズ・アール・ジョーンズがクライマックスで主人公(ルーク・スカイウォーカーシュワルツェネッガー演じるコナン)に対して「私がお前の父だ。親子で世界を支配しよう」みたいなことをいう映画なのだけれど、そこで呆然としてしまうのがルーク。躊躇なく首をはねるのがシュワ。

 身体の方のダース・ベイダーを演じているのはさすがにデヴィッド・プラウズでもセバスチャン・ショウでもヘイデン・クリステンセンでもなく別の人(複数?)が演じていて、「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」でスターロードのウォークマンを取り上げた人らしいです。で、最後のライトセーバーで敵の銃撃を弾き飛ばす仕草もオリジナルに比べると、ちょっとアナキンよりというか素早い感じになってましたね。この直後にレイア姫のオルデラン船につながるのでちょっと違和感感じる人はいるかも。
 後はストームトルーパーがあのちょっとユーモラスなヘルメットをかぶってたくさん出てくるのだけれど、こいつらは概ねマヌケでEP4のマヌケで憎めない感じがつながるので良かったです。その分デス・トルーパーという黒尽くめの兵士が強くなっているけれど。エピソード3のクローン・トルーパーから20年でストームトルーパーは大分質が落ちたんだなあ。

 後は反乱同盟軍の提督としてモン・カラマリの人物が出てきます。ラダス提督。黒い体表の好戦的な頑固親父、と言う感じ。のちに英雄となる我らがアクバー提督と比べると大分付き合いが悪そう。SWのキャラクターではアクバー提督が大好き!というのは結構言っているんだけど、今回別のモン・カラマリのキャラクターが出てきたことで、単にアクバー提督のクリーチャーとしての造形が好きなだけでは無かった、ということが再発見出来ましたね。アクバー提督はモン・カラマリだから魅力的なわけではないのです。モン・カラマリであることも含め、アクバー提督だから魅力的なんですよ!ラダス提督もそれなりに魅力的だけど。一番の違いはきぐるみのアクバー提督に対してラダス提督はCGで表現されてることだろうなあ。

音楽はマイケル・ジアッキーノ。ジョン・ウィリアムズの各種テーマ曲も使用されているけれど、そうじゃない部分、ウィリアムズ手がけていない曲の変にウィリアムズっぽいところが、逆に偽物ぽく聞こえてしまって妙な居心地の悪さを感じてしまった。
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー  オリジナル・サウンドトラック

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー オリジナル・サウンドトラック

 物語の構造上、ここで活躍するキャラクターたちがその後の物語に出てこないのはわかっていて、つまり最後は全員死んで終わる、というのは予想ができたのだけれど、ドニーさんが出てることもあってか、「孫文の義士団」を思わせる造り。ジェダイでも正規の反乱軍でもない、歴史的には名も埋もれたローグ・ワンの面々を「星屑の義士団」と呼びたい。

 今後は2017年暮れに「エピソード8」が、そして次の年に若いころのハン・ソロを描くスピン・オフ(スター・ウォーズ・ストーリー)が、そして2019年に「エピソード9」で一応正伝は完結、といったところだろうか。まだまだ銀河の歴史は続く…

*1:F91」や「Vガンダム」が「EP7〜」と言う感じか

新年のご挨拶


無事あけました。おめでとうございます。
今年は映画観賞自体は減るかもしれませんが、その分感想はきっちり書けるように努力します。
今後も死なない程度に緩く更新していきますので、今年もよろしくお願いします。
以下、今年は酉年なのでそれっぽいものを。



ラストは南斗聖拳のこの人!(相手はケンさん)


じゃ!良い正月を!

今年は手堅い!小覇王のベストテン(&ワースト)映画2016!


今年のマスコットデッドプールさん。
 やあ!オレちゃんだよ!もう大晦日だけど、急いで今年のベストを発表するってさ。今年は全然観れてない&感想書けてないけど、一応やるらしいよ。前回までの観た映画のリストで大体予想も着く気がするけど、慣習だからね。テレビも紅白ぐらいしか観るのないしね。デップー行きまーす!
 
 というわけで大晦日。急いでベストでございます。紅白観ながら書くよ。デップーも言っているように今年は映画観賞数が少ないし、感想もあんまり書いてないんですが、それでもおお!これは!って作品には出会えたりしたのでありました。まずはベストテン。

  1. シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
  2. ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
  3. デッドプール
  4. ズートピア
  5. 死霊館 エンフィールド事件
  6. パディントン
  7. ONE PIECE FILM GOLD
  8. トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
  9. オデッセイ
  10. スーサイド・スクワッド

 今年は割りと大作の、家族で揃って見れるような作品が普通に面白かったですね。なんだかんだハリウッド大作はお金だけでなくて色んな意味できちっとしているのは多いのですよ。ベストテンに漏れた作品などで客観的に「凄え!」てのはあるんですけど、自分が好きかどうか、ってことに重きをおくとこんな感じのランキングに。逆に欠点だらけだけど「これは好き!」なんてのもあるわけで。
 では各作品ごとに簡単に振り返りましょう。

1位 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

 前作「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」に引き続き一位。なんでしょう、この完成度は。今回はヒーロー同士に対決ということでもあり、キャップ単独主演タイトルでありながら、これまでの登場人物の多くが再登場。その多くは超人なため、脚本的にもアクションの見せ場的にもよほど上手くやらなければ混乱してしまうはずなのに、そんな混乱はほとんど見受けられません。物語やキャラクターもこれまでの積み重ねが魅力として伝わってくるのでシリーズとしても一本の作品としてもかなりの完成度を誇ると思います。
 MCUの作品としては今年はこれ一本だけですが、2017年は「ドクター・ストレンジ」「スパイダーマン ホーム・カミング」「ガーディンアズ・オブ・ギャラクシーVol.2」と公開されます。いずれも新ヒーローだったり関わりの薄いGotGだったりちょっと異色な作品が続くことに。まだまだマーベルの快進撃は続くのです。

2位 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」オリジナル・サウンドトラック

「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」オリジナル・サウンドトラック

 ハリー・ポッターシリーズの新作。でも同じ世界であるけれど、時はさかのぼって1926年のニューヨーク。ハリー・ポッターより大人向けの、でも陽性のキャラクターたちが新しい魔法を魅せてくれました。こちらも「シビル・ウォー」に劣らない完成度。続編も3部作とかでなくもっと続く形で考えられているそうなので、今後も我々にマジックを見せてくれることでしょう。

3位 デッドプール

 20世紀FOXのマーベルシリーズ、X-MENの世界に属するアンチ・ヒーロー、デッドプールの紆余曲折を経ての大活躍。程よく肩の力の抜けた作品で、ライアン・レイノルズもやっと自分にあったアメコミヒーローと出会った。今後は2が予定されていて、でもX-MEN本体の方はもう完結してしまっているのだが、あんまりそのへん気にせず気楽にやって欲しい。「やる気のあるものはされ!」という「タモリ倶楽部」感覚で身守りたい。

4位 ズートピア

 もふもふ社会派映画。見かけに騙されるな!more than meets the eye!ある意味今年公開されたどの作品よりも一番社会派かもしれない。最近はピクサーよりもディズニー本体の作品のほうが出来が良くなっている気がしますね。

5位 死霊館 エンフィールド事件

 一応実際にイギリスで起きた事件を基にした「死霊館」シリーズ第2弾。長く淡々とした展開の割に飽きることはなく、エモーショナルな部分も多いのでホラー映画と言うよりは家族の絆を描いた映画といえるかも(もちろんホラー映画としても優れていると思います)。まあ、実際に起きたこととはいろいろ乖離した部分もあるのだけれど。

6位 パディントン

 そしてイギリスを舞台にした映画がもう一本。登場する人たちの多くがしゃべる熊ってところ自体にはそんなに価値をおかず普通にパディントンの人格(熊格)で判断してるところが良いですね。逆に敵役がその「しゃべる熊」ってところしか見ていないといえるわけで。お母さん役サリー・ホーキンス(「GODZILLA」で渡辺謙の助手だった人)がキュートでした。

7位 ONE PIECE FILM GOLD

 今年は邦画が大豊作と言われていて、そのうちの何本かは僕も観ているのだけど、その中では大ヒットだったのはこちら。多分数字的にはヒットしているけれど、評判としては「シン・ゴジラ」や「君の名は。」に隠れてしまったんじゃないだろうかって印象を受けるのだけど、こちらも完成度は高く、原作へのフィードバック要素はいまのところそんなにないんだけど逆に一本の映画として最高でした。

8位 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

ジョニーは戦場へ行った [DVD]

ジョニーは戦場へ行った [DVD]

 第二次世界大戦後の冷戦が始まる時代に赤狩りによって業界を追われた男、ダルトン・トランボを描いた作品。悲惨な時代を描いているはずなのに偉そうにしてる奴が大嫌いというトランボのキャラクターで映画そのものは暗くならないのも良い。メディアが権力におもねることの怖さを教えてくれます。ちなみに劇中で出てきたユル・ブリンナーのような容姿のクリスチャン・ベルケル演じるオットー・プレミンジャーは俳優としても活躍していて、1966年のTVシリーズ「バットマン」ではミスター・フリーズでありました。

9位 オデッセイ

 火星の鉄腕ダッシュ。深刻な事態だけど最後まで明るく、決定的に深刻にならない作風は良かったですね。マット・デイモンは天才役者(天才役を演じるkとが多い)の面目躍如!

スーサイド・スクワッド

 DCの悪役大集合。まあ欠点だらけですが、嫌いになれません。「マン・オブ・スティール」の時は監督のザック・スナイダーのヒーロー観、命の描写の雑さ、など受け入れがたい部分は多かったんですが、もう今となってはDCの混沌さ、闇鍋さがこのユニバースの特徴なんだな、と思って受け入れることにしました。MCUの完成度に対抗するには闇鍋しかない!というのはある意味正しい!
 DCEUは「ワンダーウーマン」と「ジャステス・リーグ」が2017年公開。「ワンダーウーマン」は第一次世界大戦が部隊の前日譚、「ジャステス・リーグ」は「BVS」を受けての物語です。

 惜しくもベストテンに漏れた作品は「スター・トレックBEYOND」「X-MENアポカリプス」「バットマンVSスーパーマン」「シン・ゴジラ」「この世界の片隅に」「キング・オブ・エジプト」などでしょうか。アメコミ映画の2作は世界観を共有する作品がランクインしたのであえて除きました。「X-MENアポカリプス」は評価が分かれてて大作としては今年一番ダメな映画という評価もあるみたいですが、この辺「X-MEN FC」からのファンと2000年の最初の「X-MEN」から見てきたファンとでちょっと意識が違ったりするのかもしれませんね。
 「バットマンVSスーパーマン」が「スーサイド・スクワッド」に負けた理由はレックス・ルーサーの秘書だったマーシー・グレイブスを劇中で殺しちゃったから!ザック許すまじ!
 「シン・ゴジラ」と「この世界の片隅に」は凄かったんですが、もっと言葉に出来ない部分で好きか嫌いか、と言われるとあんまり好きじゃないかも…ってなっちゃう作品でした。客観的に素晴らしいとは思うんですけどね。
 
 続いて、ベストアクションヒロイン!と思ったんだけど、今年はもうワンダーウーマン(ガル・ガドット)、ハーレイクイン(マーゴット・ロビー)、ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ネガソニ子)とかアメコミヒロインだけでいっぱいいっぱいなので終わり!

 最後はワースト。例年最も他の人と自分の違いを痛感する部分かもしれませんね。世間で評判の作品がランクインしてしまう。

  1. 貞子VS伽椰子
  2. シークレット・オブ・モンスター
  3. ブレア・ウィッチ

「貞子VS伽椰子」は個人的に全く貞子&伽椰子という日本を代表するホラーキャラクターへのリスペクトが感じられませんでした。驚く部分はあったけれど怖いと思うところも無く。また登場する霊能力者のおばさんがこの上なく不快で(途中で悲惨な死に方をするとしても)許せない感じ。一方で玉城ティナ山本美月の両ヒロイン、途中から登場する安藤政信演じる常磐経蔵と盲目の少女珠緒というコンビは良かったので、最初からこのコンビを主役として早めに出せばよかったのに、とは思います。
「シークレット・オブ・モンスター」も扇情的なだけで結末と途中の物語がつながらない。特に意味のない余計なエロがある、と正直つまらなかった。
「ブレア・ウィッチ」はいまあの題材でPOVやる必要があるの?って思いましたね。何回か書いてますがあの世界観(ブレアの魔女伝説)を使った作品なら観たいけど。劇映画にしたほうが良かったのってのはあの物語(森に行って迷う話)を劇映画にしろってわけではなくてもっと初期構想の部分での話ですよ。

 さて、来年はまたアメコミ映画が多く公開されますね。とりあえず年明けは「ドクター・ストレンジ」。あとは「荒野の七人」のリメイク「マグニフィセント・セブン」が楽しみです!
 それではみなさんまた来年も宜しくお願いします。良いお年を!

宇宙と魔法とゾンビ 劇場で観たけど感想書いてなかった映画その3


 さて、サボリの代償として2016年に観たけど感想書いてない映画のまとめも3回め、これで一応終わりです。9月〜12月分。その1その2もよろしく。たまにずっと劇場行かない時もあるんだけど、基本的には週一ペースで観ているわけで、本来ならブログも週一ペースで更新しないとダメなんですけどね。なんとなく10日過ぎたら、そろそろ更新しようかなあ、でもまだいいかなあ、という感じで過ごしてしまったので改めたいところではあります。
 今回も劇場公開された作品のリストはこちらから。

12月

ブレア・ウィッチ
ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリー
バイオハザード:ザ・ファイナル

 それでは各作品ごとに簡単に。感想書いているの作品はリンクも参照していただけると嬉しいです(もうこの辺になると最近の更新記事ばっかなんですが)。

グランド・イリュージョン 見破られたトリック

グランド・イリュージョン」の続編。マジックはより荒唐無稽に。フォー・ホースメンの紅一点が入れ替わって、メラニー・ロランも登場せず。代わりにトリックじゃない本物の魔法を見せてやるぜ!とダニエル・ラドクリフが参戦。ただ物語的に無理があると思う部分もあるけれど、モーガン・フリーマンマーク・ラファロの関係とか、きっちり決着をつけていて、これが前作の時点で構想されていたのか、新たに作ったのかちょっと気になるところ。大好きな役者がたくさん出ていて、絵的にも物語的にもとにかく派手なので、細部の変なところはあんまり気になんない作品だったりします。

キング・オブ・エジプト

 絢爛豪華なエジプト神話絵巻。今年の漢字一文字は「金」だそうで、その意味では「ONE PIECE FILM GOLD」と本作が今年を代表する映画と言っても過言ではないのだ!「いんだよ細けえ事は‼︎」の精神にもっとも忠実な映画。

スーサイド・スクワッド

 DCコミックスの悪役=ヴィランを集めてチームを組ませた異色のアメコミヒーロー映画。これにかぎらずDCエクステンディドユニバース(DCEU)はMCUと比べて混沌としているのだけど、割りとDCの作品としては雰囲気はマッチしていると思ったり。アマンダ・ウォラー(個人的に思うバットマンと並ぶDCユニバース最強の常人)が実は主役としてみると割りとしっくりくる。

高慢と偏見とゾンビ

 ジェーン・オースティンの名作「高慢と偏見」にゾンビ要素を付け足した問題作。原作は「リンカーン 秘密の書」の原作/脚本であるセス・グレアム=グリーンによるパロディ小説。オースティンの原典を9割方引用しつつゾンビものにしてしまった。原作自体が原典のテキストそのものを題材とした面白さみたいな部分が多く、わりと一発ネタではあるので、その映画化はオーソドックスなゾンビものになってしまった。原作は原典を読んでいてなんぼの面白さだが、映画の方に関しては原典を読んでなくても(あるいは原典の映画化作などを観ていなくても)割りと普通に楽しめるかと(つまらないと思うにしろ原典に罪はなし)。
 冒頭サム・ライリーが登場。例によって顔色は血色悪く、この人は「マレフィセント」のカラスだったり、「ビザンチウム」のヴァンパイアだったりでしか認識していないので、「ああ今回はゾンビなのかな?」とか思ったらゾンビハンターなのでありました。
 ちなみに原典のジェーン・オースティンの「高慢と偏見」は200年前の小説で、かつ特に激しいアクションとかあるわけでもない作品ですが凄え面白いので、なんならこれを機会に原典を読む人が増えると嬉しい。

高慢と偏見とゾンビ [Blu-ray]

高慢と偏見とゾンビ [Blu-ray]

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

スター・トレック BEYOND

 祝!スタートレック50週年!ケルヴィンタイムライン*1シリーズ第3弾。敵役が相変わらず個性に乏しかったり、難点はあるもののアクションも満載の良作。オリジナルのスポック(レナード・ニモイ)が(劇中でも)お亡くなりになった他、チェコフ役のアントン・イェルチンが交通事故で亡くなったため、これが遺作となった。次はチェコフ自体は役者変更かなあ。他にもヒカル・スールーが同性愛者として男性のパートナーがいる描写がされ、オリジナルのジョージ・タケイ(彼自身はカミングアウトしたゲイ)が苦言を呈したりいろいろと話題に。作品的には本作がTVシリーズ「宇宙大作戦」の第3シーズンぐらいにあたり、この後から本当の意味で新たな冒険が始まるのでぜひシリーズは続けて欲しい。

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

 トム・クルーズアウトローが帰ってきた!全て現地調達の凄腕事件屋ジャック・リーチャーをトム・クルーズが再び演じた。監督は前作のクリストファー・マッカリーから「ラスト・サムライ」のエドワード・ズウィックに交替。そのせいか否か、前作にあった奇妙なユーモア(そこが好き嫌いが分かれるところではあった)は減少したが、シリアスの中にも常にユーモアな部分は健在で前作が楽しめた人ならこっちも十分に楽しめるでしょう。

アウトロー [Blu-ray]

アウトロー [Blu-ray]

これは前作。

この世界の片隅に

 内容他色々と場外乱闘も多かった作品。作品自体は良いのにね。

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」オリジナル・サウンドトラック

「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」オリジナル・サウンドトラック

 年末近くになって出てきた今年のベスト級作品。ハリー・ポッターシリーズのファンはもちろんそうでない人も楽しめる。とにかく楽しい映画。続編も楽しみ。

シークレット・オブ・モンスター

 ある独裁者の子供の頃、という触れ込みで宣伝されてたので、てっきり実話ものかと思ったら、これジャン・ポール・サルトルの小説「一指導者の幼年時代(原題のTHE CHILDHOOD OF A LEADERはこの英語訳)」を基にした(原作というわけではないようだ)作品。第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約の締結のためフランスのある村に移住したアメリカ政府高官一家。その一人息子を描いた作品。とにかく少年の幼年期と独裁者となる結末がつながらず、ただどうやら母の不貞によって生まれたのが主人公の少年だったらしい、と暗示させるにとどまる(独裁者となったあとの少年と、一家と友人づきあいする青年をロバート・パティンソンが演じていて、どうやら父親がアメリカ政府高官ではないらしい)。唐突に挟まれるエロもあれだし、よく分からない少年の暴力性がどうやったら後の独裁者とつながるのかも意味不明(少年は女の子と見間違うほどの美少年だが、特にカリスマ性を見せるでもなし)。音楽は強烈で個性的だったが、浮いていた。
 いくら美少年が出ててもそれだけで絵は持たないよ。

水いらず (新潮文庫)

水いらず (新潮文庫)

ブレア・ウィッチ

ブレア・ウィッチ・プロジェクト <HDニューマスター版> Blu-ray

ブレア・ウィッチ・プロジェクト Blu-ray

こちらは前作。

 約15年ぶり(劇中では20年経過)の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」正統続編(「ブレア・ウィッチ2」の扱いはどうなるのだろうか?)。ただ「もしかしたら実話かも?」って思ってた当時と違ってもう誰も実話だなんて思ってもいないはずなので、普通に劇映画として製作したほうが良かったと思います。世界観自体は興味深いんだけどなあ。

ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリー

 待望の「スターウォーズ」新作。一番最初の「エピソード4あらたなる希望」に至る物語。立ち位置としては宇宙世紀の「機動戦士ガンダム」における富野由悠季監督作品じゃない外伝のOVAポケットの中の戦争」「0083スターダスト・メモリー」「第08小隊」なんかに相当して、同様の違和感もあります(アクションのテンポとかね)。
 ちなみにレイア姫(本作にもちょっと出てくる)役のキャリー・フィッシャーが今朝方(12/28)亡くなったことが報道されました。60歳の若さです。いろいろ波瀾万丈な人ではありましたが、「フォースの覚醒」では元気な様子だったのでびっくり。聞くところによると「SWエピソード8」の(レイア姫に関する)撮影はすでに終了しているそうで、遺作となる「エピソード8」は来年公開予定です。R.I.P Carrie Fisher

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー  オリジナル・サウンドトラック

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー オリジナル・サウンドトラック

バイオハザード:ザ・ファイナル

 カプコンのゲーム「バイハザード」の映画化最新作で最終作。個人的には前作あたりで「もういいかな…」と思ってたんですが、一応これまで前作を劇場で鑑賞してきた身としては「これで最後」と言われればそれは観に行かないわけにはいかないのです!
 というわけで今年の汚れは今年のうちに、と公開初日にたいして期待もせず観に行ったのですが、これが面白かった。まあ相変わらずアクションがよく分からなくなる部分がある上に、あるシーンでは「監督(ポール・W・S・アンダーソン)正気か?!」と思うようなところもあったけれど。

 というわけで一応これで劇場鑑賞作全部終了(のはず)!全部で50本。実際は今年は複数回観た作品も多いので劇場での鑑賞数は70本ぐらいでしょうか。うち感想書いたのは25本なので約半分(もっと少ないかと思った)。「バイオハザード:ザ・ファイナル」と「ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリー」に関してはこことは別個に感想上げる予定です(年明け一発目ぐらいに)。
 今回3回に分けて簡易感想書いて、それでもうなんとなく分かった人もいるだろうけど、一応大晦日ぐらいに今年の「ベスト&ワースト」を発表してそれで今年は終わりですかね。

トムは帰ってくる!

*1:USSケルヴィンがタイムトラベルしてきたネロ率いるナラーダ号と遭遇したことによって生まれた新たな時間軸。一応ネロやスポックは過去のシリーズの時間軸の住人なのでつながってはいる

兎と亀 劇場で観たけど感想書いてなかった映画2016!その2


 さて、前回に引き続き劇場で観たけど感想書いてなかった映画リストですよ。今回は2016年5月から8月まで。本格的にサボリがひどかった時期です。
 前回同様リスト作成には

を参照しました。

2016年5月

HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス

6月

デッドプール
マネー・モンスター
エクス・マキナ
10クローバーフィールド・レーン
帰ってきたヒトラー
貞子vs伽椰子

7月

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅
ウォー・クラフト
インディペンデンス・デイ:リサージェンス
死霊館 エンフィールド事件
トランボ ハリウッドに最も嫌われた漢
ONE PIECE FILM GOLD
シン・ゴジラ
ターザン:REBORN

8月

劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間
劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!
ジャングル・ブック
ペット(同時上映 ミニオンズ:アルバイト大作戦)
X-MEN: アポカリプス
ゴーストバスターズ
ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>

 では例によって簡単な感想を。感想書いてた作品はリンクを張ります。

HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス

 鈴木亮平の熱演が光る「変態仮面」の続編。狙ったのか偶然か日本ではアメリカの変態ヒーロー「デッドプール」とほぼ同時期、ちょっとだけ抜け駆けするような公開日に。大学生進学したという展開なので原作漫画からはほぼ別展開に。前回はサム・ライミ版「スパイダーマン」のパロディ満載だったが、当然のことながら今回は「スパイダーマン2」のパロディに。柳楽優弥が敵怪人として登場し、NYまで進出するよ。予告編では前作の肝でもあった安田顕が年老いた姿で出てきたので、前作のライバルがやつれた姿で再登場し見方になる展開か?と思ったのだが、これが変態仙人であり、かつ主人公の祖父だった、という登場の仕方。それはそれで面白かったけれど、どうせなら偽変態仮面その人であって欲しかったなあ。この映画に関しては、もう主演俳優である鈴木亮平の、

こちらの記事を読んでいただければ他は必要ないとすら思いますです。個人的には佐藤二朗がいなかったのは残念。

マネー・モンスター

 ジョディ・フォスター監督、ジョージ・クルーニー主演のサスペンス。ニューヨークを舞台に株で大損をした若者が無責任に煽ったTVの経済番組の司会に復讐するべくTV局をジャックする!サスペンスなんだけど、どこかユーモアも。日本では最低時給1000円に!という労働運動があったりするんだけど、劇中で「時給14ドルで辛い」みたいなセリフがあって、1ドル=100円だとしても1400円。NYが物価高だとしても、日本の最低賃金はそれよりかなり低いんだよなあ、と映画とは別な部分で暗い気分になったり。
 株の暴落がわざとじゃないか、という謎解きもありながら、最後はさすがNY!とでもいうべき市民が一体となる高揚感もあります。ジャックした青年の奥さんの態度がパンクで素敵。

エクス・マキナ

 遠い昔 はるかかなたの銀河系で…の話ではなく、現代を舞台にダークサイドに落ちかけのポー・ダメロン(オスカー・アイザック)とまだ青二才だった頃のハックス将軍(ドーナル・グリーソン)がリアルなドロイドを巡って色々やる話。鮫皮のオロシで肌を撫でられたようなザラッとする部分もあるけれど、最終的には満足する終わり方。舞台が限定されていて、登場人物がほぼ3人だけなので「10クローバーフィールド・レーン」なんかを連想した。キャストが共通してるんでSWの登場人物になぞらえちゃったけど、実はクレジット見るまで本人たちだと分からなかったよ。

10クローバーフィールド・レーン

こちらの記事で「変態仮面2」の感想は絶対書きます、と書いてあることは忘れてください。
 一応「クローバーフィールド/HAKAISHA」の続編、ということになっているがほぼ別物。こちらも舞台限定の少数の登場人物のディスカッションドラマとでもいうべき感じなので意外と舞台化なんかすると面白いかも。

帰ってきたヒトラー

 ヒトラー本人が何かの拍子で1945年のベルリンから現代へタイムスリップ。売れないTVマンはヒトラーのタレント性に目をつけ彼を使って番組を作る。誰も本物だとは思わないが、その傍若無人な物言いから徐々に人気を集めていく…。今年はイギリスがEU離脱を決め、暴言ばかりの大富豪トランプがアメリカ大統領選挙勝利、日本でも相変わらず自民党の一強状態が続く、という暗鬱な世界情勢だけれどそんな雰囲気にある意味ぴったりな作品。日本と違って戦前のファシズムに厳しいドイツだが、国民の本音では「外国人は出て行け」といったものも覗かせる。もちろん本作は劇映画だが、ところどころにドキュメンタリーも混ざっていて、ヒトラーに扮した主人公が突撃取材すると本音が漏れる人たちも(ところどころモザイクがかかっている人は撮影許可をださなかった一般人だと思われる)。もちろん暴言を垂れるヒトラーにきちんと文句をいう人もいるが。最後は視聴率に踊らされて過激な発言をする者たちを起用するTV局の末路か。笑えるけど笑えない。

貞子vs伽椰子

 個人的今年のワースト作品。ただ安藤政信演じる霊能力者常磐経蔵と盲目の少女珠緒のコンビは良かったのでこの二人を主人公にした作品ならまた観たい。

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅

 ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」の続編。監督は変わるがキャストやスタッフに変更はないので大きな印象は一緒。ただ、もうミア・ワシコウスカが最初から強いヒーローなので、バートン好みのペイルリー・ルッキング(青白い女性)とは無縁な存在に。ファミリー映画として可もなく不可もなくといったところ。

ウォー・クラフト

 ゲーム原作のファンタジー映画。明らかに続編前提の終わり方だったが、どうなっているのかなあ。

インディペンデンス・デイ:リサージェンス

 1996年の大ヒット作「インディペンデンス・デイ」の続編。前回は冷戦が終了してアメリカ一強になった余裕が作品から感じられたが、その後911が起き、現在の混迷した世界情勢はどのように反映されているか…というとあんまり反映はされてなかったかな。というか、舞台になっている2016年はエイリアンのテクノロジーをたっぷり接収して20年経った世界なので完全にパラレルワールドなんである。なのでもはや現実との接点はなく、丁寧に作られた正統続編ではある(キャストもほぼ続投)が、前作ほど世に訴えるものは無かった。ラストちかくインディペンデンス星人が巨大化して明るい太陽の下自動車を追っかけまわすシーンは1998年の「GODZILLA」のリベンジぽくもありました。個人的には前作では脇役だった「スタートレックTNG」のデータことブレント・スパイナーが主役級に活躍したので良かったです。

死霊館 エンフィールド事件

死霊館」続編。実際のところ現実に起きた事件とは別物ぽいらしいのですが、かなりの良作だと思う。今年のベスト級作品。

トランボ ハリウッドに最も嫌われた漢

 赤狩りでハリウッドを追われた反骨の人、脚本家ダルトン・トランボを描いた物語。名前を隠して「ローマの休日」の脚本を手がけ、また別名義でアカデミー賞も獲った凄い人。第一次世界大戦の負傷兵を描いた「ジョニーは戦場へ行った」の原作者で自身が監督として映画化した人でもある(監督としては唯一)。ブライアン・クラストン演じるトランボがとにかく陽性の人なので、深刻な話のはずだが楽しんで見れる。この作品は赤狩りで干された時期をクローズアップしているので「ジョニーは戦場へ行った」関係の話は出てこないのが残念。まああれを出すとテーマがブレるので仕方はない。

Trumbo トランボ (Blu-ray + Digital HD)

Trumbo トランボ (Blu-ray + Digital HD)

ONE PIECE FILM GOLD

 今年の邦画、特に夏の映画としては「シン・ゴジラ」と「君の名は。」に隠れてしまって評判にも余りならなかった印象だけど、その両方に勝るとも劣らない(「君の名は。」見てないので評価できないけど)、傑作。日本のアニメといえば今年はこれ!

シン・ゴジラ

異形から生まれたさらなる異形 シン・ゴジラ
 今年の超話題作。僕も凄いと思ったけれど、好きか嫌いかでいったらちょっと嫌いな方へ傾くかも。頭で出来がいいと分かるのと、それが好きか嫌いかはまた別だからね。ちなみに一時は英語題が「GODZILLA:Resurgence」だったらしいので(今は普通にそのまま「SHIN GODZILLA」のようだ)「インディペンデンス・デイ:リサージェンス」との「リサージェンス対決」でもありました。

劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間

 夏のライダー映画。むっちりスケベなシスコン、マコト兄ちゃんの父親エロ男爵こと沢村一樹でありました。血は争えない。御成の奇矯変わらず。

劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!

 夏の戦隊映画(仮面ライダーと同時上映)。過去の戦隊の要素も散りばめつつ、後はいろんなジューマンが登場するのも楽しい。ゲストの平成ノブシコブシ吉村も好演。てか最近のよしもと芸人をゲストで出す風潮は何なんでしょう。別に下手じゃないからいいんだけどさ。

ジャングル・ブック

 ディズニーのアニメ映画「ジャングル・ブック」の実写リメイク作品。「主役の少年以外全部CG」を売りにしていて、せっかくの大自然映画なのにそんなこと言っちゃっていいのかな?と思ったけれど(逆にマイナス要素になってしまうのでは?と)、そんないかにもなCGぽさはゼロな人工大自然でありました。

ペット(同時上映 ミニオンズ:アルバイト大作戦)

ミニオンズ」のイルミネーション・エンターテインメントの3DCGアニメーション作品。原題は「The Secret Life of Pets」でもしかしたらベン・スティラーの2013年の監督・主演作品「LIFE!(原題はThe Secret Life of Walter Mitty)」から取っているのかも。前作の「ミニオンズ」がはちゃめちゃだったんで予告編観た時はこんなにストーリーがしっかりしてる作品だとは思わなかった。もちろん人類支配を企むウサギとか途中で出てくるソーセージ幻覚とかぶっ飛んでる描写は健在。
 僕は日本語吹き替え版で観たんですが、アレですか?イルミネーション・エンターテインメントはもうバナナマンが声をあてること前提にキャラクターを創造してませんか?と思うぐらい「ミニオンズ」の犯罪親子同様今回ももう見た目からバナナマン。しかも今回は主役!
 「ミニオンズ」の短編はいつものとおりです。バナナー。

X-MEN: アポカリプス

 ついにダークサイドに落ちたポー・ダメロンとついにつるっぱげたプロフェッサーXとずっとふらふらしてるマグニートーの完結編。なんだか今年の大作の中ではダメだった作品という評価が定着しているようなのだけど、個人的には面白かったデス。ただもう一作続編作ってくれないかなあ、という思いもある。シリーズ新作はヒュー・ジャックマンウルヴァリン最終作「ローガン」」で、こっちはすでに高い評価になってますね。

ゴーストバスターズ

80年代から進化したものしないもの ゴーストバスターズ

 人気シリーズのリメイク。主要キャラを女性に全とっかえしたりして話題になった。僕はそのへんの設定は現代向けへの上手いアップデートだと思ったけれど、肝心のゴーストストーリーとしては旧作に劣るかな、という印象。クリス・ヘムズワースの愛すべき脳筋は見どころ。

ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>

 邦題に「ニンジャ」の称号を取り返したTMNT第2弾。敵キャラに異次元からの侵略者クランゲを迎えて、より騒々しく楽しく。次も楽しみ。次は是非邦題に「十代」を取り戻せ!
 
 というわけで5月〜8月分でした。5月こそ新作映画は「変態仮面」しか観ていないけれど(劇場に行ってなかったわけではなく「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」を何回も観てた)、他は週一以上の割合で見てはいますね。夏だけに大作が多いかな。
 次はラスト。9月〜12月。

兎と亀。なんか動物多かったね。

魔法vsニューヨーク ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

 世はまさに前日譚ブーム!今月はスターウォーズの「エピソード4あらたなる希望」の前日譚「ローグ・ワン」が公開されたし、そもそもスターウォーズのEP1〜EP3は旧三部作の前日譚だった!(昔、エピソード3公開前に友人にエピソード4〜6の話をしたらネタバレすんな!って怒られた経験があるがそんな理不尽な!って思いましたよ)
 今回は「ハリー・ポッターと死の秘宝」で大団円を迎えた「ハリー・ポッター」の前日譚。最初に予告編を見た時はあんまりおもしろそうじゃなかったんだけど、徐々に内容が明らかになっていろんな魔法生物が出てくるに至って凄い面白そうな作品と思うまでになって、そして実際面白かったのでありました。「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」を観賞。

物語

 1926年、ニューヨークにやって来たニュート・スキャマンダー。彼は多数の魔法生物を所持していて、渡米の目的はある魔法生物を元いたアリゾナの地に返すこと。しかし銀行前で魔法生物の一匹ニフラーが逃げ出してしまったことを発端にノー・マジ(マグル)であるジェイコブ・コワルスキーと知り合い、さらにアメリカの魔法省マクーザのディナに捕まってしまう。一方そのころニューヨークでは謎の生物に拠る事件が相次いでおり、スキャマンダーもその原因ではないかと疑われるのだが…

 一口に「前日譚」と言ってもおおまかに2種類あって、明確にその後の物語とつながっていて、そのつながりや後日談だけでは明らかにされなかった事実を発見して楽しむタイプの作品と、一応前日譚ではあるのだが、様々な要素から必ずしも先に発表された(時間軸的に)後の物語とつながらない可能性がある作品とに分けられるだろう。例えば「ホビット」は「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚だけどきちんと話がつながり歴史としてひとつながりになっている(もっとも映画化だと「ホビット」が前日譚と言う形になっているけれど原作は普通に「指輪物語」が「ホビット」の続編なんだけれど)。
 一方で「X-MEN ファースト・ジェネレーション」なんかは当初は2000年の「X-MEN」の前日譚だったのだけれど「フューチャー&パスト」でタイムトラベルの要素が加わることで結果として別時間軸の物語となった。
 ここ最近僕が熱中していたテレビドラマ「GOTHAM/ゴッサム」はバットマン登場以前、ブルース・ウェインが両親を眼の前で殺されたところから始まる犯罪ドラマ(なんだけど、シーズン2はかなり伝奇的要素が強くなっている)。様々な有名キャラクターの「〇〇になる前」の姿が出てくるが、これ時代設定としてはあくまで現代なので、「バットマンが登場する以前」と言うより、「後々バットマンが登場するかもしれない(しないかもしれない)世界」の物語として楽しんだほうが良いだろう。
 さて、今回の「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」は「ハリー・ポッター」シリーズの前日譚。とは言っても「ハリー・ポッター」本編に直接関わってくる前日譚と言うよりあの世界の「ハリポタ」以前に起きた別の話、という感じ。とはいえ見知った名前も出てきます。
 監督は「死の秘宝」はじめ、シリーズ後半を手がけたデイビッド・イェーツ。重厚さはそのままに今回は明るさ(ハリポタも最初の2作は明るかったが、残念ながらその頃は作品の質はよくなかった)もあって、また基本的に1作目だけあってしがらみがあまりないので素直に楽しめる一作となっている。
 後は風俗ですね。魔法使いの風俗とマグルの風俗がそんなに乖離していない。「ハリー・ポッター」シリーズでは基本的に物語の冒頭にちょっとだけ出てくるマグルの世界だが、普通に現代なので古風な魔法使いの世界とちぐはぐというか(ある意味では別世界であると言う切り替えができたが)違和感のある部分はあったのだが、本作では時代的なものか、この2つの世界がほぼ変わらぬ風俗で描かれている。本作は人間の世界がメイン舞台であり、そのへんでも当時のニューヨークに入り込んだような気持ちになれて良かった。
 
 元になっているのは主役であるニュート・スキャマンダーがのちに書き上げたという書籍「幻の動物とその生息地(英語原題が「FANTASTIC BEASTS AND WHERE TO FIND THEM」で映画の原題と同じ)」(日本でも限定版として発売されたらしい)。ただこの書籍はタイトルから推測できるように生物図鑑のようなものなので物語とはいえない。ハリー・ポッターと同じ世界の物語という意味では原作物だが、本作自体はオリジナル脚本。しかし、そのオリジナル脚本を手がけているのは原作者のJ・K・ローリングその人で多分映画の脚本は初(しかも単独脚本)。舞台用の「ハリー・ポッターと呪いの子」も絶賛されているようだし多分映像化など視覚で見せる時のやり方がよくわかっているのだろう。この作品は2時間ちょっとのいわゆる一般的な劇映画の上映時間に上手く物語を納めるお手本みたいな映画だと思っていて、いくつかの物語が終盤に進むに連れて大きな一つの物語に収束していき、観客を上手く別の視線に誘導しておいて驚かせたり伏線の張り方も上手い。とても丁寧に作られていると思う。
 本作の舞台は1926年のニューヨーク。第一次世界大戦後の好景気で様々な高層ビルが建ちはじめ、現在の我々の知るニューヨークの基が出来上がっていった頃。まだ人類の科学技術も自然に勝ちすぎず負けすぎず、程よく調和が取れていた頃ともいえるか。ニューヨークの高層ビルといえば1933年の「キング・コング」のクライマックスの舞台となったエンパイアステートビルだが、このビルは着工がこの「ファンタスティック・ビースト〜」の物語の数年後となる1929年3月。1931年には竣工したという急ピッチで建設が進められたが、その頃には世界大恐慌(1929年10月〜)が始まっていて、せっかくのビルには空き室が多かったという。本作でも建築中の高層ビルなどが出てくるが、そういう意味ではニューヨークが世界恐慌で荒ぶ直前の一番良い時期を舞台にしたともいえるだろう。新セーラム救世軍による孤児たちへの食事の提供であるとか、あるいは魔法使いとマグルの間に緊張が漂っているなどの描写は来るべき世界大恐慌(そしてその後に待っている第二次世界大戦)への暗示ともいえるかもしれない。

 本作の主人公はニュート・スキャマンダー。魔法生物のスペシャリストで兄は英雄。ホグワーツでは問題児でありながらダンブルドアのとりなしで退学は免れた男。演じているのは「レ・ミゼラブル」のマリウスことエディ・レッドメインで、「レ・ミゼラブル」の時はなんでこいつが女からモテモテなのだ?と思ってしまうほどふにゃふにゃだったのだが、本作ではそのふにゃふにゃ具合は健在ながら要所要所で見せる決断力と人懐っこい表情で愛すべきキャラクターとなっている。ただ、僕が「レ・ミゼラブル」の時に思った、みなもと太郎の描くところの吉田松陰or沖田総司顔って印象は変わらず。なんなら他のキャラクターも程よくデフォルメが効いているので是非みなもと太郎にコミカライズして欲しいなあ。

完全版レ・ミゼラブル (fukkan.com)

完全版レ・ミゼラブル (fukkan.com)

 とにかく主人公が魅力的に描かれているので見ててイラッとしないです。主人公の行動に客が自信を持ってついていける。

 シリーズを通して初のマグル(ノー・マジ)のメインキャラクターとなるのがジェイコブ・コワルスキーで彼は第一次世界大戦で欧州で戦い、復員後缶詰工場で働いているパン屋を夢見る男。彼とスキャマンダーの出会いが物語の発端となる。このコワルスキーさんが外見は太った中年のオジサンと言った具合で決して見栄えのする容姿ではないんだけれど、とても魅力的。ちなみに銀行でコワルスキーが戦争に行っていたことを話す際にスコップで掘るジェスチャーをするんだけれど、これは欧州戦線で塹壕掘りに従事した、ということで、もうこの掘る仕草だけで第一次世界大戦だと分かるぐらい第一次世界大戦塹壕というイメージが付いているんだなあ。
 ハリー・ポッターの世界では魔法使いじゃない人をマグルと呼ぶのだけれど、これはいわばイギリス英語でアメリカでは「ノー・マジ」ということが判明。マグルと言う言葉はシリーズで馴染みがあるが、この「ノー・マジ」という言葉はおそらく初出。単純に「NO MAGIC」ということだと思うけれど、「NO」の言葉が入っている分語感が強烈で、また耳慣れない分いわゆる差別用語感が強い。このマグルの存在が決定的に人種的なものなのか映画だけではよくわからないがこの時代、魔法使いと、マグルの結婚が禁止されていたりと後の時代に比べ人種間(とあえて使う)の緊張が高まっている描写がある。そんな中でコワルスキーさんの存在はその両者を繋ぐ役割を果たしていたりする。演じたダン・フォグラーの魅力と相まってこの緊張の時代にスキャマンダーがジェイコブと会えたのは幸運だったといえるだろう。ハリーの叔母夫婦とか従兄弟とか嫌なやつでしかなかったもんな。

 マクーザアメリカ合衆国魔法議会)に務めるヒロインがキャサリン・ウォーターストン演じるティナ・ゴールドスタイン。真面目だけどちょっとおっちょこちょいな当時はまだ珍しいキャリアウーマンといったところで時代設定的に「スーパーマン」のロイス・レーンの影響を受けた、でもロイスの先駆けともいえるような存在。妹のクイニーに比べると地味系であるが笑顔は素晴らしい。ジェイコブとクイニーと違ってスキャマンダーとの関係は友人止まりといったところだが、共に人付き合いが苦手っぽい男女でそのぎこちなさが見ていて微笑ましい。
 そのほか情報屋をやってるギャングみたいな妖精をロン・パールマンが演じている。身体は小さめで声とモーション・キャプターでの出演なのかな、とおもうけど間違いなくロン・パールマン。彼の会話がいちいちハードボイルドものの定形みたいな感じで楽しい。このへんの描写は禁酒法下のアメリカが魔法使いの世界にも影響を及ぼしているんでしょうかね。
 マクーザの議長ピッカリーは黒人?の女性だったり魔法使いの世界では当時すでに人種差別や男女差別はある程度解消されているらしいが一方で、ノー・マジに対する態度は差別的であったり、のちの純血主義につながる芽も見受けられる。

 いわゆる敵役となるのは、コリン・ファレルが演じるパーシバル・グレイブス。マクーザの闇祓いの長官で、暗躍する。最も終盤までその真意は不明であるのだが、彼の過激な主張はある意味で共感も覚えてしまう。グレイブスの意外な正体は後述。
 魔法使いを敵視する新セーラム救世軍のメアリー・ルー。彼女は具体的に魔法使いのことを知っているのか、ただ単に「魔女」として憎悪しているのかよく分からないが*1、いわゆる厳格なピューリタン的なイメージで造形されていて、また養子を虐待していることで本作の中では一番の悪役という印象を受ける。その養子であるクリーデンスは常にオドオドしているが、実はグレイブスの密偵?として魔法使いになることに憧れている。彼が大きな物語のキーパーソンとなるのだが、演じるのはエズラ・ミラー。過去に観た彼の出演作での姿とあまりに違ったので最初は似てる別人かな?と思ったほど。彼自身は「ハリー・ポッター」シリーズによって救われた、というぐらいのファンだそうで、クリーデンスにエズラ・ミラー自身を重ねて彼の救済の物語という見方もできそうだ。

 後はスキャマンダーが所有する魔法生物たちですね。いずれも魅力的で大きさも容姿は様々なれど愛らしい存在。その中でも僕のイチオシはニフラー。カモノハシに似た生物で金貨などピカピカ光るものに目がない。勝手に逃げ出して物語の発端を開くが決して憎めない。「ハリー・ポッター」シリーズも最初の頃はCGによる生物が全然可愛らしくなくて(当時のドビーの人気が理解できず)駄目だったが、本作に出てくるCG生物は皆魅力的です。
 本作の要となるのはニューヨークの町で暴れるオブスキュラスという魔法生物を巡る物語で、このオブスキュラスは魔法使いの子供の身体に出現。その子供はほとんどが10歳までに死ぬ、というもの。このオブスキュラスとその大元となっているだろう子供を巡る物語が主軸となる。このオブスキュラスは基本的には黒い触手っぽいものの周りを白い膜で包んでいる、という感じの半透明な不定形生物なのだが、これがH・P・ラブクラフトの「ダンウィッチの怪」を思わせた。「ダンウィッチの怪」に出てくるウィルバー・ウェイトリーは人間の母と邪神ヨグ=ソトホースの間に生まれた子供で常人をはるかに凌ぐ速度で成長するが姿はまだ人間である。彼の双子の弟ははるかに父に似ていて、全身触手だらけで兄の死後大暴れするのだが、なんとなくオブスキュラスの暴れっぷりにそのウィルバーの弟を想像してしまったのだ。あるいは途中で登場するグラップホーンという魔法生物がちょっと顎から触手が生えているようなクトゥルフを思わせる容姿だったからかもしれない。「ダンウィッチの怪」が書かれたのは1928年だが、このニューヨークで起きた事件が何らかの形でラブクラフトに影響を与えて…とか想像すると楽しい。

ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)

ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)


 映画の冒頭から名前が登場し、劇中でも度々出てくる悪の魔法使いがグリンデルバルド。ヴォルデモート卿以前に最も悪かったとされる魔法使いですでに「ハリー・ポッター」の方にも晩年の彼が登場していたそうなのだが、そっちはちょっと覚えていない。ヨーロッパで悪行三昧のあとアメリカに逃亡したとみられていて、本作の最後で実はグレイブスに化けていたということが明らかになる。そのグリンデルバルドを演じているのはなんとジョニー・デップ!このコリン・ファレルと思ったらジョニー・デップだった!というのは「Dr.パルナサスの鏡」で主演のヒース・レジャーが撮影途中で急逝したため、コリン・ファレルジョニー・デップ、そしてジュード・ロウの3人が鏡の中ヒースを演じた、というのを想起させる。多分グレイブスはグレイブスで別にちゃんと存在していて、グリンデルバルドは彼を殺したか何かして彼の経歴を乗っ取ったのだと思うので、もし生きていればコリン・ファレルの再出演もあるかも。ジョニー・デップのグリンデルバルドがシリーズを通しての敵役となるのだと思うけれど、こうなるとジュード・ロウの出演も待たれますね。 本作ではそのグリンデルバルドはじめ幾つか見知った名前も出てくる。代表はダンブルドアでこの時点ではまだホグワーツの学園長ではなく一教師の模様。今後若いころの姿が見れるかも。スキャマンダーさんが学生時代にいろいろあったらしい女性がリタ・レストレンジ。劇中では写真だけ出ていて(ゾーイ・クラヴィッツ)どうやらスキャマンダーの想い人らしいが今は別の道を歩んでいるらしいことが示唆。クイニーからは「彼女は”奪う人”よ」と言われていた。レストレンジという姓はシリーズではシリウス・ブラックの従姉ベラトリックス・レストレンジがあって、彼女はブラック家からレストレンジ家に嫁いでいるのでリタとは直接血縁関係はなさそうだが、ベラトリックスの夫はじめレストレンジ家の面々は死喰い人としてヴォルデモート卿に付き従っていたので、どうやらリタ・レストレンジも悪の魔法使いの道に進んだらしいことが推測できる。彼女も続編で出てくるか?

 本作は何作か予定されているシリーズの一作目ということなのだが、特にあからさまな続編への含みもなく物語自体はきちんと完結している。長い時間をかけて構築した「ハリー・ポッター」の世界が先にあり、観客の殆どはぞの世界観を了解していることを前提に、でも新しいシリーズの1作目ということで物語は明るめに、ってことで本作は「ホビット 思いがけない冒険」と「ロード・オブ・ザ・リング」の関係に近い。今後物語が暗くなっていく可能性もあるが、それでも全体的に「ハリー・ポッター」ほどは暗くならないのではないのかと思う。なんなら「ハリー・ポッター」の原作読んでたらスキャマンダーさんはじめ一部の登場人物が今後どうなっていくのかすでに分かるそうですし。
 とにかく丁寧に作られた良質なファンタジー映画。キャラと物語と世界観の3つの魅力が一体となって多分誰が見ても楽しめる作品だとは思うし、「ハリー・ポッター」シリーズはいまいちだったという人でも本作は更に間口も広く受け入れられるのではないでしょうか。続編も楽しみ。超おすすめ!

関連記事

 ハリー・ポッターシリーズ有終の美を飾った最終作。

ハリー・ポッターと呪いの子 第一部、第二部 特別リハーサル版 (ハリー・ポッターシリーズ)

ハリー・ポッターと呪いの子 第一部、第二部 特別リハーサル版 (ハリー・ポッターシリーズ)

幻の動物とその生息地(静山社ペガサス文庫) (ハリー・ポッター)

幻の動物とその生息地(静山社ペガサス文庫) (ハリー・ポッター)

*1:僕は原作を読んでいないのでこのハリー・ポッターの世界については「よくわからない」とか「らしい」とかよく出てきます。がもちろんそんなことは知らなくても映画は楽しめます