コントじゃない赤信号

　こんな記事が話題になっているようで、

物語を守るという生き方 - はてなポイント３万を使い切るまで死なない日記

　まあ、後半の「いい話」は置いといて（正直興味ない）、前半の信号機の話が興味深かったので少し。

（１）ルールはルール派。どんなときであっても信号は守るべき。
　

（２）at your own risk派。大丈夫だと思ったら、自分の判断で渡っていい。ただし、それで事故にあっても警察に捕まっても自分の責任だ。それを自覚して信号無視するのであれば、人間の生き方としては許される。
　

（３）信号？なにそれ派。もっとも交通事故率の高い大阪ならではの考え方。赤信号であってもクルマがいなければ渡る。青信号であってもクルマがきてれば渡らない。そもそもクルマも歩行者も信号を守るなんて信じていない己の直感と反射神経のみに頼る考え方。
　

（４）啓蒙主義派。（２）に対する批判として提案された。自己責任で信号無視するのはいいとしても、小さい子とかがそれを真似したらどうすんだ。信号が青になったと勘違いして信号見ないで渡るひととかでてきたら責任をとれるのかという問いかけから生まれた。結論としては、だれもみてなければ（２）の考え方で自己責任で信号無視をしてもいいということになる（強い啓蒙主義）。もうすこし制限を緩くすべきで、自分で判断力のない子供がみてなくて、また、他の歩行者が信号が青になったと勘違いのしないような渡り方をするのであれば自己責任で信号無視をしてもいいという考え方（弱い啓蒙主義）もあった。

　この手の話は一番身近な公共のルール、モラルの話だからか、よく論じられる。道路の規模にもよると思うけど信号無視はそんなにリスクもペナルティもないからだろう。正直、誰だって一度は信号無視ぐらいしたことがあるだろう。
　僕自身は、上記の中では基本は（１）。厳密に言うと「ルールはルール」というより、普段からそんなに急いでないからだ。特に歩いている時の赤信号は「少しの休みを得た、ラッキー！」ぐらいに思っている。まあ、バイクに乗っているときは少し赤信号にいらついてしまったりもするのだが。
　ただ、どうしても急ぐ時とかは、（２）or（４）になる。廻りに誰もいず、車も走ってない時。しかしそこに子供がいる時は絶対に守るべきだと思う。
　
　さて、僕は大学時代、京都に住んでいたのだがそのときの経験を少し。京都（あるいは遊びに行った大阪だったかもしれない）の町を歩いていた時、普通に赤信号で立ち止まった。繁華街だったので自動車も頻繁に走っている。青になるのを待っていると後ろにいたおばさんに怒鳴られた。
「何で待ってるのよ！さっさと渡りなさい！」
　呆然とする僕を尻目にそのおばさんは僕を押しのけ、車が走るその道を信号無視して去っていった。子供の頃に信号無視を見つかって見知らぬ大人に叱られたことはあるけど、律儀に信号を守ってたら怒られたのは人生初めてにして今のところ最後の経験だ。あのおばさんは自分のことはともかく他人に対して「死ね！」と言ってるようなのものでやめてほしいものだ。
　
　京都にいた時のもう一つの記憶（これは確実に京都）は、今でも思い出すに寒気がする出来事で、信号無視とかではないレベルの話。まったく信号がない常に自動車が途切れないような状態の道路をよぼよぼのお爺さんが横断していたのだ。信号はもう50mほど先に行けばあるのだがそのお爺さんは知ってか知らずか、それともそこまで行くのがよほど面倒だったのか、杖を突きながら横断していた。ところがその歩行速度が、はっきりいって遅い。その割りに全然周りを見渡す様子もなくぐんぐん進んでいく。本人はともかく見てる方が心臓が止まりそうだった。よほど声をかけようかと思ったがもう真ん中辺りまで進んでいるし、逆に声に気を取られて立ち止まった瞬間にはねられるかもしれない、そう思ってやめた。
　ふと歩道のガードレールを見るとそこには、
「注意！死亡事故多発地帯！」
という看板があった。まあ、そりゃあ、あんな老人がいれば死亡事故が多発してもおかしくないなあ、と妙に納得したのだった。そのお爺さんは渡り終わるとそのまま姿を消した。
　いずれももう10年以上前の話だが、今でもよく覚えている。関西の人が他の地域に比べて信号を守る規範意識が薄い、というのはよく言われるし、実際当時の関西人の友達とかも平気で信号無視していた。がさすがにあの御老人は強烈過ぎた。
　
「誰も見てないのに信号を律儀に守っている奴はバカ」的な考え方には賛同しない。むしろそこで得られたわずかな時間であくせくするぐらいなら誰もいなくても信号を守るぐらいの心の余裕を持った方がいいと思う。
　
　人生ゆったり生きようよ。

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