白黒でよりソリッドに! マッドマックス 怒りのデス・ロードエディション
2015年はもう「マッドマックス」の年と言ってよかったわけだけど、その時に僕が思ったのは「これは白黒にしたほうが効果的なんじゃないか?」ということ。複雑な情景というよりは極端に限られた色味の背景を舞台に繰り広げられたアクションは、カラーであるより白黒の方が逆にテーマを浮き彫りにし物語を引き立てるように思ったのだ。その感覚は決して間違いではなかったようで、監督のジョージ・ミラーはモノクロームのものこそ本当に望んだバージョンであるとして白黒にした「マッドマックス」がソフト発売される事となった。その前にこのバージョンを是非劇場で!と公開されたのが本作。「マッドマックス怒りのデス・ロード<ブラック&クローム>エディション」を観賞。
物語紹介などはオリジナル公開時のこちらを参照してください。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2016/04/20
- メディア: Blu-ray
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まず僕が今回鑑賞した劇場は川崎のチネチッタ。そこの「LIVE ZOUND」という上映形態。例えば立川のシネマシティでの「爆音上映」などが話題となっているが、僕自身は基本的にあんまりそういうのを体験してこなかった。もちろん映画館の大画面大音量で、というのは基本としても、そういった付加価値的なものにあまり価値をおいてこなかったのだ。例えば映画の物語に合わせて座席が揺れたり風が吹いたりするMX4Dという上映形態などがあったりするが、あんまり興味はない。もちろん体験してみて「こりゃ凄え!」ってなる可能性もあるが、まず値段が高いので今のところ体験する気もない。IMAXにしても今はすっかりIMAX3Dという形式が普通だが、2Dの映画ならIMAXを選ぶこともあるが3D(特に字幕)はもうなるべく避けるようにしている。僕がメガネ装着者でメガネの上に更にメガネを掛けるのが辛いということもあるが、最近は頭痛までしてきて、まず映画を楽しめなくなっているからだ。通常の3Dならクリップ式のメガネを持っているのでそれほどでもないんだけどね。なのでそういう通常の上映以外の付加価値はあんまり興味がなかった。
ただ、今回は事前に凄いと聞いていて、さらにこの「LIVE ZOUND」という上映は料金が通常と変わらないのである。だったら別に避ける必要もないわけで今回はこの「LIVE ZOUND」で観賞。
実を言うとこれまでにも新作映画でこの「LIVE ZOUND」という上映を体験したことはあった。ただその時は「ちょっと他より大音量だけど特に凄くは感じないな」という感じだった。ただ今回は違った。
もちろんこれまでのものは新作映画だったのでその鑑賞が初めてだったり唯一だったりして他と比べていない、ということはあり、それに対して今回は過去にIMAX含む7〜8回劇場で観た作品なのでその点で比較で凄さを感じやすいと言う部分もある。後はこの「マッドマックス」を前に新しいサラウンドスピーカーを導入したとのことなのでその点でも以前とは違うのかしれない。
いや凄かった!
音で座席は揺れるし、足元のズボンの裾ははためくし、なんだか風ではないが音圧というか質量を伴った音が顔に迫ってくるような感覚。音楽も効果音も真に迫っていた。これはちょっと他では味わえない体験。ただチネチッタのこの「LIVE ZOUND」上映には作品に合わせて主に3種類の方法があって
【 #LIVEZOUND 3つのタクティクス 公開】ただ音が大きい、それがLIVE ZOUNDではありません。おおまかに3つのタイプに分かれています。ここではそれをハーモニクス、ハイブリッド、ハードコアと名付けます。(続く)https://t.co/fc2ZtZ49sa pic.twitter.com/G5kO0xdvpa
— チネチッタ川崎 (@cinecitta_jp) 2017年1月25日
だそうです(上記のツイートから幾つか続く物を参照)。
当然その作品にあった音響というものがあるわけで、どの作品でも今回のやり方がベストというわけではないんだろうけど、とにかく凄い体験でした。単に音楽の使用法とかそういう部分以外で音響についても考えさせれた。
さて、音響部分以外でこの「ブラック&クローム」がどうだったかといえば、個人的にはこのバージョンがカラーより良かったです。基本的にはカラー作品としての「マッドマックスFR」をそのままモノクロに変換しただけで、特に編集だとかで変更はないのだと思う。それ故に白黒になって分かりにくくなった部分もあるのだけれど、全体としてはより画像が先鋭化して単に映像部分だけでなく物語のテーマとしても際立つこととなったのではないかと思う。「マッドマックスFR」のイメージカラーは砂漠や岩肌、燃え上がる爆炎といったところから赤や黄色、オレンジを思い浮かべる人も多いと思う。それは赤錆を連想させ、荒廃した世界にピッタリだとは思うけれど、暖色なので同時に温かみも感じてしまう。それがモノクロになることで画面全体が陰影が浮き上がってソリッドな印象へ変えた。
また、目の周りを黒く塗ったウォーボーイズやいざというときの目から上を黒くしたフュリオサ、あるいは眼力を発揮するイモータンジョーのメイクなど一部のキャラクターの目を白黒は強調する。
また特に序盤に多く見られた少しコマ数を落としてチャカチャカした動きは白黒になることで昔のサイレント映画のような感覚を強め、他のシーンの動きと差が際立つ。やはり中盤の砂嵐のシーンも個人的には白黒の方が迫力があってよかったと思う。
もちろん分かりづらくなった部分もある。キャラクターとして人気を集めたドゥーフ・ウォリアー(盲目のギター野郎)の一連のシーンは白黒になり彼の赤い服やギターのネック先から吹き出す炎といったギミックがわかりづらく、また音響が良くなったことで逆に彼のギター演奏は埋没してしまったかもしれない。
音響に驚かされた本作だけど、逆に邪魔なものもあった。これは僕がこの「マッドマックスFR」を大好きで劇場でも家でも何回も観て、もう物語の展開はもちろん、セリフもほとんど覚えてるような状態だったからかも知れないが(実は家で鑑賞するときも英語音声を日本語字幕もない状態で見てる事が多い)、音楽や効果音はともかく、もうセリフは無くても十分だったんじゃないか、と思ったりした。本作は元々そんなにセリフが多い映画ではないのだが、セリフを無音にし、どうしても必要な箇所は本当にサイレント映画のように別画面で映す、とかそういう風にしても良かった、と思ったのだった。もちろんそんなことをしたらシーンが間延びしてしまう可能性もあるのであるが。
後はせっかくの「ブラック&クローム」なのに日本語字幕がちょっと黄色がかっていて、せっかくの「ブラック&クローム」を邪魔してしまうのだ。いっそ字幕無しバージョンでの上映でも良かったかも*1。
物語内容については今更書かないけれど、ちょっと思ったのは字幕のこと。邦題の「怒りのデス・ロード」は良い(あえて言うなら「デス・ロード」の「・(中黒)」は要らない。2単語までなら中黒なしの方がスッキリして良いと思う)。ただ劇中でニュークスが「I'm gonna die.historic on the Fury Road.」というセリフが「死ぬ時はデス・ロードで派手に散る」となってるのが以前から気になってはいた。文意の「フューリーロードの歴史になる」が「デス・ロードで派手に散る」になっているのはまあ良い。原題の「Fury Road」に当たるから「デス・ロード」としたのだろうがここではニュークスがはっきり「フューリーロード」って言ってるのが聞こえるんだよね。固有名詞を別のカタカナ単語にするのは聴覚と視覚が一致しないため鑑賞していて非常に居心地が悪い。ここは普通に「フューリーロード」にするか、もし邦題に合わせるなら「怒りの道」とでもしたほうが良かったと思う。同様に「War Rig」も「ウォータンク」になったりしていて多少の違和感もあるのだが、こちらはそれほどはっきり耳に聞こえてこないのでまだ良し。
後はやはり固有名詞の問題でイモータン・ジョーの二人の仲間、「The Bullet Farmer」と「The Peaple Eater」。それぞれ「武器将軍」と「人食い男爵」と訳されている。原語では「弾薬畑の農夫」とただの「人食い」なわけで日本語で勝手に「将軍」とか「男爵」とか称号を付加しているわけで、個人的にはこれもどうかと思う。映画ファンは割りと海外のオリジナルをそのまま持ってくることを好み、余計なローカライズを嫌う傾向があるのだけれど、なぜか「マッドマックス」では好意的に受け入れられてるのが不思議。英語でもこの二人の名前は決して格好良くはないわけで、あえてその格好良さを感じないネーミングにしているのはわけがあるのでは?とも思うのでここも単にそのままカタカナにするか、直訳でよかったと思う。
マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション Blu-ray(初回限定生産/2枚組)
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- 発売日: 2017/02/08
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マッドマックス <ハイオク>コレクション(初回限定生産/8枚組) [Blu-ray]
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*1:何度も言っているようにこれは何回も作品を見て内容を把握しているものの意見。初見で同様のことが言えるかは分からない