The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

人類の進化は2択 デイブレイカー

 恒例の「映画の日」だからとりあえず何かを観よう!というわけで、劇場についてから観るのを決めたのが、イーサン・ホーク主演の吸血鬼映画「デイブレイカー」。

物語

 2019年、人類のほとんどは吸血鬼にとなっていた。人間は5%以下になり深刻な血液不足が懸念されていた。血に飢えた吸血鬼はやがてサブサイダーと呼ばれる凶暴な怪物に変化してしまうのだ。
 製薬会社に務める研究者エドは血液不足を解消するべく人工の代替血液の開発に従事しているが開発は進まない。彼は吸血鬼が人間の血を吸うことに罪悪感を覚え、血を吸うのを控えていた。代替血液が完成すれば人間狩りをする必要はなく共存が出来ると信じている。
 ある時、不意の交通事故で人間と遭遇したエドは彼らを見逃す。そして人間の一人オードリーからとある人物を紹介される。彼の名はコーマック。彼はかつて吸血鬼でありながらとある事故で現在は人間に戻っていたのだ。エドはその事故の再現を協力する。
 一方血液を求める吸血鬼市民は暴動を起こし、急増したサブサイダーが社会問題になっていた。エドの弟で軍人(というか製薬会社のPMC)のフランキーは兄と吸血鬼である自分の狭間で苦しむが・・・

 
 個人的に吸血鬼映画というのは大好きだ。ドラキュラ映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」以来、ホラー映画としての一面、あるいはその悲劇性を描いた耽美なドラマとしてこのジャンルは作り続けられている。さらに近年は吸血鬼を従来のオカルト的なものとして描くものと、科学的な味付けをしてSF的な説明をするものとに別れる。勿論これらは明確に分かれるわけでない。それぞれが混ざり合っている。とはいえ「ホラー×ドラマ」を縦軸とし、「オカルト×SF」を横軸とした場合、この映画は「ドラマ、SF」方面の映画といえるだろう。ただ、冒頭で吸血鬼は鏡に映らないという伝統的な描写があるが今回のSF的吸血鬼だとおかしいんじゃないかなあ、と思ったりした。
 僕はこの映画を「イーサン・ホーク主演の吸血鬼映画」としか知らずに見たのでオープニング・クレジットでウィレム・デフォーや、サム・ニールが出てるのを知って嬉しくなってしまった。デフォーといえば「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」のマックス・シュレック。そもそも顔の骨格が人間離れしてるので吸血鬼にはもってこいだ。ほとんどメイクしなくていいんじゃないの、と思ってしまう。「スパイダーマン」のグリーン・ゴブリンとかあんなヘルメットマスクじゃなくてデフォーの顔にぴったり張り付いたマスクで十分だろ、とか思ってしまう。
 そしてサム・ニール。この人は「オーメン最後の闘争」のダミアンとジョン・カーペンタークトゥルフ映画「マウス・オブ・マッドネス」。この辺で脇の布陣は申し分ない。後はウド・キアでも出てれば完璧だった。
 イーサン・ホークは繊細そうな吸血鬼を演じている。僕の中で未だにこの人は「リアリティ・バイツ」の人だなあ。そのほかサム・ニールの娘に「トランスフォーマー:リベンジ」のプリテンダー、イザベル・ルーカス。今回は人類→吸血鬼→サブサイダーと変化してプリテンダー同様最後は散々な容貌に。人類側の指導者の一人オードリー役の人はクローディア・カーヴァンという人で、黒髪の美しい人。そのほか人類に協力する吸血鬼上院議員にキャプテン・タイフォことジェイ・ラガーイアが出ている。
 吸血鬼が地球の支配者になった映画といえばリチャード・マシスンの「吸血鬼(地球最後の男)」とかが思い出されるがこの映画の吸血鬼は不老不死になっても資本主義による階級社会なので社会はどんよりしているし、結局下層階級は吸血鬼になっても欠乏している。資本主義こそ労働者の血を吸い上げる吸血鬼、とはよく言ったものだ。実際劇中で代替血液が完成すれば人間を殺さなくて済む、と考えるエドに対して、社長のブロムリー(ニール)は代替血液は一般人用、本物の人血は富裕層のもの、と考えている。
 モンスターとしては吸血鬼の進化形、サブサイダーの造形がいわゆる「ノスフェラトゥ」タイプ。「死霊伝説」みたいなもの。翼も生じてより人間離れしていく。
 話自体はクリスチャン・ベールの「リベリオン」とよく似ていて、体制側の人間が反体制側に協力する、というもの。
 

ここからネタばれ

 エドはコーマック(デフォー)が人間に戻った状況を再現、自ら実験し人間に戻ることに成功する。そして一度人間に戻った人間は再び吸血鬼に血を吸われても吸血鬼になることはない。それどころかその血を吸った吸血鬼もまた人間に戻る。
主人公の弟フランキーはコーマックの血を吸って人間に戻るが、最後にエドとオードリーを守るため飢えた軍人吸血鬼の生贄となる。無残に食い殺されるがその後、その軍人達は人間に戻る。そして自分の残虐行為に呆然とした後、再びその後ろに控える別の吸血鬼に襲われる、という凄惨なラストを迎える。
 一方で吸血鬼が人間を殺し尽くせばいずれはすべての吸血鬼がサブサイダーになる。吸血鬼にならない新しい人類か、知性もなくす化け物になるか。いずれ人類は2択を迫られる。

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