The Spirit in the Bottle

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最初の英雄、最後に登場! キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

 日本公開直前に「アベンジャーズ」の予告編が公開されて一部で異様に盛り上がってしまい非常にテンションが高い状態で観に行ったのが「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」。これでヒーロー大集合の「アベンジャーズ」を前にして一応全てのクロスオーバーするスーパーヒーローが一通り出揃ったことになります。そのトリを務めるのがその名もずばりキャプテン・アメリカ

 副題にあるように彼がマーベル(シネマティック・ユニバース)最初のヒーローであり、全ての源となる。勿論、コミックス全体では彼以前にもスーパーヒーローは存在するが彼の場合生まれた年代がそのオリジンに深く関わっている。
 例えば真の元祖スーパーヒーローであるスーパーマンのデビューは1938年。バットマンは1939年である。しかし、彼らはあくまで現在に生きる人であり1940年代を引きずらない。むしろ設定的に彼らより先に活躍していたヒーローというものも存在する。ところがキャプテン・アメリカ(以下キャップ)の場合その誕生に第二次世界大戦ナチスといったものが深く関わっておりそこの部分で譲歩するわけにはいかない。キャップがデビューしたのは1941年3月。既にヨーロッパでは戦争が激しく行われてはいたがアメリカはいまだWW2未参戦であり中立国であったのだがその表紙はキャップがヒトラーを殴りつけるという強烈なものだった(アメリカのWW2正式参戦は日本が真珠湾を攻撃した1941年12月)。

劇中でも使われた「キャプテン・アメリカ」第一号
 WW2が出自に深く関わっているため、現役で現在も活躍しているヒーローとしては設定的に一番古いくらいになる(ほかにサブマリナーなども同時期にデビューし現在も活躍するヒーロー)。
 さて、今回の映画版だが、この前に「キャプテン・アメリカ 卍帝国の野望」というタイトルで1991年に映画化されている。おそらく1989年の「バットマン」によるアメコミ映画化ブームで誕生した作品だ。雰囲気的には70〜80年代半ばぐらいの作風で1991年の作品と思わなければそれなりに面白い作品(さらに古いキャプテン・アメリカの映画(TVドラマ?)化作品(戦時中に既に連続活劇化はしてるらしい)もあるのだがヘルメット等が酷すぎてなかったことにされている)。この作品は二部構成で戦時中と戦後。キャップは戦争終結間近にナチスの新兵器からアメリカを守るべく兵器と共に海に沈み氷漬けの仮死状態になってしまう。そして戦後しばらくして発見され復活する。そして現代でもヒーローとして活躍する。これがキャップの物語の基本ライン。これは原作も今回の映画も変わらない。ただ、原作では1964年*1に発見されるためおよそ20年のブランク。このぐらいならまだ戦争中の記憶も鮮明だろうし、実際日本でも小野田さんとか横井さんとかがまだ戦争中と思っていた時期だが「帝国の野望」では91年なのでおよそ45年。そして今回の「ザ・ファースト・アベンジャー」ではおよそ70年と起点が変わらないのでどんどん凍り漬けの期間が長くなってしまっている
 
 さて、映画は過去に「アイアンマン」「マイティー・ソー」などがあり未来に「アベンジャーズ」が控えているのでどうしてもそこら辺も意識した展開になっており、まったく単体としてみると微妙、という人もいるかもしれない。実際冒頭の北欧神話がらみのアイテムにまつわる部分とかは「ソー」を事前に見ているのといないのでは感じ方が大分違うだろう。
 監督がジョー・ジョンストンスター・ウォーズの特撮畑出身だけあってスター・ウォーズっぽいなあと思うシーンも幾つかあった。例えばキャップが捕虜を救出に行きレッド・スカルと対峙するシーンは「帝国の逆襲」のクライマックスを彷彿とさせたし森の中をキャップとヒドラ党員がバイクでチェイスするシーンは「ジェダイの帰還」のスピーダーバイクのシーンにそっくりだった(SW見直してるわけではないので印象です)。特に物凄く派手な部分とかはあまりない(爆発とかあるにはあるが淡白な印象)が凄く丁寧に作っている感じではある。
  

アメリカ陸軍 SSR(戦略科学予備軍)

 愛国心と正義感だけは強いが肉体的にはからっきしな虚弱青年スティーブ・ロジャースがその正義感を買われて陸軍の「超人兵士計画」の被験者となり肉体強化され戦うアメリカのシンボル「キャプテン・アメリカ」となった!
 超人血清は肉体の強化以外に精神的にもとの人物の価値観を強大化されるので邪悪な人物が使うとより邪悪になってしまう。だから肉体的な資質より精神的な資質によりスティーブが選ばれた。トラブル(血清の開発者アーキンス博士が殺されたことで血清量産出来なくなりワン&オンリーの存在になってしまったこと。元々軍は超人兵士による部隊編成を考えていたので一個人では役に立たないと思われてしまった)により「アメリカ大尉」としてしばらくはマスコットとして活動していたが前線の軍慰問興行に出かけた際に兵士達からは笑いものに過ぎないことを実感してしまう。彼の親友が所属する107部隊が捕虜になったと知った彼は勝手にヒドラの基地に潜入し捕虜を救出し本当のヒーローとなる。
 勿論大まかなキャップの設定は事前に知っていたのだが劇中でくどいぐらいにスティーブの精神の高潔性が語られるのを見ていて思い出したのは永井豪デビルマン」の不動明との共通点。不動明もおとなしい少年だったその正義感を買われてデビルマンとなった。「健全な精神は健全な肉体に宿る」*2とは言うがむしろ健全な精神があればこそその精神を体現するために力が与えられるのであろう。決して逆ではない。
 
 演じるのは「ファンタスティック・フォー」2作でヒューマントーチことジョニー・ストームを演じたクリス・エヴァンズ。一人一ヒーローだとあれほど・・というのは何度も繰り返したので省略。とはいえ、キャラクター的にはまったく別物なのでこんがらがることはない。特に実験前のひ弱な青年を丁寧に描写してるので自然に共感が持てる人物に仕上がっている。ちなみにマッチョな方がエヴァンズの自前の身体でひ弱な方がCGだそうです。全然分からんね。クリスチャン・ベールも今後は苦労しなくて済みそうだ(多分今後も苦労し続けると思うけど)。
 

 超人兵士計画を担当する陸軍の女性軍人。巨乳。目つきの鋭い美人。巨乳。射撃の腕前もピカイチの巨乳。シールドの捜査官で現代におけるキャップの恋人でもあるシャロン・カーターというキャラも混ざっているそうです(設定的にはシャロンはペギーの姪)。制服の上からでもよく分かる巨乳。
 

 原作では少年でキャップのサイドキックだったバッキーだが(冷静に考えると少年を戦場に連れて行くというのも凄い設定だ)今回の映画版ではスティーブの親友に設定変更。むしろいじめの対象になりやすいスティーブを守っていたりした。107分隊に所属して捕虜になっていたところをキャップに救出され、のち対ヒドラ遊撃隊に加わる。設定こそ変わっているがそこはサイドキックらしく悲惨な運命が待っていた・・・!
 

 トニー・スタークのお父さん。見た目はトニーそっくりである。1942年時点で車を浮かせる技術に成功している凄い人。しかしヒドラの技術はその上を行っていた!軍事会社として「超人兵士計画」に参画。そのほかキャップの装備も彼が調達した。

 SSR長官。頑固一徹軍人。どうやら彼やスタークなどSSRが母体となって後のシールドが誕生したようである。
  

  • ダム・ダム・デュガン(ニール・マクドノー)

 個性的な髭が特徴の107分隊の捕虜で対ヒドラ遊撃隊の一員。原作ではシールドの一員で現在も活躍中のはず。ゴジラと戦ったこともあるよ。この映画にしても「大脱走」にしても連合国の捕虜達は生き延びて脱走なり暴動なりで後方撹乱することが役目、と言っていた(「大脱走」では看守側もそれは認めていた)。一方で当時の日本は「生きて虜囚の辱めを受けず」なわけで命に関する考え方の違いに唖然としたよ。負けるはずだ。
 

 ドイツから亡命してきた科学者。超人血清の生みの親。超人血清がレッド・スカルに悪用されたことを後悔して次の被験者としてスティーブを選んだ。実験直後にヒドラのスパイに殺されてしまう。彼の超人血清は復元できず計画は頓挫した。後に生まれ変わってニューヨークでゲイの衣装係になったり社交ダンスを踊ったりする。
 

  • スタン・リー

 我らがマーベルマスター。キャップが捕虜救出の功績による勲章授与式をボイコットするシーンで登場。さすがに「アイアンマン」や「ハルク」で登場するスタン・リーとは別人だと思われる。だって70年前からおじいちゃんなはずないからね!
 「キャプテン・アメリカ」は彼の原作ではないが(原作はジョー・サイモン)1964年に現在の設定で復活させたのは彼の功績である。エクセルシオ
 

  • ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)

 シールド長官。一応彼もWW2の英雄で当時からキャップとは知り合いのはずだが映画ではその設定はなくなっているのか?107分隊の黒人兵士がフューリーの若い頃かと思っていたのだが。
   

ヒドラ

 元々はナチスの科学部門だったがレッド・スカルにより彼の個人的な配下となった。挨拶は両手を挙げて「ハイル・ヒドラ!」戦後も暗躍してるはず。

 元々はナチスの科学者だったが超人血清を打って更なる残虐性を発揮。ノルウェーの寺院を勝手に攻めてコズミック・キューブを奪い取った。不完全な超人血清のせいでまるで赤い骸骨のような素顔になってしまっている。
 キャップの宿敵。ナチスを出自とする悪役はたくさんいるが、彼の場合ヒトラーやナチズムを信奉しているわけではなくナチスそのものをおのれの野望のために利用していた(逆にヒトラーやナチズムを信奉しているジーモという悪役も存在する)。最後はコズミック・キューブに取り込まれたかのような最後を迎えたが果たして本当に死んでしまったのか・・・
 すっかりコミックの悪役が板についてきたヒューゴ・ウィーヴィングが好演。
 

 一見カリガリ博士のような天才科学者。キューピーがそのまま大人になったような個性的なルックス。生まれ変わってメイン州のスーパーで主任になった。
 

 イケメンスパイ。ハイルヒドラ
 

他の作品との接点。

  • 冒頭のノルウェーの寺院から見つかるコズミック・キューブはアスガルド製のものと思われる。また、「マイティー・ソー」ラストではシールド管理下のキューブにロキが興味を示していた。
  • 超人兵士製造計画はその後も受け継がれ超人血清を再現したものはアボミネーション/エミル・ブロンスキーが使用している。またブルース・バナー博士によるガンマ線実験も元は超人兵士製造計画の一環。

 

キャプテン・アメリカ:ニューディール (MARVEL)

キャプテン・アメリカ:ニューディール (MARVEL)

キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー (ShoPro Books)

キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー (ShoPro Books)

コミックスが色々出てるけど戦時中を舞台にした初期のものがないのが残念(ウィンター・ソルジャーは少しある)。 

僕の考えた日本版「キャプテン・アメリカ

 岡山出身の虚弱青年、都井睦雄が徴兵検査に落ちるもののその愛国心を買われ、日本軍の極秘計画「超人兵士製造計画」の被験者となり、通称「日の丸大将」となって中国大陸で大虐殺を繰り広げる。

 パロディとしてはありだと思う。

Captain America will return in The Avengers.


 恒例のクレジット後のおまけ。キャップは70年後の現代に復活。さすがに様変わりしたNYの様子に仰天するのだった。「アベンジャーズ」ではリーダー的存在なのだろうか。原作以上に一癖ありそうな連中をまとめきれるか。予告編ではキャップとソーが戦うシーンは確認できる。とりあえずヴィランとしてロキが登場するのは確実。それだけとは思えないので他にも登場するのではないかな。キャップの新コスチュームが微妙にダサい感じがするのが少し不安です。

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 ちょっと急いで書いたので漠然としてる感じの感想です。もし二回目観る機会があればもう一度書くかも。

*1:実を言うと戦後も赤狩りヒーローとして存在していたのだが後付設定で戦時中のキャップとは別人とされた

*2:これ、間違いで実際は「健全な精神は健全な肉体に宿れかし」で「宿ればいいな(つまり現状はそうなってない)」ということを示したもの